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4巻
4-14
しおりを挟む「シャァーらっせいッ」
スーラーンの剛腕から繰り出された一撃は、岩を容易く砕くほどの威力。また上乗せされた戦技は一撃の重さと防御を貫通する特殊効果に定評のある、優秀な戦技だ。
それに加え、両腕に装備されたセスタスに仕込まれた鋲は、相手に深く喰い込んで大量の失血を強いる。
だがその一撃も、フリードの時と同じく銀腕によって防御される。甲高い金属質の音が響き、激しく火花が散り、そして黒鬼の身体がほんの僅かに浮いた。
それはスーラーンの一撃の重さの証明であり、同時にその一撃で僅かしか浮かないほどの堅牢な防御を行った黒鬼の力量も証明している。
「まだまだぁッ!」
スーラーンが反撃は許さんとばかりに、間髪入れずに今度は右わき腹を狙ったボディブローを放つ。
左拳にも赤い燐光が灯り、拳速が加速する。
――戦技【杭打ちの左拳】
「シャァーらっせいッ」
先程と同じ威力を秘めた剛拳を、黒鬼は生身の右腕で防ごうとする。
ガッチリと折りたたまれたその右腕は岩石を思わせる分厚さで、スーラーンの剛拳を受け止めるのに十分過ぎるほどの防御力を秘めている。
だが顔の左半面を自身の血で赤く染めたスーラーンは、その思惑通りの行動に、不敵な笑みを浮かべて吼える。
「ぶっ飛んじまいなッ」
スーラーンの拳と黒鬼の右腕が触れる。その瞬間、スーラーンの拳――正確に言えばスーラーンの拳を包むセスタスの鋲が爆裂した。
スーラーンが装備しているのは、セスタス型マジックアイテム【水爆の鋲拳】
装着者の意思一つで鋲の先端に高威力の指向性水素爆発を発生させる能力が、至近距離で牙を剥いたのだ。
「手応えありだッぜ!」
水爆拳による弊害で、真っ白い蒸気が数瞬スーラーンの視界を覆う。
結果は目に見えなかったが、スーラーンには確かな手応えがあった。
黒いオーラによって多少威力は落ちているだろうが、密着爆撃に戦技を上乗せしたのだから、それ相応のダメージは必ずある。肉は弾け、赤く染まった白骨が覗いているだろう。
数多の経験から導き出されたそんな考えが、間違いだったのだとスーラーンは身を以て味わう事になる。
「これで――うっそーん……」
やがて蒸気が晴れると、そこには健在な右腕があった。
「その程度の攻撃では、大して効かんよ」
傷は既に治っているのか見当たらない。僅かに残る血だけが、皮膚が僅かに破けた名残だろうか。
黒鬼は右手でスーラーンの左前腕を掴み、抗う暇を与える事無く勢いよく頭上に振り上げた。
一瞬で加わった驚愕すべき力に、スーラーンの身体はまるで人形の如く舞い上がる。そして天地が逆転した景色の中で状況を理解しようと必死なスーラーンを嘲笑うかのように、今度は地面に向けて振り下ろされた。
「――ォォォォォオオオオオガッッハッ!!」
悲鳴、後に轟音。叩きつけられたスーラーンの肉体は地面に数センチほどめり込み、濛々と土煙を舞い上がらせる。
全身の骨が粉砕骨折し、臓器が破裂するような叩きつけの一撃。
周囲には広範囲にわたって深い亀裂が走り、自然災害めいた暴力によって受け身すらとれなかったスーラーンはしかし、健在だった。
頭部から流れている血は、事前に朱槍によって負った傷によるモノだ。
それはスーラーンが持つ特殊能力によるモノでも、屈強な肉体の力によるモノでもなかった。
「き、キタァァアアアアアアアんッ!!」
突如、殺伐とし始めていた戦場に、女の歓喜の悲鳴が響く。
スーラーンの様子を訝しげに見ていた黒鬼も流石に気を引かれ、素早くその声の方へと視線を向けた。
