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魔術授業も二日目に入った。
昨日の雷で懲りたのか、男子たちは午前中、大人しく(?)木剣を振り回して遊んでいた。
女子たちは、木陰の芝生に座り込んで、それを眺めている。
目線も寄越さず、レナが私に尋ねる。
「ねぇマリー、昨日を過ごして、あなたの点数付けに変化はあった?」
私も男子たちを見やりながら応える。
「んー、そうねぇ……」
私は次々と点数を口にしていった。
サイ兄様は五十点
アミン様は四十点
ヴァルター様は四十点
アラン様は三十八点
アレックス様は三十点
マーセル殿下は二十五点
スウェード様は二十二点
オリヴァー殿下は五点
ララが激しい剣幕で私に詰め寄ってきた。
「ちょっと! なんでアム兄様にヴァルター様が並ぶのよ?!」
「いや、だから! 私に理由を聞かれても困るのよ!
直感なんだから!
そういう点数付けでしょう? これ!」
レナはちょっと感心しつつ、メモに追記していった。
「アラン様とスウェード様が刻んだわね。
サイモン様が基準の五十点だから、そうなってしまうのかしらね」
サニーがレナのメモ帳を覗き込みながら告げる。
「あら、アレックス様とマーセル殿下が順位入れ替わりね。
基本的には灰色狼相手に活躍した人が加点された感じに見えるわね」
ララがそこで抗議の声を上げる。
「それならなんで、アム兄様が据え置きなのよ!
兄様だって狼一匹倒してるわよ?!」
「知るかーっ! 私じゃなく、私の直感に聞いてよ!」
気が付くと、私の周囲に男子たちが集まって来ていた。
マーセル殿下が真剣な顔で尋ねてくる。
「なんだなんだ、何があった?」
レナがじったりとした目でメモ帳を男子に見せつけていた。
「これ、なんだと思う?」
サイ兄様が顎に手を当て、メモ帳を眺めていた。
「俺が五十点? それでみんながそれより低い……まさか――」
スウェード様がサイ兄様に尋ねる。
「どういうことだ?」
レナがスウェード様に告げる。
「マリーの男性評価チャートよ」
と、あっさりばらしていた。
どうやら彼女は、兄に甘いらしい。
一気に七人の男子が色めきだった。
アラン様だけは、「ほー、面白い評価ですね」と感心していた。
実兄であるサイ兄様も、なぜか色めきだっていた。
マーセル殿下が私に食って掛かる。
「なんで兄上がドベで、めちゃくちゃ低評価なんだ! おかしいだろう?!」
オリヴァー殿下は無言で地面に崩れ落ちていた。
評価値がショックだったらしい。
「しょうがないじゃない!
これは私の直感だけで判断した点数なんだもの!
私だって理由はわからないんだから、聞かれても困るのよ!」
口々に不平を述べてくる男子七人。
だけどそのうち、六人の意志がひとつの不満に集約されて行った。
「なんでトップが実兄なんだよ?!」
「俺がマリーのトップなのは当然だろう?」
お兄様、即答する内容ではないと思うのだけれど。
この妹にして、この兄あり。
私もブラコンは多少自覚してるけど、サイ兄様のシスコンはそれを上回るみたいだ。
男子七人がぎゃいぎゃい言ってるうちに、スウェード様がまたひとつの不満を口にした。
「なぁ、なんでヴァルターがこんなに高評価なんだ?」
「知るかーっ! 私だって誰かに理由を聞きたいのよ?!」
サイ兄様が、冷静に評価を査定していく。
昨日、灰色狼の出現をいち早く察知したのがヴァルター様。
あれがなかったら、私たちは不意を突かれて大怪我を負っていた可能性が高い。
その後も順当に狼を複数倒している。
午後に私が倒れた時も、迅速にお母様を呼び出して、私の命を救ってる。
「――充分、高評価の理由になるな」
なるほど、言われてみると評価ポイントが多い日だったのか。
一方でヴァルター様は、顔を真っ赤に染めてうろたえていた。
「え? いや、僕はそんな、その、当たり前のことをしただけで。
あ、狼の時も、たまたま気付いただけだし」
それを見ていたサニーが、大きくため息をついた。
「その普段の弱気な態度がなくなればね。
ヴァルター様はアミン様に、立派に張り合えるわよ?」
顔はお母さん譲りで整っている。
レベルが高いザフィーアで、一番剣術が強い。
土壇場で動揺しないし、機転も聞く。
つまり、頼りがいがあるらしいのだ。
「――マリーの直感は、その弱気な態度がいつか無くなると判断してるんじゃない?」
あ、なるほどな?
みんなの言葉を受け、私は思わず納得して手を打ってうなずいていた。
ララは愉悦交じりで男子をからかっていく。
「この点数だと、オリヴァー殿下は絶望的ね。
マーセル殿下とスウェード様も、ほぼ勝ち目がないわ。
ご愁傷様」
オリヴァー殿下の隣に、マーセル殿下とスウェード様が追加で崩れ落ちた。
レナもララに便乗してからかいだした。
「全くその気がないアラン様が、中間でいいポイントを維持してるのも面白いわよ?
どう? アラン様も参戦してみない?」
アラン様は明るく笑って応える。
「そうですね、僕が参戦するのも面白いかもしれませんね。
従弟違いなら、婚姻もまったく問題ありません。
大叔母上が義母になる人生も、楽しそうだなぁ」
え? どういう意味?
私がきょとんとしていると、男子六人が一斉に叫ぶ。
「余計な事言うなよ?!」
えーと? サイ兄様以外の全員が叫んでる?
余計な事って、なに?
