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改訂版
③
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それから、結婚式の招待状をもらったのは、すぐのことだった。
*
高校を卒業し、大学の入学式をあと数日後に控えた、そんな温かな春の日。
森の中にある、小さな教会風の撮影スタジオで、
二人の結婚式は行われた。
なんでも、お兄さんの旦那さんになる人の、友人が運営をしていて快く貸してくれたらしい。
「少し遠いけど、もし良かったら、一途くんも来てほしい。」
お兄さんは、そう言って招待状を僕に直接渡してくれた。
だから僕も、その場で出席に丸を付けて、お兄さんに渡した。
そして、迎えた今日。
優しい風が、二人を祝福するかのように、
小さな花々を揺らして、通り抜けた。
穏やかな日差しに反射して、
二人の服がキラキラと輝いている。
この瞬間は、僕がこれから先に見る、
どんなに美しい景色よりも、
きっと心に深く残るだろう。
誓いのキスを交わして、
嬉しそうに二人で顔を見合わせて笑っている。
僕のずっと見たかった、お兄さんの笑顔がそこにあった。
――二人とも、純白のタキシード姿がよく似合っている。
*
挙式が終わると、ドリンクや食べ物が運ばれてきた。
今は立食パーティーのように、色々な人たちが、お兄さんたちを囲んで話している。
知り合いがお兄さんたちの他にいない僕は、
邪魔にならないように日陰のほうへ行って、空を見上げた。
いい天気になって良かったな。
「良い天気だよね。初めて一途くんに会った日も確か、これくらい良い天気だったよね。」
「お兄さん……。」
いつの間にかお兄さんは、僕の前に立っていて、
「はい」とシャンパングラスに入った、ジュースを渡してくれた。
心配になって僕は「皆さんは良いんですか。」と聞くと「良いんだよ。」と笑っていた。
「あんな小さなガキが、こんなに大きくなるなんてな。」
お兄さんは僕を優しい目で見つめて、頭をそっと撫でる。
「今日はわざわざ来てくれて、ありがとう。
一途くん、スーツ凄く似合ってる。」
大学の入学式で着る予定のスーツを、着てきて良かった。
嬉しそうに笑ってくれるから、僕も嬉しくなる。
「お兄さんも、タキシード、すごく、すっごく、似合っています。」
僕はスーツの内ポケットから、
いつも渡しているシルバーのラメが入った手紙と、
初めて会った時にもらった、あのレアカードを取り出す。
お兄さんは驚いた顔をしていた。
「お兄さんへ渡している手紙、
このカードをイメージしていたんですけど、気付いてましたか。」
まだ驚いているお兄さんの手をとって、手紙を渡す。
「僕は一途だから、
これから先のカッコいいは、
彼に全部あげたと思っていましたけど、違いました。
今日のお兄さん、キラキラと、このカードみたいに輝いていて、
誰よりも、素敵で、
世界で一番、カッコいいです。
お兄さん、大好きです。
どうか、あの人と一緒に、
ありのままのお兄さんで、幸せになってくださいね。」
お兄さんは今にも、こぼれ落ちそうな涙を耐えて、
くしゃくしゃに顔を歪めて、僕を強く抱きしめた。
「俺っ……!、一途くんの前では格好つけてて、
全然、良い大人じゃなかったのに……、
ガキだったのに、大人なフリをしてて、
でも……、一途くんが俺の事、
こんな、ダメな俺の事っ、素敵だって、
……真っ直ぐ伝えてくれたから、いい大人になろうと思えたんだ。
ありがとう……。一途くんがいなかったら、こんな幸せ手に入らなかった。
いっぱい、いっぱい、俺、一途くんに救われてきた。
ありがとう…っ、」
また優しい風が吹いて、小さな花々や木々が穏やかに揺れる。
抱きしめられた時に、
お兄さんからミントの香りも、苦い香りもしない事に気が付いた。
今日は泣かないって決めていたのにな。
僕もそっと、お兄さんを抱きしめ返して、
それから二人で、しばらくのあいだ泣き続けた。
そんな僕らに気が付いた、旦那さんが迎えに来て、
お兄さんは手を引かれ、日陰から陽だまりが当たる方へ歩いて行った。
二人は少し歩くと、僕のほうを振り返って
「一途くんもおいで」
と声を掛ける。
僕も笑って、陽が当たるほうへ大きく一歩を踏み出した。
二人の笑顔を見ていると、温かな気持ちでいっぱいになる。
僕にもきっと、これから先、
お兄さんと出会ったから気づける、幸せがあるだろう。
