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暗黒大陸編 2巻
暗黒大陸編 2-1
しおりを挟む《七十一日目》
巨人王都《クロニュソス・ティタン》の中央、つまりは王城に招かれた俺――オバ朗と【巨人王】バロル・ドゥバズラとの非公式な会談は、昨夜遅くに終わった。
あらかじめ用意されていた小人用貴賓室で一夜を明かした俺と仲間達は、昨日の会談で決まった約束事の一環として、普通なら食べきれないほどの豪勢な朝食を楽しんだ。その後、【光武王子】バルドル・ルグ・ドゥバズラと【闇法王女】エンデ・サグ・ドゥバズラに案内されるまま、王城の一画に存在する《第二宝物殿》へとやってきた。
《第二宝物殿》は王城の中心区画に存在し、巨人族の中でも大柄な【光武王子】達王族でも余裕をもって入れる巨大な門によって閉ざされている。
内外を隔てる両開きのこの門は銀色に輝き、金と宝石で『大口を開けた龍』と戦う『四腕の巨人』の細工が施されていた。
芸術的な観点で見ても中々の逸品だが、【光武王子】によると、門は魔法を完全反射する魔法金属【ルナティエルミスラー】をメインにした合金で造られているそうだ。なので魔法対策は万全な上、物理的にもかなり頑丈らしい。
また魔法による鍵や罠を備えている事に加え、門の左右には完全武装した巨人騎士二名と巨人魔術師二名が守衛として控えている。
王城内部で働ける時点で巨人達の中でも選ばれた存在なのだが、財宝が眠るここの守りを任されるのはその中でも更に選りすぐられたエリート中のエリートであり、忠誠心と実力は本物だ。たとえ王族といえども、【巨人王】の許可が無い限り中には入れないという。
鼠一匹入る事も叶わないほど厳重に守られているそんな《第二宝物殿》の門は、しかし俺達の前でゆっくりと開かれていく。
【光武王子】から【巨人王】の許可書を手渡され、特別な手段でその真偽を確認した守衛が、特殊な操作をして開いたのだ。
ゆっくりと見えてくる宝物殿の内部には、巨人達の国が現在に至るまでの長い長い歴史の中で手に入れてきた、宝物の数々が貯蔵されていた。
【幻想】級や【伝説】級の国宝マジックアイテムが貯蔵される《第一宝物殿》と比べれば格は大きく劣るが、しかしそれでも見事な光景である。
石造りの巨大な部屋に並べられた武器や防具。それはまさに、巨人達が使用できるほどのサイズのマジックアイテムによる山脈だった。
きちんと分類ごとに整理されているそれらを、【道具上位鑑定】や【物品鑑定】を使い分けながら見たところ――
まるで炎を閉じ込めたように赤く輝きながら波打つ炎波大剣【焼き払う地平線】
極低温の冷気を発する白銀の穂先と、突風を巻き起こす槍飾りを備えた短槍【氷嵐の喚び槍】
禍々しい雷棘が打撃箇所にびっしりと生えた超重量の赤黒い大槌【雷血棘獣の大槌】
正方形の魔法金属の分厚い板が幾百と組み合わさっており、攻撃に合わせて形状変化するタワーシールド【変貌魔獣の積層殻】
生体素材由来の生々しさと艶やかな黒色甲殻の光沢を保ったまま、巨人職人ガマラ・ボにより造り上げられた巨人鎧【黒硬重殻象蟲甲威胴具足】
魔法金属よりも硬く絹のように滑らかな巨獣〝蒼天水虎〟の毛皮から造られた、薄手ながらも堅牢な外套【流麗なる青き虎衣】
一振りで雲を生み、二振りで雨を降らし、三振りで雷を喚び、四振りで晴天をもたらす、純白の大扇【繰理空鳳扇】
食材を載せて一度畳むと、次に広げた時には調理された料理が現れるという大きなランチョンマット【料理人の食布】
所持者に害なす存在の接近を知らせる、丸い水晶と黄金で出来た【スタリナクの羅針盤】
魔力を籠める事で描かれた幻影巨狼を召喚できる、黒毛皮に狼の頭蓋骨を銀細工で表現した装幀の【幻影狼祭経典】
――などがあった。
見た事も無いような品々がざっと数百点以上。巨人用だけあってどれも巨大すぎて俺達が扱うには不便であるが、ここにあるマジックアイテムはどれをとっても目が飛び出るほど高額かつ有用なモノだろう。
