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初稿
お兄さん18歳 一途くん12歳
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青色の絵の具をそのまま塗ったようなキレイな晴天の日。今日、僕は大好きなカードゲームをきっかけに、SNSで知り合った人と会う事になっている。待ち合わせ時間ぴったり。もうそろそろ来るはずなんだけれど……。
「えっ、もしかして、君が一途くん?」
振り返ると、黒いワンピースに白の日傘を差し、ブロンドの髪を真っ直ぐと肩まで伸ばしたスレンダーなお姉さんが立っていた。母親やクラスメイトから感じた事がない大人の雰囲気に心臓の音が早くなっていく。
「は、はひ。そうです。」
「まじかぁ……。」
少し考えるようなそぶりをして、もう一度チラリと僕の方を見ると、ポンと僕の頭に手を置いた。
「まぁでも、カードゲーム好きなんだもんね。」
「はひっ。好きです。」
「じゃあ、行こうか。」
そう言って約束していたカードショップを目指して歩いて行く――と、いう雰囲気だけれど……、これって、その、もしかして、あれじゃない。まっちん、クラスメイトの自称エロの伝達者、が教えてくれた、その、大人の女性が、僕みたいな年頃の子が色々とお、大人な事を教えてくれるっていう展開じゃない!?
まっちん、ごめん。僕、皆より先に大人になる!ふんっ、ふんっと鼻の穴と期待を大きく膨らませて大きく一歩を踏み出した。
*
着いたのは当初の予定通りカードショップだった。最初はお姉さんに緊張しちゃって上手く話せなかったけど、だんだんとSNSの時と同じように話せるようになっていった。
「じゃーん、見て下さい。僕の一番好きなカードです。みんな、見た目がカッコいいから好きなんだろって言うけど、それだけじゃないんです。他のカードと一緒に強くなっていくところがカッコ良くて好きなんです。僕は名前のとおり一途だから、僕のカッコいいは彼に全部あげました。皆がカッコいいって言っている先生にも、俳優さんにも、この先、どんなイケメンに会っても僕は誰にもカッコいいって言いません。」
「めっちゃ好きじゃん。でも、分かる。俺もこれ一番好き。かっこいいよね。」
お姉さんは自分の事を俺と呼ぶ変わった所があるけど、SNSの時と変わらず良い人だった。今、僕らはこのカードショップ内にある交流スペースで「ホワイト・ウィザード」という、白いスーツにおしゃれなハットを被ったカードを見せて話している。
「って、なに普通に話しているんですかっ!」
声を荒げてその場で勢いよく立ち上がった。
「なにってそれが目的だろ。」
「だって、これってお決まりの、年上のお姉さんが、子供に大人な事を教えるっていう、え、え、え、……っちなやつじゃないですか。」
ちの部分だけは、きちんと言うのが恥ずかしくて、つい小さな声で言う。
「へぇ、”お姉さん”ね……、てか、ヤリモクかよ、最低だな。」
お姉さんは、からかうような顔でそう言った。
「ヤリモクってなんですか。」
「やっべ、あー、悪い言葉だから、子供は知らなくて良いの。」
「な、なに今さら、SNSで知り合った十二歳に会っておいて、良い大人ぶっているんですか。」
「お互いに年齢は言ってなかったじゃん。子供っぽいなって思ってたけど、マジで子供だと思わなかったわ。」
「ふふん、僕、よく大人っぽいって言われてますから。」
胸を張って威張って言う。僕の自慢できるところの一つだった。
「へぇー。……んー、じゃ今から俺の家に来る?」
えっ、えっ、えぇー!
