4 / 10
レプリカのキスじゃ、呪いは解けない。
04
しおりを挟む
俺がやって来たのは、フィギュア研究会がある予備サークル棟だった。
簡単に言ってしまうと、サークルとして認められていない「研究会」と呼ばれるサークルが、勝手に使用している廃校舎を「予備サークル棟」という。
ちなみに教授は「学校側は黙認しているらしいぞ。」と言っていた。
歩くたびにギィギィと音が鳴る木造の廊下を進み、ボロボロの紙に汚い文字で「フィギュア研究会」と貼られている部室をノックする。
「創人ー?いる?」
「……美森さんがいないなら入っても良いですよ。」
一応、左右を確認してみる。まぁ、いるわけないよな。
ドアノブを回して扉を開けると、そこから部室に真っ直ぐ光が差し込んだ。
光が完成されたフィギュアを照らしていく。
あまりの美しさに見惚れていると、その横に立っている創人が「すごいでしょう。」とドヤ顔で言った。
「すげぇ!」
「そうでしょう。そうでしょう。ボクの自信作です。」
「マジですげぇよ!それにしても人間にしか見えないな。これなら……。」
――今、頭に悪い考えが浮かんだ。
しかし自分でその考えを打ち消す暇もなく、創人のマシンガントークが始まった。
「そうなんです!そうなんです、そうなんですよ!リアリティを出す事にこだわって作っているんです。と・く・に!目にはこだわったんですけど、分かりますか。まぁ、分からないでしょうけど。ここはリアリティというよりかは人間よりも水晶玉のように美しい瞳に仕上げたいと思いまして、なんていうか、そう、リアルよりもリアルってことですね。そうなると素材も費用には糸目を付けずにこだわりたいと思いましてね、幸い僕の作品は毎回何千万の価格で売れるものですしボクがつくるということだけでも価値のある物ですから作る前からある程度の予算なら確保できましたし特にこの緑色の瞳は一番こだわりたいと思った部分で理想の色を探し出すのが難しかったのですが以前ボクの作品を購入してくれたコレクターが出資してくれた上に理想の色をした鉱石を取り扱っている店まで調べてくれたんですよ。コレクターの国では有名な昔話で何百年もかけて育った鉱石に魂が宿ってその鉱石で作った目を持ったドールがドール職人に恋をしたがあっけなく子供に譲られてしまい離れたくなくてどんな手を使っても彼の元に戻って来るとか来ないとかでそんな一途に自分に恋してくれるドールが欲しいとか言い始めて現実とフィクションを区別できないオタクって気持ち悪いなとか思ったんですけど例えコレクター側が変な人でもまぁボクはフィギュアを作ることに意味を感じているので最高の素材を使えるならなんでもいいんですけどね。てか、何百年もかけて育った鉱石が命を宿しているんだとか言われてましてねハハッ。でも素材自体はまさに僕の作るリアリティのある作品に相応しいと思いましたよ。いや~満足のできるものを作る事が出来て良かったです。」
「すげぇ、確かによく分かんねぇけど、すごいのだけは分かる!今まで積み重ねで出来た最高傑作ってことだな!」
「ふふん。ボクは常に最高傑作を作る男です。さて、次は何を作るか……。」
「……き、金髪で、垂れ目で、唇がぷっくりしている、可愛いらしい子とか、どう、かな。」
――頭の中で止めろと自分に言い聞かせているのに、ついポロッと言ってしまった。
「全身じゃなくても、例えば、そう、あ、頭!頭だけもいいんだ。その、俺、欲しくて。」
俺はさっき、あのフィギュアを見た瞬間に悪い考えが浮かんだ。
美森と真逆の容姿をしたフィギュアを、美森の代わりにしよう。
そんな悪い考えが。
あと一年。大学にいる間だけで良いんだ。
俺は美森が好きだけど、アイツには恋人がいる。
ただの先輩として隣にいたくても、この気持ちを消す事は出来ない。どうしたって、俺は美森が好きだ。
昔、失恋した友人に「他の恋をすれば、簡単に忘れられるよ。」と言っていた人がいた。
俺がアイツを忘れるには、他の恋を探すべきなんだろう。
でも身勝手な気持ちに誰かを巻き込む訳にはいかないから、フィギュアなら……。
美森の代わりにキスする相手がいて、それが全く違う相手なら、この気持ちも忘れられるんじゃないか。
なんて馬鹿な考えなんだろう。創人にも悪いし。
やめよう。
「やっぱな「いいですね!男の娘!」
「え、」
「インスピレーションが湧いてきました!紙、紙は……、あぁもう、邪魔なので帰ってください!」
そう言われ、勢いよくフィギュア研究会の部屋から追い出されてしまった。
なんだか、取り返しのつかない事をしてしまった気がする。
――あぁ、どうしよう……!