他にも未知の魔法金属のインゴットや巨大な宝石など、一つ一つの大きさはもちろん、その質の高さには素直に驚かされる。
しかしこれほどの質の高さと貯蔵量の多さも、冷静に考えればある意味当然であった。
ここ【神秘豊潤なる暗黒大陸】という特殊な【神代ダンジョン】で生活するとなると、強力なダンジョンモンスターとの戦闘は避けられない。
そして巨人王都《クロニュソス・ティタン》の巨大な生活圏を維持する為、巨人の兵士達が日々戦闘を繰り返している事は想像に難くない。
また食肉などを得る為に、一般市民の巨人達も戦闘をする必要がある。
加えて、他の勢力との争いなどもあるだろう。そうした諸々の戦闘が日々繰り返され、その過程でマジックアイテムを得る事になる。
また、最高レベルの【神代ダンジョン】なだけあって、ダンジョンモンスター討伐や自然発生する宝箱などから得られるドロップアイテムも、高品質なモノばかり。
そうして得られたドロップアイテムは、王城以外にも幾つかある施設で有効活用される一方、その中から厳選された品が、献上品としてこの宝物殿に集められるのだ。
そうした事情が眼前の圧倒的な光景を形作っている訳だが、そんな中を俺達は物色していた。
何故なら、この中から百品が俺達の物になるのだから。当然、真剣そのものである。
というのも、昨日の【巨人王】との非公式会談で俺はとある依頼を受け、その見返りがこれなのだった。
依頼とは、《樹栄古都ティタンマギア》にて微睡む、全七体の【エリアレイドボス】が一体――古代絶界蛇龍覇王〝ミルガルオルム〟の討伐への協力だ。
初めは流石に驚いたが、話を聞くと納得できた。
もともと【巨人王】は、単独であっても〝ミルガルオルム〟に挑む予定だったらしい。
かつて行われた〝ミルガルオルム〟との戦いは、『万を超える巨人の軍勢が呑まれて消え、現代よりも強い【英勇】と【帝王】の多くが散った』と語り継がれている。そんな歴史を知る者からすれば、【巨人王】の挑戦は、抗えない自然災害に挑むようなただの自殺行為に他ならないだろう。
しかし、【巨人王】は若い頃から【神秘豊潤なる暗黒大陸】を放浪して武者修行したというくらい、筋金入りの戦士である。
巨人の王族の一員なので、恵まれた体格と卓越した戦闘技術を持ち、多くの強者と戦い勝利してきた。
そして若さゆえの愚かさで何体かの【エリアレイドボス】に挑み、その度に瀕死の重傷を負いながらも逃走するという事を繰り返したという。
【エリアレイドボス】との戦いで負った重傷の痕は今も身体に残り、それに触れながら当時を思い出すように語る【巨人王】の姿が印象深かった。
ともあれ、そんな【巨人王】が、巨人族にとって最も因縁深い〝ミルガルオルム〟に挑まないはずは無い。実はこれまでにもヒッソリと挑み、良いところまでいくが最終的には敗れてなんとか生き延びてきた、とは本人談。
傍に控えていた執事らしき老巨人はそれを聞いても何も語らなかったが、遠い目をして溜息をつく姿は何より雄弁だった。
それはさて置き、鍛えて、【エリアレイドボス】に挑んで、負け続けるという戦いの日々に明け暮れて時は過ぎ、この【巨人王】は先代から正式に王位を受け継いだ。
そうした立場に加えて、愛する三人の妻と可愛い子供達が出来た事で、流石に軽率な行動はしにくくなったらしい。そこからは自身と子供達を鍛えながらも、政治に力を注ぐ日々を過ごしたという。
それはそれで楽しかったが、長兄であり王太子である【光武王子】は、立派に後を任せられるほど成長してくれた。
また万が一【光武王子】に何かがあっても、その後に【闇法王女】などもいる。
政治面で重要な問題は自分で解決したし、信頼できる大臣や家臣、そして教育に力を入れてきた事で若手も育った。
問題は次々と出てきて完全に無くなる事はないが、それは次の世代が解決していく試練である。
となれば、これから先ただ老いて戦えなくなって死ぬよりも、どうせなら血湧き肉躍る戦いで果てる方がよい。
だから、【巨人王】はかつて祖先が為した偉業に挑むべく、因縁の相手である〝ミルガルオルム〟を討伐する事にした。
今回は死んでも構わない。死力を尽くして挑む。
そういった事を考えていた時、【光武王子】を通じて俺の存在を知り、それと同時に【神託】が下された。自身の【加護神】の一柱である【巨人の神】から、俺の助力を得ろ、と告げられたのだという。
【巨人王】も別に、あえて死にたい訳ではない。
力及ばずに果てるのなら仕方ないと受け入れるが、勝利できる道があるならば迷わずそちらを選択する、即断即決な性格らしい。
しかし本当に俺にそれだけの強さがあるか分からない為、非公式の会合をセッティングし、直接会って見極めた結果、これなら間違いないとして依頼した、と。
俺としても悪い話ではない。
巨大な【巨人王】は、巨大すぎる〝ミルガルオルム〟との戦いで間違いなく大きな役割を果たすだろう。
また俺達が得られる報酬は、前払いで《第二宝物殿》にある財宝を百品貰える事に加え、成功報酬で〝ミルガルオルム〟のドロップアイテムを山分けという話だった。
【巨人王】としては、ドロップアイテムも欲しいが、祖先と同じ偉業を為したという名誉の方が大きいらしい。だから俺達の名前が討伐者として大々的に表に出る事はないが、こっちとしては別にここでの名誉などどうでもいいので気にならない。
成功報酬となるドロップアイテムがどの程度の品になるかは未知数ながら、参考として過去の討伐時の情報を教えてもらったところ、半分であっても満足できる内容になりそうだった。
それに、仮に失敗しても、前払いの百品だけで十分すぎる利益が出る。
という事で、俺達は【巨人王】の依頼を受けた訳である。
まあ、条件的にはほぼ対等なので、雇い主と雇われ人と言うよりかは、同盟相手と思えばいいだろうか。
話し合いの結果、決戦は数日後という事になり、それまでに前払い品の選別をはじめ色々と準備を進めておく。
暗黒大陸に来てまだそれほど日にちは経っていないが、中々、楽しい事になりそうだ。
《七十二日目》
朝から、【光武王子】の案内で王城内の一室に移動する。
そこは元々あまり使われていない空き部屋ながら、王城内にあるだけあって毎日清掃されていたし、それなりの質の調度品が置かれていた。
しかしその調度品が今回は邪魔になるので、事前に撤去を頼んでおり、それが完了したのでこうして案内してもらっているのである。
到着した空き部屋は、巨人からしてもそれなりの広さがあるらしく、端から端がとても遠い。大広間に人形を置いたような光景、とでも言えば少しは伝わるだろうか。
そんな伽藍とした部屋で何をするかというと、以前仲間とした巨人の名工ラングド・グカ製の特別なゴーレム〝統べる紅玉の王〟――通称ベニタマによるゴーレム整備と改造を行うのだ。
俺は早速、【異空間収納能力】から無数の製造用ゴーレムや加工・整備器具用の大道具、そして予備分も含めて二十体の巨人型戦魔兵〝ギガンテスゴーレム・ナイトロード〟を取り出していく。
繰り返しになるが、今回の目標〝ミルガルオルム〟はとにかく巨大である。
それと戦うには、やはりどうしてもこちらも最低限の大きさを確保する必要があった。
大きさは強さに直結する。
技術も何も無くとも、山のように巨大な赤子が暴れたら、普通の人間は抵抗もできずに踏み潰されてしまう。そのように、体格差は技術の差など簡単に覆してしまう重要な要素だ。
そして〝ミルガルオルム〟はただ大きいだけではない。
何重にも重なる強固な鱗に、鋭利で巨大な毒牙を持つ。全身が筋肉の塊なので見かけとは裏腹に動きは俊敏で、更には豊富な魔力により絶えず強力な魔法飽和攻撃を行使してくるという。
圧倒的すぎる体格にそんなものが加わればどうなるかは、普通に考えれば明らかだろう。
俺自身は色々と対抗手段があるし、勝算も十分すぎるほどにある。
しかし俺以外のメンバーはとなると、ミノ吉くんとアス江ちゃんと、それからギリギリでカナ美ちゃんが参戦できる程度だ。
それ以外のメンバーが生身で挑むのは自殺でしかない。多分、まともに戦えば数秒で殺されるだろう。
しかし、危険ではあるが、これほどの強敵と戦う機会を子供達にも与えてやりたいというのが親心だ。
そこで用意する事にしたのがゴーレムだった。
以前捕獲したモノを、胴体部にコクピットを増設するなど改造して使用すれば、生身と比べて遥かに安全だ。
その上での援護射撃程度なら、子供達以外に赤髪ショート、そして本来なら非戦闘員である鍛冶師さんや姉妹さん達すら参戦可能になる。
遠くから照準を合わせ、トリガーを引くだけの簡単作業である。しかもゴーレムが補助してくれるので、何も難しい事はない。
〝ミルガルオルム〟との戦闘に参加し、討伐した時に得られる経験値は、鍛冶師さん達に何をもたらすのだろう。
新しい【職業】を得るのか、または何か別の結果として発現するのか。それを知りたいという純粋な好奇心は確かにあるが、そうでなくても得た経験は必ず役立つ。
今後を思えば、この好機を逃すのはあまりにも惜しいのだ。
とはいえ、安全策は何重にも構築する必要がある。
肉盾として【生成】した巨人を配置するのは当然として、彼女らが搭乗するゴーレムそのものの向上も必須だ。
それには経験や技術が必要になるが、幸いな事にその課題はベニタマが解決してくれる。
人が搭乗するコクピットや操作系統の再構築をはじめ、激しい運動をした際に内部の人間が受ける衝撃を吸収する機能の追加など、改造は多岐に及んだ。
幸い、大きな困難はなかった。
俺の前世は似たような機械で溢れていたし、実際に乗った事だって何度もあった。その情報や経験則に加え、この世界の魔法やら素材やらによる改良を次々追加していく。
大雑把にでも概念を伝えれば、ベニタマが最適化して実現してくれる事も大きい。
無数のゴーレム達が忙しなく活動するうちに、あっという間に時間が過ぎていく。
こういったモノは色々と使えるので、今後も継続していこうと思うのだった。
《七十三日目》
ゴーレム改造は昨日から一瞬たりとも休む事なく続き、今日が終わった時点で、予定していた工程の八割が終了した。
今回、基本的な運用は遠距離からの援護になるので、最初はどの機体も遠距離攻撃能力を重視するつもりだった。
だが、個々人の戦法や性格的な理由で、赤髪ショートと第三子の鬼若からは遠距離戦よりも接近戦重視の仕様がいいと言われた。また、それに合わせて、第一子のオーロ、第二子のアルジェントなどの機体の仕様も変更する事になった。
その為、今後の量産性なども見据えて、まず〝ギガンテスゴーレム・ナイトロード〟を各種運用目的ごとに幾つかのシリーズ別で改造していった。
その後、それぞれ搭乗者に合わせた細かいカスタマイズが施された。
そうして着々と準備が整っていくのを見ながら、俺は決戦に備え、事前に狩っていた巨獣や巨蟲の料理を食べ続けた。
王城に勤める老巨人の料理長が、豪快に料理包丁を振るってせっせと料理を作る傍らで、それを見ながら飯勇達がアレンジも加えつつ料理を作る。
巨人用の量で休む事なく造られる料理と、それを人並みの量にしつつアレンジも加えた料理。それらをバクバク食べるのだ。
〝リングゥーハ〟という料理がある。
ミンチにした数種類の巨獣のもも肉を平たく固めて焼き、そこに〝天領玉葱〟や〝地沈トマト〟といった新鮮な野菜と、食欲をそそる芳醇な香りを引き出す〝宝果樹〟の実の搾り汁を加えた料理だ。
見た目はお好み焼きのように平べったいハンバーグに似ているだろうか。
箸を入れると、豆腐のように柔らかく、肉汁が溢れるように出てくる。
フワッと香る肉汁の匂いは食欲を刺激して止まず、思わず口に運べば、今度は肉汁の濃厚な旨味が舌を支配する。
肉の柔らかさと野菜のシャキッとした食感、ほのかな甘味と酸味の調和。
巨獣のもも肉は赤身が多く、どちらかと言えば焼くと硬くなりやすいのだが、まるで溶けるように口の中で解けていく。
豊かな自然と濃密な魔力によって育まれた野菜は栄養満点で、それ単体でも美味しいのに、肉との融合で更に深い味となっていた。
〝ジュゴラス〟という料理がある。
鉄串に牛系や鳥系の巨獣の肉を刺し、キラキラと光る〝金砂塩〟を振り、炭火でじっくりと焼いただけの単純な料理だ。
しかし希少部位の肉を惜しげもなく使い、更に旨味成分の塊のような〝金砂塩〟で味付けされているからか、ひと口噛めばついホフリと溜息が出る。
表面はカリッと、中は柔らかいこれは、ただ単純に美味い肉料理である。
片手に持って大きく口を開けて肉に噛みつき、残る片手で酒を飲む。
ああ、最高の組み合わせである。
〝バロト・レレ〟という料理がある。
これはゲテモノ料理の一種で、孵化寸前の鳥系巨獣の卵――人間の成人男性くらいの大きさがある――をジックリと茹で、嘴や羽根がほとんど出来上がっている中身の雛を食べるというものだ。
見た目はともかく、単なる滋養強壮だけでなく、体内魔力の活性化などの効果があるらしい。
中でも最も貴重なのが不死鳥の卵を使った〝フェニ・バロト・レレ〟と呼ばれるモノで、それを食べると一定期間の不死性を得られるという。話によれば、不治の病すら治り、四肢欠損はもちろん、半身分断や頭部粉砕などの致命的な損傷すら高速再生するそうだ。
ちょっとそれ食べてみたい、なんて事を思いつつ、卵の中の独特な臭いのスープを啜り、コチラを見つめてくる雛の白目を見つめながらバリバリと頭から食べた。
今回使った卵は、嵐呼ぶ大鷲【ビガンテクスル・フェーグス】の卵だったのだが、個人的には美味いと思う。ただ見た目が見た目なので、隣に座る赤髪ショート達が嫌な顔をしていたのも仕方ないだろう。
その他にも、巨魚を使った魚料理や、巨蟲を使った蟲料理などを食べ続けた。
決戦の日までにできるだけ食べて食べて食べ尽くして、全てを血肉に変える必要があるのだから、もっともっと食べねばなるまい。
なんて言い訳をしながら美食を堪能した一日だった。
《七十四日目》
今回の〝ミルガルオルム〟戦には俺達はもちろん、鍛冶師さん達など本来なら非戦闘要員であるメンバーも参加予定となっている。
本人達も了承済みであり、真摯な瞳で『守ってくれるんでしょ?』と言われるまでもなく、俺としても全力で守るつもりだ。
ともあれ、鍛冶師さん達が参加する絶対条件でもある、各メンバー専用のゴーレムが今朝完成した。
即席の作業場として用意してもらった部屋には、〝ギガンテスゴーレム・ナイトロード〟を改造した鬼面剛体のパラベラムゴーレム〝ギガトロル〟シリーズが腰掛けるようなポーズで整然と並んでいた。
騎士のような外見のナイトロードと異なり、ギガトロルシリーズは基本的に分厚い筋肉の鎧を備えた鬼のような外見をしている。
鋭い角を備え、赤い義眼で敵を睨み、太く大きい巨体が周囲を威圧する。身の丈は、ナイトロードが三十メートル級だったのに対し、骨格や装甲などを見直した事で四十メートル級にまで巨大化している。
ナイトロードよりも太く大きく重いので、一見すると鈍重そうにも思える。しかし、設計を見直し、より良い素材を使用した事で、全体的な性能は三十パーセント以上も向上していた。重量が増えてもナイトロードより速いし俊敏だし、あらゆる面で上回っている。
そんなギガトロル達は、装甲強化に使った魔法金属の黒銀色に輝き、搭乗者の意見を取り入れたカラーリングを施している。
またカラーリングによる差以外にも、運用コンセプトや兵装、その他諸事情により、幾つかの機種に区分される。
一番数が多く、丸みを帯びてズングリムックリした形のいかにも量産機のようなのが、〝ギガトロル・アルテ〟。これは、参加したという事実の為にのみ参加させ、序盤の遠距離攻撃しか担当させる気の無い鍛冶師さん達の機体である。
基本的に遠距離砲撃しかしないので、一撃の火力を高め、生存確率を上げる為に装甲を強化、更に背面からコクピットを射出する緊急脱出装置を組み込んだ事で、かなり太めの外見になった。
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