僕は、お兄さんを好きになって良かった。
これで僕の失恋
――ううん、初めて恋をした物語は、ここで終わりだ。
*
高校を卒業し、大学の入学式をあと数日後に控えた、そんな温かな春の日。
森の中にある、小さな教会風の撮影スタジオで、
二人の結婚式は行われた。
なんでも、お兄さんの旦那さんになる人の、友人が運営をしていて快く貸してくれたらしい。
「少し遠いけど、もし良かったら、一途くんも来てほしい。」
お兄さんは、そう言って招待状を僕に直接渡してくれた。
だから僕も、その場で出席に丸を付けて、お兄さんに渡した。
そして、迎えた今日。
優しい風が、二人を祝福するかのように、
小さな花々を揺らして、通り抜けた。
穏やかな日差しに反射して、
二人の服がキラキラと輝いている。
この瞬間は、僕がこれから先に見る、
どんなに美しい景色よりも、
きっと心に深く残るだろう。
誓いのキスを交わして、
嬉しそうに二人で顔を見合わせて笑っている。
僕のずっと見たかった、お兄さんの笑顔がそこにあった。
――二人とも、純白のタキシード姿がよく似合っている。
*
挙式が終わると、ドリンクや食べ物が運ばれてきた。
今は立食パーティーのように、色々な人たちが、お兄さんたちを囲んで話している。
知り合いがお兄さんたちの他にいない僕は、
邪魔にならないように日陰のほうへ行って、空を見上げた。
いい天気になって良かったな。
「良い天気だよね。初めて一途くんに会った日も確か、これくらい良い天気だったよね。」
「お兄さん……。」
いつの間にかお兄さんは、僕の前に立っていて、
「はい」とシャンパングラスに入った、ジュースを渡してくれた。
心配になって僕は「皆さんは良いんですか。」と聞くと「良いんだよ。」と笑っていた。
「あんな小さなガキが、こんなに大きくなるなんてな。」
お兄さんは僕を優しい目で見つめて、頭をそっと撫でる。
「今日はわざわざ来てくれて、ありがとう。
一途くん、スーツ凄く似合ってる。」
大学の入学式で着る予定のスーツを、着てきて良かった。
嬉しそうに笑ってくれるから、僕も嬉しくなる。
「お兄さんも、タキシード、すごく、すっごく、似合っています。」
僕はスーツの内ポケットから、
いつも渡しているシルバーのラメが入った手紙と、
初めて会った時にもらった、あのレアカードを取り出す。
お兄さんは驚いた顔をしていた。
「お兄さんへ渡している手紙、
このカードをイメージしていたんですけど、気付いてましたか。」
まだ驚いているお兄さんの手をとって、手紙を渡す。
「僕は一途だから、
これから先のカッコいいは、
彼に全部あげたと思っていましたけど、違いました。
今日のお兄さん、キラキラと、このカードみたいに輝いていて、
誰よりも、素敵で、
世界で一番、カッコいいです。
お兄さん、大好きです。
どうか、あの人と一緒に、
ありのままのお兄さんで、幸せになってくださいね。」
お兄さんは今にも、こぼれ落ちそうな涙を耐えて、
くしゃくしゃに顔を歪めて、僕を強く抱きしめた。
「俺っ……!、一途くんの前では格好つけてて、
全然、良い大人じゃなかったのに……、
ガキだったのに、大人なフリをしてて、
でも……、一途くんが俺の事、
こんな、ダメな俺の事っ、素敵だって、
……真っ直ぐ伝えてくれたから、いい大人になろうと思えたんだ。
ありがとう……。一途くんがいなかったら、こんな幸せ手に入らなかった。
いっぱい、いっぱい、俺、一途くんに救われてきた。
ありがとう…っ、」
また優しい風が吹いて、小さな花々や木々が穏やかに揺れる。
抱きしめられた時に、
お兄さんからミントの香りも、苦い香りもしない事に気が付いた。
今日は泣かないって決めていたのにな。
僕もそっと、お兄さんを抱きしめ返して、
それから二人で、しばらくのあいだ泣き続けた。
そんな僕らに気が付いた、旦那さんが迎えに来て、
お兄さんは手を引かれ、日陰から陽だまりが当たる方へ歩いて行った。
二人は少し歩くと、僕のほうを振り返って
「一途くんもおいで」
と声を掛ける。
僕も笑って、陽が当たるほうへ大きく一歩を踏み出した。
二人の笑顔を見ていると、温かな気持ちでいっぱいになる。
僕にもきっと、これから先、
お兄さんと出会ったから気づける、幸せがあるだろう。
僕は、お兄さんを好きになって良かった。
これで僕の失恋
――ううん、初めて恋をした物語は、ここで終わりだ。
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