3 / 59
第三話 貴族議会
しおりを挟む
会議室には、情報交換の密やかな声だけが落ちていた。ところが辺境伯家の順番になった途端、会議室全体が水を打ったように静まり返る。
アンヌンツィアータ辺境伯家の代表として姿を現したのは、養女・フェデリカであった。国内でも指折りの名門大学の学士服をまとった姿は、砂漠の民と交戦する武門の名家に重ならない。
「アンヌンツィアータ辺境伯は、随分と王家の行く末を軽んじておられるようだ」
「アンヌンツィアータ辺境伯と小辺境伯は、現在砂漠の民と交戦しております。貴族法第三章第五節第十八項によれば、已むを得ない状況では貴族議会に名代を立てることが可能です。私が養子になりました際、名代として立つことのお許しを国王陛下よりいただいております」
「当事者に近しい者が、斯様に多くの票を持っていいと思うてか!」
「確かにデアンジェリス令嬢と私は姉妹ですが、共に暮らしたことはないに等しく、また言葉を交わしたことも殆どございません。聴聞と観察使の調査を既にご覧のこととはございますが」
「それは......だがっ、そなたが私情を持ち込む可能性が」
「――何の騒ぎだい」
静かな声に、老いた伯爵は肩を跳ねさせた。穏やかな微笑みを浮かべてフェデリカの背後に立つのは王弟である。
「――殿下」
「アンヌンツィアータ令嬢は騒動に関与せず、との結果がある。それに、私情如何を語るのならば、まず私がいなくなるべきだろうね」
「お戯れを」
「そうだね。戯れもほどほどにしておこうか」
微笑んだ王弟は一度もフェデリカを見なかったが、庇われたことは理解できる。
「――それでは、会議を始めます」
議長が着席し、会議が始まる。木槌を打ち付ける乾いた音が響いた。
「王太子殿下とカヴァリエリ令嬢の婚約は正式に解消されました。しかし、この決定が為されるに至るまでの王太子殿下のご発言と態度には、国王として即位なさるためのご覚悟に欠けているのでは、という声が上がりました。これを受けて、王太子殿下の廃嫡如何を問います」
***
昼前から始まった議論は、太陽が中天を過ぎた頃にようやく終わりを迎えた。王太子の外戚を筆頭とする継承権剥奪反対派は、王太子本人が子爵令嬢との貴賤結婚を望んでいること、叶わぬならば聖職者になると宣言していることを鑑みて主張を取り下げた。貴賤結婚をすると、生まれてくる子供に何ひとつ地位を継承できないので当然だろう。賛成多数で王太子の廃嫡は可決された。
フェデリカは暇を持て余し、光の回折の別の計算方法を考えていたので、議決の時にうっかり手を挙げ忘れるところであった。
「では、続いて王太子候補の選定を行いたいと思います。異例のこととなりますが、6年前に継承権を放棄した方々の継承権回復を求めます」
6年前、3人の子と妻を立て続けに失った国王が、王位継承順位が高い貴族ら14名に放棄を促した。王太子の地位を脅かすことを恐れた為と言われている。この6年間で二名が亡くなっているが、それでも数名の回復が叶えば随分王太子候補の選定は楽になるだろう。
フェデリカは面倒事が嫌いなので、放棄したままでいいのだが。
「――私は除外していただけないだろうか」
今まさに考えていた発言を先に越され、フェデリカは目を瞬いた。会場が騒めく。
なぜならその発言をしたのは、かつて継承順位第二位だった男――誰よりも王統に近い、王弟であったからだ。
「理由をお伺いしても宜しいでしょうか」
「私は王位継承権を放棄して以来、殆ど政に関わっていない。今更王となるに適しているとは思われない」
「しかし......」
「それと、私は妻を娶る気がない。子を残さなければ、再び継承で揉めることになるだろう――ゆえに私は、継承権回復を辞退したい」
貴族らの頭に過ったのは、いくら縁談を進めても首を縦に振らない王弟の姿だ。彼は毎回、心を捧げた人がいるから、と言って断っていた。一途な姿が更に令嬢からの人気を高めていたが、それでも彼は決して女性を傍に寄せなかった。舞踏会のダンスが唯一の例外と言っても過言ではない
「心変わりされることもあるのではありますまいか。今は妻帯なさる気がなくとも、いずれは......」
「どうであろうか」
微笑むばかりの王弟を前に、貴族たちは頭の中で素早く計算を始めた。
令嬢に靡かない彼は、同時にどの貴族とも親しくせず、絶対的な中立を貫いている。彼が王になることは、誰にとっても利益にも不利益にもならないのだ。
結果的に、彼の提案は保留とされた。確かに政から離れてはいたが、血統は誰よりも近く、また外交の手腕が認められたためだ。
「――アンヌンツィアータ辺境伯家三名も、回復を望みません」
