婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

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今度は学園外にアレが発生したようです

第四話 リーファの観察眼さすがです

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 ドリアーヌ帝国――

 山脈を越えた先にある大陸の中では、大国だったと記憶しています。聖教会とは犬猿の仲だとか……あくまで、噂程度ですけどね。例のシスター事件の際に少し調べましたから。

「そもそも、疑問に思うのですが、何故、山脈を越えてこちら側に? 例のシスターが言っていた、浄化のためではないですよね。布教ですか? どちらにしても、はた迷惑なことですわ」

 私は例の受験者の申し込み用紙を机に広げ、うんざりしながら見返していましたが、途中で馬鹿らしくなって止めましたわ。

「どっちでも、いいんじゃない? 対処は同じでしょ。考えても答えがでないことを考えても、時間の無駄無駄」

 リーファが笑いながら言います。

「そうですね、リーファの言う通りですわ」

「ドリアーヌ帝国って、確か……竜神信仰の国だったよね」

 お菓子を頬張りながら、リーファが言います。

「よく、知ってるわね」

「まぁね、例のシスター事件の時に少し調べたの。それに、レイファがこの手の話、詳しいからね。あの子、好きなのよ竜が。なんか、ロマンがあるとか言ってね」

「その気持ち、深く理解できますわ」

 確かにあの姿は神々しくて、一生忘れることはありませんから。

「……ほんと、セリアって、レイファと趣味合うよね。完全に男脳」

「リーファさん、私に喧嘩売ってます? 買いますよ。今から訓練場に行きましょうか?」

「ごっ、ごめん。冗談だから!!」

 私がそう言いながら立つと、途端に慌ててリーファは謝ります。渋々、私は座りなおしました。

「全く……それで、竜神の巫女っていうのは、大聖女みたいな立場なのかしら」

「似たようなものね。大聖女みたいに仕事をしているかはわからないけど。ただの象徴的な者の可能性も高いよね」

「でしょうね。真面目に仕事をし、何かしらの役割があるのなら、山脈を越えて、このような場所に足を運んだりしません。そう考えると、彼女に竜神様の加護があるとは考えにくいですわね」

 通常、加護持ちを国から出したりはしませんから。

「でも、聖教会のシスターは来たよね」

 リーファの的確な指摘に、私は頭を抱えます。

「あ~そうでした。常識が通用しませんでしたね。とりあえず、誰と来たのか調べましょうか。それで、ある程度は推察できますから」

「……はっきりと断言できないけど、あんまり共を付けて来てないと思うわよ」

「どうして、そう思ったのです?」

「気付かなかった? なんか、薄汚れていたのよね」

 そう言われれば、確かに薄汚れてましたわ。ワイシャツもスカートもしわがあって、ヨレッとしてましたね。貴族、それも王族や高位貴族ならありえませんわ。

「確かに、薄汚れてましたわ。つまり、侍女や従者の数が少ないから身だしなみまで行き届かない、なら……放り出された可能性も出てきますよね」

 ゴミを我が皇国に捨てないでほしいですわ。

「まぁ、アレだしね……考えられるよね~」

「だとしたら、彼らの目的は衣食住ですか……」

「無料になるのは、特待生だけなのにね~」

 正規の入学試験よりも難しい試験を幾重にも突破して、始めて特待生になれます。資格を得たからといって、そこで終わりません。成績が落ちれば、即剥奪されます。超厳しいのです。だけど、特待生のまま卒業できれば、明るい未来が待っていますわ。

 少なくとも、ハンター資格がない者はその受験資格さえないのです。入学自体無理ですから。

「優秀だと勘違いしてますよね……あれ」

「絶対、また来るよ」

 嫌なことを言いますわね、リーファは。でも、激しく同感ですわ。

「少し確認したいことがあるので、それが終わり次第、送り返しますわ」

「早い方がいいわよ」

「そうですね」

 あ~癒やしがほしい。シオン様以外で、私の身体を包みこんでくれる温かさを渇望しますわ。例えば、モフモフとか……

 

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