その先に居たのは、頭頂から足先まで全身全てを、側面に赤ラインが走る青いラバースーツで覆い、飾り気の無い黄金ベルトを巻いたヒトのような何かだった。
先程の甲高く甘い声と胸部の膨らんだ体型から女だと分かるそれは、両手で自分を抱きしめ、ゆらゆらと身体を揺すっている。
何処か官能めいた動きであり、甘く耳を擽る声は情欲を誘う。しかし、肌が僅かにも露出していないその姿はまさに変態。
青いラバースーツを装着して嬌声を上げる、重度の変態である。
「ぞ、ぞくぞくしますぅぅぅぅぅ。ほ、骨が、全身の骨がビクンビクンってぇぇぇぇぇぇぇ!」
ラバースーツの変態――シーゼロッテ・アルヘイムは、スーラーンと同じくフリードの五人の仲間の内の一人である。
スーラーンが無傷だったのは、シーゼロッテの力によるモノに他ならない。
「ああぁぁぁあぁぁああああッ! なんて、なんて素敵な痛みッ。気を抜くと逝ってしまいそうぅぅぅううッ!!」
シーゼロッテは、かつて他国の高名な【高位魔術師】だった。【勇者】や【英雄】の類には劣るものの、城壁すら破壊できるレベルの魔術を使う存在として恐れられ、名を馳せていた。
だが如何なる神の意思によってか、フリードと出会い、彼との激戦を経て《副要人物》として覚醒した。
そもそものスペックが良かった事に加え、強力な仲間を得たフリード達は【勇者】や【英雄】ですら容易く死ぬ事のある【神代ダンジョン】にも挑戦が可能な段階にまで至っていた。
そしてある時、シーゼロッテは特殊な儀式を行った。
〝イモータルデビル・ジェリーフィッシュ〟という【神級】の【神代ダンジョン】に出現する階層ボスを触媒にした最高難易度の儀式は、長丁場を乗り越えて無事に成功した。
そしてその結果、シーゼロッテは【不死者】という特殊な【職業】を得たのだ。
【不死者】を獲得するには、それまでに所持していた【職業】全ての喪失、新しい【職業】の獲得不可、という呪いの如き大きな代償を支払わなければならない。
当然、能力は以前と比較にならないほどに低下し、戦闘力は皆無になる。シーゼロッテも年齢相応の、か弱く華奢な女以下の力しかない。暴漢に襲われても、抵抗する事すら困難だ。
それでもシーゼロッテが【不死者】を得る事を選んだのは、その職業名通り、人間のままで不死となれるからに他ならない。
不滅という訳ではないが、たとえ心臓を貫かれようと、臓腑をぶちまけようと、死ぬ事の無い肉体を得たかったのだ。
【不死】の強さは捧げた所持職業の数、質、希少度などによって変動する為、複数の高位職業を捧げたシーゼロッテの【不死】は非常に強力だ。
半端な傷などは即座に治癒し、片腕を失っても十数秒あれば新しく生えてくる。全身がバラバラになっても、心臓、あるいは脳を中心に再生する事が可能だ。
そんな特異極まりない体質があればこそ、ようやくシーゼロッテは長年秘めていた重度の性的嗜好、破滅的被虐性欲が満たされるようになった。
己だけではイモータルデビル・ジェリーフィッシュを打倒出来なかったシーゼロッテはフリード達の協力を得て念願の【不死】を手に入れ、長い月日をかけて性的倒錯を進行させた。
そして現在、腰に巻いた黄金ベルト――【ダージラオベン】によってパーティメンバーが負う一定値以上のダメージを肩代わりするという、甘美な日々を送っている。
スーラーンのダメージを肩代わりした今、シーゼロッテの骨は砕け、そして治癒している段階にある。火照る身体を持てあます嬌声は、暫くの間続きそうだ。
「確かに厄介な能力だが、限界はあるだろう。さて、どれぐらい持つかな」
事前に情報を集めていた黒鬼はシーゼロッテの能力を目にし、その変態行為は見て見ぬふりしつつ、再度スーラーンを振り上げた。
「ぅぅぉぉおおおおおッ! こんちッきしょうめッ」
流石にこれ以上は堪らないと、スーラーンは自身を掴む黒鬼の右腕に膝蹴りを打ち込む。体勢的に窮屈だが、スポンジのような柔軟性を誇るスーラーンにとってすれば容易い事だ。
膝蹴りによる鈍い音が発するが、黒鬼の右腕は依然健在、効いた様子も見られない。
長ズボンの膝には魔法金属製の補強材が仕込まれているので並の人間なら骨を砕けるのだが、スーラーンとてこの程度の膝蹴りでは大したダメージにもならないと、先の一撃で理解していた。
ならばダメージになるまで打ち込めば、そうでなくとも肘を曲げる事が出来れば構わないと、半分以上自棄になりつつ一心不乱に繰り返し繰り返し膝蹴りを打ち込んだ。
そしてスーラーンを助ける為に、黒鬼の左側から足裏から水を出して滑るという独特の歩法でフリードが再接近。
それを迎え撃つのは朱槍の薙ぎ払い。
咄嗟に傾けた剣身と朱槍が激しく擦れ、凄まじい音と衝撃、そして火花を生じる。直撃ではないにもかかわらず体勢を崩されそうになる一撃だが、フリードはそれを何とか受け流す事に成功した。
そしてそのまま円を描く動きで蒼剣を振るい、戦技を上乗せした水刃を放つ。
――戦技【水刃断】
赤い燐光を宿した水刃が蒼剣から射出され、黒いオーラに阻まれつつも黒鬼の膝に僅かに食い込んだ。
「弾けろッ」
フリードからすれば、その僅かな食い込みで十分だった。体内に侵入した水刃は黒鬼の体液に微細な衝撃波を打ち込み、黒鬼を内部から破壊するべく全身に広がっていこうとする。
本来なら体液の循環を乱して内部破壊を引き起こし、耳や口から血を流させる致命的な一撃だ。
だが如何なる技法によってか、黒鬼はその衝撃波を太股の辺りで全て吸収し、最終的には地面に向けて放出した。ゴッ、と周囲が波打ち、土石が弾ける。
そしてフリードに向けて、打ち込まれた一撃のお返しを叩きこんだ。
「ちょ――ォォォォォォォォオオオオオオオオッ」
「くそッ――ガアッ!!」
一時的に鈍器と化したスーラーンが悲鳴を上げながら姿を霞ませ、次の瞬間にはフリードに高速で叩きつけられる。
フリードは咄嗟に正面に水の壁を作り、身体に水の鎧を纏い、地面に水の緩衝板を発生させて衝撃に備える。が、そのあまりにも強烈な一撃は、そんなモノなど意に介さずに粉砕した。
まるで加速した鉄球の直撃を受けたような衝撃がフリードを襲う。黒鬼がタイミング良くスーラーンから手を離した事で、両者は絡み合うように吹き飛び、数十メートルほど地面を転がってからやっと停止する。
ダメージは全てシーゼロッテが肩代わりするが、急激な回転によって平衡感覚が狂った二人はなかなか立ち上がれない。
「ハァァアンンァアァァァァアアァァッ」
二人分の強烈なダメージが全身に流れ込み、シーゼロッテは嬌声を上げた。
あまりの甘美な感覚に立つ事ができなくなり、力が抜けたようにへたり込む。
「何やってんのさ」「ナニやってんのさー」
フリードとスーラーンが弾き飛ばされ、シーゼロッテが腰砕けになった直後、黒鬼に迫る鉄塊が二つ。
それは鬼の怒り顔を模したデザインの、金と銀の巨大な鉄球だ。ジャラジャラと鎖が擦れる音と共に、左右から黒鬼を挟むように迫る。
鉄球で黒鬼を挟撃したのは、鏡映しのように酷似した双子だった。
短く切られた灰色の髪、灰色の双眸、まだ幼さの残る中性的な顔立ちに、一六〇センチくらいの小柄な体躯。黒子の位置から肌の色まで酷似している。唯一の違いは鉄球の色くらいなもので、それが無ければ親兄弟でも正確に見分ける事は困難だろう。
そんな双子もまたフリードの仲間であり、名は兄がアルン、弟がイルンという。
小柄ながら、重量級の武器を多用する【重戦士】ですら扱う事が困難な巨大鉄球を自在に操る怪力の持ち主であり、双子ならではの緻密な連携で敵を叩き潰す、壊し屋である。
「潰れちゃいな」「ツブレちゃいなー」
アルンの言葉を復唱するイルン。
幼さに潜む狂気のまま放たれた二つの鉄球を、黒鬼を避ける事もせず受け止めた。右腕にはいつの間にか黒銀のガントレットが装着されている。
金属と金属が衝突する凄まじい音と衝撃が飛び散り、その衝撃は容赦なく黒鬼を圧迫する。黒鬼が全身の筋肉を隆起させてそれに対抗する最中、着弾した金と銀の鉄球から内包した能力が解放された。
兄アルンの金の鉄球からは紫色の轟雷が、弟イルンの銀の鉄球からは強酸性の魔水がそれぞれ放出される。
その二つが重なった結果、皮膚や骨を溶かし、大電流で内部から焼く帯電魔水が黒鬼を襲う。
容赦なく猛威を振るう帯電魔水を受けて尚、しかし黒鬼はその肉体の圧倒的な再生能力に物を言わせ、焼け溶けた傍から新しい皮膚や肉を生み出し、凌いでみせた。
肉が焼け溶ける臭いの中で、黒鬼は牙をむき出しにして双子を見据えている。
鉄球は黒鬼を叩き潰すには至らず、勢いを失って地面に落ちた。亜竜すら容易く叩き潰す攻撃も、些か力不足だったらしい。
「硬すぎでしょ!」「カタすぎでしょー!」
そう言いながらアルンとイルンは慌てて鉄球を回収しようと力を込めるが、全く動かない。
よく見れば、黒鬼がそれぞれの手に一つずつ鉄球を掴んでいるではないか。力比べなんて上等だ、と巨鬼にすら容易く勝利する膂力の持ち主である双子はムキになって鉄球引きを始めるが、それでも微動だにしない。
「ちょ、そんなのありかよッ」「ありかよー!」
双子が顔を怒りと羞恥で赤く染めながら抗議した、その時である。
二人の遥か後方の地面から噴き上がった三本の土石流が、まるで大蛇のような形状となり、確固たる意志に従って双子諸共に黒鬼を呑み込もうと接近する。
「おお、亜人に負けるとは情けないッ! そんな未熟者達は――」
土石流の大蛇を行使するのは、残るフリード最後の仲間。
大量虐殺を行った悪辣非道な死刑囚数名から生きたまま剥いだ皮と、水棲のヒト型モンスターの生皮によって造られた背徳的・冒涜的なデザインのフード付きコートを羽織り、苦悶の表情を浮かべた美しい女人魚達のデスマスクで彩られた歪な金属魔杖を持つ老人だ。
目深にかぶった人皮のフードから狂気に満ちた虚ろな瞳が見え隠れする老人の名は、ゴッツバルン・ヘイルーダー。
水を介した状態異常攻撃を得意とする【高位水妖術師】であり、岩土系統魔術を得意とする【高位岩土魔術師】でもある。
三つの土石流の大蛇は、その二つの職業の能力を並行行使して生み出した混合系統第五階梯妖魔術〝呑み止める土石の大蛇〟である。
触れれば移動速度を低下させる【遅速の枷水】を使った水流大蛇に、呑み込んだモノを容赦なく叩き潰し磨り潰す土石を混ぜたそれは、かつてアポ朗に立ち向かった【高位魔術師】が放った混合系統第五階梯魔術〝白き炎の竜〟を遥かに凌ぐ破壊力を宿していた。
「――激流に混じる土石に全身を削られるのがお似合いよッ!!」
飛沫を浴びせて速度を奪い、呑み込むと同時に全身を磨り潰してしまう土石流の大蛇が、三方向から黒鬼に殺到した。
黒鬼はそれでも動こうとはせず、一瞬で土石流に呑まれて見えなくなった。
己が立っていた場所まで呑み込まれてしまいそうだったので、双子は慌てて後退していく。
「危ないだろ爺さんッ」「アブナイだろ爺さんー」
何とか回避した双子は抗議の声を上げるが、固まっているゴッツバルンには届かない。
そんな言葉よりも重要な光景が、目の前に広がっていたからだ。
「なんと、吾輩の〝呑み止める土石の大蛇〟が、凍る、だと!?」
黒鬼を呑み込んだ土石流の大蛇。それが今、一瞬の間に完全に凍っていた。
土石流の大蛇を凍らせたのは、濃厚な魔力を内包した超低温の魔氷である。
魔氷による凍結世界の中、周囲の気温は一気に低下し、吐く息が白く染まった。
ゴッツバルンはデスマスクの金属魔杖で足元の邪魔な魔氷を苛立たしそうに砕きつつ、自身の攻撃を凍結した元凶を憎悪の目で睨んだ。
だが、氷の世界を生み出した元凶は微笑を浮かべて、ゴッツバルンの威圧を込めた視線など意に介していない。
「そろそろ私も参加しますので、どうぞお手柔らかに」
それは絶世の美女であった。一八〇センチ以上はあるすらりと伸びた背、凹凸のハッキリとした魅力的な体型、そして眼鏡の奥にある吸い込まれそうな赤い瞳に黄金の瞳孔。
身に纏うのは、蒼と白の魔鋼糸や黒紫の魔骸布などで作られた美しいドレス。手には芸術品のような美しさを備えた魔氷結晶のクレイモアがある。
彼女はこれまで黒鬼の背後に控えていた吸血貴族の麗人である。フリード達六人が黒鬼に対して一通り攻撃をし終えた事を切っ掛けに参戦したのだった。
「お手柔らかに、だと? あれほどの力を見せておきながら、ふざけた事を……」
ようやく立ち上がったフリードは歯痒そうに呟いた。
フリード達とて黒鬼に関する情報を集めてはいたが、彼女の情報は全くと言っていいほど無かった。まさか魔法による土石流の大蛇を一瞬で凍結するほどの能力を持つなど、予想できるものではない。
【水震の勇者】フリードと同じく、黒鬼は《主要人物・詩篇覚醒者》である、と戦闘開始時に各自の脳内に響いたアナウンスで判明していた。
その黒鬼の仲間なのだから、彼女もまたスーラーン達と同様に《副要人物》だとしても、その能力はあまりにも常識外れである。
まず間違いなく【加護持ち】、それも【神の加護持ち】である可能性が非常に高い。
黒鬼だけですら持て余していたフリード達六人にとってすれば、厄介極まりない援軍。連携されれば手に負えなくなるだろう。
黒鬼は未だ魔氷の中から出てきていないが、全身氷漬けとはいえそれで黒鬼が死ぬなどフリードには想像できなかった。それによく見れば、黒鬼が居た場所が仄かに明るく光り始めている。
その光は徐々に強さを増し、周囲の魔氷は溶け始めていた。
黒鬼が出て来るまで、大した時間は無さそうだった。
僅かな時間の中、手札をどうすべきか、フリードは即座に判断した。
「アルンとイルンは女を押さえろッ、他は鬼を殺せッ」
パーティ内でも二番目の実力者であるゴッツバルンの土石流の大蛇が凍らされたとなると、フリードの水とて凍らされる可能性は高い。
吸血鬼の氷に影響が少なさそうなのは、基本的に自身の肉体で戦うスーラーンと、紫色の轟雷を生じさせる鉄球を使うアルンのみ。
だがアルンとイルンはセットで使うからこそ本領を発揮する。
その三人を吸血鬼に当てたとして、残るフリードとゴッツバルンだけで黒鬼を打倒できるほど甘くない。
ならばアルンとイルンを吸血鬼に差し向け、他の三人で黒鬼を叩くのは、妥当な判断だった。
「任されたよッ」「マカされたよー」
アルンとイルンが吸血鬼に向けて走り出す。
それとほぼ同時に、獅子のような形に燃え上がる【炎獅子の灼体】の業炎を身に纏った黒鬼が、分厚い魔氷を溶かしながら姿を現した。
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