辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~

あきさけ

文字の大きさ
56 / 99
第二部 医学の知識と若木の令嬢 第二章 薬草学と錬金術

56. 薬草学から見た薬草、錬金術から見た薬草

しおりを挟む
 発熱で倒れていたモーリーさんも、わたしの処方した解熱剤を飲んでひと晩で回復した。
 問題は、いままで間違った薬を処方していたモーリーさんへの処罰だよね。
 公爵様はどうするんだろう?

「モーリーよ。覚悟はできているな」

「はい。どのような処罰でも受け入れる覚悟です、公爵様」

 公爵様とモーリーさんの間で緊張感が増している。
 私とアーテルさんもこの場に付き合うよう言われたから一緒にいるけど、どうしてなんだろう。

「モーリー、お前に言い渡す処罰はこうだ。錬金術士ノヴァが屋敷に滞在している間、可能な限り薬草の知識を再確認してもらえ。その際、お前の医療技術も惜しまず教えよ。わかったな」

「その程度のことでよろしいのですか? 私にとって、医療技術を広めることは願ってもない好機なのですが……」

「構わん。元はといえば伝わっている薬草の知識が半端だったせいで起こった事件だ。この機会に薬草の知識を総点検してもらえ」

「寛大な処置ありがとうございます」

 あっちは丸く収まったみたい。
 大きな罰にならなくてよかったよ。

「錬金術士ノヴァ。勝手に決めてしまったが構わないか? 君の役割は薬草の効能を教えること。見返りはモーリーの持つ医療知識の伝授だ」

 あ、私にも仕事ができていたんだっけ。
 でも、医療知識が手に入るんだったら問題ないよね!

「はい。お引き受けいたします。私の薬草知識は錬金術で扱うものですがよろしいでしょうか?」

「そちらもそれで構わない。グラシアノに処方される薬を見ただけで効能がわかったのだ。錬金術の薬も薬師の薬と大差ないのだろう。よろしく頼む」

「わかりました。モーリーさん、よろしくお願いします」

「こちらこそ。それでは公爵様、早速ですがノヴァ様のお知恵をお借りしたいと思います」

「そなたも自身の知識のためなら貪欲だな。ノヴァに迷惑をかけると聖獣が飛んでくることを忘れるな」

「はい。肝に銘じます。それではノヴァ様、薬草園に参りましょう」

 薬草園!
 このお屋敷にも薬草園があるんだ!

「はい! ぜひ!」

 公爵様のお屋敷にある薬草園ってどんな薬草が生えているんだろう?
 なんだか楽しみになってきちゃった!

「……アーテルよ。ノヴァも知識を蓄えることには貪欲か?」

「難しい医療書六冊を九ヶ月程度で読み終え、それを実践で生かせる程度には貪欲です」

「無理しない程度に調節してやってくれ。モーリーも知識を蓄えることについては寝食を忘れるタイプだ」

「はい、父さん」


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 私たちは公爵様のお屋敷の中庭に出ると、そこから歩いてしばらく行ったところにある、柵で囲われた一角へとたどり着いた。
 この柵、外から種子や鳥が飛んでこないようにするための魔導具だ。
 やっぱりお金持ちなんだなぁ。

「ここか公爵様の屋敷の薬草畑です。まずはなにをご覧に入れましょう?」

「じゃあ、基本的なところで『冒険者の薬草』って育てていますか?」

「ええ。少量ですが育てています。こちらへどうぞ」

 モーリーさんに案内された場所に行くと、よく冒険者さんが持ち歩いている薬草があった。
 間違いなく『冒険者の薬草』だね。

「私どもはこれを傷薬としては見ておらず、止血や化膿止めなどの応急処置薬として見ております。間違っておりますでしょうか?」

「いえ、その見識であっています。私の見立てでも、傷を治す効果は軽微で、ほとんどは止血や化膿止め、殺菌などの効果ですから」

「それはよかった。ちなみに、この薬を処方しすぎて困ることはありますかな?」

「ええと、傷の治りが逆に遅くなりそう? そんな気がします。葉を潰して使っても、煎じても、そのままでも傷口にそのまま振りかけるタイプなので使いすぎには注意ですね」

「なるほど。その注意事項も私どもの記録とあっている。この調子なら錬金術と薬草学の知識の差は少ないのかもしれませんな」

 案外そうなのかもしれないね。
 実際、いろいろな薬草のところを案内してもらったけど、差異があった薬草はほとんどなかった。
 差があったのは、処方しすぎたときの悪い効果の出方だったんだけど、これは錬金術のお薬が強すぎるからじゃないのかって話で収まったんだ。
 錬金術のお薬の効果が高いのはよく知っているから、処方しすぎにも注意しているもん。
 やっぱり、薬は用法と用量を守るのが大切なんだね。
 使いすぎは体に毒なんだよ。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

処理中です...