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34 生徒は一人、教師は四人です
しおりを挟むノックの返事もなしに、未歩ちゃん登場。
来た理由はもちろんわかってる。
「……あのさ……未歩ちゃん、後でちゃんと食べるから、今、いいところなの」
駄目だと思いながらも言ってみた。すると、戸惑う私に未歩ちゃんはにっこりと笑い言ったの。
「後も今も、たいして変わんないよね」
いや、そういうものじゃないんだけど……変わる、変わらないって訊かれたら、変わるよ。忘れたら困る。
山中さんの笑顔もかなりの破壊力あるけど、美人の笑顔もなかなかの威力ね。凡人、中の下くらいの顔面偏差値しかない私では到底逆らえないわ。そもそも、逆らえにくいんだけど……盛大にやらかしたからね。自分で招いたことだからしょうがない。
実は……皆の前で寝落ちしてから、徹底的に生活を管理されるようになったの。
管理されて半月。
未だに、管理体制は崩れていません。ということは、その点において、私って全然信用がないってことだよね。
管理っていうと大袈裟だけど、今の未歩ちゃんのように強制的にご飯に連れ出され、ちゃんとベッドに入って寝ているかを確認されるようになった。まるで、合宿か修学旅行みたいじゃないだよ。当然、生徒は私一人で、教師は国谷先生を含めると四人。
始めは、集中できるか心配だったけど、その心配は無用だったわね。書き始めると、教師が呼びに来るまで気付かないから。
「だいぶん、進んだ?」
焼き魚を食べながら、未歩ちゃんが訊いてきた。いつの間にか、日向さんと山中さんもいる。
「まぁ、ぼちぼちかな。あと少しで、一通り書き終えるわね。後は追加文を入れたり、削除したりしなきゃいけないから、もう少しかかるかも」
後、半月あれば終わるかな。
「じゃあさ、十月の終わりなら遊びに行けるよね。桜ちゃんも気分転換が必要だと思うんだ」
向かいに座る未歩ちゃんが、身を乗り出して訊いてきた。
「ん? どうしたの? どこか、行きたい所あるの?」
「うん。実は、日向君と面白そうなイベント見付けたんだよね。ゲームの世界に入るパターンもの」
これこれって、見せてくれた。結構、有名なホラーゲームみたい。やったことないけど。
「へ~楽しそうだね」
「じゃあ、決まりね。よかったね、日向君」
二人が嬉しそうなのを見てると嬉しい。山中さんもニコニコと微笑みながら、日向さんと未歩ちゃんを眺めている。
「二人は、このゲームやったことあるの?」
つい、疑問に思って訊いてみた。
「ないかな」
「ないな」
えっ、ないの? あんなに楽しみにしてるのに。
「なら、行くまでの間、ゲームしてみない? その方がより楽しめるんじゃない?」
私の提案に、二人は超乗り気。さっそく、日向さんがスマホでソフトを注文してるわ。行動、早っ。
私の作業も一段落ついたし、晩はホラーゲームに付き合わされることになりそうね。とりあえず、ソフトが届くまで、ちょっと詰めて仕事しようかな。教師の皆に怒られない範囲内でね。
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