ここでフェデリカは声を上げた。
アンヌンツィアータ辺境伯家は砂漠の民に対する抑止力であり、彼らが王位継承をすることは絶対にありえない。子爵家の血を引くフェデリカは論外だ。
「令嬢の回復はなしとのこと、理解いたしました。けれど辺境伯と小辺境伯のお二人については、ご本人の口から伺う必要があるでしょう」
「お二人は現在、砂漠の民と交戦中でございます。鳩を飛ばし、直筆の書類をいただくことで代替としていただきたい」
「許しましょう。ただし筆跡鑑定を致します。確実にご本人のものと確認が取れましたら、回復をなさらないとのことで承りましょう」
辺境伯という特殊な家柄とフェデリカの血筋は、王弟の時より遥かに容易に継承権の完全放棄を認めさせた。ついでに実父が、ジュリアマリアの継承権も放棄させていた。これは当然とばかりに受け入れられていた。
「――それでは、8名の方々の王位継承権の回復を。国王陛下に奏上し、王嗣の選定を行います」
貴族議会が終わり、フェデリカは王宮図書館に向かった。デビュタントの時の曖昧な記憶を頼りに歩を進める。
――それから十数分後、フェデリカは困っていた。
美しい装飾はどれも似たように見える。人が少なく、足音もしない。さてどうしたものか。
「――おや、アンヌンツィアータ令嬢? こんなところでどうされたのですか」
「王弟殿下」
背後からフェデリカに声を掛けたのは、彫刻が走って逃げ出しそうな美貌の持ち主、王弟だ。フェデリカはにっこり微笑んだ。
「誠に申し訳ないのですが、図書館はどちらの方角か教えていただけませんか?」
アンヌンツィアータ辺境伯家の代表として姿を現したのは、養女・フェデリカであった。国内でも指折りの名門大学の学士服をまとった姿は、砂漠の民と交戦する武門の名家に重ならない。
「アンヌンツィアータ辺境伯は、随分と王家の行く末を軽んじておられるようだ」
「アンヌンツィアータ辺境伯と小辺境伯は、現在砂漠の民と交戦しております。貴族法第三章第五節第十八項によれば、已むを得ない状況では貴族議会に名代を立てることが可能です。私が養子になりました際、名代として立つことのお許しを国王陛下よりいただいております」
「当事者に近しい者が、斯様に多くの票を持っていいと思うてか!」
「確かにデアンジェリス令嬢と私は姉妹ですが、共に暮らしたことはないに等しく、また言葉を交わしたことも殆どございません。聴聞と観察使の調査を既にご覧のこととはございますが」
「それは......だがっ、そなたが私情を持ち込む可能性が」
「――何の騒ぎだい」
静かな声に、老いた伯爵は肩を跳ねさせた。穏やかな微笑みを浮かべてフェデリカの背後に立つのは王弟である。
「――殿下」
「アンヌンツィアータ令嬢は騒動に関与せず、との結果がある。それに、私情如何を語るのならば、まず私がいなくなるべきだろうね」
「お戯れを」
「そうだね。戯れもほどほどにしておこうか」
微笑んだ王弟は一度もフェデリカを見なかったが、庇われたことは理解できる。
「――それでは、会議を始めます」
議長が着席し、会議が始まる。木槌を打ち付ける乾いた音が響いた。
「王太子殿下とカヴァリエリ令嬢の婚約は正式に解消されました。しかし、この決定が為されるに至るまでの王太子殿下のご発言と態度には、国王として即位なさるためのご覚悟に欠けているのでは、という声が上がりました。これを受けて、王太子殿下の廃嫡如何を問います」
***
昼前から始まった議論は、太陽が中天を過ぎた頃にようやく終わりを迎えた。王太子の外戚を筆頭とする継承権剥奪反対派は、王太子本人が子爵令嬢との貴賤結婚を望んでいること、叶わぬならば聖職者になると宣言していることを鑑みて主張を取り下げた。貴賤結婚をすると、生まれてくる子供に何ひとつ地位を継承できないので当然だろう。賛成多数で王太子の廃嫡は可決された。
フェデリカは暇を持て余し、光の回折の別の計算方法を考えていたので、議決の時にうっかり手を挙げ忘れるところであった。
「では、続いて王太子候補の選定を行いたいと思います。異例のこととなりますが、6年前に継承権を放棄した方々の継承権回復を求めます」
6年前、3人の子と妻を立て続けに失った国王が、王位継承順位が高い貴族ら14名に放棄を促した。王太子の地位を脅かすことを恐れた為と言われている。この6年間で二名が亡くなっているが、それでも数名の回復が叶えば随分王太子候補の選定は楽になるだろう。
フェデリカは面倒事が嫌いなので、放棄したままでいいのだが。
「――私は除外していただけないだろうか」
