Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐

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4巻

4-12

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 流石さすがにこれだけ喰えばラーニングはできたが、一つラーニングするのに約千体は喰わねばならない計算だ。
 どこかに量と質、両方兼ね揃えた良い獲物はいないだろうか。
 それと喰った事で条件を満たしたのか、俺もパープルゴーストを生成可能となった。
 まあ、わざわざ黒より劣る紫を生成する事はないと思うので、あまり意味はなさそうだが。
 残るゴースト二千体は、王城に全て放ってみた。
 するとどうなったか。
 阿鼻叫喚である。
 壁をすり抜けたゴースト達による接触攻撃【未練の掌】――触れた者に【倦怠】や【陰鬱】など低位の状態異常を付与する。肉体的なダメージはほぼ無いが、精神的には高ダメージを与える場合もある――によって、兵士達が体調不良を訴えて医務室に運ばれたり。
 頬は痩せこけ眼が落ちくぼみ、ゾッとするほど蒼褪めた、死んだ大臣や貴族の顔を持つゴーストを目撃してしまったメイドや貴婦人達が、悲鳴を上げて失神したり。
 ケタケタキャハキャハと甲高い【幽霊の叫び】が何処から聞こえるのか分からぬまま王城内部で響き続け、聞いた者の精神をガリガリと削ったり。
 鉄砲水とでも表現すべきゴーストの大群に呑まれ、あまりに多くバッドステータスを付与されて精神力の限界を突破したのか、ブクブクと泡を噴き出して意識を失う者が続発したり。
 実に様々な事が起こった。
 ブラックゴーストですら魔力を纏った攻撃ならサクッと倒せてしまうくらいに弱いのだが、数が数だけに全て駆除されるまでには大体一時間程度かかっただろうか。
 思った以上に効果があるようだったので、今日は更に同じ規模で八回ほど生成しては襲わせてみた。
 やればやるほど相手の対応は早くなっていたが、気を休める暇を与えない、という目的は果たせている。夜中もゴースト達の笑い声が響いていたので、明日か明後日の行軍は結構酷い有様になりそうだ。
 それに引き替えこっちは生成して、魔力補充して、ゴーストが全滅する前まで休んで、また生成して、と実に楽なものである。

