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暗黒大陸編 2巻
暗黒大陸編 2-3
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《七十八日目》
初撃で放った〝終焉門・飢餓〟によって、〝ミルガルオルム〟が巻き付いていた王城は崩壊し、光を浴びた竜鱗や竜殻はボロボロと崩れ、その下の肉までが抉られる。
そこに鍛冶師さん達の狙撃が叩き込まれたが、ダメージ自体はあるものの筋肉の鎧に阻まれて期待したほどの効果を発揮しない。
巨人が扱うマジックアイテムだけに威力は大きく、そこらの城壁なら撃ち抜けそうな威力があったものの、分厚い筋肉の鎧には痛打にならないらしい。
チャージした分だけ撃ち込ませた後、予定通り鍛冶師さん達は急いで後退させた。
それが正しい判断だったと実感したのは、すぐ後の事である。
赤髪ショートや子供達は注意を引きすぎないように注意しながら、手近にある〝ミルガルオルム〟の身体を攻撃して傷口を抉り、血を流させてダメージを蓄積していく。
しかし身体全体に対してごく一部なので、これも大きなダメージを負わせたとは言えなかった。
また、尋常でない再生能力によって傷つけた直後から治っていくので、それを上回る為には攻撃箇所を集中させる必要があった。
そして飯勇が解体する要領で弱点を見出してくれたので、闇雲に攻撃するより遥かに効率は良かっただろう。彼女らの攻撃が大きな役割を担ったとは言えないが、それでも役には立っていた。
カナ美ちゃんは、巨体の一部を魔氷で氷漬けにする事で細胞を壊死させて再生を阻害したり、無数の魔氷の茨で拘束したりしつつ、力に満ちた血を吸う事で自身の強化なども並行している。
カナ美ちゃんの魔氷は物質を瞬間的に凍らせるだけの力がある。そして変温動物である蛇は温度変化に弱い。〝ミルガルオルム〟にもそれが当てはまるかは不明だが、とにかく相性は良かったのか、確実に動きを鈍らせ、ダメージを与えていた。
【斧鎚蚩尤】となったミノ吉くん達は、普段通り前衛となって戦っている。
巨盾を使ってあらゆる攻撃を防ぎ、巨斧で叩き切る。ついでに巨鎚で叩き潰し、巨鶴嘴で肉体を掘削していった。
尋常ではない再生能力も、攻撃箇所を炭化させるほどの熱量を秘めた斧の一撃や、骨肉もろとも叩き潰す連打や、岩盤を掘削するような連突の前には、本領を発揮できないようだ。
むしろグチャグチャにされた箇所が歪に再生してしまう事で、動かしにくくなっている部分もあるらしい。
そんなミノ吉くんらと肩を並べて前線に立つ【巨人王】の戦闘は、【光武王子】と【闇法王女】に似ていた。
いや、兄妹を鍛えたのは【巨人王】なのだから、兄妹が【巨人王】に似た、と言うのが正しいのか。
【巨人王】は兄妹と同じく両手に黄金の甲輪を装備している。これは国宝の一つであり、【幻想】級に分類される【巨神の甲輪】だ。
【巨神】の血統に連なる者だけが装備可能なこの黄金の甲輪は、装着者の身体や魔力を大幅に強化し、なおかつ魔力を物理的な破壊力に変換する能力があるらしい。
膨大な魔力を秘めた【巨人王】が操ると、シンプルな能力だけに強い。
轟風と共に繰り出される巨拳は龍鱗を砕き、衝撃が内部に浸透して周辺を破砕する。凝縮した魔力が第三第四の腕を形成し、その掌には高速回転する魔力鋸が生成され、残忍なまでに骨肉を裁断した。
【光武王子】のように技を修め、【闇法王女】のように術を使う彼はあらゆる面で隙が無く、ただただ一心不乱に魔拳を叩き込んでいく。
それに対し、〝ミルガルオルム〟もまた強かった。
初撃で痛打を与えられた事で、戦況はこちらに有利になったかと思ったが、こいつは生命力自体が尋常ではない。
そもそもの防御力が高いせいでダメージを負わせる事自体が困難なので、話に聞いていた通り、巨人の軍勢でも仕留めるのは至難だろう。むしろ、数が多ければ多いほど混乱したり、戦況が見極めにくかったりするかもしれない。
また、行ってくる攻撃は全て規模が大きいものだった。
毒牙からは、ひと吸いすれば即死し、触れれば溶け落ちるような死毒を、周囲が沼のようになって瓦礫が沈むほど大量に噴出する事に始まり。
黒雲を生み出して数千の雷を降らせる魔術を行使したり、口を裂けるくらいにまで開いて丸呑みしようとしてきたり、あるいは棘鱗に触れたモノを粉々にする超振動状態で這いずり回ったりする。
また、十八ある蛇眼は特異な能力を秘めている。目を合わせれば即座に、そうでなくても継続的に見られれば、身体が石に変わる【石化】や燃え出す【炎焼】、自分自身を見失い廃人になりかねない【意失】などの状態異常が発生してしまう。
中でも最も強力だったのは、尾で身体を支えて全身を空に向かう柱のようにピンと伸ばし、雲を貫いた後、圧縮した魔力を巨大な頭部に纏った状態で地面に突っ込む攻撃だ。
巨大な質量を天高くから高速で叩き落とすそれは、単純ながらも威力絶大である。
巨大隕石が落下したかのような、あるいは空が落ちてきたかのようなこの一撃で、《樹栄古都ティタンマギア》は呆気なく崩壊した。
ただでさえそれまでの攻防で壊滅的な状態になっていたが、地面は薄氷を踏み砕いたかのようにめくれ上がり、噴煙が天高く立ち上り、飛散した巨大な岩石や瓦礫の壁が押し寄せてくる。
