Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐

文字の大きさ
34 / 270
3巻

3-2

しおりを挟む

 それから一時間ほど経過しただろうか。
 流石さすがに空は、ジャッドエーグルの領域だった。
 四つの翼が生み出すその飛行速度と旋回能力は、まさに風のよう。先ほど得たばかりの【高速飛行の心得】によって、余計にその凄さが理解できた。
 空を縦横無尽に駆け巡るジャッドエーグルに、俺は翻弄された。奴が生み出す乱気流に揉まれて飛行は困難を極め、口から吐き出された小さな竜巻の槍によって何度も翅がもぎ取られる。更に巨大な麻痺爪に、各所の肉をえぐられた。翡翠の羽毛は硬く鋭く、かすっただけで斬られてしまう。厄介極まりない。
 俺の全身は血に染まり、肉と体液がとめどなく失われていく。
 金剛こんごうの鉤爪で右腕を切り落とされ、左足も膝から下が食い千切られてしまった。しかも唾液に回復阻害の効果があるらしく、左足の傷口からは止まる事無く血が流れ落ち、筋肉を引き締めて無理やり出血を抑えるしかなかった。
 幸い【激痛耐性】や【知覚鈍麻】のアビリティがあったので、ココまでの深手を負っても痛みに思考をかれる事は無かったが、しかし、ジリジリと俺は追い詰められていった。
 俺が体得した武術の数々も、空中では役に立たなかった。あくまでもアレは地に立つ人間が生み出し、受け継いできたモノだからだ。
 とは言え、ただやられていた訳ではない。
 ジャッドエーグルに付き従っていた五体のファレーズエーグルは、全て斬り殺した。
 ジャッドエーグルの右足もハルバードで切り落とし、四つの翼には幾つか風穴を開け、胴体にも深い切り傷をつけている。翡翠の体毛は、全身に負った細かい傷によって所々赤く染まっていた。
 決して個の能力として負けている訳ではない。
 だが、空が戦場である事が、実力以上の差を生み出していた。
 荒れ狂う突風にさらされながら、不慣れな飛行と戦闘とを同時に行うのは難しく、精神に僅かながら乱れが生じ、飛行速度も明らかに衰えてきていた。もはやジャッドエーグルからすれば狙いやすい的でしかないだろう。
 相手の攻撃は激しさを増し、ついには俺の手からハルバードが取り落とされる。運良く骸骨百足の近くに落ちて刺さり、崖下に落下する事はまぬがれたものの、即座に拾える場所でも無い。
 こちらが武器を失ったのを好機と見たのか、ジャッドエーグルは大きく距離をとってから加速。その金剛のくちばしで俺を貫くつもりなのだろう、真っ直ぐ俺に向かって突っ込んできた。
 それに伴い、まるで嵐のように風が吹き荒れる。
【加護】で生み出したとおぼしき突風に乗ったジャッドエーグルは、今までとは比べ物にならない速度を叩き出した。正真正銘の最高速度で突っ込んできているのだろう。
 傷だらけの肉体でよくぞここまで、と思うほどのスピードだ。
 地上に居る赤髪ショート達から悲鳴が上がる。
 嘴に貫かれ、俺は空で果てるだろう。
 ジャッドエーグルが自らの勝利を確信し、小さくわらったような気がした。
 俺は、悔しそうに歯を食いしばる。