 本日の合成結果。

【未練の掌】+【未練の黒掌】+【未練の紫掌】=【幽鬼の呪掌レイスタッチ



《百七十八日目》

 今日も吹雪くかと期待していたが、そう都合よくはいかないようだ。
 気温は上昇し、昨日の豪雪が嘘のような蒼穹そうきゅうが広がっている。七〇センチほどに達した積雪は降り注ぐ陽光を反射し、光り輝いている。
 外に出ると眩し過ぎて眼が悪くなりそうだ。
 そんな中を、大孫は二千の兵と水勇パーティを率い、迫るお転婆姫軍に向けて行軍を開始した。
 行軍の障害になる積雪は飼い慣らされたボルフォル数頭の頭部に『く』の字型の鉄板――エンチャントによって熱を発する――を装着し、力尽くで取り除くようだ。
 ボルフォルの巨躯ならば、除雪機のように勢いよく除雪できる事だろう。
 まあ、【魔法】の類のように体内魔力を消費しないので兵士の消耗も少ないし、安上がりで手っ取り早い手段だろうな。
 そして縦列となって行軍する大孫達は、途中途中にある貴族の領地から兵を吸収しながら進み、分体によれば最終的に兵数は九千に達する見込みだ。
 行軍の速度から見て、大孫達とお転婆姫軍が衝突するのは二日後くらいだろうか。
 まあ、王都を出て行った勢力は既にどうでもいい。
 王都に残ったのは一般兵と一千の私兵と岩勇パーティ、それから蛇爺など【貴族派】の重鎮の半分以上になる。
 重鎮が残っているのはクーデターによって滞っていた業務を消化する為であり、岩勇パーティが残っているのは姿を眩ませて嫌がらせを続けている俺達を警戒したからである。
 現在岩勇は、王族が閉じ込められている尖塔の入り口の前に陣地を構え、愛用の武器である破城槌【イスンバルの鉄槌】を横に置いて警戒中だったりする。
 遠くから観察すると、その周囲には彼の《仲間/副要人物》である四名が、それぞれ暇潰ししながら談笑していた。
 ちなみにこの四名について簡単に説明すると――
 薄い金色の髪と瞳で、銀縁の眼鏡を装着し、紫色の外套の内側に錆びた釘や鋸にバールのようなものを隠し持つ、軽装鎧を着た鬼畜系優男やさおとこが【拷問官トーチャー】イコイ・トーチャー。
 まるで剣山のように無数の釘が取り付けられた金属製のバレルシールドを二枚装備した、大鬼オーガに匹敵するほどの巨漢で、まるで動く大樽の如き丸い全身鎧の【大樽番頭ビルバラーク】グラッシャー・パイ。
 青藍せいらん色の髪と瞳に、精悍で誠実そうな顔付き、藍色の金属鎧で首から下を覆い、紺色のマントを羽織るというありふれた騎士の格好をした好青年が【青藍騎士インジブナイト】クリストファー・ベイル・アズライト。
 弓と山刀マチェットを持ち、獣の毛皮で造られた露出が多い民族衣装で褐色の身を包む、黒い長髪と豊満な胸部が眩しい泣き虫女蛮族アマゾネスが【女蛮啼ジョバンナ】ヤントゥナ・ナ。
 ――となっている。
 外見的にも中身的にも、典型的な貴族の騎士である【青藍騎士】以外はなかなか濃いメンバーだなー、と思いつつ。
 さっさと侵攻を開始した。
 王都に残った私兵の中に、俺の〝草〟として使える貴族とその手勢を二百ほど紛れ込ませていたので、実質敵は八百程度しかいない。気を付けるべき精鋭も百人しか残っていない。
 それに王都の守りを担当していた一般兵は、昨日の内にコチラへと引き入れ済みだ。
 彼等的には元々状況に流されて仕方なかった事なのに加え、ゴースト騒動によって精神的にも参っていたので説得は非常に簡単だった。
 そして蛇爺達には分体を接近させ、そのまま【寄生】から【隷属化】という定番の流れで無力化していく。
 これで何も知らない八百の兵も自由に操れるようになったので、これでほぼ決着はついたと言ってもいいだろう。実に呆気ない。
 簡単過ぎて、むしろ蛇爺達の奥の手を拝めないのが残念なくらいである。
 残る脅威は岩勇パーティだけだが、こいつ等は少々面倒である。
 分体が下手に近づくと感知されそうだし、彼等ぐらいの存在になると【寄生】するのは難しくなってくるからだ。
【寄生】は非常に使い勝手がいいアビリティだが、本体の俺と比べてかなり能力が劣化している分体では、【勇者】や【英雄】レベルの相手に【寄生】できる確率はかなり低い。
 これはジャダルワイバーンを相手に実験し、分かった事だ。
 恐らく相手が強すぎる場合は免疫力に負けてしまうからに違いない。
 蛇爺などには余裕で出来るが、岩勇パーティレベルの存在では本人の同意が無いと難しそうだ。
 岩勇パーティに関しては、明日お転婆姫が直々に説得を試みるらしいので、それに任せる事にした。
 説き伏せて、自分に対する忠誠を獲得したいのだろう。
 それでも説得できない時は、実力行使になる。
 ただし俺が岩勇パーティを殺害する事はお転婆姫に固く禁じられているので、できれば戦いたくはない。無駄に食欲だけが刺激されるとか、嫌なもんだ。