規格外の巨体という特性を最大限に活用した攻撃だけに、ミノ吉くんでさえ受け止めようとすれば死ぬしかない破壊力である。防ぐ手段は乏しく、回避するしか選択肢はなかった。
地殻津波、という言葉が脳裏を過った。
そして、【神秘豊潤なる暗黒大陸】全土にまで影響を及ぼしたという地震の話は、この攻撃によるものだったのかと納得する。きっと【神秘豊潤なる暗黒大陸】という特殊な場所でなければ、地殻を貫通するような攻撃なのだろう。
そんな一撃によって引き起こされた災厄が、回避不可能な範囲と速度で襲い掛かってくる。
これに対して何も手を打たないのは流石に危険すぎる。そう判断した俺は、皆よりも前に出た。
幸い、サポートなどの関係上、それぞれと距離の差はあれど全員が俺の後方に集まっている。ばらけていればカバーする事もできなかっただろうから、不幸中の幸いである。最前にいる俺が防げば、後方の被害はまだ抑えられるはずだった。
大地を踏み砕く一歩と共に、【黒覇鬼王の金剛撃滅】や【森羅万象】などのアビリティを出し惜しみせずに使用してから、朱槍【飢え啜る朱界の極槍】を振り下ろす。
ある種の極致に至って繰り出した会心の一撃は、高速で迫りくる下手すれば雲よりも高い瓦礫の壁を、まるでモーゼの奇跡のように切り裂いた。
広範囲にわたって、俺の左右を凄まじい破壊の波が駆け抜けていくのを肌で感じる。だが俺が立っている場所はある種の安全地帯となっていて、後から後からやってくる瓦礫は欠片も飛んでこなかった。
しかし攻撃の規模が大きすぎるからか、たとえ勢いは大きく減じても、瓦礫同士の衝突などで飛散する軌道が変わり、後方への影響を完全に防げた訳ではなかった。
俺の近くにいた為に飛散する瓦礫の影響が少なかったカナ美ちゃんは、分厚い魔氷の塊に籠もる事で衝撃を受けながらもやり過ごし、ミノ吉くん達は巨盾で防いだ。
【巨人王】もまた、飛来物を受け流して切り抜ける。多少傷を負っていたが、持ち前の回復力でどうにかなる程度に抑えられている。
それから少し離れた場所にいた赤髪ショートや子供達は、コクピット内に分体を仕込んでいたおかげで何とか助かったという状態だった。
衝撃波だけで搭乗するギガトロルは城壁まで吹き飛び、追撃となる瓦礫の凶弾で装甲をボロボロにされ、何度も転がった事で四肢はもげて、もはやスクラップ状態である。
コクピットの衝撃吸収機能の限界を超えて掻き混ぜられた赤髪ショート達は、身体全体が骨折し、内臓にもダメージがある。治療が間に合ったからよかったものの、分体が肉体を保護しなければ死んでいた。
一番離れていた鍛冶師さん達にも、瓦礫の凶弾が嵐のように襲い掛かった。しかし勢いが若干落ちていた事と、持たせた複数のマジックアイテムによる守護、それから密集した〝黒王守護巨竜人〟達が代わりに犠牲となった事で、ギガトロルはギリギリ動ける状態で残った。戦闘は無理だが、逃げるのは可能なだけまだマシだ。
損害なしで切り抜けられなかったのは失態だが、これでも最善の結果だったと思いつつ、さてどうするかと俺は頭を悩ませる。
普通に戦えば、どれほどの時間が必要になるか分かったものではない。恐らく、短く見ても数日は必要になるだろう。
しかしそれだと誰かが死にそうなので、俺は真面目に戦う事は止め、頃合いを見計らって山のような尻尾の先端にとりついた。
とりついた後は、【飢え啜る朱界の極槍】の能力で地面から何百本と朱槍を突き出させて肉を貫き、それから鬼珠を解放して、全身を包む鬼珠装甲を装備する。
その状態で更に、四本の銀腕を薄く広くスライムのように伸ばし、【触手蛇の狂宴】によって無数の触手状に形状変化。
触手状になった銀腕は、何重にも巻き付く事で高い拘束力を持つだけでなく、先端が蛇の牙のように鋭く尖り、噛み付けば深く深く食い込んで簡単には外れない。
そこから【蛇毒投与】による筋弛緩系や神経破壊系の猛毒や、麻痺する炎を纏う【燃え盛る金剛痺爪】や黄金糸など、とにかく拘束に役立ちそうなアビリティを全て重複発動させていく。
内部から攻撃するようなものだが、それでも〝ミルガルオルム〟の大きさや生命力などからするとあまり影響は無いかもしれない。
だが、今は僅かでも自由を奪えればいい。【黒覇鬼王の蹂躙暴虐】によって強化された肉体なども使って、〝ミルガルオルム〟の巨躯を一部のみながらも固定する。
本当は、大量に巨獣を喰い、身体を大きくする【巨大化】などがラーニングできていれば手間も無く最良だったが、仕方ない。次善策としていた、身体を大きくするのに必要な材料を貯蔵できていただけでもよしとしておこう。
蛇は獲物を呑み込む。それを真似て、俺は鬼珠装甲に包まれた頭部を巨大化させて口を大きく広げ、尻尾から食べる事にしたのだった。
大きく変貌する頭部はまるで、吸い込んだ敵の能力をコピーするピンク色のあのキャラに、外宇宙的触手を追加したような異形。それが、巨大すぎる〝ミルガルオルム〟をズルリズルリと確実に、明らかに不釣り合いな小ささの体内へと呑み込んでいく。
端から見れば狂気検査必須な光景かもしれないが、まあ、この場にいるのは身内と【巨人王】だけである。身内は慣れているだろうし、【巨人王】は経験豊富なので大丈夫だろう。
それはともかく、尻尾からジワジワと喰われるのは、普通に戦ったり襲われたりするのよりも怖いらしい。
