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また、乙女ゲームですか
第三十五話 似てますわね
しおりを挟む「……それにしても、お母様がこれ程ダメージを受けるなんて。だとしたら、相手はやはり……」
お母様を起こさないようにしながら、ソッとベッドを抜け出します。
よく寝てますね。あどけなさが残る寝顔を見ると、三人の子持ちには絶対に見えませんね。
本来、お母様は好戦的な性格ではありません。ズボラの方でしょうね。無頓着、優柔不断。言い換えれば、平和主義っていったところでしょうか。元いた世界が争いのない国だったことが影響してると思いますわ。
だからこそ、ここまで消耗する程魔力を使用したことに驚きを隠せませんでした。
つまり、お母様はそうせざる状況に追い込まれたという事でしょう。
と同時に、ここまで魔力を消耗させれる相手は一人しか思い浮かびません。まぁ、詳しい話はお母様が目を覚ましてからですね。
でもその前に、一度皇宮に戻らないといけませんね。リムお兄様と宰相様に、お父様の件を報告しとかないといけませんから。憂鬱ですわ……行きたくはありませんわ……。
朝ご飯を食べながら溜め息を吐く私を、シオン様は困った顔をしながら見ています。その顔も格好いいですわね。
「一緒に行こうか?」
その気持ちはとてもありがたいのですが、お母様を一人置いとけません。今は癒しよりも、優先すべきはお母様ですから。
「いえ、大丈夫ですわ。シオン様には、お母様を宜しくお願い致しますわ。なので、今日のお仕事は……」
「それは構わない。特に問題ないしな。でも、アレがあるのにか?」
シオン様が言うアレって、倒れる前に張られた結界のことです。大陸一の強固な結界ですからね。それに色々な防衛機能も付与されています。この城にいる限り間違いなく安全でしょう。世界が滅ばない限り。しかし、
「相手は、あのお父様ですからね。絶対は言い切れませんわ。お母様に関する執念は常軌を逸してますからね。どんな手を使ってくるか分かりませんわ」
病的を通り越して、完全に病気ですからね。
「なら、尚更俺が同行した方がいいんじゃないか? セイラにとって、セリアは弱点だからな」
「それを言うなら、リムお兄様もですわ」
「確かにそうだが……」
そのお気持ちはとても嬉しいですわ。
「シオン様。これを渡して置きます」
そう言いながら手渡したのは、最新の魔法具です。私の最高傑作の一つですわ。
「転移魔法を付与してるのか」
「見ただけで分かるなんて、さすがシオン様ですわ。
ええ。でも、これはただの転移魔法ではありませんわ。場所ではなく、対象は人なのです。私の魔力の結晶を組み込んでいますから、直接私のいる所まで飛んで来れますわ」
「……それは……凄いな」
シオン様に褒められるだけで、造ったかいがありましたわ。何よりの褒美です。実はこっそり、シオン様用も造ってるんですけどね。それは内緒ですわ。
「私の身に危険が迫った時は、中心の魔石が赤に変化します。その時は駆け付けて下さいね」
「当たり前だ。セリアの仇なす者は全員地獄に送り込んでやる」
頼もしい限りです。
「ありがとうございます。シオン様」
私は自分からシオン様の膝に乗ります。驚いたシオン様に、私は微笑みながら軽くキスを贈ります。
ほんとは少し怖いんですけどね。こうしてると、シオン様に勇気を貰えるのです。不思議ですよね。
愛しい、愛しい、私の最愛の方。
たぶん貴方を失ったら、私は気が狂ってしまうでしょうね。私は廃人になり、生きていけないでしょう。
本当に、私はお父様と似てますわね……。
苦笑してしまいそうになるのを我慢し、私はお父様がいる皇宮に向かいました。
乙女ゲームから掛け離れてきた気がするのは私だけかしら。
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