手を引かれてカードショップから出て行き、電車に乗って三駅、そこから少し歩いた所にあったボロいアパートに連れてこられた。アパートの見た目とは違って、部屋の中は僕の部屋よりも綺麗だった。お姉さんは「適当に座って」と言いながら、ベッドを指差していたから、大人しくベッドの上に座った。
「じゃ俺、着替えるから。見てもいいよ。」
そう言って、僕に背を向けて、お姉さんはワンピースのファスナーをゆっくりと下ろしていく。お姉さんは見てもいいよと言っても、見ちゃダメだと思って両手で目を隠した。でも、ちょっとだけ……指と指の間に隙間を作って、お姉さんが着替える様子を覗いて見た。僕はドキドキして顔が真っ赤になっていく。
ジーとファスナーを下ろすにつれて露になる程よく筋肉のついた、女性にしてはゴツゴツとした体。バサッと音を立ててワンピースが床に落ちると、パンツ一枚の、明らかに男の体をした、おね、いや、お兄さんが僕を見下ろすように見た。
「えぇー!!」
驚きのあまり大きな声を上げる僕を無視して、お兄さんはそのまま真剣な顔をしてベッドの方へ近づいてきた。僕を壁際まで追い込むように、静かに近づいてくる。ついに、僕の鼻先と、お兄さんの鼻先がぶつかりそうな距離になった時に、僕のドキドキする気持ちが限界に来て思わず目をギュッとつぶると、ほっぺたを軽くつねられた。
「いいか、SNSっていうのは怖いところなんだよ。もう二度と、こういう事すんなよ。―――エロガキ。」
そうニヤリと笑って、お兄さんは僕の顔の前に、キラキラと輝いている僕の一番好きな「ホワイト・ウィザード」のレアカードを出した。大好きな、世界で一番かっこいいと思っているはずのカードが目の前にあるのに、僕はお兄さんの笑顔に見惚れていた。
「おい、どうした。怖かったか、ごめんな。このカードあげるから、もう遅いし帰りな。」
何度も頭を上下にふって頷きながらカードを受け取ると、高い熱が出た時のように、ぼんやりとしながら、ふらふらと玄関まで歩いて行った。後ろ手にお兄さんが「おい待ってて、送って行くから、ちょっと着替えるから、待っ」と叫んでいたが、僕はもうそれどころじゃなかった。
*
どうにかして乗った揺れる電車の入り口付近に立ち、痛いくらいに鳴っている胸をどうにかしたくて、服をギュッと掴んだ。深呼吸をしてみても、全く落ち着かない。僕はあの貰ったカードを胸ポケットにしまうと、スマホを取り出して勢いよくタップしていく。
「今日はありがとうございました。明日も遊べますか。」
「バイト~。」「てか、学べって。」
またお兄さんに会いたくて、話したくて、どうにかなっちゃいそうなのに。
電車の窓から差し込む夕陽の光が僕の顔を照らした。まだ熱い頬っぺたを冷ますように手であおいでみる。夕陽が赤くて助かったなんて、思う事があるなんて知らなかった。
「えっ、もしかして、君が一途くん?」
振り返ると、黒いワンピースに白の日傘を差し、ブロンドの髪を真っ直ぐと肩まで伸ばしたスレンダーなお姉さんが立っていた。母親やクラスメイトから感じた事がない大人の雰囲気に心臓の音が早くなっていく。
「は、はひ。そうです。」
「まじかぁ……。」
少し考えるようなそぶりをして、もう一度チラリと僕の方を見ると、ポンと僕の頭に手を置いた。
「まぁでも、カードゲーム好きなんだもんね。」
「はひっ。好きです。」
「じゃあ、行こうか。」
そう言って約束していたカードショップを目指して歩いて行く――と、いう雰囲気だけれど……、これって、その、もしかして、あれじゃない。まっちん、クラスメイトの自称エロの伝達者、が教えてくれた、その、大人の女性が、僕みたいな年頃の子が色々とお、大人な事を教えてくれるっていう展開じゃない!?