 ――という演出をしてみた。
 いや、正確に言えば、ただ俺が使うアビリティを限定した結果がこうだったというだけである。
 やはり、敵の領域で手加減したまま勝てるほど優しい相手ではなかったようだ。種族的にはオーガよりも遥かに強いのだから、当然と言えば当然かもしれないが。
 今までは地力を上げる為の鍛錬だったが、ここから先は本気で殺しに行く事にした。
 ジャッドエーグルが突っ込んでくるタイミングを見計らい、温存していた強力なアビリティの数々を発動させていく。
 密かに回収していた血のしたたる我が右腕を喰らって【補液復元】の発動条件を満たし、【高速再生】や【高速治癒】を重ねて全身の損傷を一瞬で治す。切り落とされた右腕も、食い千切られた左足も、即座に新しいモノが生えた。その分エネルギーを使って腹がいたが、は目の前にあるので問題無い。
 ついで【外骨格着装】を使い、赤いクワガタのような姿に変身した。この外骨格は防御力を高めるだけでなく、膂力りょりょくを強化してくれる作用もある。それに加えて【黒鬼の強靭なる肉体】や【堅牢けんろうなる竜鱗鎧りゅうりんがい】などを重複発動させ、全身に竜鱗りゅうりんと膨大な筋肉を追加。
 俺の変化を驚愕に染まった双眸で見つつ、尚止まらないジャッドエーグルを、指先から黄金糸を噴出してからめ捕る。更に【重力操作能力グラビティロウ】を使ってジャッドエーグルの進行方向とは逆向きの重力を発生させ、強制的に失速させる。
 身にまとう風の刃で黄金糸は幾らか斬られてしまったが、それでもまだかなりの量がからみついている。無形である重力にもあらがえず、驚異的な速度は即座に失われていった。
 もはや軌道変更ができなくなった敵の頭部に、両腕の拳を振り下ろす。
 そこに技など無い。ただ単純に、力の限り両腕を振り下ろしただけである。しかしこれほど強化された膂力でそんな事をすればどうなるか。
 ジャッドエーグルは、地面に高速で叩きつけられた。落ちた先に小規模なクレーターができるほどの衝撃。普通のファレーズエーグルなら四肢が千切れ飛んで絶命しているだろう。
 しかしボス系モンスター特有の強靭な生命力によってか、ジャッドエーグルはギリギリ生きていた。とは言え『まだ死んでいないだけ』というところである。それでも十分凄いと思うが。
 俺はハルバードを回収し、ジャッドエーグルの首をねて戦闘に決着をつけた。
 転がった頭部から宝石のような目玉を回収し、頭蓋骨と肉を喰らった。美味い。まるで生命力そのものが俺に流れ込んでくるような感じがする。
 堪能した後、美しい羽毛が抜けないように気を付けながら、皮をぎ取ったり肉をさばいたりと解体していく。そして心臓の辺りを切っていたところで、解体用ナイフから硬い感触が伝わってきた。感触から骨ではないと分かったので、不思議に思いながら探ってみると、翡翠色をした一〇センチほどの丸石のようなモノを見つけた。
 何だこれ? と思い、【物品鑑定ディテクト・アナライズ】を使ってみると、【翡翠鷲王ひすいわしおう御霊石みたまいし】というアイテムだと分かった。
 鍛冶師さん達にコレ知ってる? と聞こうとして振り返ると、既に【行商人ぺドラー】持ちの四名はすぐ傍にいて、俺の手の中にある石を食い入るように見つめていた。
 いつの間に近づいたんだ、と驚くほどの早業はやわざである。
 気を取り直して説明してもらうと、【御霊石】系のアイテムは全て非常にレアな【伝説レジェンダリィ】級であり、【加護】を持ったボス系モンスターが百体に一体の確率で持っているそうだ。それもそのボス系モンスターが強ければ強いほど、【御霊石】の純度やレア度は上がるのだとか。
 とは言え、ボス系モンスターはそう簡単に狩れる存在では無い。【加護】持ちという条件が加われば尚更だ。
 かつてある国の軍隊が、【御霊石】を持っていると目されていた有名なボス系モンスターの討伐に赴いたところ、呆気なく全滅させられたという話もあるそうだ。
 つまり【御霊石】は、狙って得られるようなアイテムではない。
 実際、【御霊石】系のアイテムをオークションに出すと、中小国が買えるほどの金額になるらしい。もっとも、大抵は売りに出される事無く、強力無比なマジックアイテムの製作に使われるそうだ。
 へー、と思いながら喰うかどうか迷っていると、『まさかそれも食べるつもり? 食べるより売りましょう』といった感じに、四人にジト目で見られた。なので一先ひとまずは【異空間収納能力アイテムボックス】に放り込む事にした。
 根っこの部分はやっぱり商人である四人に、苦笑が漏れる。
 これを得られたのは【幸運ラック】と【黄金律】のお陰だろうから、このアビリティをくれたエルフとリターナには感謝しておこう。
 その後翡翠の羽毛付きの皮を羽織った状態で【外骨格着装】を発動させてみた。すると、レッドベアー製の革鎧を取り込んだ時のように、二つ目となる新しい外骨格が精製・登録された。
 全体的に翡翠と黒を基調とした独特の光沢がある外骨格で、背中には翡翠の四つの翼があり、どことなく鳥類を彷彿ほうふつさせた。所々にやや鋭い突起があり、四肢には金剛の鉤爪が取り付けられている。鉤爪は意思によって収納できるので便利そうだ。
 試しに飛んでみると、翅よりも速く飛行する事が可能だった。翼を動かせば突風が自動的に発生して、飛行速度が底上げされる。
 試しに翅も生やしてみると、更に高速で飛べた。これは嬉しい誤算である。


