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12 ランクアップの令嬢

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「まあ、石鹸じゃない!なんであんたが?どうやって手に入れたの?わたくしだってまだ買えていないのに。
ルチアなんかにはもったいないからわたくしが使ってあげる。」

シュルツ商会で作った石鹸が出来たとのことで、マーラからいただいた石鹸を部屋で眺めていたら、ずかずかと部屋に入ってきたイライザに取り上げられてしまった。
誰かイライザに他人の部屋に入るときはノックするってことを教えてあげて。
イライザは相変わらずの横暴さで私の部屋に勝手に入ってくるんだよね。
亜空間ポケットができるようになってからは大事なものはしまってあるからいいんだけど、それにしても自分だけの部屋が欲しいよね。
石鹸だけじゃなくて作りたいもの色々あるし、お菓子や料理だってもっと作りたいし。
うーん。壁にドアを書いたらその向こうに亜空間ルームができるかな?
それか、あの超有名魔法使いのハ〇ーの友人のテントのように、見た目は小さいテントだけど中は広いみたいな。
いいね。今度テントを買って試してみよう。



さあ、テントを買うぞと街にでたもののなぜかギルドでジルに引っ張られてクエストを受けることになった私。
なぜ?
ジルはいつ細目で見てもピンクオーラがある。
…これは私がジルに恋してるってことなのかしら?
恋。前世含め40年近い人生の中で恋と呼べるものがあったかしら?
いいえ、ルチア。きっとこれが初めての恋に違いないわ。
初めての恋…いわゆる、は・つ・こ・い。
きゃっ。やだルチアったら恥ずかしい。

「…なに、気持ち悪顔してんだ。とっとといくぞ。」

あれこれ妄想しているうちに気付いたらジルに引っ張られて街の食堂の前に立っていた。
あらやだ、デート?できればはじめてのデートはおしゃれな喫茶店とかがいいな。
こんなぼろっちい食堂じゃなくて。
なんてまた妄想していると、足元にチュウチュウと何かが寄ってきた。

「ん?げっ!ねねねねねねねねずみーー!」

急いで隣に立つジルによじ登る。

「ルチア、今日のクエストはこのしろねずみの駆除だ。」

「いやーーー!」



全身全霊で拒絶したのにジルは無常だった。
…誰だよ、ジルに初恋とか言ってたあほは。…私だよ。
確かに私はH級にランクアップしたよ。
I級は採取しかできないんだよね。
石鹸やら何やらでここのとこクエストをさぼり気味だったんだけど、私もようやく昇級したの。
H級になると街の雑用的なクエストが受けられるようになるんだけど、その最初のクエストがこれなんて!

聞けばこのぼろっちい食堂が最近しろねずみの被害にあっているという。
しろねずみは珍しくないものの店主が体調を崩して店を閉めている間に増えてしまったとのこと。
このままではいけないと店主も不調を押して店を開けたものの、しろねずみに齧られて店のあちこちが痛んでしまってみすぼらしくなった店に客は寄り付かないし、人が少ないからしろねずみがいなくならないし、体調はまた悪くなるしで悪循環で困っているようだ。
確かに店主は可哀想だと思うよ。
でもしろねずみだよ。
若くてかわいい女の子がやるクエストじゃないよね?と私が気乗りしないでいると、ジルが肩を組んでささやいた。

「ルチア、ルーレットより簡単だろ?」

「さ、はりきって退治しましょう。」

ジルに脅されてしろねずみ退治を始めたものの数が多すぎる。
ジルは弱い雷をあてて退治しているため汚れないが、私は「エアカッター」でスパンとするためその後がスプラッタ的な酷いことになっているのだ。
そのたびに「スイープ」でしろねずみの死体を片付けるのだが、だんだん面倒になってきた。

「ああ、もう!
この食堂の汚いもの全部「スイープ」してっ!!!」


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