今まさに考えていた発言を先に越され、フェデリカは目を瞬いた。会場が騒めく。
なぜならその発言をしたのは、かつて継承順位第二位だった男――誰よりも王統に近い、王弟であったからだ。
「理由をお伺いしても宜しいでしょうか」
「私は王位継承権を放棄して以来、殆ど政に関わっていない。今更王となるに適しているとは思われない」
「しかし......」
「それと、私は妻を娶る気がない。子を残さなければ、再び継承で揉めることになるだろう――ゆえに私は、継承権回復を辞退したい」
貴族らの頭に過ったのは、いくら縁談を進めても首を縦に振らない王弟の姿だ。彼は毎回、心を捧げた人がいるから、と言って断っていた。一途な姿が更に令嬢からの人気を高めていたが、それでも彼は決して女性を傍に寄せなかった。舞踏会のダンスが唯一の例外と言っても過言ではない
「心変わりされることもあるのではありますまいか。今は妻帯なさる気がなくとも、いずれは......」
「どうであろうか」
微笑むばかりの王弟を前に、貴族たちは頭の中で素早く計算を始めた。
令嬢に靡かない彼は、同時にどの貴族とも親しくせず、絶対的な中立を貫いている。彼が王になることは、誰にとっても利益にも不利益にもならないのだ。
結果的に、彼の提案は保留とされた。確かに政から離れてはいたが、血統は誰よりも近く、また外交の手腕が認められたためだ。
「――アンヌンツィアータ辺境伯家三名も、回復を望みません」
ここでフェデリカは声を上げた。
アンヌンツィアータ辺境伯家は砂漠の民に対する抑止力であり、彼らが王位継承をすることは絶対にありえない。子爵家の血を引くフェデリカは論外だ。
「令嬢の回復はなしとのこと、理解いたしました。けれど辺境伯と小辺境伯のお二人については、ご本人の口から伺う必要があるでしょう」
「お二人は現在、砂漠の民と交戦中でございます。鳩を飛ばし、直筆の書類をいただくことで代替としていただきたい」
「許しましょう。ただし筆跡鑑定を致します。確実にご本人のものと確認が取れましたら、回復をなさらないとのことで承りましょう」
辺境伯という特殊な家柄とフェデリカの血筋は、王弟の時より遥かに容易に継承権の完全放棄を認めさせた。ついでに実父が、ジュリアマリアの継承権も放棄させていた。これは当然とばかりに受け入れられていた。
「――それでは、8名の方々の王位継承権の回復を。国王陛下に奏上し、王嗣の選定を行います」
貴族議会が終わり、フェデリカは王宮図書館に向かった。デビュタントの時の曖昧な記憶を頼りに歩を進める。
――それから十数分後、フェデリカは困っていた。
美しい装飾はどれも似たように見える。人が少なく、足音もしない。さてどうしたものか。
「――おや、アンヌンツィアータ令嬢? こんなところでどうされたのですか」
「王弟殿下」
背後からフェデリカに声を掛けたのは、彫刻が走って逃げ出しそうな美貌の持ち主、王弟だ。フェデリカはにっこり微笑んだ。
「誠に申し訳ないのですが、図書館はどちらの方角か教えていただけませんか?」
1
あなたにおすすめの小説
毒姫ライラは今日も生きている
木崎優
恋愛
エイシュケル王国第二王女ライラ。
だけど私をそう呼ぶ人はいない。毒姫ライラ、それは私を示す名だ。
ひっそりと森で暮らす私はこの国において毒にも等しく、王女として扱われることはなかった。
そんな私に、十六歳にして初めて、王女としての役割が与えられた。
それは、王様が愛するお姫様の代わりに、暴君と呼ばれる皇帝に嫁ぐこと。
「これは王命だ。王女としての責務を果たせ」
暴君のもとに愛しいお姫様を嫁がせたくない王様。
「どうしてもいやだったら、代わってあげるわ」
暴君のもとに嫁ぎたいお姫様。
「お前を妃に迎える気はない」
そして私を認めない暴君。
三者三様の彼らのもとで私がするべきことは一つだけ。
「頑張って死んでまいります!」
――そのはずが、何故だか死ぬ気配がありません。
義務ですもの。
あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。
ベルガー子爵領結婚騒動記
文月黒
恋愛
その日、王都より遠く離れたベルガー子爵領は、俄かに浮き足立っていた。
何せ、ついに領民一同が待ち望んでいたベルガー子爵の結婚相手がやって来るのだ。
ちょっとだけ(当領比)特殊な領地の強面領主に嫁いで来たのは、王都の男爵家の末娘・マリア。
だが、花嫁は領主であるベルンハルトの顔を見るなり泣き出してしまった。
最悪な顔合わせをしてしまったベルンハルトとマリア。
慌てるベルンハルトの腹心の部下ヴォルフとマリアの侍女ローザ。
