裏切られ追放という名の処刑宣告を受けた俺が、人族を助けるために勇者になるはずないだろ

井藤 美樹

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第二章 ラッシュ港攻略

選ばせてやる

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 反応鈍いな~

 双子だから似ていて当然だ。育ちに格差があるから、俺はやさぐれたように映るだろう。ただ、右手の紋章は光を放ち、王家に伝わっていた聖剣と同じ剣を握っている時点で、十分判断できると思うが。

「…………お前はアークか!?」

「お久しぶりです、エルヴァン聖王国国王陛下」

 わざとらしく父上と呼んでやろうかと思ったが、嘘でも嫌だったので止めた。俺の家族が穢れる。

「ユリウスはどうした!?」

 息子だから心配しているのか、それとも勇者だから心配しているのか……絶対、後者だな。

「安心しろ、殺してはいない。最後まで映像を見なかったのか? お互い生き延びれれば、三週間後に会えるだろ」

 感情を圧し殺し、俺は淡々と答える。

「三週間後……」

 ショック過ぎて頭に届いてないのか? 呆けた顔だな。何人も臣下を殺してきた暴君には見えないな。

「ラッシュ港から王都まで、それぐらいかかるだろ? 何寝ぼけてるんだ? ……それにしても、無様だな。エルヴァン聖王国と言えば、大陸の中で最強の大国だったのに、今ではこれか……」

 溜め息混じりに言ってやる。これで、国王の怒りに火が付くだろう。少しでも残っている矜持をここで打ち砕いてやる。

「黙れ!! 偽者のお前の存在が、この国にとって絶対悪だ!!」

「絶対悪か……」

 再び怒りに火が付いた国王は、俺を殺そうと剣を抜き突進してくる。そして、躊躇わずに剣を振り上げ、全体中をかけ振り下ろした。

 派手な金属音が謁見室に響く。

「なに!?」

 いくら体格差があろうとも俺には関係無い。これくらい片手で防げる。表情も変えず、一歩も動かずに受け止めた俺を、国王は信じられないような顔をする。

 近くで見る国王は、こんな間抜けな顔をしていたのか……

 俺は受け止めた剣を横に払う。すると、国王は体勢を崩し床に倒れ込む。

 少しは期待していた俺が馬鹿だったな。まだ三十歳後半なのに、このざまか。こんな男に、俺たちの運命が狂わされたのか!! 

 俺は悔しさのあまり歯ぎしりする。握っている手に力が入る。仲間たちは、俺の好きなようにすればいいって言ってくれた。ずっと決め兼ねていたけど、決めた。

「使える者が誰一人いない裸の王様、ほんと哀れだな」

 とことん蔑んだ目で、俺は国王を見下ろす。十年前のお前のようにな。

「それじゃあ、国王陛下、十年前の再現をしないか?」

 足を挫いたのか、立てない国王に俺はそう提案する。

「……十年前の再現だと?」

 不信感あらわで、俺を憎々しげに睨み付ける国王。明らかに、俺に主導権を取られていることに苛々していた。

「選ばしてやる。右手を切り落とされ、このまま王宮に放置されるか、魔の森に捨てられ放置されるか、選べ」

 俺は剣先を国王の顔に向けながら言い放つ。

 ここに来て、ようやく、国王は自分が死の淵にいることを受け入れたようだ。

 絶望と恐怖、様々な負の感情が入り混じった表情で、国王は俺を見上げる。

 国王の口が開く。

 命乞いでもするのか――

 もししても、叶えたりはしない。

 俺は躊躇うことなく、国王の右手を手首から切り落とした。痛みにのたうち回る国王に、俺は再度言い放つ。

「さぁ、選べ」



 俺が報告するまでもなく、カイナ班の皆は見ていたので詳細を知っている。

「……それで、裸の王様は王宮に残ることにしたのね」

 マリアが何とも言えない表情をしながら呟いた。

「たった一人、魔物が溢れる王宮内で隠れんぼか。ずいぶん楽しいだろうな」

「レイの言う通りだな。俺は絶対、そんな隠れんぼしたくはねーけどな」

 レイとジムがマリアに続いて感想を述べる。

『簡単に殺らないんだね』

 リアの反応はちょっと違ったようだ。

「簡単に殺したら復讐にならないだろう。俺たちが受けた屈辱と悲しみが深い分、苦しんでもらわないと割が合わない」

 俺はリアの頭を撫でながら教えた。

『あのクズとアバズレみたいに? でも、魔物に襲われたらすぐに死んじゃうよ』

「それは大丈夫。簡単に壊れないようにしてあるから」

『えっ!? 死なないの?』

「正確に言えば、喰い殺されても、月が昇ると身体が再生されるようになってるから、大丈夫」

 俺の台詞に皆首を傾げる。

「……凶霊の呪いか?」

 少し間があいた後、俺が答えを言うよりも早くに、レイが険しい表情をしながら尋ねる。

 凶霊はアンデッドの中でも最強クラス。当然、持っているスキルも、背筋が凍ってしまいそうなものばかり。その中で、壊れたアンデッドを修復させるスキルがあった。俺が使用したのはそれだ。それを千回分くらいまとめてかけてやった。意外とできるもんだな。

 使用回数の項目が目の前に浮かんだ時は、さすがに吃驚したけどな。

「正解、さすがレイ。まぁ、呪いっていうより修復だけどな。リアのおかげだよ」

『リア、何かした?』

 首を傾げる姿も可愛いな。

「リアのスキルを使わせてもらった。勝手に使ってごめん。リアが仲間になってくれたからできたんだ。ありがとうな、リア」

『アークのためなら、いくらでも私のスキル使っていいよ』

 リアはにっこりと笑う。

「それで、裸の王様、何回修復するの?」

「千回かな。その頃には、ユリウスも帰ってきてるだろ。最愛の子供に殺されるんだ、裸の王様には幸せな最後だよな」

 そう笑いながら答える俺に、その場にいる全員が黙り込んでしまった。たった一人を別にして。

『アーク、凄い!! 勉強になるよ!!』

 リアがとても嬉しそうにはしゃいでいた。



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