まっちん、ごめん。僕、皆より先に大人になる!ふんっ、ふんっと鼻の穴と期待を大きく膨らませて大きく一歩を踏み出した。
*
着いたのは当初の予定通りカードショップだった。最初はお姉さんに緊張しちゃって上手く話せなかったけど、だんだんとSNSの時と同じように話せるようになっていった。
「じゃーん、見て下さい。僕の一番好きなカードです。みんな、見た目がカッコいいから好きなんだろって言うけど、それだけじゃないんです。他のカードと一緒に強くなっていくところがカッコ良くて好きなんです。僕は名前のとおり一途だから、僕のカッコいいは彼に全部あげました。皆がカッコいいって言っている先生にも、俳優さんにも、この先、どんなイケメンに会っても僕は誰にもカッコいいって言いません。」
「めっちゃ好きじゃん。でも、分かる。俺もこれ一番好き。かっこいいよね。」
お姉さんは自分の事を俺と呼ぶ変わった所があるけど、SNSの時と変わらず良い人だった。今、僕らはこのカードショップ内にある交流スペースで「ホワイト・ウィザード」という、白いスーツにおしゃれなハットを被ったカードを見せて話している。
「って、なに普通に話しているんですかっ!」
声を荒げてその場で勢いよく立ち上がった。
「なにってそれが目的だろ。」
「だって、これってお決まりの、年上のお姉さんが、子供に大人な事を教えるっていう、え、え、え、……っちなやつじゃないですか。」
ちの部分だけは、きちんと言うのが恥ずかしくて、つい小さな声で言う。
「へぇ、”お姉さん”ね……、てか、ヤリモクかよ、最低だな。」
お姉さんは、からかうような顔でそう言った。
「ヤリモクってなんですか。」
「やっべ、あー、悪い言葉だから、子供は知らなくて良いの。」
「な、なに今さら、SNSで知り合った十二歳に会っておいて、良い大人ぶっているんですか。」
「お互いに年齢は言ってなかったじゃん。子供っぽいなって思ってたけど、マジで子供だと思わなかったわ。」
「ふふん、僕、よく大人っぽいって言われてますから。」
胸を張って威張って言う。僕の自慢できるところの一つだった。
「へぇー。……んー、じゃ今から俺の家に来る?」
えっ、えっ、えぇー!
手を引かれてカードショップから出て行き、電車に乗って三駅、そこから少し歩いた所にあったボロいアパートに連れてこられた。アパートの見た目とは違って、部屋の中は僕の部屋よりも綺麗だった。お姉さんは「適当に座って」と言いながら、ベッドを指差していたから、大人しくベッドの上に座った。
「じゃ俺、着替えるから。見てもいいよ。」
そう言って、僕に背を向けて、お姉さんはワンピースのファスナーをゆっくりと下ろしていく。お姉さんは見てもいいよと言っても、見ちゃダメだと思って両手で目を隠した。でも、ちょっとだけ……指と指の間に隙間を作って、お姉さんが着替える様子を覗いて見た。僕はドキドキして顔が真っ赤になっていく。
ジーとファスナーを下ろすにつれて露になる程よく筋肉のついた、女性にしてはゴツゴツとした体。バサッと音を立ててワンピースが床に落ちると、パンツ一枚の、明らかに男の体をした、おね、いや、お兄さんが僕を見下ろすように見た。
「えぇー!!」
驚きのあまり大きな声を上げる僕を無視して、お兄さんはそのまま真剣な顔をしてベッドの方へ近づいてきた。僕を壁際まで追い込むように、静かに近づいてくる。ついに、僕の鼻先と、お兄さんの鼻先がぶつかりそうな距離になった時に、僕のドキドキする気持ちが限界に来て思わず目をギュッとつぶると、ほっぺたを軽くつねられた。
「いいか、SNSっていうのは怖いところなんだよ。もう二度と、こういう事すんなよ。―――エロガキ。」
そうニヤリと笑って、お兄さんは僕の顔の前に、キラキラと輝いている僕の一番好きな「ホワイト・ウィザード」のレアカードを出した。大好きな、世界で一番かっこいいと思っているはずのカードが目の前にあるのに、僕はお兄さんの笑顔に見惚れていた。
「おい、どうした。怖かったか、ごめんな。このカードあげるから、もう遅いし帰りな。」
何度も頭を上下にふって頷きながらカードを受け取ると、高い熱が出た時のように、ぼんやりとしながら、ふらふらと玄関まで歩いて行った。後ろ手にお兄さんが「おい待ってて、送って行くから、ちょっと着替えるから、待っ」と叫んでいたが、僕はもうそれどころじゃなかった。
*
どうにかして乗った揺れる電車の入り口付近に立ち、痛いくらいに鳴っている胸をどうにかしたくて、服をギュッと掴んだ。深呼吸をしてみても、全く落ち着かない。僕はあの貰ったカードを胸ポケットにしまうと、スマホを取り出して勢いよくタップしていく。
「今日はありがとうございました。明日も遊べますか。」
「バイト~。」「てか、学べって。」
またお兄さんに会いたくて、話したくて、どうにかなっちゃいそうなのに。
電車の窓から差し込む夕陽の光が僕の顔を照らした。まだ熱い頬っぺたを冷ますように手であおいでみる。夕陽が赤くて助かったなんて、思う事があるなんて知らなかった。
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