果たしてベルガー子爵領で彼らは幸せを掴めるのか。
ハピエン確定のサクッと読めるギャグ寄り恋愛ものです。
【完結】婚約を解消されたら、自由と笑い声と隣国王子がついてきました
ふじの
恋愛
「君を傷つけたくはない。だから、これは“円満な婚約解消”とする。」
公爵家に居場所のないリシェルはどうにか婚約者の王太子レオナルトとの関係を築こうと心を砕いてきた。しかし義母や義妹によって、その婚約者の立場さえを奪われたリシェル。居場所をなくしたはずの彼女に手を差し伸べたのは、隣国の第二王子アレクだった。
留学先のアレクの国で自分らしさを取り戻したリシェルは、アレクへの想いを自覚し、二人の距離が縮まってきた。しかしその矢先、ユリウスやレティシアというライバルの登場や政治的思惑に振り回されてすれ違ってしまう。結ばれる未来のために、リシェルとアレクは奔走する。
※ヒロインが危機的状況に陥りますが、ハッピーエンドです。
【完結】
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
裏で国を支えていた令嬢「不純物だ」と追放されるも、強面辺境伯と共に辺境を改革する ~戻ってきてと嘆願されましたが、それに対する答えは……~、
水上
恋愛
「君のような地味な不純物は不要だ」と婚約破棄され追放されたルチア。失意の彼女を拾ったのは、皆から恐れられる辺境伯レオンハルトだった。だが彼には意外な一面があって!?
ルチアはレオンハルトと共に、自らの知識や技術で領地を改革し始める。
一方、ルチアを追放した王国は、彼女の不在によって崩壊の危機に陥る。
今更戻ってきてほしいと嘆願されましたが、それに対する答えは……。
『めでたしめでたし』の、その後で
ゆきな
恋愛
シャロン・ブーケ伯爵令嬢は社交界デビューの際、ブレント王子に見初められた。
手にキスをされ、一晩中彼とダンスを楽しんだシャロンは、すっかり有頂天だった。
まるで、おとぎ話のお姫様になったような気分だったのである。
しかし、踊り疲れた彼女がブレント王子に導かれるままにやって来たのは、彼の寝室だった。
ブレント王子はお気に入りの娘を見つけるとベッドに誘い込み、飽きたら多額の持参金をもたせて、適当な男の元へと嫁がせることを繰り返していたのだ。
そんなこととは知らなかったシャロンは恐怖のあまり固まってしまったものの、なんとか彼の手を振り切って逃げ帰ってくる。
しかし彼女を迎えた継母と異母妹の態度は冷たかった。
継母はブレント王子の悪癖を知りつつ、持参金目当てにシャロンを王子の元へと送り出していたのである。
それなのに何故逃げ帰ってきたのかと、継母はシャロンを責めた上、役立たずと罵って、その日から彼女を使用人同然にこき使うようになった。
シャロンはそんな苦境の中でも挫けることなく、耐えていた。
そんなある日、ようやくシャロンを愛してくれる青年、スタンリー・クーパー伯爵と出会う。
彼女はスタンリーを心の支えに、辛い毎日を懸命に生きたが、異母妹はシャロンの幸せを許さなかった。
彼女は、どうにかして2人の仲を引き裂こうと企んでいた。
2人の間の障害はそればかりではなかった。
なんとブレント王子は、いまだにシャロンを諦めていなかったのだ。
彼女の身も心も手に入れたい欲求にかられたブレント王子は、彼女を力づくで自分のものにしようと企んでいたのである。
『やりたくないからやらないだけ 〜自分のために働かない選択をした元貴族令嬢の静かな失踪〜』
鷹 綾
恋愛
「やりたくないから、やらないだけですわ」
婚約破棄をきっかけに、
貴族としての役割も、評価も、期待も、すべてが“面倒”になった令嬢ファーファ・ノクティス。
彼女が選んだのは、復讐でも、成り上がりでもなく――
働かないという選択。
爵位と領地、屋敷を手放し、
領民の未来だけは守る形で名領主と契約を結んだのち、
彼女はひっそりと姿を消す。
山の奥で始まるのは、
誰にも評価されず、誰にも感謝せず、
それでも不自由のない、静かな日々。
陰謀も、追手も、劇的な再会もない。
あるのは、契約に基づいて淡々と届く物資と、
「何者にもならなくていい」という確かな安心だけ。
働かない。
争わない。
名を残さない。
それでも――
自分の人生を、自分のために選び切る。
これは、
頑張らないことを肯定する物語。
静かに失踪した元貴族令嬢が、
誰にも縛られず生きるまでを描いた、
“何もしない”ことを貫いた、静かな完結譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる