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第2部 街を駆け巡る〝ペットテイマー〟 第1章 〝ペットテイマー〟センディアの街に向かう

42. センディアはやっぱり嫌な街

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 ウーフェン受付長という人に案内されてやってきたギルドマスタールーム。
 ここからも嫌な感じしかしない。
 早くブルだけ大量討伐して帰りたいなぁ。

「失礼します、リーマンダギルドマスター。アイリーンの街からの特使の方をお連れいたしました?」

「アイリーンの街だぁ? あんな滅びかけた街の特使なんぞ会う必要はない! 追い返せ!」

「し、しかし……アイリーン領主の特使様でして」

「ちっ、それは会わねぇわけにもいかねえか。さっさと通せ。すぐに追い出す」

「は、はい……」

 追い出されることがわかっているところに入りたくなんてないんだけれど。
 まあ、お仕事と割り切って入ろうか。
 これもブルのためだし。

「失礼します」

「あ? アイリーン領主は人間じゃなくステップワンダーを特使に選んだのか? センディアも舐められたなぁ!!」

「あなたがここのギルドマスターですか?」

「まあ、特使だから答えてやらねえわけにもいかんか。そうだ、俺がこの街のギルドマスター様だ。名前は教えん。お前みたいな下等種族に教えたら腐っちまうからな」

「そうですか。では私も名乗りません。用件はあなたにアイリーン冒険者ギルドマスターからの依頼状を渡すことです。回答期限は1週間。それだけは街に滞在します」

「お前みたいなのに1週間もいてもらいたくはないんだが、仕方がねぇか。泊まれるホテルがあるなら泊まっていけよ! で、依頼状は?」

「こちらになります」

 私は目の前にいるおっさんの机に依頼状を置いた。
 それを手に取ったおっさんは中身も確認せずにビリビリに破り捨てやがった!
 本当にセンディアの連中って何様のつもり!?

「これでお前は1週間無駄に過ごすだけだ。残念だったな、劣等種」

「……まあ、いいでしょう。1週間後に泣きをみるのはそちらですし」

「ふん! さっさと出ていきな!!」

 出て行けと言われたのでさっさと出ていきましょう。
 こいつの前にはいたくない。

「では、失礼。1週間後……は、会う必要がありませんね。それでは」

「し、失礼いたします!」

 ああ、私と一緒にウーフェン受付長も出てきたんだ。
 もうどうでもいいけど。

「あ、あの。失礼ながら、特使様。あの依頼書にはどのような依頼が書かれていたのでしょう?」

「Dランク以上の冒険者を金貨10枚以上でアイリーンの街にあるオークの砦攻略作戦に参加してほしいという依頼。滞在費はアイリーンの街で負担。装備も鋼製のものを支給する予定でしたが……もう破り捨てられてしまった依頼書です。どうにもなりませんね」

「オークの砦攻めというのは危険ですが……Dランク冒険者にとって金貨10枚と鋼の武器は魅力的な依頼でした」

「サンドロックギルドマスターは、最初から断られることがわかっていましたけどね。ウーフェン受付長にはお手間をかけさせました」

「いえ。それで、ホテルはどこに?」

「領主様がプライというホテルを押さえてくれているようですが、なにか?」

「その……あそこに行くのはおやめになった方がよろしいかと」

「なぜですか? 私も領主命令なので一度は顔を出す必要があります」

「その……あの店も極端な人間至上主義の店でして、人間種以外の客は……」

「先ほどから何度か聞いていますが〝人間至上主義〟とは?」

「この街に広がっている文化、いえ、悪習にございます。人間こそがもっとも優れた種族であり、その下にエルフとドワーフが。それ以外の種族は家畜未満という……」

 ふうん、さっきの受付にいた女といい、ギルドマスターといいそんな文化に染まっていたんだ。
 泣きをみるのはこっちのギルドマスターだから知らないけれど。

「わかりました。それでは行って断られてきます。ついでなので大声でそれを喧伝してきましょう」

「……それもあまり意味をなしませんが、お止めはいたしません。どうか、泊まれる宿をお見つけくださいませ」

「ありがとうございます。1週間後、無理なお願いをすることになりますが、ここのギルドマスター命令になりますので申し訳ありませんが諦めてください」

「は、はあ」

 ウーフェン受付長は悪い人じゃないね。
 中立だったし。
 それにしても人間至上主義か、面倒くさいことこの上ない!

 そして、ホテルに行ったけど案の定断られたよ。
 ホテルの門をドヴォルとかいう総支配人のせいでくぐることすらできずにね!

「申し訳ありません。いくらアイリーン領主特使といえども、ステップワンダーのような下賤な民を当ホテルに招き入れては当ホテルの格が下がります」

「ふむ。私がアイリーン領主直々の特使だと知ってのことですか!?」

「もちろんでございます。むしろ、ステップワンダーという下等種族を特使に選んだアイリーン領主の頭を疑いますな」

「……結構です。あなたのその言葉、領主様にしっかり伝えさせてもらいます」

「ご自由にどうぞ。偉大なる人間種の言葉と下劣なるステップワンダーの言葉、どちらを信じるかでアイリーン領主の格が決まるというもの」

「あなたと話すことは無駄なようです。失礼します」

 さて、面倒くさいよ、本当に。
 私としては1週間程度野宿でも構わないんだけど、特使としてきている以上そうもいかない。
 アイリーンの街が舐められるからね。
 でも、ホテルエンヴィのハリッピとかいう総支配人は〝特使にステップワンダーを使うなどアイリーンはもうだめですね〟とか言い放つし、ホテルグランのジェジェとかいう女は〝やはり人間が支配するセンディアでないとまともな使者さえ送れないのですわ〟とかほざくし。
 面倒くさいことこの上ない。
 特使の面子があるから安宿には泊まれないし、どうしたものか。

「おや? あんた、ずいぶんと豪華な恰好をしたステップワンダーだね?」

「うん? あなたは?」

「ああ、名乗り忘れていたよ。私はそこにある〝エンディコットの宿〟のオーナー、エンディコットさ」

「私はアイリーンの街の街から来た特使、シズクです」

「アイリーン特使様かい。でも、特使でもステップワンダーじゃこの街のホテルはどこも泊めてくれないだろうさ」

「はい、泊めてくれませんでした。領主様が事前に予約を取ってくれていたホテルさえ、私を門前払いにするほどです」

「だろうね。この街の一流ホテルはどこも、人間至上主義を掲げることこそが一流の証だと思っていやがる。あんた、うちに泊まっていかないかい? 超一流とはいわないが亜人種が泊まれる宿では最高級の宿だよ。一番豪華な部屋も用意してやる」

 うーん、そこまで豪華な部屋もいらないんだけどなぁ。
 でも、特使だし断るわけにもいかないか。
 この人の心の色は緑色だし、まだお昼の時間だから少しくらいブルは狩れるはずだからね。

「わかりました。泊めていただきます」

「毎度あり。豪華な身なりのステップワンダーを見かけて声をかけた甲斐があったよ」

「それはどうも。そうそう、この子たちも一緒ですが構いませんか?」

「フクロウに犬に猫にウサギ? 構わないけど珍しいものを引き連れているね?」

「いろいろあって。この子たちの食事は私が面倒を見ますから」

「わかったよ。一緒に連れてきていいから泊まっていきな。何泊だい?」

「1週間でお願いします」

「あいよ。昼食は食べていくかい? 朝と夕食は宿代に含まれるけれど、昼食代は別料金だ」

「食べていかせてもらいます。この街じゃ嫌な思いしかしそうにないです」

「正解だ。とりあえず、その綺麗な服装を着替えてきな。汚しちゃまずいんだろう?」

「とてもまずいですね。お言葉に甘えます」

 さて、棚ぼただけど宿も決まった!
 あとは昼食を食べて念願のブル集めだ!
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