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また、乙女ゲームですか
第二十一話 この世界は現実なのに
しおりを挟む「セリア。聞いた?」
今日は朝から会議があったので、昼からの登校です。教室のドアを開けたら、開口一番、リーファは満面な笑みを浮かべながら訊いてきました。とても楽しそうですわ。
「こんにちは、リーファ。それで、何をです?」
反対にそう尋ねると、リーファはニンマリと笑います。淑女の仮面どっかに忘れて来ましたね。別に構いませんけど。仮面を被ると、リーファは完璧な淑女に大変身しますからね。その変わりようは、最早芸術の域に達してますわ。
「またまた~~とぼけちゃって。研究棟の件よ」
「ああ……その件ですか……研究棟に忍び込もうとなさったようですね。警備員に捕まって、今も監視が付く中、一室に閉じ込められているとか。取り巻き連中とは別に」
スミスが告げた通り、シスターはクラン君を追っ掛けて研究棟に来たようです。でも、研究棟には入れなかった。当然ですわ。研究棟に入れるのは、教室を借りている契約者の私たちと契約者の関係者だけですわ。
運良く忍び込めたとしても、大概の研究室は防犯をしっかりしていますからね。当然私もですわ。悪意のある方は入れないようにしてますからね。防音も。
「このまま退学にはなれば楽なのに」
殆ど聞こえないくらいの声でリーファは呟きます。私も心底そう思いますが、現状はそうならないでしょう。
「それは難しそうですわね」
自然と私の声も小さくなります。
「どうして?」
「忍び込もうとしていた事になってはいますが、実状は突撃してきたと言った方が正しいですからね。
それに、理由が理由ですし。研究や発明品を盗もうとさしたわけではなさそうですから。厳重注意と停学三日あたりが妥当と思いますわ」
「あ~~理由って、クラン君の事でしょ。どこをどう見たら、そう思うの?」
「私にそう訊かれても分かりませんわ。そもそも、今回の騒動の切っ掛けは、お菓子を買いに頼んだことですから」
うんざりした声音で答えます。
監視員にも、教員にも、シスターは私が悪いように言ってるようですわ。クラン君が虐げられてるって。それを注意するために会いに来たと。ほんと迷惑ですわ。あの騒動の後、クラン君は呼び出され事情を聞かれましたし。私も聞かれましたわ。
「お疲れ様。にしても、クラン君って、シスターみたいな花畑女にやたらモテるよね」
リーファの素直な返答に、もう苦笑するしかありませんわ。
「それ、クラン君の前で言ったら駄目ですよ。本人、とても気にしてるんですから」
それも可哀想なくらいに。
「言わないわよ」
頬を膨らますリーファは可愛いですわね。その頬突きたくなりますわ。しませんけど。
「……どうも、花畑女には、クラン君のような平民の従者、それも顔が良くて出来た青年は、とても魅力的に映るようですわ。従者として当たり前の仕事でも、虐げられてるように映るみたいですよ」
大きな溜め息を吐きながら言う私に、リーファはポツリと「この世界は現実なのに……」と呟きました。
「それに気付くなら、こんなことは仕出かしませんわ」
「それもそうね」
今度は二人で溜め息を吐きます。その時でした。
「おい!! お前か!?」
大声で騒ぐ馬鹿が現れたのは。
これ以上馬鹿に付き合うつもりはないので無視しましょう。馬鹿を見たリーファの目がとても怖いですわ。まぁ、そうなりますよね。
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