 空中戦時には大活躍してくれそうだと思いつつ、今度は肉を喰う。
 感想。頭部を喰らった時にも思ったが、多分、今までで一、二を争う美味うまさだ。
 思わずウマい!! と叫んでいたほどである。


[能力名【矢羽根】のラーニング完了]
[能力名【天空の捕食者】のラーニング完了]
[能力名【嵐の神の加護】のラーニング完了]
[能力名【風塵完全耐性パーフェクトトレランス・ストーム】のラーニング完了]
[能力名【金剛瞬爪こんごうしゅんそう】のラーニング完了]
[能力名【音速飛行ソニックバード】のラーニング完了]

 アビリティも良さそうなのが多く、今回の成果は非常に大きかった。
 ついでに冒険者達のむくろから何か得られないかなー、とあさってみたら、まだ使える〝収納のバックパック〟が五つほどあった。中身を拝見させてもらうと結構な額の金と武具、更に薬品もあったので、ありがたく頂く。他にも使えそうなアイテムは粗方あらかた回収した。
 その代償として、骸を一ヶ所に集めて火葬してやった。
 南無。
 黙祷もくとうを捧げた後、俺達は再び歩みを進めた。ただ、鬼人ロード三名がひどく複雑な感情を込めた視線を向けてくるのが気になった。
 化物を見るような、それと同時に憧れの人を見るような、そんな感じの視線である。


《九十九日目》

 今日は朝から豪雨だった。
 幸い昨日の内に街道まで到着していたので、街道上にある〝休憩所〟と呼ばれる一辺が三〇メートルほどもあるデカい平屋で雨風をしのいでいる。骸骨百足は馬車専用の建物の中だ。
 先客の行商人ぺドラーの一団やら冒険者の集団やらが、俺が入った瞬間怯えたり殺気を放ったりしたので、取りあえず人間軍から略奪した酒樽を二つほど振舞ってみた。
 それでも釣れなかった行商人には、タートルスネークの甲羅や森で採れた素材、山道で見つけた冒険者の所持品などを売ったりして交流。
 最初は恐る恐るだったが、鍛冶師さん達の存在もあって、次第に打ち解けていった。
 後から休憩所に入ってきた奴等も俺の存在に驚いていたが、周囲の雰囲気から危険は無いと判断したのか、注意だけは向けつつも襲ってくる事は無かった。襲ってきたら喰ってやろうと思っていたので、ちょっと残念だ。


 昼頃、姉妹さんや他の【職業・料理人コック】持ちと一緒に昼食を作り、それを喰い終わった後、行商人達に誘われて賭博に参加してみた。
 ブラックジャックに似た、カードを使ったゲームらしい。簡単な説明をしてもらってから、昨日山道で手に入れた金を賭けてやってみる。
 結果、ボロ勝ちだった。
 これもきっと【幸運ラック】と【黄金律】のお陰だろう。他の参加者が素っ裸になるまでぎ取ってしまった。中には商品まで俺に持っていかれたギャンブラーな商人も居た。
 ワハハハと勝ち誇った後、衣服を返してやり、商品も欲しいモノ以外は返してやった。
 むさい男達の素っ裸を見ても嬉しくないし、多少イカサマしているような罪悪感があったからだ。それに商品まで賭けた商人はそこそこ大きな商会のメンバーらしかったので、貸しを作っておこうと思ったのである。
 仲良くなった奴等には、傭兵団の宣伝も兼ねて〝名鉄〟を配っている。まあ、そこそこの成果ではないだろうか。


