宇宙の騎士の物語

荻原早稀

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第二章 騎士団

2. イヴリーヌの死天使

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 クリシュナはマスクを覆う砂埃を軽く払い、小さくため息をついた。
 狙撃銃を持ち、低い丘の上に腹ばいになりながら、もう二時間も敵を撃ち続けている。
 バカが多すぎてうんざりしていた。
 フェイレイ・ルース騎士団が病院を設置した、その二キロメートルほど離れた場所にある資材倉庫に、しばらく前から野盗組織と思しき集団が、断続的に襲撃を仕掛けてきていた。数は多分千名程度か。
 武装も防御器具も貧弱なそれら相手に、騎士団は病院外周に設置した自動防御設備だけで対抗していたのだが、多数の死傷者を出しながら、組織性など失われてばらばらに突撃を繰り返すだけの状態になりながら、野盗たちはその手を休めない。
 戦力だけを見れば、騎士団からしたらゴミだ。だが、患者を運ぶ車両は遥か彼方で停止し、護衛を派遣しなければ病院にはたどり着けない。
 一向にやまない襲撃に業を煮やした幹部が、一個小隊だけ外に出して迎撃を命じた。
 クリシュナ・ゴーシュは先任曹長として、実質的な小隊長を務めている。嫌でも、任務は任務。果たさなければならない。
 迫撃砲で炸裂弾でもぶち込んで終わりにしたいところだが、野盗共はバラけている。最初からそうだったのかは知らないが、少なくとも彼女が野戦装備で陣地から飛び出した時には、既にこの状態だった。炸裂弾など撃つだけ無駄になる。
 光学系の兵器でなぎ払うなり、自動狙撃ドローンを巡回させるなりすれば済む話なのだが、それらは過度の虐殺につながるということで禁止されていた。
 じゃあ手で撃って殺し続ければ虐殺じゃないのか? 接近戦で切り刻んで殺せば虐殺じゃないのか?
 奇っ怪な政治判断とやらに振り回されるのは今に始まったことではないが、文句ぐらいはいいたくもなる。
 もっとも、クリシュナを始めとした騎士団の兵士たちは、まだ一人も殺していない。
 彼女が使っている狙撃銃は、相手の神経系を麻痺させる無力化弾頭を装填している。当たった衝撃で死なれても困るので、弾速はそれほど早くない代わり、特殊な扁平形状の弾頭は静かに真っ直ぐ敵まで長距離を飛び、当たれば数秒で敵を無力化する。
 欠点は弾頭が高額なこと。一発で彼女たちの月給が半分飛ぶ。無駄打ちなど出来ない。
 部下たちは散開し、四方八方に散っている敵をクリシュナの射線上に誘導している。高額な弾は部下たちに配られていないので、射程が短い電子的な暴徒鎮圧用の無力化銃を使ったり、実弾を電磁加速するレールガンを最低出力で使ったり、無駄な苦労をしていた。
 疲れただろう。悪いね。もうすぐ終わるさ。帰ったらビールの一杯くらいおごってやるよ。
 つぶやきながら狙撃。
 遥かスコープの先に見える野盗の一人が、パタリと倒れた。
「曹長を見ていると、自分が際限無しの無能に思えるわ」
 隣で同じように腹ばいになっていた士官が、ため息をついた。
「それぞれの適性ですよ」
 クリシュナは熱がこもらない口調で答えた。
 色素が薄すぎるアルビノの肌や瞳を隠しているからわかりにくいが、クリシュナの上司であり名目上の小隊長であるエステル・ドゥ・プレジール少尉だ。
 任官後の一年の軍務研修を終えて、病院研修のためこの地に来て一ヶ月少々。
 修羅場も、無残な死も、人間の常軌を逸した残酷さも、既に体験している。
 あまりにも悲惨な女性の死に立ち会い、呆然と立ち尽くしている彼女を無理矢理休憩室に押し込んだのは三日前のことだ。
 表情も血の気も失って、ただベッドに座り込む彼女を寝かしつけ、時々様子を見に行っていた曹長は、ここが境目だと考えていた。
 下士官として経験豊富な彼女は、幾人もの新人士官が、この野戦病院研修で潰れていくのを見てきた。
 騎士団の理想に燃えて、輝かしい未来に燃えて、いくつかの戦場の土も踏んできた彼らは、野戦病院で嫌でも直面させられる弱者の現実に、十中八まで精神を壊される。
 そこからいかに精神の再建を果たすかが問題なので、壊れること自体が悪いとは曹長も思わない。わずかでも壊れもしない心の持ち主など、いびつな精神の持ち主なのだろうし、戦場で頼りになるとは思えない。
 精神再建用のプログラムはあるし、回復できないダメージを与えるために病院配置を行うわけではない。
 だが、自分なりに再建を果たす強さと柔軟さを士官に期待するのも間違ってはいないはずだ、とクリシュナは思う。
 自分達が上官として命を預けていく相手なのだ。尊敬など出来なくてもいいが、失望させられたくはない。
 どうやらこの少尉は合格らしい。
 まだまだ危なっかしいが、少なくとも絶望にとらわれて立ちすくむだけの無能ではなかったようだ。ここでこうして腹ばいになりながら敵を観測し、部下の有能さに呆れる程度には回復している。
 立派なものだ。
「そろそろ、野盗共の身柄をまとめて始末し始める頃合いです。小隊長にもその指示が来るはずですから、移動のご準備を」
「ああ、もうそんなタイミングね。了解、ありがとう」
 腹ばいのまま、たぶんゴーグル付きのマスクの中で微笑を見せ、エステルはクリュシュナの肩を叩いて起き上がる。
 前線にいて立ち上がるのは禁物だが、相手が相手だから危険もない。腹ばいになっていたのは、射撃の精度を上げるためだ。
「たのもしい部下を持った私は幸せ者ね」
 伸びをしながらいうと、エステルは通信回線を開いた。
『小隊各員、くだらない戦いに付き合ってもらってすまない。戻ればビールの一杯もおごるから、もう少し頑張ってくれ』
 おや、と、クリシュナは上官の評価をもう一段上げてもいい気になった。