《百七十九日目》

 今日も岩勇パーティは尖塔の前で待機中だ。
 ちなみに岩勇は【岩鉄の神の加護】持ちだからか、昨日から食事や排泄などを除いて岩のようにほぼ動いていない。
 胡坐あぐらをかき、腕を足に乗せた自然体はどこか大仏のような雰囲気すら漂っている。
 コチラとしては動かない方が都合はいいので、先に蛇爺達を操って私兵全員に指示を出し、それぞれを移動させていく。
 非武装にさせるのは不自然なので最低限の装備は持たせたままだが、動かした先には寝返った一般兵や解放した各王族の衛兵達と団員の一部が待機しているので、準備が整い次第、即座に制圧できる。
 騒音が漏れないように細工しているので、静かなものだ。
 手強い相手が集まっている所には俺やカナ美ちゃんが出向き、それほどかからず王城内の私兵を全て捕縛する事に成功。
 ついでに【貴族派】の貴族達の身柄も確保していく。
 後で刑に処す為にとりあえず眠らせてから牢屋にぶち込んでいき、あらかた掃除が終わったのは作戦開始から僅か三十分後。
 こうして王城は【貴族派】の手から、再び王族であるお転婆姫の手に舞い戻った。
 内部の掃除を済ませると、腰に儀式剣を下げて正装したお転婆姫は、岩勇パーティがいる尖塔に赴いた。
 岩勇パーティは、お転婆姫を見てまず驚き、本物か見極める為に目を細め、すぐに本物だと判断して更に訝んだのが、遠目でも分かった。
 だが訝しんだのも僅かな時間だけで、岩勇は立ち上がりながら横に置いている破城槌【イスンバルの鉄槌】を手に取った。
 それだけで周囲の空気がギシリと重く軋む。
 立ち上がった岩勇とそれに追随する仲間の四人が、ゆっくりとお転婆姫に近づいていく。
 岩勇は少しも表情を変化させずにジッとお転婆姫の姿を見つめ、背後に控える仲間も同じくそうしている。
 唾を呑み込む音すら聞こえてきそうなほどの、奇妙な静寂が場に満ちていく。
 岩勇の最大の特徴は、純粋に圧倒的な物理攻撃力にある。
 屈強な岩鉄の如き肉体が持つ巨人族に匹敵する膂力りょりょく、長年の戦いの中で磨かれた肉体操作法、【勇者】特有の強力無比な戦技アーツ。巨大な鉄塊のような破城槌【イスンバルの鉄槌】で巻き起こす破壊は、かつて王都を襲った【知恵ある蛇/竜・龍】の一種である【宝玉竜ジェムドラゴン】の堅牢な竜鱗を砕き、非常に硬い竜の角にすら傷を付けたという。
 多分、一撃の威力だけなら、今のミノ吉くんよりも強い。
 そんな岩勇を前に、幼いお転婆姫は何を思うのか。
 一応お転婆姫の横には少年騎士が控えているが、彼では岩勇の四人の仲間の中で最弱の【青藍騎士】にすら勝てない。
 戦力差は絶望的である。岩勇の一撃を受ければ、原型を留めない赤い肉片しか残らないだろう。
 だが対峙するお転婆姫の顔に畏怖は見られず、堂々とした立ち姿には貫禄があり、岩勇を見据えるその双眸そうぼうには力強い意思が宿っている。
 やがて岩勇が手を伸ばせばお転婆姫に届くほどの距離まで近づくと、お転婆姫が腰の儀式剣を抜いた。
 儀式剣の切っ先は丸く、幼いお転婆姫でも扱いやすい程度の長さしかないが、その剣身に宿る輝きには一点の曇りもない。
 お転婆姫が抜いたのは【クルタナ】という剣であり、二つの能力――【慈悲ミセリコルディア】と【断罪コンビクション】――を持つ【遺物エンシェント】級のマジックアイテムである。
 クルタナを抜いたお転婆姫と、岩勇が言葉を交わす。
 その結果、岩勇は無抵抗でお転婆姫の攻撃を一度受ける事になった。
 何故そうなったのか、ざっと説明すると以下のようになる。
 岩勇としては忠誠を誓うべき王族に反逆する意思は無かったので、本来【貴族派】に与するつもりはなかった。
 だが大臣が殺された事で、とある戦場で命を救ってもらった恩義に報いる為に、大臣の孫である大孫に協力すると決意した。
 もしお転婆姫が隠れたままなら探し出し、殺害していた可能性が高い。
 しかしこうして堂々と正面から対峙したその姿に胸打たれ、自ら粛清される為に斬られる、という選択肢を採った。
 何これ面倒臭いと思わなくもないが、岩勇がそう判断したんだからそれでいいんだろう。
 クソ真面目というか、愚直馬鹿というか、岩勇は本当に色々と固い。
 そしてそんな流れで、お転婆姫はクルタナで岩勇を斬った。
 見事な首断ちの一撃である。こんなところで訓練した成果が出たようで、左から右へと綺麗に振り抜かれた。普通なら間違いなく致命的であり、切り離された頭部が地面に転がっているはずだった。


