空っぽの私は嘘恋で満たされる

井藤 美樹

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俺はそんなに頼りないか

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 いつからだろう、時折、ほんの一瞬、三奈はとても辛そうな、悲しそうな表情を見せる時がある。三奈自身気付いていないのかもしれない。それとも、俺が気付かなかっただけで、前から見せていたのかもしれない。
 
 どっちにせよ、三奈が苦しんでいるのは確かだった。

 何が、お前を苦しめているんだ?

 そうきたくなるのを、俺はグッと我慢する。理由はわからないが、訊いてしまったら、三奈が俺から離れてしまうかもしれない。そんな漠然ばくぜんとした不安が、俺を思い止まらせていた。

 そう思うには理由があった。

 三奈は明確に俺との間に線を引いているからだ。

 会う度に、変わらず感情がコロコロと変わる。よく笑う。それでも、その線が消えることはなかった。初めは人見知りかと思ったが違う。そこまで明確に引いてる線を、知り合ったばかりの俺が越えていいのか。できないよな……堂々巡りだ。

 ラインならいけるか。そう考えたこともあったが、文字にするのは言葉以上に難しかった。そもそも、陰キャの俺にコミュニケーション能力なんて毛頭ない。さり気なく、訊ける雰囲気に持っていくこと自体が無理な話だった。

 実際、ラインの既読を見返してみても、会話らしい会話じゃないしな……

 話しているのは、いつも三奈からだ。俺は相槌あいづちを返すだけ。スタンプさえ送ってない。文字数も改行されるほど書いてない。素っ気なさすぎるだろ? あいつ、こんな俺によく付き合えるよな。あ~地味に落ち込む。

 自分で踏み込めないのなら、三奈が話すのを待つか。

 それは、いつだ?

 一週間後か、一か月後か、それとも一年後か。 

 なぁ、三奈、俺はそんなに頼りにならないか?

 そんなことを悶々もんもんと考え込んでいると、深夜二時になっていた。

 やべぇ、明日、いや今日は、三奈と映画を観に行く約束をしていたんだった。一応、着ていく洋服は出してある。お金も大丈夫。早く寝ないとな。あ~寝れねぇ。完全に目が冴えた。とりあえず、目だけ閉じていればいいか。結局、数時間寝ただけで起きたけどな。

 家にいてもやることねーな。かなり早いが、行くか。待ち合わせ場所に行く前に、コンビニ寄らないとな。あいつ、寒がりだからな。俺はコンビニでカイロを二個買った。

 もしかして、これも記念品になるのか? 

 あれは悶絶もんぜつするほど可愛かった。いや、実際に悶絶した。あまりにも可愛すぎて、完全に思考停止したからな。健気っていうか……マジ、切符を買ったあの時の自分の行動を褒めてやりたい。

 記念品を欲しがるんだ、嫌われてはないと思う。もしかして、三奈も俺と同じ気持ちかもしれない。なら、もっと俺に惚れて欲しい。いや、惚れさせる。

 そしていつか……三奈が吐き出したくなった時、支えられるような男になっていたい。

 俺は決めたんだ。

 三奈を護るってな。

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