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24 お昼は唐揚げ
しおりを挟む山中さんが迎えに行っている間に、私と未歩ちゃんはご飯の用意をしながら日向さんを待っていた。
唐揚げは日向さんが来てから持って来てもらえることになってるの。揚げたてが一番美味しいからね。なので、ご飯とか副菜とか、色々テーブルに用意していたのだけど……持ってきすぎたかも。まぁいいか。山中さんがいるからね。
用意も一通り終わって、私と未歩ちゃんは席に座り二人を待っていた。
「日向君、遅いね」
ポツリと未歩ちゃんが呟く。
「そうだね……」
もしかして、日向さんは来たくないのかもしれない。ふと、そんな考えが頭を過ぎった。
今まで何回か若返ったから大丈夫なんて思えない。日向さん自身ショックを受けてるだろうし、色々思うこともあると思うの。
私なら嫌だ。腫れ物を触るような扱いや、哀れみを含んだ目で見られ同情されるのは。
「……考えなしだったかもしれないわね」
心の中で呟いた言葉が声に出た。
「そんなことねーぞ、一葉。悪いな、待たせたな。冷めたか?」
いつもと変わらない、少し乱暴な口調が食堂に響く。
「日向さん!!」
反射的に、私は後ろを振り返る。
そこには、七、八歳くらいの子供が立っていた。ニカッと笑う子供の口元には、特徴的な八重歯が生えている。
「やっぱ、この姿は驚くよな。大人と違って、子供は謙虚に現れるからな。大丈夫か? 一葉」
さっきまでの笑顔が曇る。日向さんは、やや視線を下に向け、私と視線を合わせないようにしている。そこに、日向さんなりの優しがあった。
「……うん、思ってたより、大丈夫かな。小さくなっても日向さんだってわかるわ」
そう答えると、日向さんはとても驚いた表情をした。下げていた視線を上げる。そして、小さな声でブツブツと呟く。
「…………小さくなってもわかるか……凄いことを言ってると自覚してないよな、お前」
「ん? よく聞こえなかったけど、なんて言ったの?」
「別になんでもない!!」
そう言うと、日向さんは私の隣にドカッと座った。
少し顔が赤い。まだ熱があるのかな? 手を伸ばそうとしたら、払い除けられた。地味にショック。
「じゃあ、食おうぜ!! 腹減ってたんだよな!!」
食堂のおじさんが持って来た唐揚げに、日向さんは早速箸を伸ばした。そして、「うまっ」と歓喜の声を上げる。
一見、大丈夫そうに見える。でも、本当に大丈夫なのかなんて、日向さんしかわからない。ただ……今は心配の言葉を欲してないことぐらいは、コミュ力がない鈍感な私でもわかった。
同じ病気を患っていても、受け捉え方は人によって違う。当たり前だよね。なら、接し方も、かける言葉も違って当然。でも……私は超能力者じゃないから、かけるべき言葉なんてわからない。だから、私はしてほしくなさそうなことだけはしないようにしようと、心に誓った。
まず始めに、再度伸ばしていた手を引っ込める。
口一杯に唐揚げを頬張る日向さんに、山中さんは苦笑している。私と未歩ちゃんは互いに顔を見てからニコッと笑った。
その後は、皆で大皿に盛られた唐揚げをつついた。
何気ない話で盛り上がる。話題の大半は私の書いた小説のこと。今書いてる話について。ほんと、恥ずかしい。止めてって言っても止めてくれない。皆、意地悪よね。でも、とても温かい。
取りすぎたって思ってたけど、綺麗に完食。デザートは別腹。
食後のコーヒーを飲んでいると、あっ、ちなみに日向さんと未歩ちゃんは砂糖多めのカフェラテね。
私の隣で、なぜか、日向さんが悪戯が成功したような笑みを浮かべている。
えっ!? なに?
場違いな表情に私は首を傾げる。すぐに理由を知ったよ。日向さんがとんでもないことを言い出したから。
「俺決めたわ。皆で、テーマパーク巡りしようぜ」って。
はぁ!? いきなり、なに言ってるの!?
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