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貴方の傍らで
第二話 次は貴方と一緒に
しおりを挟む「セリアと一緒に出掛けるの、ほんと久し振りよね」
とてもご機嫌な声ですね、リーファ。
一週間振りに学園に登校した日の放課後、リーファに拉致されました。私の侍女も仲間だったようです。
「私の了承はとってませんけどね」
苦笑しながら答えます。
でも、怒りはしませんよ。だって、リーファなりに私を心配しての行動だと分かってますからね。侍女も。
「今日はお腹一杯食べるわよ」
「だから、昼ご飯を控えるように言ったのね」
呆れながらも笑みが溢れます。
「今日は月に一度のバイキングなのよ!!」
そんなに力を入れて言わなくても、意気込みは伝わりますわ。
「前に言っていた、あのケーキ屋さんの?」
以前から、リーファの会話にちょくちょく話題に上がっていたのを思い出しました。私も興味があったので、よく覚えています。
「そう!!」
「それは楽しみですね」
そんなことを話しているうちに到着しましたわ。
結構混雑してますね。並んでるのは女子ばかり。後はカップルがちらほらいますね。肩身が狭そうですわ。
リーファは予約を入れていたらしく、殆ど並ばずに店内に入れました。
「セリアは何から攻める? やっぱり、チョコレートケーキと果物のタルトは外せないよね」
早速席に着くと、リーファは目を輝かせながら訊いてきました。
「それも美味しそうですが、食べるからには制覇が目標ですね」
一個が小さそうですし、いけるでしょう。
「……本気?」
リーファの頬が引きつってますわ。
「勿論」
「セリアが見掛けによらず、大食漢なのは知ってるけど……挑戦するの?」
「当然ですわ」
時間制限があるから急がないといけませんわね。
「シオン様。今日はリーファがケーキ屋さんに連れて行ってくれたんですよ。月一度のバイキングだったんです。とても美味しかったですわ。制覇したんですよ。でね。リーファと周囲のお客さんが唖然としているのが、すごく面白かったですわ」
私の家族と私の側近たち、そして隊長たちは本当のことを話しています。でもそれ以外の人たちは本当のことを知りません。勿論、親友のリーファにも話していません。
英雄であり、近隣諸国で名を轟かせているシオン様が、聖獣様の血を受け継いでいるなんて知れ渡ったら、近隣諸国との力関係が崩れてしまいますわ。ましてや、我が皇国がグリフィード王国を取り込んだことで、それでなくても、今緊張感が増しているのです。これ以上の刺激は、皇国にとってよくありませんわ。
なので、竜人へと生まれ変わる途中だということを周囲に知られる訳にはいかないのです。
という訳で、黒の魔女の魔法薬を誤って口に入れたことになっています。それもどうかと内心思いますが。まぁ、真実が漏れるよりはまだマシでしょう。
その薬が原因で、療養中ということになっています。表立っては発表はしてませんよ。調べれば分かるようにはしていますが。
「……リーファと侍女には、ほんとに心から感謝しないといけませんわ。
……自分では気付かなかった。
普通に食事をしても、美味しいと感じていなかったことに。でも、今は違います。ちゃんと、美味しいと感じますよ。……心に余裕がなかったのですね。たぶん。自分が思っていた以上に。
シオン様。目を覚めしたら連れて行って下さい。甘党のシオン様なら、絶対気に入りますわ」
今日一日の報告をし終えると、私は目を閉じます。そして、おやすみの言葉の代わりにいつもの台詞を口にしました。
「愛してますわ。シオン様」と。
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