〝ミルガルオルム〟は驚き、大いに暴れるが、こちらも全力で動かないように固定し、そのまま食事を続ける。
外敵の攻撃を弾く分厚い龍鱗や龍殻はもちろん、太く強靭な剛肉や巨体を支える龍骨は、抵抗すらできずに歯で噛み砕かれる。
俺の最大の攻撃は、やはり噛みつきだ。
本来なら破壊できない【神器】すら噛み砕いて栄養とするだけに、たとえ微弱ながらも【神気】を宿した〝ミルガルオルム〟ですら喰える。
むしろ、極上すぎて喰うのが止まらない。
ただでさえ熟成した【神器】のように旨味成分タップリの複雑で濃厚な味わいな上、部位によって味は変わり、また蓄積したダメージによっても旨味が変わる。
ひと口喰う度に新しい驚きを提供してくれる〝ミルガルオルム〟。
一心不乱に俺は喰った。
[能力名【古龍血統】のラーニング完了]
[能力名【万死絶命の蛇龍毒】のラーニング完了]
[能力名【豊穣なる大地の礎】のラーニング完了]
[能力名【巨人種の天敵】のラーニング完了]
[能力名【大陸の神の加護】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の棘殻鱗】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の圧縮剛筋】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の積層骨格】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の断山尾】のラーニング完了]
[能力名【古代種の系譜】のラーニング完了]
[能力名【古龍の叡智】のラーニング完了]
[能力名【神獣血統】のラーニング完了]
[能力名【古都の支配者】のラーニング完了]
その上、巨体だけに喰える量が多く、その結果ラーニングできる能力の数も圧倒的である。
全て残さず喰わねばなるまいて。
《七十九日目》
食事は幸福の一つだと俺は思う。
〝ミルガルオルム〟は部位によって色々と食感が違うので噛むのも面白いのだが、顎が疲れる事もあるし、もっと大きな変化もつけたかったので、時折二本の黒槍を使う。
【終焉を招く黒槍】で穿てば、その周囲五メートルほどが黒い砂状の何かに変化し。
【根源に至る黒槍】で穿てば、その周囲五メートルほどが血液の如き赤い液体に変化する。
そうして砂と液体が混ざり合った泥のようになった〝ミルガルオルム〟の身体を、ズズズッと啜る。
噛むよりも喰いやすく、味も変化するのでペースが上がる。
しかしそれでも太さ約百メートル、体長は十数キロはありそうな〝ミルガルオルム〟は大きすぎた。
だから、旨味成分タップリな〝金砂塩〟や芳醇な香りと優しい辛みが美味い〝緑帝ワサビ〟、〝黄金玉葱〟や〝雲上ニンジン〟といった迷宮食材で作ったタレなどで味を変化させながら楽しんだ。
そうして、尻尾から食べ始めて、最後の頭部まであと少しのところまできていた。
〝ミルガルオルム〟は流石に活きが良く、身体の半分以上が喰われていても俺を殺そうと必死に反撃してくるが、全てミノ吉くんや【巨人王】達によって妨害される。
その巨躯は巨斧や巨鎚によって斬られ、または叩き潰され、巨拳の連撃によってミンチになるが、次々と高速再生する。
それでもダメージは蓄積し、着実に反撃の力を削いでいく。
攻撃を止め、全力で巨躯をうねらせると同時に脱皮して逃げようともしたが、押さえ付けてなお食べる。
やがて戦況は決した。もはや〝ミルガルオルム〟の口からは戦意に満ちた咆哮ではなく、恐怖に染まった悲鳴だけが大音量で吐き出されているに過ぎない。
ちょっとだけ同情しつつ、しかしながらダメージ蓄積により味はより濃くなっていくのだから、止められない。
悲鳴すら喰うように、俺は咀嚼し続けた。
[能力名【怨古地新】のラーニング完了]
[能力名【巨龍化】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の重圧】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の邪真眼】のラーニング完了]
[能力名【古代の天災】のラーニング完了]
夕暮れ前には、頭部まで喰う事ができた。
最後の方は〝ミルガルオルム〟もグッタリとしていたので、ズズズズっと啜り、頭部を噛み砕いて完食である。
夢心地のまま、ハフリと溜息が漏れる。腹に入った肉は確実に俺に恩恵をもたらし、更なる力の糧となるだろう。
今回の一戦では危ない場面もあったし、皆かなり怪我や疲労はあるものの、死なずに乗り越えられたのは大きい。
[エリアレイドボス〝ミルガルオルム〟の討伐に成功しました]
[神迷詩篇〔ミルガルオルム〕のクリア条件【少数撃破】【異常討滅】【自陣生存】が達成されました]
[達成者一行には特殊能力【天墜地崩の理】が付与されました]
[達成者一行には初回討伐ボーナスとして宝箱【大陸の宝蛇樹】が贈られました]
[詩篇覚醒者/主要人物による神迷詩篇攻略の為、【大陸の神】の神力の一部が徴収されました]
[神力徴収は徴収主が大神だった為、質の劣る神の神力は弾かれました]
[弾かれた神力の一部が規定により、物質化します]
[夜天童子一行は【大陸神之豊理杖】を手に入れた!!]
エリアレイドボス討伐成功の報酬であるボーナス宝箱と、その他山のように大量なドロップアイテムを手に入れた。
見るからに凄まじい魔力を発するマジックアイテムの山だ。やはり巨人サイズが多いが、俺達用のモノもある。
ドロップアイテムの半分は俺達が貰う取り決めになっている。
欲しい品を取られる事もあるが、逆もまたしかり。
俺が取った物を【巨人王】が欲しそうにする事もあれば、逆の場合もある。
まあ、大抵は自分達用の大きさのマジックアイテムを選び、どちらも欲しいモノとして被るのは、珍しい魔法金属のインゴットとかの素材系だ。とんでもなく希少なモノもゴロゴロ転がっていて、将来を見据えて押さえておきたいので、少し悩まされた。
ちなみに、ボーナス宝箱と【神器】に関しては完全に俺達用のサイズなので、俺が貰っている。そもそも俺がいなければ発生しない品なので、山分けする品の中には含めないという事で【巨人王】も納得したのだった。
ともあれ、全ての作業を終えた後は、疲弊した肉体を癒す為に宴会を開いた。
荒れ地に巨大な焚火を用意し、その傍らで野外料理を食べる。
戦闘が終わって安全になったので、赤髪ショートや子供達、鍛冶師さん達も一緒だ。飯勇もいるので、ささっと料理を用意してくれた。
ただ疲れもあるからか、普段よりもかなりシンプルだ。焼いた肉と山のような酒、あとはちょっとしたツマミという具合である。
まあ、俺は〝ミルガルオルム〟で腹が膨れているから何でもいいし、【合体】を解除したミノ吉くん達は腹が空くので、肉料理だと活力が漲ってきていいらしい。酒を飲みながら、ガツガツと頬張っていく。
疲労した身体に戻る活力は、失った血肉を再生する重要な材料となる。
しばらく飲み食いしていると、スッカリ存在を忘れていた【光武王子】と【闇法王女】一行がやってきた。
遠くから見ていただけのはずなのに、その姿は少し草臥れていた。話を聞くと、やはり激闘の余波が襲い掛かったらしい。
護衛の巨人達の中には飛散した瓦礫で傷を負った者も多かったが、とりあえず死者は出ていないという。不幸中の幸いだろう。
それはさて置き、【光武王子】達も交えて改めて飯を食う。
同行した巨人達の中には輜重隊もいたので食材の用意は万全だし、料理人もいて、並ぶ料理に彩りが加わった。
それも美味しく頂きながら、勝利の宴会は夜遅くになっても続いたのだった。
《八十日目》
疲労からか、今日は昼前まで寝た。
契約通り、〝ミルガルオルム〟討伐の名誉は【巨人王】に譲る。巨人王都《クロニュソス・ティタン》に向けて先駆けを走らせているので、既に情報は伝わり、凱旋パレードの用意は出来ているのだとか。
【巨人王】からは『また語らいたい、一緒にどうだ』としつこく誘われたが、こっちはこっちでやりたい事が出来ていた。なのでまた会う約束をして、凱旋する【巨人王】達を見送った。
その後俺達は、先の戦闘で廃墟と化したもののしばらくすれば再生するだろう《樹栄古都ティタンマギア》から、【骸骨大百足】に乗ってさっさと次の都市へと向かった。
王城での簡易ゴーレム工場の後片付けは既に済んでおり、アルジェントが仲良くなった【バルバトス】家のクレイス嬢とも一時の別れの挨拶を終えている。
彼女には連絡手段も渡しているので、またすぐに会う事になるかもしれない。アルジェントの将来にも関係するので、その辺りはちょっとだけ距離を置いてどうなるのか見守りつつ、新しい食材を求める旅は続く。
次なる目的地は、【地龍王】グランバドス=レプトナバルが統治する地下都市《グランバグラス》。
鉱物資源が豊富だというのでアス江ちゃんが強く反応し、また鍛冶師さんや錬金術師さん達なども新しい研究材料が欲しいから見にいってみたいと言っている都市である。
ここの近くにもエリアレイドボスがいるらしく、その名は古代守護呪恩宝王〝ファブニリプガン〟という、【遺産の神】が選んだ存在らしい。
それはそれでどんなものだろうかと思うが、俺が最も気になっているのはただ一つ。
【巨人王】が宴会の席で言っていた、地下都市《グランバグラス》のご当地料理である、世にも珍しい岩土料理についてだ。
誰でも美味しく食べられる岩土料理とは、一体どういう料理なのだろうか。
是非実食したいものである。
初撃で放った〝終焉門・飢餓〟によって、〝ミルガルオルム〟が巻き付いていた王城は崩壊し、光を浴びた竜鱗や竜殻はボロボロと崩れ、その下の肉までが抉られる。
そこに鍛冶師さん達の狙撃が叩き込まれたが、ダメージ自体はあるものの筋肉の鎧に阻まれて期待したほどの効果を発揮しない。
巨人が扱うマジックアイテムだけに威力は大きく、そこらの城壁なら撃ち抜けそうな威力があったものの、分厚い筋肉の鎧には痛打にならないらしい。
チャージした分だけ撃ち込ませた後、予定通り鍛冶師さん達は急いで後退させた。
それが正しい判断だったと実感したのは、すぐ後の事である。
