平和国に勇者はいらない!と言われ勇者を失ってしまった国に突如勇者として召喚された俺は、平和国の隠蔽勇者になる。

文字の大きさ
3 / 7

スキル習得

しおりを挟む
「あ“あ”あ”あ“……。死ぬぅ……」

 なぜこんなことになっているのかと言うと、昨日の疲れのせいで完全に食事を取るのを忘れていた。目が覚めた時にはお腹と背中がくっつきそうな程腹が減っている状態だった。せっかく援助金をもらったのだから街でご飯でも食べよう。

 街に出て一番近くにあった店に入った。まだこの街に来たばかりで美味しい店など分からないので飯が食えればどこでもよかった。

「へいらっしゃい! ご注文は?」

 朝からテンションの高い店主だ。今の俺には少しきついが、お店のイメージを保つためだろう。
 メニューを見ると朝食ランチとか言うやつが真っ先に目に入った。目玉焼きが乗った食パンに焼いたベーコンが2枚添えられている。このメニューを作った人は少し頭が悪そうだ。まあいい。この舐め腐った名前のものを注文してやろう。

「このなめっ……朝食ランチを一つ」

「はい了解! 兄ちゃん珍しい格好してるね。どこから来たんだい?」

 突然の距離の縮め方に困惑したが、この店主らしいやり方だ。

「異世界から召喚されてここに来ました」

 すると、店主は周りを気にせず大声で笑い出した。

「兄ちゃん! 冗談きついぜ! 召喚なんて勇者しかされないよ」

 多少は予想していたが、王様の時もそうだった。何か証明できるものを提示しないと俺は勇者と信じてもらえない。これから生きてく上で俺の顔が覚えられないのはかなり不便だ。どうにか解決策を練っておこう。

 飯をそそくさと食べ終えると、会計を済ませる。

「朝食ランチ1つで銀貨1枚だ」

 俺は、金貨一枚を渡すと銀貨9枚が帰ってきた。そう、俺は一つ確認したいことがあったので外食をした。あの秘書のイーナが教えてくれなかったお金の価値を確認したかった。今帰ってきたお釣りから考えるとおそらく銀貨が10枚で金貨1枚になるのだろう。複雑な仕組みでなくてよかった。
ただ今冷静に考えてみると、あの朝食ランチで銀貨1枚は高すぎる。日本円で金貨1枚が1万円とするとあれは一皿1000円ということになる。完全にぼったくられていた。まあ、お金の価値を確認するためだったので仕方がないということで片付けよう。

 とりあえず今日やることはまだある。まずは服などを買うために装備屋へ向かった。

 先程の飯屋のせいで、どの店を信用して良いのかが分からない。今度はマシな店に入りたい。
 すると、銅貨の値段が書かれている看板の店があった。おそらくこの店は信用しても大丈夫だろう。もしぼったくりだったとしても銅貨の時点で気持ち的にもまだマシだ。

 店に入ると、中は想像以上に広く商品も装備だけでなくスキルブックや魔法書まで売られていた。

「魔法書? 俺のステータスには表示されてないぞ?」

 店主に魔法のことを聞くと、どうやらレベルを10まで上げないと習得できないらしい。レベル10だと聞くと簡単そうに聞こえるがこの国だと魔物に遭遇する確率がかなり低い。おそらく10あげるだけでもかなりの時間が必要になるだろう。国を出て経験値を稼ぐのは今の俺にはまだ早い。スキル習得などで稼げないだろうか。

 スキル習得で経験値を稼げることを願い、青マント付きの服と小さな短剣、そしてスキルブックを1冊購入した。値段は銀貨5枚だった。今回は相応の値段だろう。
 店を出ると、先ほどより人からの視線を感じた。少しは勇者らしく見えるようになっただろうか。スキルをいくつか習得したら王様に出番がないか聞きに行ってみよう。


……


早速スキル習得のため、スキルブックに目を通す。本を見る限り、スキルごとに魔法陣が描かれていて習得したいスキルの魔法陣に触れるとスキル習得の第一歩を得れるらしいとのこと。まあそう簡単に習得はさせてくれないということだな。
あと、関係ないがこういうところにも魔法陣として魔法が使われているあたり、おそらく魔法を習得した方が今後この世界で生きていく中で得することが多いだろう。

 

スキルブックに書いてあるスキルは3種類。自動再生、魔力感知、身体防護だった。


 まず、スキルについて。スキルとは、この世界に存在する特殊な身体能力を強化するものであり、身体強化の延長線のようなもの。スキルには種類があり、スキルブックなどから得るスキルを習得スキルといい、その習得スキルから派生されて得たスキルを派生スキルという。
 習得スキルは、スキルブックに載っている物のみで限りがあるが、派生スキルは獲得しているスキルの組み合わせや人によって得ることができるスキルなどがあり、限りがなく新種のスキルが見つかることも不思議ではない。

 最初の説明のページを読み終え、隣のページを見ると、そこにはそれぞれのスキルの魔法陣とそのスキルの効果が書かれていた。


 自動再生

 効果:このスキルの所有者は、受けたダメージの3分の1が自動で回復される


 魔力感知

 効果:このスキルの所有者は、魔物から出てる魔力を感知した場合、鼻にツンと香りを感じるようになる。魔物との距離によって香りの強さが異なる。


 身体防護

 効果:このスキルの所有者は、受けたダメージの3分の1が無効になる。




 最終的には3つ全てのスキルを習得する予定だが、まずは一番使い勝手が良さそうな魔力感知を習得してみるか。
 俺は、そっと魔法陣に手を翳す。すると腕からステータス画面が勝手に表示され何が起こったのかと確認するとスキルの欄に魔力感知が表示されていた。


ステータス

 勇者 Lv.2
 名前 雨宮豊晴
 服装 青マント付きの鎧
 スキル 魔力感知


 手をかざした瞬間は状況が理解できなかったが、おそらく勇者なのが関係して習得が早いのだろう。そう、完全に忘れていたが俺はどれだけ信用されてなく、戦うことが少なくとも勇者なのには変わりはない。これくらいの忖度があったとしてもおかしくはないだろう。
 さらにレベルも上がっていた。やはりスキルを習得すると多少の経験値がもらえるらしい。ただ、習得スキルの3つを効率よく得ることができてもおそらく一つにつきもらえる経験値はすくない事を考えてみると、多くてもレベル3が限界だろう。魔法が習得できるようになるには、レベル10であることが必須だからそれまでは派生スキルを習得して経験を稼ぐしかない。それかもう一つ手がある。試しに国王に頼んでみるしかない。

 その後、すぐに他の2つのスキルを習得すると、俺は国王の元へと向かった。

 相変わらず機嫌の悪そうなイーナがいる中、俺は国王に一つ頼み事をした。

「魔法習得のための経験値を稼ぐために、魔物が出る他の国に行かせて欲しい」

 すると、国王は眉間に皺を寄せる。

「それは厳しい頼みだな。悪いが、かなり厳しい」

 頼む前から、すぐに許してくれると思っていた俺は想定外の返答に困惑した。
 なぜ勇者なのに他の国へ魔物を討伐しに行ってはいけないのか全く意味がわからなかった。

「なぜ、勇者が他の国の魔物を討伐しようとしているのに止めるんだ?」

 すると、国王は急に真面目な顔に変わる。

「それは、お前が勇者だからだ・・・・・・」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

処理中です...