猫被り王子が出会う、本気の恋!

花垣 雷

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指輪の重み

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その横で、セバスがスッと音もなく現れ、優雅に一礼しました。

「リネット殿、ご安心を。マナー、教養、ダンス、王妃としての立ち振る舞い……。この私が責任を持って、地獄の特訓……もとい、丁寧な教育を施させていただきます。お隣さんですから、夜通しでもレッスンが可能ですよ」

セバスの眼鏡がキラーンと不吉な光を放ちました。 

「お、お隣さんの特権をそんなことに使わないでぇぇぇ!!」

リネットの悲鳴が、美しい花畑に虚しく吸い込まれていきました。

「ルカ様、リネット殿の覚悟は決まったようです。では、さっそく明朝四時から『王家三百年史』の暗記から始めましょうか」

セバスが手帳を取り出し、冷徹にスケジュールを書き込もうとしたその時、ルカがリネットの前に立ちはだかった。

「待て、セバス! リネットが苦しむのは見たくない!そんな地獄の特訓、僕が許さないぞ!」

「バカ! ルカ、あんた何言ってるのよ!」

リネットがルカの背中をバシッと叩く。

「私が王妃になるってことは、国の顔になるってことなのよ!? そんなわがままが通用するわけないでしょ! ……少し考えさせて。お店のことだってあるし、私に何ができるか……」

リネットが真剣な表情で、自分の人生と店の未来を天秤にかけ、葛藤し始めたその時だった。
ルカが、全属性の魔力を一瞬だけ静め、かつてないほど清々しい表情でとんでもない爆弾を投下した。

「……決めた。なら、僕……王子辞めるわ」

「「はぁ!!??」」

リネットとセバスの声が、丘の上に綺麗にハモった。

「な、ななな、何を言ってるのよ! あんた、この国の第一継承者でしょ!?」

「リネットが店を大事にしたいなら、僕が店を手伝えばいいんだ。王宮の窮屈な生活より、リネットの隣で花に水をやってる方が百倍マシだ。それに、俺には優秀な弟がいる! あいつに王冠を譲れば、国も安泰、僕も幸せ。な、大丈夫だろ?」

「何が大丈夫よ!! 弟君に押し付ける気!? そもそも王族がそんな簡単に辞められるわけないでしょ!」

リネットの正論が飛ぶが、ルカの瞳はかつてないほど「本気」だった。神の加護を受けた彼の意志は、一度決まると山をも動かす。

「ルカ様……。弟君がこの話を聞いたら、間違いなく全兵力を挙げて貴方を連れ戻しに来るでしょうね。……しかし、リネット殿」

セバスが眼鏡を押し上げ、冷ややかに笑う。

「この馬鹿げた主を現実に引き戻すには、やはり貴女が『立派な王妃』になって、彼を玉座に縛り付けるしかないようですよ?」

「……う、うそでしょ。私の肩に、この国の未来がかかっちゃったの……?」

リネットは遠い目をして、キラキラ輝く指輪を見つめた。
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