赤髪ショートや子供達は注意を引きすぎないように注意しながら、手近にある〝ミルガルオルム〟の身体を攻撃して傷口を抉り、血を流させてダメージを蓄積していく。
しかし身体全体に対してごく一部なので、これも大きなダメージを負わせたとは言えなかった。
また、尋常でない再生能力によって傷つけた直後から治っていくので、それを上回る為には攻撃箇所を集中させる必要があった。
そして飯勇が解体する要領で弱点を見出してくれたので、闇雲に攻撃するより遥かに効率は良かっただろう。彼女らの攻撃が大きな役割を担ったとは言えないが、それでも役には立っていた。
カナ美ちゃんは、巨体の一部を魔氷で氷漬けにする事で細胞を壊死させて再生を阻害したり、無数の魔氷の茨で拘束したりしつつ、力に満ちた血を吸う事で自身の強化なども並行している。
カナ美ちゃんの魔氷は物質を瞬間的に凍らせるだけの力がある。そして変温動物である蛇は温度変化に弱い。〝ミルガルオルム〟にもそれが当てはまるかは不明だが、とにかく相性は良かったのか、確実に動きを鈍らせ、ダメージを与えていた。
【斧鎚蚩尤】となったミノ吉くん達は、普段通り前衛となって戦っている。
巨盾を使ってあらゆる攻撃を防ぎ、巨斧で叩き切る。ついでに巨鎚で叩き潰し、巨鶴嘴で肉体を掘削していった。
尋常ではない再生能力も、攻撃箇所を炭化させるほどの熱量を秘めた斧の一撃や、骨肉もろとも叩き潰す連打や、岩盤を掘削するような連突の前には、本領を発揮できないようだ。
むしろグチャグチャにされた箇所が歪に再生してしまう事で、動かしにくくなっている部分もあるらしい。
そんなミノ吉くんらと肩を並べて前線に立つ【巨人王】の戦闘は、【光武王子】と【闇法王女】に似ていた。
いや、兄妹を鍛えたのは【巨人王】なのだから、兄妹が【巨人王】に似た、と言うのが正しいのか。
【巨人王】は兄妹と同じく両手に黄金の甲輪を装備している。これは国宝の一つであり、【幻想】級に分類される【巨神の甲輪】だ。
【巨神】の血統に連なる者だけが装備可能なこの黄金の甲輪は、装着者の身体や魔力を大幅に強化し、なおかつ魔力を物理的な破壊力に変換する能力があるらしい。
膨大な魔力を秘めた【巨人王】が操ると、シンプルな能力だけに強い。
轟風と共に繰り出される巨拳は龍鱗を砕き、衝撃が内部に浸透して周辺を破砕する。凝縮した魔力が第三第四の腕を形成し、その掌には高速回転する魔力鋸が生成され、残忍なまでに骨肉を裁断した。
【光武王子】のように技を修め、【闇法王女】のように術を使う彼はあらゆる面で隙が無く、ただただ一心不乱に魔拳を叩き込んでいく。
それに対し、〝ミルガルオルム〟もまた強かった。
初撃で痛打を与えられた事で、戦況はこちらに有利になったかと思ったが、こいつは生命力自体が尋常ではない。
そもそもの防御力が高いせいでダメージを負わせる事自体が困難なので、話に聞いていた通り、巨人の軍勢でも仕留めるのは至難だろう。むしろ、数が多ければ多いほど混乱したり、戦況が見極めにくかったりするかもしれない。
また、行ってくる攻撃は全て規模が大きいものだった。
毒牙からは、ひと吸いすれば即死し、触れれば溶け落ちるような死毒を、周囲が沼のようになって瓦礫が沈むほど大量に噴出する事に始まり。
黒雲を生み出して数千の雷を降らせる魔術を行使したり、口を裂けるくらいにまで開いて丸呑みしようとしてきたり、あるいは棘鱗に触れたモノを粉々にする超振動状態で這いずり回ったりする。
また、十八ある蛇眼は特異な能力を秘めている。目を合わせれば即座に、そうでなくても継続的に見られれば、身体が石に変わる【石化】や燃え出す【炎焼】、自分自身を見失い廃人になりかねない【意失】などの状態異常が発生してしまう。
中でも最も強力だったのは、尾で身体を支えて全身を空に向かう柱のようにピンと伸ばし、雲を貫いた後、圧縮した魔力を巨大な頭部に纏った状態で地面に突っ込む攻撃だ。
巨大な質量を天高くから高速で叩き落とすそれは、単純ながらも威力絶大である。
巨大隕石が落下したかのような、あるいは空が落ちてきたかのようなこの一撃で、《樹栄古都ティタンマギア》は呆気なく崩壊した。
ただでさえそれまでの攻防で壊滅的な状態になっていたが、地面は薄氷を踏み砕いたかのようにめくれ上がり、噴煙が天高く立ち上り、飛散した巨大な岩石や瓦礫の壁が押し寄せてくる。
規格外の巨体という特性を最大限に活用した攻撃だけに、ミノ吉くんでさえ受け止めようとすれば死ぬしかない破壊力である。防ぐ手段は乏しく、回避するしか選択肢はなかった。
地殻津波、という言葉が脳裏を過った。
そして、【神秘豊潤なる暗黒大陸】全土にまで影響を及ぼしたという地震の話は、この攻撃によるものだったのかと納得する。きっと【神秘豊潤なる暗黒大陸】という特殊な場所でなければ、地殻を貫通するような攻撃なのだろう。
そんな一撃によって引き起こされた災厄が、回避不可能な範囲と速度で襲い掛かってくる。
これに対して何も手を打たないのは流石に危険すぎる。そう判断した俺は、皆よりも前に出た。
幸い、サポートなどの関係上、それぞれと距離の差はあれど全員が俺の後方に集まっている。ばらけていればカバーする事もできなかっただろうから、不幸中の幸いである。最前にいる俺が防げば、後方の被害はまだ抑えられるはずだった。
大地を踏み砕く一歩と共に、【黒覇鬼王の金剛撃滅】や【森羅万象】などのアビリティを出し惜しみせずに使用してから、朱槍【飢え啜る朱界の極槍】を振り下ろす。
ある種の極致に至って繰り出した会心の一撃は、高速で迫りくる下手すれば雲よりも高い瓦礫の壁を、まるでモーゼの奇跡のように切り裂いた。
広範囲にわたって、俺の左右を凄まじい破壊の波が駆け抜けていくのを肌で感じる。だが俺が立っている場所はある種の安全地帯となっていて、後から後からやってくる瓦礫は欠片も飛んでこなかった。
しかし攻撃の規模が大きすぎるからか、たとえ勢いは大きく減じても、瓦礫同士の衝突などで飛散する軌道が変わり、後方への影響を完全に防げた訳ではなかった。
俺の近くにいた為に飛散する瓦礫の影響が少なかったカナ美ちゃんは、分厚い魔氷の塊に籠もる事で衝撃を受けながらもやり過ごし、ミノ吉くん達は巨盾で防いだ。
【巨人王】もまた、飛来物を受け流して切り抜ける。多少傷を負っていたが、持ち前の回復力でどうにかなる程度に抑えられている。
それから少し離れた場所にいた赤髪ショートや子供達は、コクピット内に分体を仕込んでいたおかげで何とか助かったという状態だった。
衝撃波だけで搭乗するギガトロルは城壁まで吹き飛び、追撃となる瓦礫の凶弾で装甲をボロボロにされ、何度も転がった事で四肢はもげて、もはやスクラップ状態である。
コクピットの衝撃吸収機能の限界を超えて掻き混ぜられた赤髪ショート達は、身体全体が骨折し、内臓にもダメージがある。治療が間に合ったからよかったものの、分体が肉体を保護しなければ死んでいた。
一番離れていた鍛冶師さん達にも、瓦礫の凶弾が嵐のように襲い掛かった。しかし勢いが若干落ちていた事と、持たせた複数のマジックアイテムによる守護、それから密集した〝黒王守護巨竜人〟達が代わりに犠牲となった事で、ギガトロルはギリギリ動ける状態で残った。戦闘は無理だが、逃げるのは可能なだけまだマシだ。
損害なしで切り抜けられなかったのは失態だが、これでも最善の結果だったと思いつつ、さてどうするかと俺は頭を悩ませる。
普通に戦えば、どれほどの時間が必要になるか分かったものではない。恐らく、短く見ても数日は必要になるだろう。
しかしそれだと誰かが死にそうなので、俺は真面目に戦う事は止め、頃合いを見計らって山のような尻尾の先端にとりついた。
とりついた後は、【飢え啜る朱界の極槍】の能力で地面から何百本と朱槍を突き出させて肉を貫き、それから鬼珠を解放して、全身を包む鬼珠装甲を装備する。
その状態で更に、四本の銀腕を薄く広くスライムのように伸ばし、【触手蛇の狂宴】によって無数の触手状に形状変化。
触手状になった銀腕は、何重にも巻き付く事で高い拘束力を持つだけでなく、先端が蛇の牙のように鋭く尖り、噛み付けば深く深く食い込んで簡単には外れない。
そこから【蛇毒投与】による筋弛緩系や神経破壊系の猛毒や、麻痺する炎を纏う【燃え盛る金剛痺爪】や黄金糸など、とにかく拘束に役立ちそうなアビリティを全て重複発動させていく。
内部から攻撃するようなものだが、それでも〝ミルガルオルム〟の大きさや生命力などからするとあまり影響は無いかもしれない。
だが、今は僅かでも自由を奪えればいい。【黒覇鬼王の蹂躙暴虐】によって強化された肉体なども使って、〝ミルガルオルム〟の巨躯を一部のみながらも固定する。
本当は、大量に巨獣を喰い、身体を大きくする【巨大化】などがラーニングできていれば手間も無く最良だったが、仕方ない。次善策としていた、身体を大きくするのに必要な材料を貯蔵できていただけでもよしとしておこう。
蛇は獲物を呑み込む。それを真似て、俺は鬼珠装甲に包まれた頭部を巨大化させて口を大きく広げ、尻尾から食べる事にしたのだった。
大きく変貌する頭部はまるで、吸い込んだ敵の能力をコピーするピンク色のあのキャラに、外宇宙的触手を追加したような異形。それが、巨大すぎる〝ミルガルオルム〟をズルリズルリと確実に、明らかに不釣り合いな小ささの体内へと呑み込んでいく。
端から見れば狂気検査必須な光景かもしれないが、まあ、この場にいるのは身内と【巨人王】だけである。身内は慣れているだろうし、【巨人王】は経験豊富なので大丈夫だろう。
それはともかく、尻尾からジワジワと喰われるのは、普通に戦ったり襲われたりするのよりも怖いらしい。
〝ミルガルオルム〟は驚き、大いに暴れるが、こちらも全力で動かないように固定し、そのまま食事を続ける。
外敵の攻撃を弾く分厚い龍鱗や龍殻はもちろん、太く強靭な剛肉や巨体を支える龍骨は、抵抗すらできずに歯で噛み砕かれる。
