婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

文字の大きさ
120 / 344
また、乙女ゲームですか

第八話 だから離れる道を選んだのでしょう

しおりを挟む


 お祖父様といい、相変わらず、人の心を勝手に読みますね……お母様。その事について、今は追求しませんわ。代わりに教えてもらいますよ。

「手伝って下さるのなら、誰がこんな馬鹿げたことを起こしたのか教えて下さいます?」

「ええ勿論。この世界の創世神よ」

「…………はい?」

 今、何ておっしゃいました?

「だから、創世神よ。別名、誘拐犯とも言うわね」

「…………」

 聞き間違いであって欲しかった。そうですか……創世神様ですか。私は創世神様に喧嘩を売ったんですね。聞くんじゃなかった。後悔しても遅いですわね。

「そんなに、深刻に考えなくといっても、創世神が特別に何かした訳じゃないわよ。あくまで、この世界のことを教えただけ。だとしても、セリアにとったら、到底許せることではないけどね」

「つまり、私は創世神様の遊戯に巻き込まれたという訳ですか」

 頭痛がしてきましたわ。

「遊戯というより趣味ね」

 尚悪いですわ。

「…………何かしらの対策を打ちたくても、創世神様相手ではどうしようもありませんし、この件はこれまでとしましょう」

 お母様はやる気満々のご様子でしたが。実際、そう口にすると物凄く不満気でした。

 当然でしょ。私も命が欲しいですよ。大切なシオン様もいますし。シオン様に何かあったら、お母様でも許しませんよ。

「分かったわよ」

 宜しいですわ。渋々ですが、納得して頂けたようでよかったですわ。それともう一つ、お母様に訊いておきたいことがありましたの。

「話は変わりますが。……お母様はご存知なのではありませんか? 聖教会を創立した方を」

 そう尋ねた途端、お母様の機嫌が悪くなりました。嫌悪感丸出しです。露骨に嫌な顔をしてますわね。

「知ってるわよ」

「ということは、その方も【落ち人】ですか? もしそうなら、普通にその辺を闊歩しててもおかしくはありませんよね」

 なんせ、創世神様が直に連れて来た方々は、永遠に近い命を持ってらっしゃいますからね。

「この辺を闊歩してるとは思わないけどね。私とアイツ、そり悪いから。根本的に何もかも合わないのよ」

 何か分かる気がしますわ。聖教会を創立しようとした時点で、お母様とは正反対ですもの。 

「アイツは、自分を選ばれた人間だと思ってる。この世界に連れて来られたのは運命。元いた世界での生活は魂の修行だったと抜かしていたわ。
 自ら、創世神の使徒だと言ってるしね」

 それはまた凄い人ですね。お母様と根本的に合いませんわ。なんせお母様は、創世神様を誘拐犯って言ってますしね。そりゃあ、合いませんわ。

「そして最悪なことに、それを私にも強要してきたのよ。しつこい程にね。当然無視したわよ。うざいから。するとアイツは、私を邪神の使徒だと宣言したのよ。大勢の人の前で」

「何ですか!? それは!!」

 ありえませんわ。どれほど自分が偉いって思ってらっしゃるの。こんなに優しいお母様をよくも!!

「アイツは魔物を完全悪だと考えてる。私も魔物を狩ることに反対なんてしないわ。狩らなきゃ、自分の身が危ないんだから。
 でもね、魔物に直接的にせよ、間接的に関わるにせよ、関わった者全員を穢れた人間として差別するのだけは許せなかった。
 穢れた人間を隔離すると言って、スラム街に住まわせるのも許せなかった。
 同じ街に生活する民なのに、生活区域を制限するのも許せなかった。自分たちは何食わない顔で、その恩恵を受けていながらね。
 だから私は、彼らを逃がすことにしたの。山脈を超えたこちら側にね。中には、残った者もいたけどね」

 昔を思い出したのか、少し寂しそうに笑います。

 お母様は本当に優しい方です。口は悪いし、少しだらしないところもありますが。人を憎み切れない、嫌いになり切れない方です。だから、敢えて離れる道を選んだのでしょう。

 

☆☆☆

【第一回次世代ファンタジーカップ】に参加してます。

 タイトルは〈何もかも全てを奪われた元勇者王子、今度は俺が貴様らから全て奪ってやる〉です。

 一応、復讐物になってます。

 楽しんで頂けたら嬉しいですm(_ _)m


しおりを挟む
感想 776

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

離縁した旦那様が、今になって後悔の手紙を送ってきました。

睡蓮
恋愛
乱暴な言葉を繰り返した挙句、婚約者であるロミアの事を追放しようとしたグレン。しかしグレンの執事をしていたレイはロミアに味方をしたため、グレンは逆追放される形で自らの屋敷を追われる。その後しばらくして、ロミアのもとに一通の手紙が届けられる。差出人はほかでもない、グレンであった…。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。