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レプリカのキスじゃ、呪いは解けない。
06
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「先輩。メシ行きませんか。」
それは、授業が終わり友人と講義室を出た時のこと。
「先輩。家まで送ります。」
それは、バイト先から出た時のこと。
「先輩、おはようございます。学校まで一緒に行きましょう。」
それは、玄関から出てすぐのこと。
なんか、日に日に俺への監視が強くなっていないか?
監視って言うと、少し大袈裟と思うかも知れないけれど、アイツは前に
「先輩。俺に嘘を吐こうなんて思わないでくださいね。どこにいるかなんて、先輩の事ずっと見ているから分かります。で、今日は誰を誑かすつもりですか。」
って言っていた事がある。
これってもう、俺のこと監視してます。って言っているようなもんだろ!
ここ最近、前よりも美森と一緒にいる時間が長い気がする。
あぁ、もう!俺は距離を置きたいんだって!
苛立ちをぶつけるように、洗面所にある鏡の前で襟元を思いっきり引っ張った。
「もう、ほとんど消えちゃったな。」
こんな気持ち早く忘れないといけないのに、美森が忘れさせてくれない。
一緒にいる時間が長くて、彼女よりも俺の方が一緒にいるんじゃないの、とか、喜んじゃった自分がいる。最低だ。
……ただの先輩なのに。
襟元を直したけれど、すぐに苦しくなって胸元をギュッと掴んだ。
シワになっても構うもんか。
もう消えてしまった傷跡から目を逸らした代わりに、鏡に映る自分を睨みつける。
その時、ピロンとスマホが鳴った。
「分かった。今日昼休みが終わったら行くよ。」と連絡すると、すぐにスタンプだけで「了解」と返ってきた。
それから、またすぐに通知音が鳴る。
「そうだ。美森さんは絶対に連れて来ないでください。」
「怖いので。」
「大丈夫。今日は気付かないと思うから。」
創人からのメッセージだった。
ついに、あのフィギュアが完成したらしい。
これでやっと、やっと、忘れられる。
日に日に強くなる美森の監視だが、週に一度だけ緩む日がある。
それは今日。「水曜日」だ。
*
いつもは、俺の授業が終わるタイミングを見計らって迎えに来るか、来られない時は代わりに、どこどこで待っていて下さい。と連絡が来るが、水曜日だけは違う。
「今日は五限まで授業があるので先に帰っていて下さい。知らない人に声を掛けられてもついて行ったらダメですからね。知っている人でもついて行かないで下さい。どこかに出掛けるなら俺に連絡してからにしてください。出来れば一人で家に居て下さい。」
なんて長文でメッセージが来る。
ある日、美森と一緒にいる時間が増えたことで、調子に乗っていた俺は「いつも美森が俺のこと待ってんだから、今度は俺が美森を待てば良くない?」と思って、こっそりと授業が終わるまで待ったことがあった。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、少しワクワクしながら美森が来るのを待つ。
暫くすると、物陰から美森が出てきたのが見えた。
「おー」
おーいと声を掛けようと思ったのに、声がだんだんと小さくなって最後まで言えなかったのは、美森のすぐ隣に、あの彼女が見えたからだ。
あの日見てしまった光景と全く一緒で、二人で楽しそうに、俺には見せたことがない笑顔で笑い合っていた。
いつもは声を掛けなくても、すぐに見つけてくれるのに、美森は俺に気づかずに歩いて行く。
分かっていたのに。
俺が美森にとって一番じゃないことくらい。
浮かれていた、ただの先輩なのに。
一緒にいてくれるからって、勝手に嬉しくなっていた。
――早く、忘れないと。
日に日に大きくなるこの気持ちをどうにかしないと。
だって俺は、美森にとって仲の良いただの先輩なんだから。
*
スマホの通知音が鳴る。今度は美森からの電話だった。
「先輩、まだ家にいるんですか?遅刻しますよ。あと、今日は迎えに行けないので、出来れば真っ直ぐ帰ってください。誰かと会うときは、連絡してください。」
今日は「分かった」と言うのに躊躇ってしまって、
「美森も遅刻すんなよ。じゃ。」
と返事も聞かずに電話を切った。
それは、授業が終わり友人と講義室を出た時のこと。
「先輩。家まで送ります。」
それは、バイト先から出た時のこと。
「先輩、おはようございます。学校まで一緒に行きましょう。」
それは、玄関から出てすぐのこと。
なんか、日に日に俺への監視が強くなっていないか?