*
「先輩。」
「ぬわぁっ、」
予備サークル棟を出てすぐに、どこからか出てきた美森に声を掛けられた。
「び、びっくりした。なんだ美森か。」
「予備サークル棟にいたんですね。
先輩を誑かすのはどれかな、レトロゲーム研究会?それとも黒魔術研究会かな、先輩、誰とでも簡単に仲良くなるから、すぐに絞れませんね。
あぁでも、やっぱりさっき一緒にいたフィギュア「あっ、あー!」
誤魔化すように大きな声を上げて遮る。
バレたくない。
「俺お腹すいた。このあと暇なら、メシ行かね?」
あからさま過ぎたかと美森の顔色を伺うように見たけれど、普段と変わらない表情で「いいですね。」と答えた。
「今日は、どこの居酒屋にしますか。」
「あぁ、いや、居酒屋はやめとく。久々に駅前のファミレス行きたい。」
「あそこ、お酒ないですけど。」
だからだよ!
説得力がないかもしれないけど、恋人がいる奴にキスをねだるような、俺は悪い人間ではない。
簡単に言ってしまうと、サークルとして認められていない「研究会」と呼ばれるサークルが、勝手に使用している廃校舎を「予備サークル棟」という。
ちなみに教授は「学校側は黙認しているらしいぞ。」と言っていた。
歩くたびにギィギィと音が鳴る木造の廊下を進み、ボロボロの紙に汚い文字で「フィギュア研究会」と貼られている部室をノックする。
「創人ー?いる?」
「……美森さんがいないなら入っても良いですよ。」
一応、左右を確認してみる。まぁ、いるわけないよな。
ドアノブを回して扉を開けると、そこから部室に真っ直ぐ光が差し込んだ。
光が完成されたフィギュアを照らしていく。
あまりの美しさに見惚れていると、その横に立っている創人が「すごいでしょう。」とドヤ顔で言った。
「すげぇ!」
「そうでしょう。そうでしょう。ボクの自信作です。」
「マジですげぇよ!それにしても人間にしか見えないな。これなら……。」
――今、頭に悪い考えが浮かんだ。
しかし自分でその考えを打ち消す暇もなく、創人のマシンガントークが始まった。
「そうなんです!そうなんです、そうなんですよ!リアリティを出す事にこだわって作っているんです。と・く・に!目にはこだわったんですけど、分かりますか。まぁ、分からないでしょうけど。ここはリアリティというよりかは人間よりも水晶玉のように美しい瞳に仕上げたいと思いまして、なんていうか、そう、リアルよりもリアルってことですね。そうなると素材も費用には糸目を付けずにこだわりたいと思いましてね、幸い僕の作品は毎回何千万の価格で売れるものですしボクがつくるということだけでも価値のある物ですから作る前からある程度の予算なら確保できましたし特にこの緑色の瞳は一番こだわりたいと思った部分で理想の色を探し出すのが難しかったのですが以前ボクの作品を購入してくれたコレクターが出資してくれた上に理想の色をした鉱石を取り扱っている店まで調べてくれたんですよ。コレクターの国では有名な昔話で何百年もかけて育った鉱石に魂が宿ってその鉱石で作った目を持ったドールがドール職人に恋をしたがあっけなく子供に譲られてしまい離れたくなくてどんな手を使っても彼の元に戻って来るとか来ないとかでそんな一途に自分に恋してくれるドールが欲しいとか言い始めて現実とフィクションを区別できないオタクって気持ち悪いなとか思ったんですけど例えコレクター側が変な人でもまぁボクはフィギュアを作ることに意味を感じているので最高の素材を使えるならなんでもいいんですけどね。てか、何百年もかけて育った鉱石が命を宿しているんだとか言われてましてねハハッ。でも素材自体はまさに僕の作るリアリティのある作品に相応しいと思いましたよ。いや~満足のできるものを作る事が出来て良かったです。」
「すげぇ、確かによく分かんねぇけど、すごいのだけは分かる!今まで積み重ねで出来た最高傑作ってことだな!」
「ふふん。ボクは常に最高傑作を作る男です。さて、次は何を作るか……。」
「……き、金髪で、垂れ目で、唇がぷっくりしている、可愛いらしい子とか、どう、かな。」
――頭の中で止めろと自分に言い聞かせているのに、ついポロッと言ってしまった。
「全身じゃなくても、例えば、そう、あ、頭!頭だけもいいんだ。その、俺、欲しくて。」
俺はさっき、あのフィギュアを見た瞬間に悪い考えが浮かんだ。
美森と真逆の容姿をしたフィギュアを、美森の代わりにしよう。
そんな悪い考えが。
あと一年。大学にいる間だけで良いんだ。
俺は美森が好きだけど、アイツには恋人がいる。
ただの先輩として隣にいたくても、この気持ちを消す事は出来ない。どうしたって、俺は美森が好きだ。
昔、失恋した友人に「他の恋をすれば、簡単に忘れられるよ。」と言っていた人がいた。
俺がアイツを忘れるには、他の恋を探すべきなんだろう。
でも身勝手な気持ちに誰かを巻き込む訳にはいかないから、フィギュアなら……。
美森の代わりにキスする相手がいて、それが全く違う相手なら、この気持ちも忘れられるんじゃないか。