 新人士官は必ず現場叩き上げの下士官に厳しい指導を受けるのが、どこの軍でも伝統である。
 下士官にしてみれば、いずれ自分たちの命を賭け金に戦うことになる新人を、使える程度にまで鍛え上げるのは同輩に対する最低限の義務だ。将来の自分たちが生き残るためには、どうしても士官に一人前になってもらわなければならない。
 アルビノの白い外貌が驚くほど整っているエステルは、兵士たちの間で「イヴリーヌの天使」と密かに呼ばれていることをクリシュナは知っている。
 天使とはまた、と思わないでもないが、伯爵家の直系というお嬢様育ちであることは間違いない彼女は挙措に品があり、童顔で儚げなルックスは実に庇護欲を煽ることは理解できる。
 イヴリーヌというのは、彼女の実家であるイヴリーヌ伯爵家のことだ。成人とともに、伯爵家が持つ爵位の一つであるプレジール子爵を授爵しているから、子供の頃に名乗っていたイヴリーヌ伯爵令嬢の称号は今は使っていないのだが、爵位が高いほうが二つ名の価値が上がるような気がするのだろう。
 もちろん、本人のあずかり知らぬことである。
 可憐な天使、などというものが戦場に士官として現れれば、まず間違いなくいじめと嘲笑の対象になるのがオチだ。命がかかっている最前線にそんな「弱者」に来られては、自分たちの生存率が下がる。明快に迷惑な存在だ。
 エステルの名がそのような評価にさらされていないのは、エステルが「異能」の持ち主である「基力」の持ち主だからだ。
 先述の「異能」を生み出す力こそが「基力」で、これを持って生まれたエステルは、基力の流れが過剰になると、普通の人間がゾーンに入った状態、つまり異常に集中力が高まった状態を超えるような思考速度になり、それに応じた筋反応と、それを支えうるだけの強靭さを骨格に加える。
 あとから、加わるのである。
 もとから、同質量で比較したら常人よりは強い筋力や骨格を持っているのだが、基力が加わると、筋肉は薬物を投入したように、骨格や関節は強力な電磁波で補強したように、あとから強くなる。
 武門の貴族令嬢として体術も学ばされ、騎士に憧れるようになってからは日々の鍛錬を欠かさなかった彼女は、おかげで強い。
 儚げな外観とは裏腹に、格闘訓練では小隊でエステルにわずかでも勝てそうと思える者は皆無だったし、重武装近接戦闘の訓練で彼女を倒せるつわものは、おそらく大隊にもいない。
 舐めてかかって、ただで済む相手ではない。
 上官を馬鹿にして黙認されるのは、肉体的な破壊力で上を行けばこそだ。士官学校出のお坊ちゃんお嬢ちゃんを舐めてかかれるのは、殴り合いで負けるはずがない屈強な体と技術を兵士達が持っているからだ。
 エステルにそれは通用しない。四、五人程度の鬼下士官なら、秒で沈める。
 異能とは、そこまで隔絶している。