 だが、岩勇はその身から血の一滴も流していない。首は頭部と胴体を繋げたままだ。
 それはクルタナの【慈悲】が正常に作用した結果である。
【慈悲】は使用者が斬る対象を心の底から憐れみ、許した時、何も斬る事が無い。
 不殺による救済の能力だと思えばいいだろう。
 だがもし少しでも許さない心があった場合は、岩勇は首をスパッと切られていた。岩勇の防御力すら、生物の防御力を無視する【断罪】の前には意味が無いからだ。
 岩勇はそれを知っていて、斬られる事を受け入れたのだから、よくやるよと思わざるを得ない。
 多分斬られたら、お転婆姫を道連れにするつもりだったのだろう。
 しかしお転婆姫は岩勇をクルタナで斬って、今回のクーデターに参加した事を心から許すと証明した。
 そしてお転婆姫は岩勇だけでなく、仲間の四人も続けてサササッと斬り、四人とも許してみせた。
 確実に命を断つ斬撃が五回も繰り返されて流血が全く無いというのは、お転婆姫の本心が明確に示された事になる。
 岩勇パーティにしても、それは驚くべき事だったのだろう。
 呆気にとられた様子で首が繋がっているのを確認し、ホッと安堵している風である。
 そしてその隙を逃さずに繰り広げられた、お転婆姫によるマシンガン洗脳トーク。心を読めるというのは本当にエゲツナイ。
 対象が何を考え、何を欲し、何に困惑しているのかなどを逐一把握できるというのは、最近腹黒さを隠さなくなってきたお転婆姫にぴったりの能力だ。いや、ぴったり過ぎて呆れるくらいだ。
 お転婆姫のてのひらの上でもてあそばれる人形のように、岩勇パーティの心が掌握されていくのが良く分かった。お転婆姫の能力は本当にごく一部の者しか知らないので、岩勇ですら手玉に取られているように見えた。
 最終的には岩勇の願いで、今回のクーデターが大孫達の敗北で終結しても、主犯格の一人である大孫は幽閉するだけで命まではとらない事で決着した。
 これが岩勇にできた、大臣に対するせめてもの恩返し、という訳だ。
 そして参加する理由がなくなったので、岩勇はこの戦いから退場し、後は成り行きを見守るのだという。
 岩勇パーティを洗脳し終えたお転婆姫は、清々しくも何処か黒い笑みを浮かべながら額の汗を拭い、離れた場所で銀腕を狙撃銃に、朱槍を弾丸に見立てて伏射姿勢プローンポジションをとっていた俺を見た。
 作戦成功じゃ、とでも言いたげな満面の笑みと共に親指を立てたその姿は、つい先ほど五人を洗脳してみせた王女様にはとても見えなかった。