 この日は雨が止まず、休憩所で一日を過ごした。
 骸骨百足には屋根を取り付けてあるので進めない事も無かったが、急ぐ旅でもない。休憩所の一角にある訓練所にてダム美ちゃんと赤髪ショート、それに鬼人ロード三名と組み手をして時間を潰した。
 ダム美ちゃんや赤髪ショートは、自分に合った戦闘スタイルを見つけているからそれを伸ばしていけばいい。しかし鬼人三名は、まだまだ持って生まれた身体能力で無理やり押し切ろうとしている部分がある。
 取りあえず足癖の悪い【疾風鬼ゲイルロード】の風鬼ふうきさんにはサバットを、肉弾戦を好む【灼熱鬼フレイムロード】の熱鬼ねっきくんにはムエタイを、近接戦が苦手な【幻想鬼イルーシェンロード】の幻鬼げんきくんには柔術を教えてみる。
 転生前の世界で、俺は特殊な装置を使って様々な術技を脳に直接刷り込んでいた。それは転生後も全て覚えていたし、実際に愛用した技も多く、教えるのに苦労はしなかった。
 組み手をしばらくしていると、遠くで見学していた冒険者の数名が交ざりたいと言ってきたので、軽く手合わせをしてみた。
拳士ナックラー】よりも【剣士ソードマン】や【戦士ウォリアー】が多かった為、予め作ってあった木刀や木槍などを〝収納のバックパック〟から取り出す……と見せかけてアビリティ【異空間収納能力アイテムボックス】から引き出して渡した。
 そこそこ手加減してみたが、それほど強いモノもおらず、あまり手応えは無かった。
 それでもいい運動になったし、かなり打ち解ける事ができたので良しとしておこう。
 それにしても、外を調査させていた分体が数体何処どこかに行ってしまったのは何故だろうか? 
 いやいや全く、さっぱり分からんなあ?


《百日目》

 昨日一日中降り注いだ雨は上がり、現在はぬかるんだ街道を再び進行中。ただし、新たなメンバーが加わっている。
 休憩所で仲良くなったファルメール商会・防衛都市《トリエント》支部副店長一行と、その護衛をしている冒険者の集団である。
 副店長について分かり易く言うと、小太りで禿頭の中年男性で、昨日の賭博の際、商品を俺に持っていかれた人だ。根っからのギャンブラーで、時たま昨日のように商品までも担保にしてしまうのだそうだ。
 そんなんで副店長が務まるのかと疑問に思ったが、部下の店員によればそれさえなければ文句無しの逸材なのだという。実際、現店長よりも能力は上なんだそうだ。
 おいおいそれでいいのかよ、と思ったが、まあ悪人ではないし俺には関係無いのでどうでもいい。
 彼等の乗る幌馬車ほろばしゃは骸骨百足と違って時々休憩が必要なので、移動速度は遅くなった。だが、その間にこの世界の情勢を色々と聞き出せたし、それはそれで有益な一時ひとときだった。
 その中で、俺達の森に人間軍が攻め込むきっかけとなった例の王女様の話になった。それによると、王女様の病気は、次期皇帝が持ち帰った秘薬で無事治った、という事だった。
 これは、〝クリシンド病〟が治った初めての事例となる。数滴残った秘薬を、帝国と王国が分析している、という噂もあるそうだ。
 実際には、秘薬は一滴残らず自然発火するよう細工しておいたのだが、それは黙っておいた。
 ちなみに、国家間の情勢が不安定になってきていて、近々いくさがあるのではないか、と方々でささやかれているらしい。そんな状況だから、森に再び手を出す余裕も無いだろうという事だった。
 今日は何事も無いまま、日が暮れた。


《百一日目》

 昼頃、防衛都市《トリエント》に到着した。街をグルリと囲む白壁は堅牢けんろうそうで、様々な防衛機構が組み込まれている。ここを落とすのはかなり面倒だろう。
 などと考えていたら、オーガである俺が現れた事で、かなりの騒ぎとなった。いや、鬼熊オニグマやオルトロスにボルフォルがいるのも要因ではあるか。
 街に入れないかもしれない、というくらいにまで面倒な事態になりそうだったが、同行してきた副店長が何とかしてくれた。この街ではファルメール商会の影響力がかなり強いようだ。
 彼には感謝である。ただそれと引き換えに、タートルスネークの甲羅などを格安で売るように交渉されたけどな。
 取りあえず、街中では全身をフード付きコートで隠す事にした。オーガの巨躯までを隠せる訳ではないのでまだ目立つが、多少はマシなはず。
 街の中には人間が多かったが、獣人などの亜人種も見受けられた。割合としては、人間が六に亜人種が四といったところだろうか。
 メインストリートには商店が立ち並び、客引きの声が響いて活気に満ちていた。きっと色々と暗部はあるだろうが、楽しめそうな街だった。


 街に入った後は色々と買い物したり、宿を探したりと、なかなか忙しい一日だった。
 赤髪ショート達には『四、五日ほど滞在するから、その間に今後も俺と共に来るか、それともこの街に留まるか決めておくように』と言っておく。
 俺としては彼女達を放したくないが、やはり意思を尊重すべきだろう。


《百二日目》

 今日は赤髪ショートに案内されて、ダム美ちゃんと共に《総合統括機関ギルド》の施設に赴いた。
 鍛冶師さん達は鬼人ロード三名をボディーガードとして街を散策中だ。拠点で造っていたナイフや魔法薬などを売って明日の買い物の資金を得るのだという。流石さすが行商人ぺドラー、金策は馴れたものだ。
《総合統括機関》はかなり大きく、立派な施設だった。
 外から見た限りでは三階建て。一階は酒場としても使われているようで、何人か酒を飲んでいる者の姿が見受けられた。
 室内では邪魔になるので、フードを外して中に入った。俺の姿に驚いて剣を抜いた者もいたが、無視してカウンターに向かう。
 それでも斬りかかってきたやからは、正当防衛としてしずめていく。ココで殺しは不味まずいので、殴って気絶させるにとどめた。骨の折れる感触があったが、それは不可抗力だ。
 歩み寄るにつれ受付嬢は顔面蒼白になっていったが、取りあえず今ある依頼クエストはどんなものか聞いてみる。近くの板に依頼状が貼られていたが、やはり直接説明してくれた方が分かり易い。
 しかし答えは返ってこなかった。どうやら椅子に座った状態で気絶してしまったらしい。
 仕方なくその隣に居た不可思議な雰囲気の老人に聞いてみると、カウンターにドサリと分厚い書物を出された。コレに依頼の詳細が書いてあるらしく、老人はそれを読み上げていく。分からない部分はその都度説明してもらった。
 そしてその中から手持ちの品で条件がクリアされるモノ――ボルフォルの角の納品など――を選び、冒険者として既に登録済みの赤髪ショートが依頼を受ける形を取り、報酬を貰っていく。ココに来たのは、このように情報と金が同時に手に入るからだ。
 依頼の中には、赤髪ショートの階級では受けられないモノもあったが、実際にクリア条件になっている品を取り出すと、特別に承認してもらえた。話の分かる爺さんである。
 その結果、赤髪ショートの階級は一つ上昇。現在の実力とは釣り合っているので、問題は無いだろう。
 色々と老人に話を聞いてから、ギルドを出る。
 後で知ったのだが、俺が話していた老人はどうもギルドの責任者――通称ギルド長だったようだ。
 なんであんなところに居たのだろうか。不思議である。
 その後、錬金術師さん達と合流し、買い物に付き合った。つくづく思うが、何故女性の買い物はあんなにも長いのだろう。どの世界でもこれは共通らしい。
 かなり疲れた。
 途中、俺を追跡しているやからが居たので、路地裏に引き込んで撃退してやった。気絶させて身包みぐるみをいで素っ裸にし、その辺に吊るしておく。
 全く、都市に来て早々何だと言うのだ。
 宿に帰って軽く訓練をし、寝た。


しおりを挟む
感想 393

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

強くてニューサーガ

阿部正行
ファンタジー
人族と魔族が争い続ける世界で魔王が大侵攻と言われる総攻撃を仕掛けてきた。 滅びかける人族が最後の賭けとも言うべき反撃をする。 激闘の末、ほとんど相撃ちで魔王を倒した人族の魔法剣士カイル。 自らの命も消えかけ、後悔のなか死を迎えようとしている時ふと目に入ったのは赤い宝石。 次に気づいたときは滅んだはずの故郷の自分の部屋。 そして死んだはずの人たちとの再会…… イベント戦闘で全て負け、選択肢を全て間違え最終決戦で仲間全員が死に限りなくバッドエンドに近いエンディングを迎えてしまった主人公がもう一度やり直す時、一体どんな結末を迎えるのか? 強くてニューゲームファンタジー!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。