 長々と説明してきたが、それらの説明を無用にするような光景が、クリシュナの狙撃で野盗たちをバタバタ倒していた数時間後に展開していた。
 エステルが、ここまでの鬱懐や理不尽な世界への怒りを爆発させたからだ。



 場所は、野盗たちが狙っていた資材倉庫の周辺。
 相手は、野盗集団をあいまいな指揮で犠牲にしておきながら、騎士団が小隊程度の兵力しか外に出してこないことで意を強くした、反政府ゲリラの精鋭集団。
 哀れな野盗たちは、ゲリラに脅され、多分家族なども人質に取られた状態で従わされていたのだろう。
 無力化された野盗たちがゴロゴロ転がっているところに、意識が無い内にその体を確保して引き上げようとエステル配下の小隊が集まっていた。
 地上車をいくつか病院から呼び寄せ、それに野盗たちを放り込んだら、後方にある騎士団の出張所を通じて国際組織に引き渡すことになる。引き渡された組織は野盗を戦時捕虜として扱うが、この地ではまともに捕虜を扱う施設すら無いことは明白なので、一度ドームからは離し、惑星外の捕虜収容所に隔離される。
 ドームという名の地獄にいるより、よほど人間らしい生活が送れるだろう。
 そのための作業を開始しようとした騎士団の小隊に、五〇〇人程度の新たな敵性兵力が近付いているという警報が届いた。
 ハッとして警報が告げる方向に顔を向けたエステルやクリシュナたちの視線の先に、高速でこちらに近付いてくるらしき砂煙が映る。
「小隊展開、円陣を取れ」
 エステルの指示が飛ぶ。どの方向から襲撃されても対応できるよう、小隊員四〇名弱が銃を構えたまま円形に陣形を取った。仮に今見えている戦力だけだというなら、そちらに改めて兵力を集中させればいい話だし、騎士団は通常の歩兵戦力でも強固な防御フィールドを発生できる。ドーム内のゲリラ程度の兵装なら、対抗できる。
「武装は対人B装備、次の指示までは撃ち殺しても構わない」
 とはいえ、相手の数が大きすぎる。威嚇や無力化攻撃ではさばけない。
 対人B装備ということは、戦闘用に全員が身に着けている歩兵用野戦装甲、軽装パワードスーツの機能を開放しても良いということだ。これを使えば、自分の体重の倍くらいまでなら投げ飛ばせるようになるし、走る速度も人類の限界の壁を軽々超える。
 エステルの判断は的確だ、とここでもクリシュナは無言のまま上司の評価を上げていた。
 その彼女たちに対し、ゲリラの装甲車や浮遊地上車からの射撃や砲撃が襲いかかる。
 騎士団の防御フィールドを突き破るような力はない。非力な武器は、あっさりとフィールドに吸収され、消え果てる。
 ただし、このフィールドはエネルギー消費が激しい。長時間保つものではない。
 敵がそれに気付いて一旦後退するようなら、張り続けることはできない。張り続ければ、肝心な時に電源が落ちるという目も当てられない事態に陥る。
 敵ゲリラ集団は、先程までの野盗たちと比べればずっと武器は良かったが、防御フィールドまで持っていたらしい。
 騎士団側のフィールドを突き破れる、と考えたらしい彼らは、騎士団がまだ撃ってこないことを逆手に取り、自分たちのフィールドを絞りに絞って突撃をかけた。
 歩兵装備の防御フィールドはギアのそれより自由が効かない。その攻撃に、耐えられなかった。
 数人のゲリラがフィールドの残滓に切り裂かれたりしていたようだが、突破してきた。
 もっとも、歴戦のクリシュナを始め下士官たちの想定内だ。
 どうせ武装はこちらが優れているのだから、もっと引き付けてからの斉射で事足りる。
 が、事態は彼女たちの想定外の方向にずれていく。
 彼女たちの新人指揮官が、見なくてもいいものを見てしまったからだ。


