大嫌いな聖女候補があまりにも無能なせいで、闇属性の私が聖女と呼ばれるようになりました。

井藤 美樹

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第七章 知らない所で死亡フラグと監禁フラグが立ってます

シロクール商会


「お……おい、ここっていったい? それに、大金貨一枚って!?」

 シロクさんが消えてから、混乱しているキルに詰め寄られた。

「落ち着いて、キル。シロルーク商会は大陸一の大商会なの。会員制のね。普通、客が店を選ぶけど、この商会は違う。商会が客を選ぶの。だから、人族のように街に店舗は設けていないわ。あるのは、入口だけ。会員はその入口で、決められた行動を取るの。それで、始めて扉は店舗に繋がるんだよ」 

「四回ノックしたあれか?」

 あっ、やっぱり気になってた。

「そう。今のキルはまだ会員じゃないから、一人で来れないけどね。でも、シロクさんの様子じゃ、会員になれるかもね」

「なれたら嬉しいけど……」

「最低限ラインはクリアしてるよ。シロクさんたちに普通に接してたでしょ。モアさんもだけど。見てわかると思うけど、この商会、亜人族の登用がほとんどなんだよね。商会長は人族だけど。例の魔族との戦いのせいで、人族以外の種族が皆、悪に認定されて討伐されたでしょ。だから、表立って商会を経営してないの。ここは言わば、彼らのオアシス的なものね」

 迫害される気持ちは痛いほどわかる。

 ここは、私にとって、小さい頃住んでいたケイ兄さんやジュリアとの家であり、ニノリスさんの屋敷と同じ。彼らにとって、安心できる場所なんだよ。

「そうか……だから、客を選ぶんだな」

「まぁね、私も散々、この紅い目のせいで迫害されたしね……だから、彼らの気持ちは少しはわかるよ。この場所を必死で護って、大事にしているの」

「なら、俺は会員にならない方がいいな。俺は元だけど、彼らを虐げた側にいた人間だからな」

 キルのそういう所だよ。私がパーティーを組むことを決めたのは。

「そんなの、シロクさんはとうに知ってるよ。現に会った時、そう言ってたでしょ。でも、なるかならないかは、キルが決めればいいよ」

「わかった……でだ、大金貨三枚をポンッて使うやつがいるか!?」

 何故、怒られるの!?

「えっ!? でも、ケルト産の蜂蜜酒なら、それぐらいするよ。確かに高い買い物だけど、それだけの価値はあるわ」

「そうだな、でも、お金は無限に湧くものじゃないんだぞ。大事に使わなきゃいけないだろ」

 なんとなく、怒られた理由がわかったわ。

 大金貨一枚で、家族四人が何もしなくても、一年間優雅に暮らせるからね……それを、ポンッと払う私の金銭感覚が心配になったんだね。

「大事に使ってるよ。ちゃんと、貯金もしてるし。自由で使える範囲内で買ってるから大丈夫」

「ほんとだろうな」

 キル、いつから、私の保護者になったの!?

「あのね、これでも私、Sランクの冒険者だよ。なったばかりだけど。Aランクの時、ばんばん魔物討伐してたし、それなりの稼ぎがあるわよ」

「なら、いいが……」

 そんなことを話していたら、笑い声がすぐ近くで聞こえた。シロクさんだ。

「微笑ましい会話ですね。アキ様、御用意できました。確認お願いします」

 シロクさんはそう言うと歩き出す。行き先は、店を出て少し歩いた先の倉庫。

 かんぬきを外し、鉄製の扉を開ける。

 倉庫内は注文した品でパンパンだった。

「これ……間違ってないか?」

「キル、何失礼なことを言ってるの? これで、通常だよ」

 まぁ、驚くのはわかるけどね。

 私は買った数量が間違ってないか確認する。信用しているから、確認しなくてもいいと思うんだけど、シロクさんがそれを許さないんだよね。

「間違いなく。全部でいくらですか? シロクさん」

「大金貨五枚になります」

「えっ!? あまりにも、安くないですか?」

 いつもは、蜂蜜酒をいれないで、だいたいこの値段だよね。

「お得意様ですから。我々シロクール商会からのSランク昇格のお祝いです。遠慮なく、お持ち帰りくださいませ」

 それだけじゃない気もするけど、ここは素直に好意を受け取っておこうかな。

「ありがとうございます。シロクさん、抱き締めてもいいですか?」

「駄目です」

 つれないな~シロクさん。でも、そこがいいんだよね。

 大金貨五枚支払う。蜂蜜酒はラッピングしてあった。そういう気遣いされると、なんか嬉しいよね。だから、このお店好きなの。

「ありがとうございます、シロクさん」

 お礼を言ってから、私とキルはマジックバックを広げた。

「確かに。アキ様、少しお話よろしいでしょうか?」

 シロクさんにそう訊かれ、私はキルにあとを任せて向き合う。

「今すぐではありませんが、二、三日中にこの入口を閉じようと考えています」

 なかなか物騒だね。見切りを付けたのか、それとも、聖王国が荒れるって判断したからか……どちらかよね。

「理由訊いても大丈夫ですか?」

「教皇様が聖王国の独立を認めました」

「えっ!? マジで!! なんて、愚かな真似を……了解しました。皆に伝えときます」

 思わず、大きな声が出ちゃったよ。キルも驚いて手が止まっている。

 でもそれが本当なら、かなり荒れるわね。学園大丈夫かな。サルシナ先生、心労でハゲそう。

「新しい入口はリステラークに設けるつもりです。詳しいことは、後日、こちらからご連絡いたします」

 ペコリと頭を下げるシロクさん。あ~その頭を撫でたいよ。

「連絡、楽しみにしてますね。しばらく来れないなら、魔紙追加で二十枚ほどもらえますか?」

「畏まりました」

 この商会の魔紙が一番、品質がいいんだよ。

 やっぱり、撫でたら駄目かな……



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