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第2章
18.名前のまだ無い感情は
しおりを挟むー1ヶ月後
学園生活も馴染んできているなか、来週は魔術訓練が控えている。
授業が終わり、学園内のベンチで雑談をしていた。
「ミラのチームはどんな感じ?私のチーム皆強くて足引っ張りそう…」
「うーん、正直知らない人ばかりだし何とも…。名簿的にはバランスは良さそうかな。」
1チームは5人。
チーム分けではクラスメイトが1人いるだけで、あとは知らない人ばかりだった。
名簿がそれぞれに渡され、メンバーの魔法の属性とランクが確認できる。
ランク6のミラが1番ランクは高いが、チーム内にはランク5の先輩もいる。強さ的には申し分がないだろう。
「えーっどれどれ。……ん?リネット様と同じチームなんだね!」
「ユノは知り合いなの?」
「全く。でも有名じゃない。」
リネット・レイラン公爵令嬢。
3つしかない公爵家の一つであるレイラン家のご令嬢であり、殿下と同い年である。
「わ、噂をすれば…殿下とリネット様だよ、イオ様もいるね。」
ユノの視線の先に、2人の姿が見えた。
ミラのそれよりも少し色の濃い金髪は、艶があり綺麗に整えられている。
「遠目でも綺麗な方だね…。」
「ミラも負けてないよ!」
戦うつもりは無い…そんなことを思いながら視線をそのままにしてしまう。
(2人とも楽しそう…殿下と仲良いんだな、)
その時、リネット様の視線がこちらを向いた。
パッー と、
反射的に視線を逸らしてしまう。
(嫌な感じになってしまった…)
俯いた顔がなかなか戻せない。
「ミラ。」
いつの間にか安心を感じるようになったその声で、自分の名前が呼ばれた。
「どうしたの。体調がまだ優れない?」
離れた所にいた殿下がこちらへ歩いてきた。
座っていたベンチから慌てて立ち上がる。
「あっ、いえ、もう体調は万全です…っ。ありがとうございます。」
「そうか、良かったよ。」
「ちょっと、ルシア殿下。レディを置いていくなんてあんまりじゃ無いですの。」
殿下の後ろを追いかけたリネット様が声をかける。
リネット様の視線がこちらを向き、再び視線が重なる。
ー今度は逸らさない。
「初めまして、リネット様。アストライア侯爵家のミラ・アストライアでこざいます。」
心を落ち着かせて、最敬礼としてのカーテシーを行う。
「…あら、あなた…。そう、貴方が。
今度の魔術訓練では同じチームですわね。」
「はい。どうぞよろしくお願い致します。」
体を起こし、改めて顔を見る。
アメジストの深い色をした瞳は、本物の宝石のようだ。
「ほら、ルシア殿下、行きましょうよ。」
リネット様が殿下の腕を掴む。
「…ああ。またね、ミラ。」
殿下はこちらを見た後、リネット様にエスコートの手を差し出す。
「すみません、リネット嬢。少し離れていただきたい。」
リネット様がしぶしぶといった顔で抱き付いた腕を離し、殿下の手を取る。
そんなやり取りを、視線を逸らすこともできずじっと見ていた。
すれ違いざま、ミラの顔横に殿下が顔を近づける。
「明日のお昼、生徒会室に。」
そう言って、顔はすぐ離れた。
殿下はこちらを見て微笑んでいる。
あまりにも一瞬のことで、暫くそのままその場で固まっていた。
「いや~、嵐のようね、なんか。」
隣で一部始終を見ていたユノが口を開く。
「うん…ごめん。」
「いやいや、謝るところはないでしょ。というか、ミラも大変だね。派手な方々に悉く知られてるじゃない。」
「そんなつもりは無いんだけどね…。」
「ミラがつもりが無くても、よ。人の好意も悪意も最初は一方向からよ。」
「……確かに。」
ユノはたまに鋭いことを言う。
「それにしても、噂は本当みたいね。リネット様は王太子妃を狙ってるって。」
「えっ、そうなの。」
「そんなに驚くことでは無いでしょ。公爵家だもん。流石にあそこまでグイグイだとは驚いたけどね。」
(…そうか、確かに。)
王家の次に位の高い公爵家は、妃候補としては1番有力な立場である。
殿下と学年も同じリネット様は、王太子候補としては適任だろう。
「あ、ちなみにミラだって全然お妃様皇妃よ?侯爵家のご令嬢なんだもん。」
「いやいや、私はとても…」
「というより、殿下はどう見てもミラに好意を抱いてるよね。姿が見えたら絶対話しかけられてるじゃない。」
「うーん…。」
「何その煮え切らない返信っ。まあ、良いけど。ミラは私と一緒に居ればいいもんね。」
ぎゅ、と抱きつくユノが可愛らしい。
「ありがとう、ユノ。」
ぎゅ、と抱きつき返す。
感じている感情を言葉にするには、まだまだ自分とは向き合えていない。
嫉妬、恋慕…
(いつかはそういう感情にも、向き合わなければいけないんだろうな。)
そんなことを思いながら、ユノの肩に顔を埋めた。
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