 脅して動かすくらいだから、野盗にならざるを得なかった弱者たちに対し、ゲリラの人間が同情心など持っているはずがない。
 資材倉庫を襲うための突撃だって、その弱者たちにとって本意であったとは思えない。
 そう思っていたエステルの、スコープ越しの視界に、ゲリラの装甲浮上車が、まだ生きているはずの野盗たちの体を踏み越えている姿が映った。
 浮上車だから轢いていない、というのは言い訳に過ぎない。その走行浮上車は攻撃態勢に入っていたから最低地上高で浮かんでいて、その高さは地上から平均三〇センチメートル程度。
 強力な電磁波と慣性制御で浮上する数十トンの車体を支えるのだ。地面と車の間に入れば、人間の体など四散する。なにより、防御フィールドが起動している。
 避けきれなかったのではないことは、少しも浮上車が軌道をずらしていないことから明白だ。
 そのあたりの野盗たちは、ほとんどがクリシュナが狙撃して意識を奪った連中だ。わざわざ高い弾を使って生かしておいたのに、と狙撃したクリシュナなどは思ったが、エステルの受け取りは違った。
 三日前に滂沱の涙とともに機能停止してしまった彼女の傷心は、まだ癒やされるどころか、生乾きの傷跡でしか無い。わずかな刺激で破れはてる。


