猫被り王子が出会う、本気の恋!

花垣 雷

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勝手な2人

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リネットの手を子供のようにぎゅっと握りしめて離さないルカ。

セバスはそんな二人の様子をじっと見つめると、懐からいくつかの小さな小瓶と、淡い光を放つ魔道具を取り出した。

「ルカ様、本当に『駄々っ子』が過ぎますね。……リネット殿、これは城の薬剤師から預かってきたものです。解熱と喉の痛みを抑える魔道具ですので、枕元に置いておくだけで効果がありますよ」

セバスは手際よく魔道具を設置すると、スッと背筋を伸ばして一礼した。

「では、私は一度城へ戻ります。看護はリネット殿、貴女にお任せしますよ」

「えっ……!? ちょ、ちょっと待ってください! 主を置いて、か、帰るのですか!?」

リネットは目を丸くして叫んだ。いくらなんでも、一国の王子が平民の家の、しかも年頃の娘のベッドで寝ているというのに、執事が放置して帰るなど前代未聞だ。
しかし、セバスは去り際に足を止め、リネットの方を振り返った。その瞳には、すべてを見透かしたような悪戯っぽい色が浮かんでいる。

「……ええ。その……リネット殿。恐れ入りますが……そのご様子では、決して『嫌』ではなさそうですし」

「え……?」

「そのお顔の赤み、そして何より。……その離そうとしない手が、何よりの証拠でございます」

セバスの視線が、ルカに握られたリネットの手へと注がれる。リネットは慌てて振り払おうとしたが、ルカから力を込められていたため、結局動けなかった。

「あ、これは、その……! この人が離さないからで……!」

「ふふ、ルカ様の心の声が、物理的な力として現れているのでしょう。リネット殿、主の『我儘』に、どうか今しばらくお付き合いください。……では、失礼いたします」

セバスは優雅に、そして足早に店を後にした。カランコロン、とドアが閉まる音が、どこか祝福の鐘のようにリネットの耳に響く。

「……ちょっと、セバスさん! セバスさーん!」

呼びかけも虚しく、店内は再び静寂に包まれた。

残されたのは、真っ赤な顔で固まっているリネットと、彼女の手を握りしめて幸せそうに眠る王子の二人だけ。

「……もう、どいつもこいつも、勝手なんだから……」

リネットは観念したようにベッドの端に座り直した。
握られた手の平から伝わってくる、ルカの熱い体温。それは単なる風邪の熱さだけでなく、彼の真っ直ぐすぎる想いそのもののようで。

リネットは空いた方の手で自分の熱い頬を抑えながら、規則正しいルカの寝息を、ただじっと聞き続けていた。
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