大嫌いな聖女候補があまりにも無能なせいで、闇属性の私が聖女と呼ばれるようになりました。

井藤 美樹

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第七章 知らない所で死亡フラグと監禁フラグが立ってます

買い出しに来ました


「ところでさ、モアさん、食料足りる? なんなら、狩ってこようか? それとも、街で仕入れて来ようか?」

 魔物肉は狩ればいいけど、卵や粉類、果物や野菜、あとスパイスは街で買った方がいいからね。

「そうだね……大量に買っても余らないから、仕入れといた方がいいかな」

「わかった。じゃあ、街に行って仕入れてくるよ。準備してくるから、書き出しといて。キルは休んでていいよ」

「そういうわけにはいかないだろ」

 当然のように付いてこようとするキル。休んでていいのにな。

「回復しているみたいだから、運動がてらいいんじゃない」

 モアさんがそう言うなら、大丈夫だね。

 準備って言っても、ローブを羽織って武器を装備するだけ。キルは防具を装備してるけどね。

 準備を終えて一階に下りると、モアさんが買い物メモとマジックバックとお金を用意して待っていた。

「お金はいいよ、モアさん。自分たちの食費なんだから。その代わり、宿泊費と調理代はまけてね」

 私はそう言いながら、マジックバックと買い物メモを手に取る。

 いつもより少し多いかな。まぁ、こんなものだよね。

「……頑固だね。じゃあ、これだけは持って行って。屋台でなんか食べておいで」

 温かい笑みを浮かべながら、モアさんは小さな皮袋をくれた。確認しなくてもわかる、お金だよね。かなり重い。そこまで言われたら、受け取らないといけないよね。でもこれって、御駄賃にしては超破格だよ。

「ありがとう、モアさん。ユリアのこと頼むね」

「大丈夫、安心して行っておいで」

 私とキルはモアさんに手を振って、食堂を出た。

 村の堺まで歩くと、言うまでもなく、キルは身体強化と状態異常の耐性魔法を重ね掛けしていた。

「今回は、結界を出たら飛ぶね」

「リステラークか?」

「ううん、聖王国だよ」

「大丈夫なのか? リステラークでもいいぞ」

 キルがユリアに担がれて街中を歩いてから日が経ってないからね……配慮したって思ってるのね。違う、違う。

「よく利用するお店が、聖王国にあるの。まぁ、正解に言えば入口だけどね」

「入口?」

 キルが訊き返す。

「付いてくればわかるよ。これからも、利用する機会も多いしね」




 お気楽なことに、ゲンジュール聖王国は、まだ祭りの余韻に浸っていた。

 お気楽なことね。

 私は呆れながらフードを深く被る。一応、認識阻害の魔法を掛けておくことにした。酔っ払いも多いし、面倒事は回避したいからね。それに、長居するつもりはないし。

「何からせめる?」

「まずはお店に行ってからかな。大概たいがいはそこでそろうよ。スパイスも新鮮な果物や野菜もね」

「そんな大きな店だったか?」

 キルは首を傾げて唸っている。聖王国にある商会を思い浮かべているようね。そんなわけないじゃない。

「あるよ。まぁ、知らない人が大半だけどね。何回か利用してるから、融通してくれるよ」

 そんなことを話しながら、私はキルと一緒に街中を歩く。

 大通りから一本外れて、さらに路地の奥のちょっと拓けた土地に建っている建物が目的地だ。看板も何もない。普通の一軒家。

「本当に、ここなのか?」

 半信半疑のキル。

「そうだよ」

 私はドアを四回ノックしてから十五秒経ってからドアを開けた。

「えっ!? なんだこれ!?」

 立ち尽くすキルの腕を引っ張り、私は店内に入った。

「驚いた!? 驚くよね!! ここ何処だって思うよね!? 私も初めて訪れた時は、キルと同じ反応したもの」

 店内はまさに大型商会の店舗内。色んな種族の人が忙しなく働いている。棚には、多種多様な商品が綺麗に並んでいた。

 呆然としているキルの顔を見て、私は悪戯が成功したみたいに笑う。

「いらっしゃいませ、アキ様」

 声を掛けてきたのは、コボルト族の副商会長さん。

「お久し振りです、シロクさん。相変わらず、綺麗な毛並みで。彼はキル、私の新しいパーティーメンバーです。よろしくお願いしますね」

 撫でまわしたいけど、それは完全にアウト。即、出禁になっちゃう。

「噂は聞いております。私は、このシロクール商会の副商会長をしております、シロクと申します。キル様も、これを機にご贔屓していただけると嬉しいです。それで、今回は何をお求めで?」

「とりあえず、これを用意してもらえると助かります」

 私はそう言いながら、モアさんから受け取った買い物メモをシロクさんに手渡す。

「スモアフラ様の字ですね。わかりました、今すぐ御用意いたします。しばらく、お待ち下さい」

 シロクさんは買い物メモを部下に手渡す。茶色のコボルトさんが急ぎ足で奥に消えていく。

 あの、丸っとした尻尾可愛い。眺めるだけで癒やされるわ~

「少し、店内見て回ってもいいですか?」

「何か欲しいものでも?」

「モアさんにお世話になってるから、お土産でも買おっかなって。でも、何がいいかわからなくて……」

「なら、この蜂蜜酒とかはどうですか? 三十年もので、蜂蜜はケルト産です」

「ケルト産って、じゃあ、蜜は星火せいか花ですか!?」

 火が星のように咲いて見えるから、星火花って呼ばれているの。咲いてる場所は限られていて、主に火山口付近。火の耐性がある魔蜂が星火花で作った蜂蜜は、超高級品なんだよ。市場にはまず出ない。

「はい。よく、ご存知で」

「いくらですか!?」

「この一瓶で、大金貨一枚になります」

 大金貨一枚か~やっぱり、結構な値段するよね。でも、軍資金の総額は今、大金貨三十枚はあるし、大丈夫。

「じゃあ、それを三本ください。あと、果実酒とジュース、麦酒も追加で」

「樽でよろしいですか?」

「果実酒と麦酒は樽でいいけど、ジュースは瓶の方がいいです。五本くらい」

「畏まりました。では、追加で御用意させていただきます」

 そう告げると、シロクさんは店の奥に消えていった。

 左右に揺れる尻尾、眼福です!!



 
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