 お前ら、自分が使う人間を自分で轢き殺すのか。
 生きるために従っていた人間を、私達に殺させ、自分たちでも轢き殺すのか。


 小隊の全兵士が思いもよらない事が起きた。
 小隊長ドゥ・プレジール少尉が、前触れなく、歩兵用野戦装甲の機能の限界を突破した動きで、ゲリラに向かって全速突撃をかけたのだ。
 クリシュナ曹長が止める暇もなかった。
 相対距離は一キロメートルをきっていただろうか。
 基力を全開放した「イヴリーヌの天使」の歩兵用野戦装甲装備時の走行性能は、一〇〇メートルを四秒で走り切る。
 この時はさらに、士官用の装備として持っていた野戦装甲のブーストユニットがある。通常は個人用の防御フィールド発生のために使うものだが、エステルはこれを脚部ユニットの加速用に使った。
 具体的には、燃やした。
 各種ユニット接続用のアダプタ部をナイフで切り落とし、銃の一発でも打ち込んでやれば、ブーストユニットは内部の強力なエネルギーを噴出させる。
 そのユニットを背嚢に負って吹き出させながら走れば早くなる、というのは、冗談で話す者はいても、やらかす奴はまずいない。
 エステルは信じ難いことに、脚部ユニットに磁力で強引に貼り付けると、その噴出力を使って加速した。
 到底人間に可能とも思えない荒業を使い、エステルは飛び出して一二秒で敵ゲリラを、近接戦闘の射程距離に入れた。
 つまり、殴れる距離に達した。
 この時点で彼女の武装に火器はほとんどない。飛び出す際に、ブーストユニットを秒で処理してみせた彼女は、その邪魔になるためにライフルを投げ捨てている。
 野戦装甲に標準装備されているコンバットナイフ二丁、投擲用榴散弾五個、拳銃型の多機能銃が一丁、これだけが装備だ。
 エステルは、驚くゲリラたちに、自分の姿を視認する余裕も与えない。
 一度大きく地面を蹴り飛ばして宙に舞い上がった彼女は、コンバットナイフを一丁引き抜きながら擲弾を取り、そのまま空中でユニットに最後の爆発を起こさせて再加速。
 おそらく敵ゲリラの指揮官級が乗っていると思われる、もっとも装甲が厚く、もっとも無駄な大きさの砲を持つ装甲車に狙いを定めた。
 彼女の腕がコンバットナイフごと光を放つ。基力が働いている。
 エステルの異能が働き、速度が十分に乗った超硬度の打撃が、装甲車の天井に炸裂する。
 基力が十分に効いた異能者の打撃は、素手で宇宙艦艇の外殻を破る、といわれる。数十Gの重力加速度や、超高速で飛んでくる微小天体の衝突に耐え続ける外殻は、重機を持ってきたって破れるものではないのだが。
 まして、エステルはコンバットナイフを使って打撃の作用点を相当絞っている。
 装甲車の天井くらい、貫けないはずもなかった。
 ナイフが装甲板を完全に貫通しきる前に、エステルは最大出力の基力にさらに力をかけ、脈動のように一瞬だけピークを上げる技術を使った。
 とてつもない物理的な圧力がかかった装甲車の天井は、文字通り吹き飛んだ。
 この時点で中の人間はダメージ不可避だが、さらにエステルは擲弾を中に転がし、離脱する。
 離脱したと同時に他の車両に襲いかかる。
 突然現れた小柄な装甲兵の姿にどのゲリラたちも驚いたが、その小柄な兵士が士官の略章を胸元につけていることに気付いたゲリラはいなかった。
 気付いたのは、あまりにも危険な存在だということだ。
 数秒後、エステルが天井を吹き飛ばした装甲車が爆発した。周囲の車両数台、ゲリラ二〇名あまりを同時に吹き飛ばし、炎上する。
 エステルは止まらない。コンバットナイフをもう一丁抜き、両手に一本ずつ持った彼女が、二刀流で次々に敵を屠る。
 一切の手加減無し、完全に殺す気の戦いだ。
 怒りに我を忘れた、というには、あまりにも効率的かつ狡猾な戦いぶりだった。
 指揮官を最初の爆発で失ったゲリラは、なまじ人数を集めてしまったがために統制力を欠いていたから、とっさに動けなかった。
 それを逃すエステルではない。責任者クラス、つまり士官や下士官を狙って冷酷無比な襲撃が続く。
 あまりに早く、あまりに強い。
 基力持ちの軍人は数多いが、ここまで爆発的な力の持ち主などそうはいない。 
 ゲリラたちに対抗手段はなく、防ぐ手段もない。もはや天災のようなものだ。撃ち落とそうにも動きは目で追えるようなものではなく、デタラメに撃って友軍を撃つ者が続出した。味方を撃つ誤射、フレンドリーファイアは戦場の常だが、それにしてもこれはひどい。
 それを引き起こさせたエステルは、休むことなく一気に十両を超える車両を破壊すると、ついでに倒していたゲリラから次々に武器を奪い、それをばらまくようにして撃ちまくりつつ、決して捕捉されないよう高速で動き続けた。


「片手で人を救いながら、片手で人を殺すのか」
 古典的な、騎士団を弾劾するセリフだ。
 野戦病院を経営し人命を救助し続けながら、一方で騎士団として戦地で敵を殺しまくる。
 その節操の無さに抗議の声が上がると、騎士団の連中は冷笑するのだ。
「武器持つものは殺し、持たざるものは救う。それが騎士団の流儀ですよ」
 エステルが問われればそう語るだろう。設立以来の団是である。
 エステルは、人間の尊厳を紙くずほどにも考えない相手であることがわかったゲリラ相手に、少なくとも武装放棄するまでは攻撃を緩める理由を持っていなかった。
 小隊の他のメンツが、攻撃半分、隊長の回収半分を目的に戦場に足を踏み入れた時点で、ゲリラはすでに壊滅的打撃を受けていた。


「イヴリーヌの天使」が、「イヴリーヌの死天使」と呼ばれるようになったのは、このときからである。
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