俺の最大の攻撃は、やはり噛みつきだ。
本来なら破壊できない【神器】すら噛み砕いて栄養とするだけに、たとえ微弱ながらも【神気】を宿した〝ミルガルオルム〟ですら喰える。
むしろ、極上すぎて喰うのが止まらない。
ただでさえ熟成した【神器】のように旨味成分タップリの複雑で濃厚な味わいな上、部位によって味は変わり、また蓄積したダメージによっても旨味が変わる。
ひと口喰う度に新しい驚きを提供してくれる〝ミルガルオルム〟。
一心不乱に俺は喰った。
[能力名【古龍血統】のラーニング完了]
[能力名【万死絶命の蛇龍毒】のラーニング完了]
[能力名【豊穣なる大地の礎】のラーニング完了]
[能力名【巨人種の天敵】のラーニング完了]
[能力名【大陸の神の加護】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の棘殻鱗】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の圧縮剛筋】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の積層骨格】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の断山尾】のラーニング完了]
[能力名【古代種の系譜】のラーニング完了]
[能力名【古龍の叡智】のラーニング完了]
[能力名【神獣血統】のラーニング完了]
[能力名【古都の支配者】のラーニング完了]
その上、巨体だけに喰える量が多く、その結果ラーニングできる能力の数も圧倒的である。
全て残さず喰わねばなるまいて。
《七十九日目》
食事は幸福の一つだと俺は思う。
〝ミルガルオルム〟は部位によって色々と食感が違うので噛むのも面白いのだが、顎が疲れる事もあるし、もっと大きな変化もつけたかったので、時折二本の黒槍を使う。
【終焉を招く黒槍】で穿てば、その周囲五メートルほどが黒い砂状の何かに変化し。
【根源に至る黒槍】で穿てば、その周囲五メートルほどが血液の如き赤い液体に変化する。
そうして砂と液体が混ざり合った泥のようになった〝ミルガルオルム〟の身体を、ズズズッと啜る。
噛むよりも喰いやすく、味も変化するのでペースが上がる。
しかしそれでも太さ約百メートル、体長は十数キロはありそうな〝ミルガルオルム〟は大きすぎた。
だから、旨味成分タップリな〝金砂塩〟や芳醇な香りと優しい辛みが美味い〝緑帝ワサビ〟、〝黄金玉葱〟や〝雲上ニンジン〟といった迷宮食材で作ったタレなどで味を変化させながら楽しんだ。
そうして、尻尾から食べ始めて、最後の頭部まであと少しのところまできていた。
〝ミルガルオルム〟は流石に活きが良く、身体の半分以上が喰われていても俺を殺そうと必死に反撃してくるが、全てミノ吉くんや【巨人王】達によって妨害される。
その巨躯は巨斧や巨鎚によって斬られ、または叩き潰され、巨拳の連撃によってミンチになるが、次々と高速再生する。
それでもダメージは蓄積し、着実に反撃の力を削いでいく。
攻撃を止め、全力で巨躯をうねらせると同時に脱皮して逃げようともしたが、押さえ付けてなお食べる。
やがて戦況は決した。もはや〝ミルガルオルム〟の口からは戦意に満ちた咆哮ではなく、恐怖に染まった悲鳴だけが大音量で吐き出されているに過ぎない。
ちょっとだけ同情しつつ、しかしながらダメージ蓄積により味はより濃くなっていくのだから、止められない。
悲鳴すら喰うように、俺は咀嚼し続けた。
[能力名【怨古地新】のラーニング完了]
[能力名【巨龍化】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の重圧】のラーニング完了]
[能力名【蛇龍覇王の邪真眼】のラーニング完了]
[能力名【古代の天災】のラーニング完了]
夕暮れ前には、頭部まで喰う事ができた。
最後の方は〝ミルガルオルム〟もグッタリとしていたので、ズズズズっと啜り、頭部を噛み砕いて完食である。
夢心地のまま、ハフリと溜息が漏れる。腹に入った肉は確実に俺に恩恵をもたらし、更なる力の糧となるだろう。
今回の一戦では危ない場面もあったし、皆かなり怪我や疲労はあるものの、死なずに乗り越えられたのは大きい。
[エリアレイドボス〝ミルガルオルム〟の討伐に成功しました]
[神迷詩篇〔ミルガルオルム〕のクリア条件【少数撃破】【異常討滅】【自陣生存】が達成されました]
[達成者一行には特殊能力【天墜地崩の理】が付与されました]
[達成者一行には初回討伐ボーナスとして宝箱【大陸の宝蛇樹】が贈られました]
[詩篇覚醒者/主要人物による神迷詩篇攻略の為、【大陸の神】の神力の一部が徴収されました]
[神力徴収は徴収主が大神だった為、質の劣る神の神力は弾かれました]
[弾かれた神力の一部が規定により、物質化します]
[夜天童子一行は【大陸神之豊理杖】を手に入れた!!]
エリアレイドボス討伐成功の報酬であるボーナス宝箱と、その他山のように大量なドロップアイテムを手に入れた。
見るからに凄まじい魔力を発するマジックアイテムの山だ。やはり巨人サイズが多いが、俺達用のモノもある。
ドロップアイテムの半分は俺達が貰う取り決めになっている。
欲しい品を取られる事もあるが、逆もまたしかり。
俺が取った物を【巨人王】が欲しそうにする事もあれば、逆の場合もある。
まあ、大抵は自分達用の大きさのマジックアイテムを選び、どちらも欲しいモノとして被るのは、珍しい魔法金属のインゴットとかの素材系だ。とんでもなく希少なモノもゴロゴロ転がっていて、将来を見据えて押さえておきたいので、少し悩まされた。
ちなみに、ボーナス宝箱と【神器】に関しては完全に俺達用のサイズなので、俺が貰っている。そもそも俺がいなければ発生しない品なので、山分けする品の中には含めないという事で【巨人王】も納得したのだった。
ともあれ、全ての作業を終えた後は、疲弊した肉体を癒す為に宴会を開いた。
荒れ地に巨大な焚火を用意し、その傍らで野外料理を食べる。
戦闘が終わって安全になったので、赤髪ショートや子供達、鍛冶師さん達も一緒だ。飯勇もいるので、ささっと料理を用意してくれた。
ただ疲れもあるからか、普段よりもかなりシンプルだ。焼いた肉と山のような酒、あとはちょっとしたツマミという具合である。
まあ、俺は〝ミルガルオルム〟で腹が膨れているから何でもいいし、【合体】を解除したミノ吉くん達は腹が空くので、肉料理だと活力が漲ってきていいらしい。酒を飲みながら、ガツガツと頬張っていく。
疲労した身体に戻る活力は、失った血肉を再生する重要な材料となる。
しばらく飲み食いしていると、スッカリ存在を忘れていた【光武王子】と【闇法王女】一行がやってきた。
遠くから見ていただけのはずなのに、その姿は少し草臥れていた。話を聞くと、やはり激闘の余波が襲い掛かったらしい。
護衛の巨人達の中には飛散した瓦礫で傷を負った者も多かったが、とりあえず死者は出ていないという。不幸中の幸いだろう。
それはさて置き、【光武王子】達も交えて改めて飯を食う。
同行した巨人達の中には輜重隊もいたので食材の用意は万全だし、料理人もいて、並ぶ料理に彩りが加わった。
それも美味しく頂きながら、勝利の宴会は夜遅くになっても続いたのだった。
《八十日目》
疲労からか、今日は昼前まで寝た。
契約通り、〝ミルガルオルム〟討伐の名誉は【巨人王】に譲る。巨人王都《クロニュソス・ティタン》に向けて先駆けを走らせているので、既に情報は伝わり、凱旋パレードの用意は出来ているのだとか。
【巨人王】からは『また語らいたい、一緒にどうだ』としつこく誘われたが、こっちはこっちでやりたい事が出来ていた。なのでまた会う約束をして、凱旋する【巨人王】達を見送った。
その後俺達は、先の戦闘で廃墟と化したもののしばらくすれば再生するだろう《樹栄古都ティタンマギア》から、【骸骨大百足】に乗ってさっさと次の都市へと向かった。
王城での簡易ゴーレム工場の後片付けは既に済んでおり、アルジェントが仲良くなった【バルバトス】家のクレイス嬢とも一時の別れの挨拶を終えている。
彼女には連絡手段も渡しているので、またすぐに会う事になるかもしれない。アルジェントの将来にも関係するので、その辺りはちょっとだけ距離を置いてどうなるのか見守りつつ、新しい食材を求める旅は続く。
次なる目的地は、【地龍王】グランバドス=レプトナバルが統治する地下都市《グランバグラス》。
鉱物資源が豊富だというのでアス江ちゃんが強く反応し、また鍛冶師さんや錬金術師さん達なども新しい研究材料が欲しいから見にいってみたいと言っている都市である。
ここの近くにもエリアレイドボスがいるらしく、その名は古代守護呪恩宝王〝ファブニリプガン〟という、【遺産の神】が選んだ存在らしい。
それはそれでどんなものだろうかと思うが、俺が最も気になっているのはただ一つ。
【巨人王】が宴会の席で言っていた、地下都市《グランバグラス》のご当地料理である、世にも珍しい岩土料理についてだ。
誰でも美味しく食べられる岩土料理とは、一体どういう料理なのだろうか。
是非実食したいものである。
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