なんて馬鹿な考えなんだろう。創人にも悪いし。
やめよう。
「やっぱな「いいですね!男の娘!」
「え、」
「インスピレーションが湧いてきました!紙、紙は……、あぁもう、邪魔なので帰ってください!」
そう言われ、勢いよくフィギュア研究会の部屋から追い出されてしまった。
なんだか、取り返しのつかない事をしてしまった気がする。
――あぁ、どうしよう……!
*
「先輩。」
「ぬわぁっ、」
予備サークル棟を出てすぐに、どこからか出てきた美森に声を掛けられた。
「び、びっくりした。なんだ美森か。」
「予備サークル棟にいたんですね。
先輩を誑かすのはどれかな、レトロゲーム研究会?それとも黒魔術研究会かな、先輩、誰とでも簡単に仲良くなるから、すぐに絞れませんね。
あぁでも、やっぱりさっき一緒にいたフィギュア「あっ、あー!」
誤魔化すように大きな声を上げて遮る。
バレたくない。
「俺お腹すいた。このあと暇なら、メシ行かね?」
あからさま過ぎたかと美森の顔色を伺うように見たけれど、普段と変わらない表情で「いいですね。」と答えた。
「今日は、どこの居酒屋にしますか。」
「あぁ、いや、居酒屋はやめとく。久々に駅前のファミレス行きたい。」
「あそこ、お酒ないですけど。」
だからだよ!
説得力がないかもしれないけど、恋人がいる奴にキスをねだるような、俺は悪い人間ではない。
10
あなたにおすすめの小説
学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
僕のポラリス
璃々丸
BL
陰キャでオタクなボクにも遂に春が来た!?
先生からだけで無く、クラスカースト上位の陽キャ達も、近隣に幅を効かせる不良達からも一目置かれるまるで頭上の星のようなひとだ。
しかも、オタクにまで優しい。たまたま読んでいたボクの大好きなコミック「恋色なな色どろっぷす」を指差して、「あ、ソレ面白いよね」なんて話しかけられて以来、何かと話しかけられるようになっていった。
これだけだとたまたまかな?と思うけど距離も何かと近くて・・・・・・コレ、ってボクの勘違い?それとも?
・・・・・・なぁーんて、ボクの自意識過剰かな。
なんて、ボクの片思いから始まる甘酸っぱいお話。
みたいなBSS未満なお話。
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
可哀想は可愛い
綿毛ぽぽ
BL
平民、ビビり、陰キャなセシリオは王立魔術学園へ入学を機に高校デビューを目指したが敢え無く失敗し不良のパシリをさせられる毎日。
同室者の男にも呆れられ絶望するセシリオに天使のような男が現れるが、彼もかなりイカれた野郎のようで……?セシリオは理想の平和な学園生活を送る事が出来るだろうか。また激重感情を抱えた男から逃げられるだろうか。
「むむむ無理無理!助けて!」
━━━━━━━━━━━
ろくな男はいません。
世界観がごちゃごちゃです。余り深く考えずに暖かい目で読んで頂けたら、と思います。
表紙はくま様からお借りしました。
白花の檻(はっかのおり)
AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。
その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。
この出会いは祝福か、或いは呪いか。
受け――リュシアン。
祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。
柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。
攻め――アーヴィス。
リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。
黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。
王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。
青龍将軍の新婚生活
蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。
武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。
そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。
「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」
幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。
中華風政略結婚ラブコメ。
※他のサイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる