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1巻
1-4
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腰に下げていた三個の〝火精石〟――【物品鑑定】で鑑定した結果判明した。どうやら意思の無い低レベルの火の精霊が宿っているらしい――入りの小袋はありがたく回収し、錆びてはいるが鎧も一応回収し、ちょっと錆びたロングソードは二本とも俺の腰に。
死体は、俺は二頭の頭部と心臓と右腕、ゴブ吉くんとゴブ美ちゃんは残った部分を山分けした。
感想としては、なんだろう、不思議な食感だった。味は、美味い、様な気がするって微妙なレベルだったが。
[能力名【異種族言語】のラーニング完了]
[能力名【見切り】のラーニング完了]
やはりコボルドは普通のホブゴブリンよりも強めらしい。ゴブ吉くんが勝てたのは装備の差が大きかったし。俺はアビリティの豊富さと経験の差です。
あと、火の精霊が宿っているらしい火精石もついでに食べたら――
[能力名【発火能力】のラーニング完了]
発火能力も手に入れてしまった。自然界において、火の能力を持っているのかいないのか、その差は大きく覆し難く。
これでようやく焼肉にできると思うと……
その後はホーンラビットとかを狩って帰りました。
今日の献上品はホーンラビットに交じってヨロイタヌキがあって驚いた。こいつ等、成長してやがる。
後日、ヨロイタヌキを取ってきたゴブリンには甲殻を使用した盾でも贈ってやろうと思う。
晩飯は他の奴らの肉も焼いて、焼肉パーティーと洒落こんだ。
《十六日目》
殺しの手管を教えて下さい、的な事を言われながら同年代のゴブリン達全員から土下座された。
洞窟内でズラリと並んで土下座するゴブリン。かなりシュールな光景だった。
俺が飯をやったゴブリン達もそれ以外の細々と生き残ってた奴らも、最近はホーンラビットを殺せるようになったらしいんだけど、それでもやっぱりナイトバイパーとかが相手では手も足も出ないらしい。
だからそれ等を殺して喰ってきた俺達に、と言うか主に俺に、生きる術を教えてもらいたいらしい。
俺達の利益は? と聞いたら、獲物を献上すると言い出した。どうやらゴブリン(下僕)達の様子を見て、そんな考えが浮かんだようで。
まあ、それなら損はないかな、って事で太陽が真上に昇る前まではゴブ吉くんとゴブ美ちゃんも交えて、生き残っている殆どのゴブリンと合同訓練を行う事となった。
訓練は、俺にもゴブ吉くんにもゴブ美ちゃんにも、生きるためにはやっておいて損はない。
弱肉強食な世界だから、最初の訓練で徹底的に俺が上なんだと身体に教え込んでおく。雄雌問わずに徹底的に。反逆とかされたら面倒だから、本能に刷り込むように執拗に繰り返す。
身体と心が壊れてしまわないように、しかし元気が有り余るなんて事はないギリギリのレベルを心掛けてみました。
その結果、今日はゴブ吉くんとゴブ美ちゃんを含めた全員の足腰が立たなくなりました。
汗をダラダラと滝のように流し、息も絶え絶えに転がっているゴブリン達に、俺は献上品によってはその素材から何か造ってやる、とも言っておいた。
それでなんかやる気になったようだが、一応無茶はするなと釘を刺しておく。死んだら終わりだからさ。
……ゴブ美ちゃんがプルプルと震える身体で同年代のメスに、心底自慢げに防具と首飾りを見せていたが、何も見なかった事にしておこう。
午後になり、転生して初めて独りでハンティングに出かけた。
最初ならいざ知らず、既に庭のようになった森を動き回って動けない奴等の分も多少は多めに獲物を確保し、今日のハンティングは終了。これくらいのサービスはあって良いだろう。
疲労で思う様に動けないゴブリン達に飯を配給してやった。
――その夜、俺は洞窟の奥に赴いた。
何処かから連れてこられた人間の女性が入れられている、淫臭と絶望が沈殿している場所だ。
ホブゴブリンになってちょっと人間に近づいた姿なら、会話くらいできるかもしれないと思っての事である。外の情報が欲しかった。
それで、結局会話はできませんでした。
完璧に壊れてます。目が完全に死んでます。涎がダラダラと溢れてます。微かに死臭すら漂ってる様な気がします。前見つけた時よりも症状が進行してました。仕方がないと言えば仕方がない環境だが、見ていてあまり気持ちが良い光景ではないのは確かだ。
あと美醜で言えば一番若くて美な子がこの短期間で孕まされてました。これも仕方が無いとはいえ、かなり不憫である。
この子くらい可愛ければ嫁ぎ先など幾らでもあっただろうに、彼女の結末はこんな場所で犯され続けるだけなのか、と思わざるを得ない。
だから、俺は聞いてみた。
『死にたいか』と。
以前の俺なら合掌してハイ終わりだったが、ホブゴブリンにランクアップした今だからこそ、聞ける問。例えバレたとしても自分の安全は確保できる今の俺ならば、何の躊躇いも無く彼女達を殺して/助けてやれる。
その問いの返答は、無かった。
しかし、動きはあった。小さく弱く唇だけが動き、ふと思い出したように流れ落ちる涙で、彼女達の意思を理解した俺は、コボルドを狩って得た小袋に入れていた小瓶(液体入り)を置いて寝所に戻った。
振り返りは、しなかった。二度と。
《十七日目》
朝起きて奥に向かうと、捕われていた女性全員が死んでいた。皆、静かに息を引き取っていた。
その様子から、彼女達は眠りながら死んでいくような毒を飲んだらしい。何処でそんな毒を手に入れたのか、不思議である。本当に、不思議な事もあったもんだ。
第一発見者である俺は近くに転がっていた小瓶をその証拠として回収し、腰に提げている小袋に入れてから、まだ寝ていたゴブ爺に報告した。
飛び起き、急いで奥に行ったゴブ爺は美の女性の腹から流れたふにゃふにゃの子ゴブリンを前に、情けない位涙を流しながら嘆いていたけど、俺は知らん。
彼女達と子ゴブリンの死体は、俺が責任を持って処分した。
骸を動物達に滅茶苦茶に喰い散らかされるのも不憫だったので、心臓と胃、それと片方の乳房と子宮を手間賃として貰い、俺は火葬を行った。
先日得た【発火能力】だけではまだ火力が足りなかったので、普段から何かに使えないかと思って集めていた、火をつけるとよく燃える【油草】と枯れ枝を組んで火力を確保。
【発火能力】で着火し、煌々と燃え上がる火柱を見ながら、合掌し、彼女達の冥福を祈る。
南無阿弥陀仏。
紅蓮に燃え上がる炎と彼女達の亡骸が灰になるまで見続けた。
そしてどうやら、彼女達の中には冒険者的な職業をしていた子も居たらしい。
それも結構な数が。出稼ぎ組は、案外強いのかもしれない……捕まっていた子達が、弱かっただけなのかもしれないが。
[能力名【異種族言語】のラーニング完了]
[能力名【大陸文字解読】のラーニング完了]
[能力名【脳内地図製作技能】のラーニング完了]
[能力名【職業・魔術師】のラーニング完了]
[能力名【職業・軽剣士】のラーニング完了]
[能力名【職業・森司祭】のラーニング完了]
[能力名【職業・細工師】のラーニング完了]
俺としては珍しいことだが、得たアビリティの詳細について検証する気も起きず、午前の訓練を行った後、ハンティングする気も起きなかったのでゴブ吉くんとゴブ美ちゃんをバディーとして送り出し、今日は溜まっていた素材を使って盾や、甲殻製の剣などの実験製作に勤しんだ。
最近何かを造る事が趣味になってきた気がするな……
あ、さっそく【職業・細工師】が役に立ったようだ。以前よりも高品質な品ができたのである。恐らく、アビリティ名通り職業補正が加わったのだろう。
飯は、昨日よりも増えた献上品とゴブ吉くんとゴブ美ちゃんが持ってきてくれた分で賄った。
それと今更になってしまったが、今日起きたらゴブ美ちゃんもホブゴブリンになってました。
ちょっと可愛くなっていて驚いた。ゴブリンの時との差が著しいです。
装備も小さくなってしまったので、俺の予備を貸している。
嬉しい様な、不満なような、ちょっと微妙な表情をしていたので後で新しいのをプレゼントしようと思う。
本当は今日造ってあげれば良かったんだが、時間が足りなかったのだ。
《十八日目》
午前の訓練を終え、普段通り三ゴブで行動中、再びコボルドを発見。
今度は三体で、うち二体は以前のと同じく胴鎧にロングソードという装備だったのだが、残りの一体は短弓と矢筒を装備していた。
これは二日連続のゴブ美ちゃん強化フラグか、って事で、周囲を索敵して他に潜んでいないか確認。
入念に探しても発見できなかったので、強襲を選択。
遠距離攻撃が可能な短弓装備のコボルドが他のよりも脅威レベルが上なので優先して攻撃することにして、まずゴブ美ちゃんがスタッフ・スリングを使った毒石投擲による奇襲を敢行。
筋弛緩系の毒に濡れた石は見事短弓を装備したコボルドの眼球に着弾し、正常な判断と視覚を奪う。
残りのコボルド達が慌てふためいたその隙を逃さず、以前のよりもちょっとだけマシそうなロングソードを装備した二体を、俺とゴブ吉くんが叩き伏せた。
ボロとは言え鉄製のロングソードは今の身体に丁度良く、標的の身体を穿ち、首を切り落とすのが楽だった。角って、今やナイフみたいなもんだから尚更そう感じたのかもしれんが。
ゴブ吉くんが相手にしたコボルドは、全身至る所の骨が乱暴に砕かれてます。ちょっとグロい。
短弓装備だったコボルドは、ゴブ美ちゃんにプレゼントした黒曜石のような鉱石製のナイフモドキによって頸部を切断され、血を吹きだし、最後に心臓を突かれて止めを刺された。
どうやらゴブ美ちゃんの能力構成は知能と速度重視よりらしい。武器の巧みな扱いは知能が必要だし。
その後はバリバリと死体を解体。胴鎧を回収し、短弓と矢筒はゴブ美ちゃんに持たせ、ロングソードは俺の新しい武器にした。ゴブ吉くんに適した装備は無かったので、また今度である。
残念ながら火精石は持っていなかったが、それなりに物が入れられる小袋を三つも増やせたのはありがたい。一つは自分用にして、残りに持ってきていた薬草を幾つか入れて二ゴブに持たせておく。
これで何かあっても、多少の役には立つに違いない。
んで、一ゴブ一体計算でバリバリと喰いました。
新しいアビリティはラーニングできなかったけど、もう少しで何かを手に入りそうな感じだったし、既に手に入れていた【見切り】を強化できたのでよし。
【見切り】は視野内の敵が繰り出す攻撃軌道が赤い線として見えるので、戦闘時には大変重宝するのだ。後は適当にハンティングを繰り返して、洞窟に帰って寝た。
《十九日目》
午前の訓練を終えた後、俺はそのままハンティングに赴かずに、洞窟奥の道具置き場に向かった。
捕われていた女性達に冒険者的なアビリティ持ちが交じっていたのだから、何かそれ関係のアイテムが無いかなー、と思い立ったからだ。
ただ見ただけでは流石の俺も道具の良し悪しを大まかにしか理解できないのだが、アビリティ
【物品鑑定】をオークから入手しているので詳細を見る事が可能だ。
それに、【物品鑑定】の経験値稼ぎも兼ねているので、不発に終わっても決しては無駄では無い。
そんな気楽な気分でいたのだが、俺は掘り出し物を発見したようである。
それも大量に。
[ゴブ朗は〝[武器・杖]魔術師の杖・入門版〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・杖]祝福された宿り木の杖〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・剣]鉄製のエストック×3〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・短剣]鉄製のボウィー・ナイフ×4〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・斧]鉄製のバトルアックス×2〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・遠隔]クロスボウ×2〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・消耗品]鉄製鏃の矢×50〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[防具・盾]鉄製のラウンドシールド×2〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[防具・鎧]傷だらけのブレストプレート〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[防具・手甲]堅牢なる錬鉄製のガントレット〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[薬品]古くなった体力回復薬×6〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[薬品]古くなった魔力回復薬×8〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[薬品]エンリケ教の祝福された聖水入り瓶×3〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[収納品]孔の開いた背嚢×2〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[収納品]孔の開いた雑嚢×3〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[書籍]世界放浪記・王都から秘境まで 上巻〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[書籍]魔術師入門・基礎魔術一覧 中巻〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[書籍]エリエッタ大陸文字学習のススメ〟を手に入れた!!]
出るわ出るわ、今の俺からすればお宝の数々が。
以前チラッと見た限りではボロばかりだったが、発掘してみるとその下には十分使えるモノが眠っていたのである。うん、ここは本当に宝物庫であったらしい。
発掘できたエストックは今持っているロングソードと性能面では大差ないが、状態が良かったので交換しておく。
ついでに今まで使っていた黒曜石のナイフと今回獲得したボウィー・ナイフ――刀身は長く、片刃だが、先端のみ両刃になった狩猟用ナイフの一種――を交換しておく。
多少数は多いが、ナイフ専用のポケットは既に製作済みなので装備するのに問題はなかった。
ボウィー・ナイフにはコレから解体の際に活躍してくれる事を期待しておく。
あと、エストックと交換したロングソード二本と、残り一本のエストックをバリバリと喰ってみた。
[能力名【斬撃力強化】のラーニング完了]
[能力名【貫通力強化】のラーニング完了]
ロングソードを喰って【斬撃力強化】を、エストックを喰って【貫通力強化】をラーニングする事に成功。
コレから分かる様に俺の【吸喰能力】は生物でなくてもアビリティをラーニングできるのだが、一定レベル以上の品――能力の強弱は勿論、質や使用されてきた歴史に俺の思い入れなどが関係している模様――でないと意味が無いので、今まで喰う事は無かったが、これなら行けるかなと思ったので実行してみたのである。
失敗しても取り返しがつく、というのも実行する理由にはなっていたが。
結果は上々で、気分がいい。
洞窟の奥で独りそんな事をしていたら、ゴブ吉くんとゴブ美ちゃんがやって来た。
どうやら俺の姿が見えない事を不思議に思い、探しに来てくれたらしい。
丁度良かったので、ポーションなどの細々とした品は腰に下げるタイプのフィールドバッグに、他のモノはバックパックに詰め込んで、それでも入りきらないのを二ゴブに頼んで運ぶのを手伝って貰う。
んで、ゴブ吉くんは今まで使っていた甲殻補強済み棍棒から無骨なバトルアックスに、木の枠に甲殻を縫い付けただけの盾から鉄製の小ぶりな盾であるラウンドシールド――金属が縁にしかないので、真ん中は甲殻で補強した――に装備を変更。
あと、今まで着ていた甲殻付きレザー系の胴鎧の上からブレストプレートを着用した。頭部には二日前に製作した甲殻製の兜を装備しており、現在ゴブ吉くんの防御力は三ゴブ中最強である。
見た目はまるっきり重戦士だ。ちなみに背中には予備装備として今まで使っていた棍棒の姿がある。
次いでゴブ美ちゃんにはクロスボウ二つと、矢を五十本。そして俺が今まで使っていた黒曜石のナイフが二つと、保険として渡したボウィー・ナイフが一つ追加されただけだが、重量的に見てここら辺が限界だろう。
俺達の中で最大の遠距離攻撃力を持っているし、素早さのあるゴブ美ちゃんが操るボウィー・ナイフの攻撃力も侮れない。見た目的には、やっぱり猟師か弓兵って感じです。
最後に俺。二本のロングソードから二本のエストックに変更し、ラウンドシールド――甲殻による補強済み――をゴブ吉くんと同じように装備。これは右前腕部に固定できるように工夫し、手首が問題なく動かせるように調整した。
そして空いた左手の方に堅牢なる錬鉄製のガントレットを装備した。ガントレットはラウンドシールド程防御力は高くないが、丸みで攻撃を逸らす程度は可能だと思う。
防御力もそこそこに、素早さも損なわない仕様だ。
【職業・軽剣士】の補正も加わり、かなり全体的な能力が向上したように感じる。
発見した杖とかも気になるが、今日の飯も獲りに行かなくてはならないので、俺の寝床に発掘した品々を一旦置いて外に出た。
盗まれないのかって? 盗んだらどうなるか、じっくりお話し済みなので問題ないのさ。
そして今日は今までにない程大量に獲れたので、献上品はそのまま獲ってきたゴブリン達に返してやる。
いや、喰いきれないんだよね、多過ぎて。
《二十日目》
午前は訓練。最初と比べ、他のゴブリン達も顔付きが変わりだした。
うん、ゴブリンは成長が早いだけに、本気で訓練を施せば短期間でも化ける様である。
それか、そうじゃないと生き残れないから、かもしれない。
午後は飯を求めてハンティングをし、成果はナイトバイパー十体、ヨロイタヌキ十四体、コボルドが五体と大量だった。
これは装備が飛躍的に向上した事が大きいだろう。
と言うか、遠距離からゴブ美ちゃんの正確な狙撃――クロスボウの強力な一撃と毒を鏃に塗った弓矢の速射によるコンビネーションは鬼畜だ。俺とゴブ吉くんが盾になるから、尚更酷い。近づけないんだから――と、重戦士なゴブ吉くんの高い防御力にバトルアックスが繰り出す重斬撃。
それに加えて俺の持つアビリティの豊富さからくるトリッキーな攻撃の数々と二ゴブを動かす指示は、コボルド程度の敵を問題にしなくなっていた。
恐らくだが、今の状態ならコボルドが俺達の倍の数できてもなんとかなりそうである。
ただ俺的にはオークを喰ってアビリティ強化がしたいのだが、あれ以降一体も見ていない。
早く見つけたいモノだと思いながら、今日は洞窟に早めに帰って見つけた書物を読み漁る。
いやさ、アビリティ【職業・魔術師】があるのは良いんだけど、それに伴って亜種になってから備わっていた魔力量が大幅に上昇したのも良い事なんだけど、魔術ってヤツがどのようなものなのかを知らない俺には、魔術的な何かが扱えないのだ。
だから、こうやって〝魔術師入門・基礎魔術一覧〟を読み漁っているのである。
まあ、意外と面倒なので難航してるけど。というか、本を読むだけでは限界がある。しかもこれ、途中からで初歩の初歩が書かれていないのだ。
せめて……せめて手本を一度でも見る事ができればッ。
そんな俺の叫びなど誰かが聞いてくれる筈も無く、時間は止まることなく流れていくのであった。
《二十一日目》
午前訓練を開始してまだ一週間も経過していないが、それなりに使えるようになってきたゴブリン達の姿がちらほらと。
やはり生活環境が厳しい自然界だからなのか、もしくは【早熟】するという種族的特徴なのか、以前の俺が実際に経験した訓練や会社のサーバーで閲覧できた軍人育成プログラムの良い所取りした内容のそれを課したゴブリン達は、日が経つにつれてその強さを大きく向上させている。
最近ではゴブリン(下僕)の中にもナイトバイパーを献上するようになった個体もいるし、最低レベルの同年代ゴブリンでもホーンラビット数体を単独で殺せるようになっていた。
数日前のような、飯さえ自分で獲れない者など既に居らず、その結果に教官的な立場に居る俺は誇らしささえ感じていたり。
ただゴブ爺達年上ゴブリンはその結果に心底驚愕していて、俺に慈しみと同時に畏怖の念を込めた視線を向けるようになっていた。器用なモノだと思うが、ちょっと鬱陶しい。まあ、実害が無いので無視しているのだが。
俺は訓練が始まったその日から、太陽が頂点に差しかかろうとした頃に、訓練しているゴブリン達全員と組み手をしてから訓練を終わる事にしている。
その方が個々の能力を正確に把握できるし、変な癖や弱点を把握してそれを教えてやる事もできる。それに優秀な個体を見出すのにも役に立ち、何より俺の訓練になるからだ。
こんな厳しい世界で生きるのならば、身体は鍛えておいて損はない。だから、三十八連戦はいい訓練になるんだな、コレが。
それで、やっぱりゴブ吉くんとゴブ美ちゃんは同世代ゴブリンの中では突出している事を再認識させられる。
ゴブ吉くんも最近では訓練の成果か、有り余るパワーを損なう事無く発揮する術を身につけてきたようだし、生物を直接殺す事で最も効率良く得られる〝経験値〟によって――パーティーだと貢献した度合によって変化する様だが詳しい事は分からない――上昇するレベル補正により、この世界の不思議パワーで強化された身体は頑強の一言に尽きる。
今の俺でもアビリティ無しだとなかなかに手古摺る相手なので、同世代のゴブリンだと、俺とゴブ美ちゃんを除いた全員が順番に挑んでも勝てないだろう。
ゴブ吉くんの損害も相応のモノになるだろうが。
ゴブ美ちゃんは俺よりは遅いものの、他とは比べ物にならない程のスピードがある。
ホブゴブリンなのだからゴブリンよりも膂力は上だし、爪も薄く鋭く伸び、それを上手に扱う術は俺が教えてしまったので、武器無しの素手の組み手でも小さな刃物を持っている様な状態なのだ。
速度があるので、俺にとってもアビリティを使わないとそれなりに難敵だ。まあ、まだまだ可愛いモノだけど。脅威度で言えば、素手だとゴブ吉くんよりも下である。
組み手が終われば午前訓練も終わり、俺達はハンティングに出かけるべく解散する事となる。
普段ならば定番メンバーで出かけるのだが、今日のハンティングにはもう一ゴブの同行者がいた。
同行者の名前はゴブ江ちゃんと言い、性別は雌。未だゴブリンながら、同年代では俺たちに次ぐ実力者であり、土下座した時に先頭に立っていた子である。
いや、先日のお宝発掘で掘り出せた孔の開いた背嚢を二つと雑嚢を三つ入手したまでは良いのだが、ゴブ吉くんは一番重装備で背中に巨大棍棒をサブ武器として背負っているし、ゴブ美ちゃんはショートボウと矢筒とクロスボウを二つも背負っている。
だから二つある背嚢の一つは俺が背負っても一つ余るし、雑嚢は俺とゴブ美ちゃんが装備しても一つ余るのだ。
そこで、荷物持ち役が欲しいなぁーって事で白羽の矢が立ったのがゴブ江ちゃんである。
ゴブ江ちゃんなら、今の俺達のハンティングにもギリギリでついてこられそうだしさ。あと、強い仲間は増やしておいて損はない。あ、バックパックとかは当然孔を塞いでます。
ゴブ江ちゃんの武装はゴブ吉くんがパーティー加入のお祝いとして渡したお下がりの甲殻製の盾と、ゴブ美ちゃんが渡した今までずっと使っていたホーンラビットの革と棒で造ったスタッフ・スリング。それに俺が甲殻補強されたレザーの上下に黒曜石のナイフと一本のボウィー・ナイフを渡しただけだが、今まで使っていたホーンラビットの角と比べれば天地の差がある。
それに荷物持ちなので、そこまで重装備にする必要は全くない。というか狩りを続けていけば獲物という荷物を持たすのだから、装備を重いモノにするのは馬鹿がする事だ。最低限身を護れる装備さえあれば十分である。
そんな訳で今回のハンティング、普段以上に楽に進んだ。
今までは全員が分担して背負っていた重量をゴブ江ちゃんが肩代わりしてくれたお陰か、疲労も少なくて済んでいる。重い荷物を背負うゴブ江ちゃんも疲労はあるが、戦闘をこなす俺達と大差ない程度だ。
それにゴブ江ちゃんもハンティングにスタッフ・スリングで地味に貢献し、〝経験値〟を得てレベル上げをしていた。
もしかしたら、ゴブ江ちゃんも俺たち同様ホブゴブリンに成れる日が近いかもしれない。
新しい種類の獲物はいなかったが、満腹になりました。やっぱり肉は美味いね。
洞窟に戻って読書してから寝た。
死体は、俺は二頭の頭部と心臓と右腕、ゴブ吉くんとゴブ美ちゃんは残った部分を山分けした。
感想としては、なんだろう、不思議な食感だった。味は、美味い、様な気がするって微妙なレベルだったが。
[能力名【異種族言語】のラーニング完了]
[能力名【見切り】のラーニング完了]
やはりコボルドは普通のホブゴブリンよりも強めらしい。ゴブ吉くんが勝てたのは装備の差が大きかったし。俺はアビリティの豊富さと経験の差です。
あと、火の精霊が宿っているらしい火精石もついでに食べたら――
[能力名【発火能力】のラーニング完了]
発火能力も手に入れてしまった。自然界において、火の能力を持っているのかいないのか、その差は大きく覆し難く。
これでようやく焼肉にできると思うと……
その後はホーンラビットとかを狩って帰りました。
今日の献上品はホーンラビットに交じってヨロイタヌキがあって驚いた。こいつ等、成長してやがる。
後日、ヨロイタヌキを取ってきたゴブリンには甲殻を使用した盾でも贈ってやろうと思う。
晩飯は他の奴らの肉も焼いて、焼肉パーティーと洒落こんだ。
《十六日目》
殺しの手管を教えて下さい、的な事を言われながら同年代のゴブリン達全員から土下座された。
洞窟内でズラリと並んで土下座するゴブリン。かなりシュールな光景だった。
俺が飯をやったゴブリン達もそれ以外の細々と生き残ってた奴らも、最近はホーンラビットを殺せるようになったらしいんだけど、それでもやっぱりナイトバイパーとかが相手では手も足も出ないらしい。
だからそれ等を殺して喰ってきた俺達に、と言うか主に俺に、生きる術を教えてもらいたいらしい。
俺達の利益は? と聞いたら、獲物を献上すると言い出した。どうやらゴブリン(下僕)達の様子を見て、そんな考えが浮かんだようで。
まあ、それなら損はないかな、って事で太陽が真上に昇る前まではゴブ吉くんとゴブ美ちゃんも交えて、生き残っている殆どのゴブリンと合同訓練を行う事となった。
訓練は、俺にもゴブ吉くんにもゴブ美ちゃんにも、生きるためにはやっておいて損はない。
弱肉強食な世界だから、最初の訓練で徹底的に俺が上なんだと身体に教え込んでおく。雄雌問わずに徹底的に。反逆とかされたら面倒だから、本能に刷り込むように執拗に繰り返す。
身体と心が壊れてしまわないように、しかし元気が有り余るなんて事はないギリギリのレベルを心掛けてみました。
その結果、今日はゴブ吉くんとゴブ美ちゃんを含めた全員の足腰が立たなくなりました。
汗をダラダラと滝のように流し、息も絶え絶えに転がっているゴブリン達に、俺は献上品によってはその素材から何か造ってやる、とも言っておいた。
それでなんかやる気になったようだが、一応無茶はするなと釘を刺しておく。死んだら終わりだからさ。
……ゴブ美ちゃんがプルプルと震える身体で同年代のメスに、心底自慢げに防具と首飾りを見せていたが、何も見なかった事にしておこう。
午後になり、転生して初めて独りでハンティングに出かけた。
最初ならいざ知らず、既に庭のようになった森を動き回って動けない奴等の分も多少は多めに獲物を確保し、今日のハンティングは終了。これくらいのサービスはあって良いだろう。
疲労で思う様に動けないゴブリン達に飯を配給してやった。
――その夜、俺は洞窟の奥に赴いた。
何処かから連れてこられた人間の女性が入れられている、淫臭と絶望が沈殿している場所だ。
ホブゴブリンになってちょっと人間に近づいた姿なら、会話くらいできるかもしれないと思っての事である。外の情報が欲しかった。
それで、結局会話はできませんでした。
完璧に壊れてます。目が完全に死んでます。涎がダラダラと溢れてます。微かに死臭すら漂ってる様な気がします。前見つけた時よりも症状が進行してました。仕方がないと言えば仕方がない環境だが、見ていてあまり気持ちが良い光景ではないのは確かだ。
あと美醜で言えば一番若くて美な子がこの短期間で孕まされてました。これも仕方が無いとはいえ、かなり不憫である。
この子くらい可愛ければ嫁ぎ先など幾らでもあっただろうに、彼女の結末はこんな場所で犯され続けるだけなのか、と思わざるを得ない。
だから、俺は聞いてみた。
『死にたいか』と。
以前の俺なら合掌してハイ終わりだったが、ホブゴブリンにランクアップした今だからこそ、聞ける問。例えバレたとしても自分の安全は確保できる今の俺ならば、何の躊躇いも無く彼女達を殺して/助けてやれる。
その問いの返答は、無かった。
しかし、動きはあった。小さく弱く唇だけが動き、ふと思い出したように流れ落ちる涙で、彼女達の意思を理解した俺は、コボルドを狩って得た小袋に入れていた小瓶(液体入り)を置いて寝所に戻った。
振り返りは、しなかった。二度と。
《十七日目》
朝起きて奥に向かうと、捕われていた女性全員が死んでいた。皆、静かに息を引き取っていた。
その様子から、彼女達は眠りながら死んでいくような毒を飲んだらしい。何処でそんな毒を手に入れたのか、不思議である。本当に、不思議な事もあったもんだ。
第一発見者である俺は近くに転がっていた小瓶をその証拠として回収し、腰に提げている小袋に入れてから、まだ寝ていたゴブ爺に報告した。
飛び起き、急いで奥に行ったゴブ爺は美の女性の腹から流れたふにゃふにゃの子ゴブリンを前に、情けない位涙を流しながら嘆いていたけど、俺は知らん。
彼女達と子ゴブリンの死体は、俺が責任を持って処分した。
骸を動物達に滅茶苦茶に喰い散らかされるのも不憫だったので、心臓と胃、それと片方の乳房と子宮を手間賃として貰い、俺は火葬を行った。
先日得た【発火能力】だけではまだ火力が足りなかったので、普段から何かに使えないかと思って集めていた、火をつけるとよく燃える【油草】と枯れ枝を組んで火力を確保。
【発火能力】で着火し、煌々と燃え上がる火柱を見ながら、合掌し、彼女達の冥福を祈る。
南無阿弥陀仏。
紅蓮に燃え上がる炎と彼女達の亡骸が灰になるまで見続けた。
そしてどうやら、彼女達の中には冒険者的な職業をしていた子も居たらしい。
それも結構な数が。出稼ぎ組は、案外強いのかもしれない……捕まっていた子達が、弱かっただけなのかもしれないが。
[能力名【異種族言語】のラーニング完了]
[能力名【大陸文字解読】のラーニング完了]
[能力名【脳内地図製作技能】のラーニング完了]
[能力名【職業・魔術師】のラーニング完了]
[能力名【職業・軽剣士】のラーニング完了]
[能力名【職業・森司祭】のラーニング完了]
[能力名【職業・細工師】のラーニング完了]
俺としては珍しいことだが、得たアビリティの詳細について検証する気も起きず、午前の訓練を行った後、ハンティングする気も起きなかったのでゴブ吉くんとゴブ美ちゃんをバディーとして送り出し、今日は溜まっていた素材を使って盾や、甲殻製の剣などの実験製作に勤しんだ。
最近何かを造る事が趣味になってきた気がするな……
あ、さっそく【職業・細工師】が役に立ったようだ。以前よりも高品質な品ができたのである。恐らく、アビリティ名通り職業補正が加わったのだろう。
飯は、昨日よりも増えた献上品とゴブ吉くんとゴブ美ちゃんが持ってきてくれた分で賄った。
それと今更になってしまったが、今日起きたらゴブ美ちゃんもホブゴブリンになってました。
ちょっと可愛くなっていて驚いた。ゴブリンの時との差が著しいです。
装備も小さくなってしまったので、俺の予備を貸している。
嬉しい様な、不満なような、ちょっと微妙な表情をしていたので後で新しいのをプレゼントしようと思う。
本当は今日造ってあげれば良かったんだが、時間が足りなかったのだ。
《十八日目》
午前の訓練を終え、普段通り三ゴブで行動中、再びコボルドを発見。
今度は三体で、うち二体は以前のと同じく胴鎧にロングソードという装備だったのだが、残りの一体は短弓と矢筒を装備していた。
これは二日連続のゴブ美ちゃん強化フラグか、って事で、周囲を索敵して他に潜んでいないか確認。
入念に探しても発見できなかったので、強襲を選択。
遠距離攻撃が可能な短弓装備のコボルドが他のよりも脅威レベルが上なので優先して攻撃することにして、まずゴブ美ちゃんがスタッフ・スリングを使った毒石投擲による奇襲を敢行。
筋弛緩系の毒に濡れた石は見事短弓を装備したコボルドの眼球に着弾し、正常な判断と視覚を奪う。
残りのコボルド達が慌てふためいたその隙を逃さず、以前のよりもちょっとだけマシそうなロングソードを装備した二体を、俺とゴブ吉くんが叩き伏せた。
ボロとは言え鉄製のロングソードは今の身体に丁度良く、標的の身体を穿ち、首を切り落とすのが楽だった。角って、今やナイフみたいなもんだから尚更そう感じたのかもしれんが。
ゴブ吉くんが相手にしたコボルドは、全身至る所の骨が乱暴に砕かれてます。ちょっとグロい。
短弓装備だったコボルドは、ゴブ美ちゃんにプレゼントした黒曜石のような鉱石製のナイフモドキによって頸部を切断され、血を吹きだし、最後に心臓を突かれて止めを刺された。
どうやらゴブ美ちゃんの能力構成は知能と速度重視よりらしい。武器の巧みな扱いは知能が必要だし。
その後はバリバリと死体を解体。胴鎧を回収し、短弓と矢筒はゴブ美ちゃんに持たせ、ロングソードは俺の新しい武器にした。ゴブ吉くんに適した装備は無かったので、また今度である。
残念ながら火精石は持っていなかったが、それなりに物が入れられる小袋を三つも増やせたのはありがたい。一つは自分用にして、残りに持ってきていた薬草を幾つか入れて二ゴブに持たせておく。
これで何かあっても、多少の役には立つに違いない。
んで、一ゴブ一体計算でバリバリと喰いました。
新しいアビリティはラーニングできなかったけど、もう少しで何かを手に入りそうな感じだったし、既に手に入れていた【見切り】を強化できたのでよし。
【見切り】は視野内の敵が繰り出す攻撃軌道が赤い線として見えるので、戦闘時には大変重宝するのだ。後は適当にハンティングを繰り返して、洞窟に帰って寝た。
《十九日目》
午前の訓練を終えた後、俺はそのままハンティングに赴かずに、洞窟奥の道具置き場に向かった。
捕われていた女性達に冒険者的なアビリティ持ちが交じっていたのだから、何かそれ関係のアイテムが無いかなー、と思い立ったからだ。
ただ見ただけでは流石の俺も道具の良し悪しを大まかにしか理解できないのだが、アビリティ
【物品鑑定】をオークから入手しているので詳細を見る事が可能だ。
それに、【物品鑑定】の経験値稼ぎも兼ねているので、不発に終わっても決しては無駄では無い。
そんな気楽な気分でいたのだが、俺は掘り出し物を発見したようである。
それも大量に。
[ゴブ朗は〝[武器・杖]魔術師の杖・入門版〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・杖]祝福された宿り木の杖〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・剣]鉄製のエストック×3〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・短剣]鉄製のボウィー・ナイフ×4〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・斧]鉄製のバトルアックス×2〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・遠隔]クロスボウ×2〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[武器・消耗品]鉄製鏃の矢×50〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[防具・盾]鉄製のラウンドシールド×2〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[防具・鎧]傷だらけのブレストプレート〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[防具・手甲]堅牢なる錬鉄製のガントレット〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[薬品]古くなった体力回復薬×6〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[薬品]古くなった魔力回復薬×8〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[薬品]エンリケ教の祝福された聖水入り瓶×3〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[収納品]孔の開いた背嚢×2〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[収納品]孔の開いた雑嚢×3〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[書籍]世界放浪記・王都から秘境まで 上巻〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[書籍]魔術師入門・基礎魔術一覧 中巻〟を手に入れた!!]
[ゴブ朗は〝[書籍]エリエッタ大陸文字学習のススメ〟を手に入れた!!]
出るわ出るわ、今の俺からすればお宝の数々が。
以前チラッと見た限りではボロばかりだったが、発掘してみるとその下には十分使えるモノが眠っていたのである。うん、ここは本当に宝物庫であったらしい。
発掘できたエストックは今持っているロングソードと性能面では大差ないが、状態が良かったので交換しておく。
ついでに今まで使っていた黒曜石のナイフと今回獲得したボウィー・ナイフ――刀身は長く、片刃だが、先端のみ両刃になった狩猟用ナイフの一種――を交換しておく。
多少数は多いが、ナイフ専用のポケットは既に製作済みなので装備するのに問題はなかった。
ボウィー・ナイフにはコレから解体の際に活躍してくれる事を期待しておく。
あと、エストックと交換したロングソード二本と、残り一本のエストックをバリバリと喰ってみた。
[能力名【斬撃力強化】のラーニング完了]
[能力名【貫通力強化】のラーニング完了]
ロングソードを喰って【斬撃力強化】を、エストックを喰って【貫通力強化】をラーニングする事に成功。
コレから分かる様に俺の【吸喰能力】は生物でなくてもアビリティをラーニングできるのだが、一定レベル以上の品――能力の強弱は勿論、質や使用されてきた歴史に俺の思い入れなどが関係している模様――でないと意味が無いので、今まで喰う事は無かったが、これなら行けるかなと思ったので実行してみたのである。
失敗しても取り返しがつく、というのも実行する理由にはなっていたが。
結果は上々で、気分がいい。
洞窟の奥で独りそんな事をしていたら、ゴブ吉くんとゴブ美ちゃんがやって来た。
どうやら俺の姿が見えない事を不思議に思い、探しに来てくれたらしい。
丁度良かったので、ポーションなどの細々とした品は腰に下げるタイプのフィールドバッグに、他のモノはバックパックに詰め込んで、それでも入りきらないのを二ゴブに頼んで運ぶのを手伝って貰う。
んで、ゴブ吉くんは今まで使っていた甲殻補強済み棍棒から無骨なバトルアックスに、木の枠に甲殻を縫い付けただけの盾から鉄製の小ぶりな盾であるラウンドシールド――金属が縁にしかないので、真ん中は甲殻で補強した――に装備を変更。
あと、今まで着ていた甲殻付きレザー系の胴鎧の上からブレストプレートを着用した。頭部には二日前に製作した甲殻製の兜を装備しており、現在ゴブ吉くんの防御力は三ゴブ中最強である。
見た目はまるっきり重戦士だ。ちなみに背中には予備装備として今まで使っていた棍棒の姿がある。
次いでゴブ美ちゃんにはクロスボウ二つと、矢を五十本。そして俺が今まで使っていた黒曜石のナイフが二つと、保険として渡したボウィー・ナイフが一つ追加されただけだが、重量的に見てここら辺が限界だろう。
俺達の中で最大の遠距離攻撃力を持っているし、素早さのあるゴブ美ちゃんが操るボウィー・ナイフの攻撃力も侮れない。見た目的には、やっぱり猟師か弓兵って感じです。
最後に俺。二本のロングソードから二本のエストックに変更し、ラウンドシールド――甲殻による補強済み――をゴブ吉くんと同じように装備。これは右前腕部に固定できるように工夫し、手首が問題なく動かせるように調整した。
そして空いた左手の方に堅牢なる錬鉄製のガントレットを装備した。ガントレットはラウンドシールド程防御力は高くないが、丸みで攻撃を逸らす程度は可能だと思う。
防御力もそこそこに、素早さも損なわない仕様だ。
【職業・軽剣士】の補正も加わり、かなり全体的な能力が向上したように感じる。
発見した杖とかも気になるが、今日の飯も獲りに行かなくてはならないので、俺の寝床に発掘した品々を一旦置いて外に出た。
盗まれないのかって? 盗んだらどうなるか、じっくりお話し済みなので問題ないのさ。
そして今日は今までにない程大量に獲れたので、献上品はそのまま獲ってきたゴブリン達に返してやる。
いや、喰いきれないんだよね、多過ぎて。
《二十日目》
午前は訓練。最初と比べ、他のゴブリン達も顔付きが変わりだした。
うん、ゴブリンは成長が早いだけに、本気で訓練を施せば短期間でも化ける様である。
それか、そうじゃないと生き残れないから、かもしれない。
午後は飯を求めてハンティングをし、成果はナイトバイパー十体、ヨロイタヌキ十四体、コボルドが五体と大量だった。
これは装備が飛躍的に向上した事が大きいだろう。
と言うか、遠距離からゴブ美ちゃんの正確な狙撃――クロスボウの強力な一撃と毒を鏃に塗った弓矢の速射によるコンビネーションは鬼畜だ。俺とゴブ吉くんが盾になるから、尚更酷い。近づけないんだから――と、重戦士なゴブ吉くんの高い防御力にバトルアックスが繰り出す重斬撃。
それに加えて俺の持つアビリティの豊富さからくるトリッキーな攻撃の数々と二ゴブを動かす指示は、コボルド程度の敵を問題にしなくなっていた。
恐らくだが、今の状態ならコボルドが俺達の倍の数できてもなんとかなりそうである。
ただ俺的にはオークを喰ってアビリティ強化がしたいのだが、あれ以降一体も見ていない。
早く見つけたいモノだと思いながら、今日は洞窟に早めに帰って見つけた書物を読み漁る。
いやさ、アビリティ【職業・魔術師】があるのは良いんだけど、それに伴って亜種になってから備わっていた魔力量が大幅に上昇したのも良い事なんだけど、魔術ってヤツがどのようなものなのかを知らない俺には、魔術的な何かが扱えないのだ。
だから、こうやって〝魔術師入門・基礎魔術一覧〟を読み漁っているのである。
まあ、意外と面倒なので難航してるけど。というか、本を読むだけでは限界がある。しかもこれ、途中からで初歩の初歩が書かれていないのだ。
せめて……せめて手本を一度でも見る事ができればッ。
そんな俺の叫びなど誰かが聞いてくれる筈も無く、時間は止まることなく流れていくのであった。
《二十一日目》
午前訓練を開始してまだ一週間も経過していないが、それなりに使えるようになってきたゴブリン達の姿がちらほらと。
やはり生活環境が厳しい自然界だからなのか、もしくは【早熟】するという種族的特徴なのか、以前の俺が実際に経験した訓練や会社のサーバーで閲覧できた軍人育成プログラムの良い所取りした内容のそれを課したゴブリン達は、日が経つにつれてその強さを大きく向上させている。
最近ではゴブリン(下僕)の中にもナイトバイパーを献上するようになった個体もいるし、最低レベルの同年代ゴブリンでもホーンラビット数体を単独で殺せるようになっていた。
数日前のような、飯さえ自分で獲れない者など既に居らず、その結果に教官的な立場に居る俺は誇らしささえ感じていたり。
ただゴブ爺達年上ゴブリンはその結果に心底驚愕していて、俺に慈しみと同時に畏怖の念を込めた視線を向けるようになっていた。器用なモノだと思うが、ちょっと鬱陶しい。まあ、実害が無いので無視しているのだが。
俺は訓練が始まったその日から、太陽が頂点に差しかかろうとした頃に、訓練しているゴブリン達全員と組み手をしてから訓練を終わる事にしている。
その方が個々の能力を正確に把握できるし、変な癖や弱点を把握してそれを教えてやる事もできる。それに優秀な個体を見出すのにも役に立ち、何より俺の訓練になるからだ。
こんな厳しい世界で生きるのならば、身体は鍛えておいて損はない。だから、三十八連戦はいい訓練になるんだな、コレが。
それで、やっぱりゴブ吉くんとゴブ美ちゃんは同世代ゴブリンの中では突出している事を再認識させられる。
ゴブ吉くんも最近では訓練の成果か、有り余るパワーを損なう事無く発揮する術を身につけてきたようだし、生物を直接殺す事で最も効率良く得られる〝経験値〟によって――パーティーだと貢献した度合によって変化する様だが詳しい事は分からない――上昇するレベル補正により、この世界の不思議パワーで強化された身体は頑強の一言に尽きる。
今の俺でもアビリティ無しだとなかなかに手古摺る相手なので、同世代のゴブリンだと、俺とゴブ美ちゃんを除いた全員が順番に挑んでも勝てないだろう。
ゴブ吉くんの損害も相応のモノになるだろうが。
ゴブ美ちゃんは俺よりは遅いものの、他とは比べ物にならない程のスピードがある。
ホブゴブリンなのだからゴブリンよりも膂力は上だし、爪も薄く鋭く伸び、それを上手に扱う術は俺が教えてしまったので、武器無しの素手の組み手でも小さな刃物を持っている様な状態なのだ。
速度があるので、俺にとってもアビリティを使わないとそれなりに難敵だ。まあ、まだまだ可愛いモノだけど。脅威度で言えば、素手だとゴブ吉くんよりも下である。
組み手が終われば午前訓練も終わり、俺達はハンティングに出かけるべく解散する事となる。
普段ならば定番メンバーで出かけるのだが、今日のハンティングにはもう一ゴブの同行者がいた。
同行者の名前はゴブ江ちゃんと言い、性別は雌。未だゴブリンながら、同年代では俺たちに次ぐ実力者であり、土下座した時に先頭に立っていた子である。
いや、先日のお宝発掘で掘り出せた孔の開いた背嚢を二つと雑嚢を三つ入手したまでは良いのだが、ゴブ吉くんは一番重装備で背中に巨大棍棒をサブ武器として背負っているし、ゴブ美ちゃんはショートボウと矢筒とクロスボウを二つも背負っている。
だから二つある背嚢の一つは俺が背負っても一つ余るし、雑嚢は俺とゴブ美ちゃんが装備しても一つ余るのだ。
そこで、荷物持ち役が欲しいなぁーって事で白羽の矢が立ったのがゴブ江ちゃんである。
ゴブ江ちゃんなら、今の俺達のハンティングにもギリギリでついてこられそうだしさ。あと、強い仲間は増やしておいて損はない。あ、バックパックとかは当然孔を塞いでます。
ゴブ江ちゃんの武装はゴブ吉くんがパーティー加入のお祝いとして渡したお下がりの甲殻製の盾と、ゴブ美ちゃんが渡した今までずっと使っていたホーンラビットの革と棒で造ったスタッフ・スリング。それに俺が甲殻補強されたレザーの上下に黒曜石のナイフと一本のボウィー・ナイフを渡しただけだが、今まで使っていたホーンラビットの角と比べれば天地の差がある。
それに荷物持ちなので、そこまで重装備にする必要は全くない。というか狩りを続けていけば獲物という荷物を持たすのだから、装備を重いモノにするのは馬鹿がする事だ。最低限身を護れる装備さえあれば十分である。
そんな訳で今回のハンティング、普段以上に楽に進んだ。
今までは全員が分担して背負っていた重量をゴブ江ちゃんが肩代わりしてくれたお陰か、疲労も少なくて済んでいる。重い荷物を背負うゴブ江ちゃんも疲労はあるが、戦闘をこなす俺達と大差ない程度だ。
それにゴブ江ちゃんもハンティングにスタッフ・スリングで地味に貢献し、〝経験値〟を得てレベル上げをしていた。
もしかしたら、ゴブ江ちゃんも俺たち同様ホブゴブリンに成れる日が近いかもしれない。
新しい種類の獲物はいなかったが、満腹になりました。やっぱり肉は美味いね。
洞窟に戻って読書してから寝た。
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