《百八十日目》

 今日は王都で事後処理をするだけだったので、軍がどうなったのかについて簡単に語る事とする。
 まず昼頃、お転婆姫軍と大孫達が衝突した。
 予想通り平原にて開始された戦争は、最初の方はやはりこれまた予想通りに大孫達が優勢だった。
 兵数差もそうだが、水勇の存在が大きな要因となっていたのは言うまでもないだろう。
 戦争が開始されて早々、水勇が五人の仲間と共にお転婆姫軍を率いる公爵家当主の下へ真っすぐ突き進んでいった。
 それを阻む為に立ちはだかった兵士は、水勇によって大量に生み出された水球や、水球が弾ける時に発生する衝撃波などによって呆気なく薙ぎ払われてしまう。
 だが決死の覚悟で挑んだ兵士達は水勇の足止めに成功し、その間に軍隊としての攻防が繰り広げられた。
 だが、遂には水勇が公爵の下へ辿り着く。
 一応公爵も個人としてかなり戦える方だが、流石さすがに【勇者】相手では二合が限界で、その剣は弾き飛ばされた。
 そして水勇の愛剣である両手長剣【流水の蒼剣ファインシュブル】が体勢を崩した公爵の首に迫り、あわや決着か、となった時、そこに介入した者がいた。
 一角の銀鬼の顔を模した【怒鬼の仮面アンガーマスク】を装着して正体を隠し、右手には【陽光之魂剣ヒスペリオール】を持ち、銀鋼の軽装鎧と《戦に備えよパラベラム》の紋様が刻まれた外套を羽織った青年――つまりは復讐者である。
 水勇と同じく【勇者】に選ばれている復讐者は、水勇の一撃をその場から一歩も動かずに防いで見せた。肉体を内部から破壊する高速振動の水流による追撃も、剣が纏う高熱によって蒸発して意味を成さない。
 突然現れたコイツは一体何者なんだと一瞬だけ膠着した直後、死角から迫った蒼炎の槍が水勇に着弾した。酸素と効率良く反応して燃え盛る高熱の槍撃に秘められた破壊が、穂先という一点から一瞬で解放され、指向性を持つ爆轟が生じた。
 水勇は瞬時に水の膜で防御を布いていたので直撃こそしなかったようだが、ダメージを完全には消せず、数メートルほど錐揉きりもみしながら吹き飛んだ。
 水勇を吹き飛ばした槍は、復讐者の背後に控えていたスペ星さんが放った魔術である。
 そして水勇パーティと対峙した二人の傍らには、他の団員も居たりする。復讐者と同じく鬼面装備の鈍鉄騎士、ブラ里さん、グル腐ちゃん、スカーフェイス、五鬼戦隊などである。
 事前に戦場となる平原付近に復讐者達を配置していたので公爵を救えた訳だが、コチラの構成もゴブリンやホブゴブリンが多い。
 まあ、それでも拠点で開発した三つの新装備――王城で活躍した黒骨の外装鎧もその一つ――を全員に支給しているので、雑兵相手ならば十分戦える戦力となっている。
 水勇と同等の存在である復讐者や、それに迫る実力者であるブラ里さんがいた事もあって、重軽傷者は多数だが、予想よりもこちらの死者は少ない。
 流石さすがに【勇者】相手に損害無しで切り抜けられるとは思っていないので、これくらいの被害ならば良しとしておくしかない。
 しかし、復讐者達は傷つきながらも時間稼ぎという役目を全うしてくれた。
 と言うのも、アチラ側に属す水勇パーティが直接公爵を狙ったように、コチラ側はミノ吉くんが大孫を直接狙ったからだ。
 側面からの突撃だったので敵兵の密度はやや薄く、油断もあってか簡単に大孫近くにまで喰い込めた。
 九メートル級の〝鋼鎧大熊アーマービッグベア〟を騎獣ペットに従えたミノ吉くんの周囲に、それぞれの騎獣に搭乗しているアス江ちゃんや雷竜人サンダードラゴニュートの爺さん、蟷螂かまきり型の甲蟲人インセクトイド首なし騎士デュラハンといった強者達が固まっていた事も大きいだろう。
 つまり水勇がお転婆姫軍にやったように、ミノ吉くん達は大孫達を蹂躙していった。
 ただし被害の規模は大孫達の方が遥かに大きいだろう。ミノ吉くんの広範囲を薙ぎ払う斧撃と雷炎は強力で、何より全ての大きさが違っていたからだ。
 結果として、大孫達は平原から退却していった。
 水勇が狙った公爵は確かにお転婆姫軍を率いてはいるが、あくまでも代理だ。お転婆姫が殺されない限り、軍そのものを壊滅でもさせないと勝った事にはならない。
 しかし【貴族派】のトップはあくまでも大孫であり、公爵を討ち取ったとしても大孫を殺されれば、次は誰が代表になるかで少なくない時間が浪費される。そして結束が緩んでしまえば、お転婆姫軍に蹂躙されるのは目に見えている。
 それを回避する為に撤退を選んだという訳だ。
 逃げる大孫達を適度に追撃した結果、撤退した敵は大孫の領地である《セングレイ》という都市へと帰還して、態勢を立て直し中である。
《セングレイ》には王都から数時間程度で行けるので、お転婆姫が出向いて指揮をとり、攻め落とす予定である。

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