監視って言うと、少し大袈裟と思うかも知れないけれど、アイツは前に
「先輩。俺に嘘を吐こうなんて思わないでくださいね。どこにいるかなんて、先輩の事ずっと見ているから分かります。で、今日は誰を誑かすつもりですか。」
って言っていた事がある。
これってもう、俺のこと監視してます。って言っているようなもんだろ!
ここ最近、前よりも美森と一緒にいる時間が長い気がする。
あぁ、もう!俺は距離を置きたいんだって!
苛立ちをぶつけるように、洗面所にある鏡の前で襟元を思いっきり引っ張った。
「もう、ほとんど消えちゃったな。」
こんな気持ち早く忘れないといけないのに、美森が忘れさせてくれない。
一緒にいる時間が長くて、彼女よりも俺の方が一緒にいるんじゃないの、とか、喜んじゃった自分がいる。最低だ。
……ただの先輩なのに。
襟元を直したけれど、すぐに苦しくなって胸元をギュッと掴んだ。
シワになっても構うもんか。
もう消えてしまった傷跡から目を逸らした代わりに、鏡に映る自分を睨みつける。
その時、ピロンとスマホが鳴った。
「分かった。今日昼休みが終わったら行くよ。」と連絡すると、すぐにスタンプだけで「了解」と返ってきた。
それから、またすぐに通知音が鳴る。
「そうだ。美森さんは絶対に連れて来ないでください。」
「怖いので。」
「大丈夫。今日は気付かないと思うから。」
創人からのメッセージだった。
ついに、あのフィギュアが完成したらしい。
これでやっと、やっと、忘れられる。
日に日に強くなる美森の監視だが、週に一度だけ緩む日がある。
それは今日。「水曜日」だ。
*
いつもは、俺の授業が終わるタイミングを見計らって迎えに来るか、来られない時は代わりに、どこどこで待っていて下さい。と連絡が来るが、水曜日だけは違う。
「今日は五限まで授業があるので先に帰っていて下さい。知らない人に声を掛けられてもついて行ったらダメですからね。知っている人でもついて行かないで下さい。どこかに出掛けるなら俺に連絡してからにしてください。出来れば一人で家に居て下さい。」
なんて長文でメッセージが来る。
ある日、美森と一緒にいる時間が増えたことで、調子に乗っていた俺は「いつも美森が俺のこと待ってんだから、今度は俺が美森を待てば良くない?」と思って、こっそりと授業が終わるまで待ったことがあった。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、少しワクワクしながら美森が来るのを待つ。
暫くすると、物陰から美森が出てきたのが見えた。
「おー」
おーいと声を掛けようと思ったのに、声がだんだんと小さくなって最後まで言えなかったのは、美森のすぐ隣に、あの彼女が見えたからだ。
あの日見てしまった光景と全く一緒で、二人で楽しそうに、俺には見せたことがない笑顔で笑い合っていた。
いつもは声を掛けなくても、すぐに見つけてくれるのに、美森は俺に気づかずに歩いて行く。
分かっていたのに。
俺が美森にとって一番じゃないことくらい。
浮かれていた、ただの先輩なのに。
一緒にいてくれるからって、勝手に嬉しくなっていた。
――早く、忘れないと。
日に日に大きくなるこの気持ちをどうにかしないと。
だって俺は、美森にとって仲の良いただの先輩なんだから。
*
スマホの通知音が鳴る。今度は美森からの電話だった。
「先輩、まだ家にいるんですか?遅刻しますよ。あと、今日は迎えに行けないので、出来れば真っ直ぐ帰ってください。誰かと会うときは、連絡してください。」
今日は「分かった」と言うのに躊躇ってしまって、
「美森も遅刻すんなよ。じゃ。」
と返事も聞かずに電話を切った。
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