ララが明るい笑顔で私に尋ねる。
「ねぇマリー、アム兄様が点数据え置きの理由を、直感で判断してみてよ。
あれだけ活躍して、なんで据え置きなのか」
直感で出た点数の根拠を、直感で言語化するの?!
「うえぇぇ?! できるかなぁ? ……うーん」
私は腕を組んで、しばらく首を傾げていく。
理由……理由ねぇ……。
直感で浮かんだ単語を拾い上げ、それを直感でつないでみる。
言葉の穴埋めも、直感で行った。
ついに理由が言葉として完成したので、私は組んでいた腕をほどいて顔を上げた。
私の目の前では、とても真剣な眼差しでアミン様がみていた。
どこかすがるような目つきだ。
私はゆっくりと口を開く。
「……なんかアミン様って、どこか手を抜いてる気がするんですよ。
失敗できる言い訳できる余地を残すみたいに。
全力で物事にあたっているように見えないです」
私の辛らつな言葉に、アミン様が愕然としていた。
腕比べの時、アラン様とアミン様が対決してアミン様が負けていた。
あの時アラン様は、途中で両手持ちに変えていた。
同じように両手持ちに変えていたら、アラン様が相手なら勝てたんじゃない?
なんで片手持ちに拘って負けたんだろう?
アラン様は勝つために、自分のスタイルを変えたのに。
勝ちたくなかったのかな?
――アミン様の表情がどんどん陰っていった。
ララは『森の探検は、私にいいところを見せたいから、みんな必死だ』って言っていた。
じゃああの腕比べも、そうだったんじゃないのかな?
だとしたらアミン様にとって、私の評価なんて『負けても良いもの』だったってことになる。
「――それなら今の四十点だって、破格の点数じゃないんですか?」
サイ兄様が、苦笑を浮かべて告げる。
「マリー、少しは手加減してやれ」
ララを横目で見ると、無言でアミン様に謝り倒していた。
なんせ、藪をつついた本人だ。
蛇がアミン様に襲い掛かったのは、彼女の責任だもんね。
彼女が理由を追求しなければ、こんなことにはならなかったんだし。
――まぁ、私もここまで言う気はなかったんだけど。
なんか、言い始めたらすらすら出てきちゃったんだよね。
へこんでいるアミン様を横目に、マーセル殿下が興味津々で乗ってきた。
「マリオン。
その直感で兄上がドベの理由、考えてみてくれないか?
興味があるんだ」
……ええ?! まだやるの?!
昨日の雷で懲りたのか、男子たちは午前中、大人しく(?)木剣を振り回して遊んでいた。
女子たちは、木陰の芝生に座り込んで、それを眺めている。
目線も寄越さず、レナが私に尋ねる。
「ねぇマリー、昨日を過ごして、あなたの点数付けに変化はあった?」
私も男子たちを見やりながら応える。
「んー、そうねぇ……」
私は次々と点数を口にしていった。
サイ兄様は五十点
アミン様は四十点
ヴァルター様は四十点
アラン様は三十八点
アレックス様は三十点
マーセル殿下は二十五点
スウェード様は二十二点
オリヴァー殿下は五点
ララが激しい剣幕で私に詰め寄ってきた。
「ちょっと! なんでアム兄様にヴァルター様が並ぶのよ?!」
「いや、だから! 私に理由を聞かれても困るのよ!
直感なんだから!
そういう点数付けでしょう? これ!」
レナはちょっと感心しつつ、メモに追記していった。
「アラン様とスウェード様が刻んだわね。
サイモン様が基準の五十点だから、そうなってしまうのかしらね」
サニーがレナのメモ帳を覗き込みながら告げる。
「あら、アレックス様とマーセル殿下が順位入れ替わりね。
基本的には灰色狼相手に活躍した人が加点された感じに見えるわね」
ララがそこで抗議の声を上げる。
「それならなんで、アム兄様が据え置きなのよ!
兄様だって狼一匹倒してるわよ?!」
「知るかーっ! 私じゃなく、私の直感に聞いてよ!」
気が付くと、私の周囲に男子たちが集まって来ていた。
マーセル殿下が真剣な顔で尋ねてくる。
「なんだなんだ、何があった?」
レナがじったりとした目でメモ帳を男子に見せつけていた。
「これ、なんだと思う?」
サイ兄様が顎に手を当て、メモ帳を眺めていた。
「俺が五十点? それでみんながそれより低い……まさか――」
スウェード様がサイ兄様に尋ねる。
「どういうことだ?」
レナがスウェード様に告げる。
「マリーの男性評価チャートよ」
と、あっさりばらしていた。
どうやら彼女は、兄に甘いらしい。
一気に七人の男子が色めきだった。
アラン様だけは、「ほー、面白い評価ですね」と感心していた。
実兄であるサイ兄様も、なぜか色めきだっていた。
マーセル殿下が私に食って掛かる。
「なんで兄上がドベで、めちゃくちゃ低評価なんだ! おかしいだろう?!」
オリヴァー殿下は無言で地面に崩れ落ちていた。
評価値がショックだったらしい。
「しょうがないじゃない!
これは私の直感だけで判断した点数なんだもの!
私だって理由はわからないんだから、聞かれても困るのよ!」
口々に不平を述べてくる男子七人。
だけどそのうち、六人の意志がひとつの不満に集約されて行った。
「なんでトップが実兄なんだよ?!」
「俺がマリーのトップなのは当然だろう?」
お兄様、即答する内容ではないと思うのだけれど。
この妹にして、この兄あり。
私もブラコンは多少自覚してるけど、サイ兄様のシスコンはそれを上回るみたいだ。
男子七人がぎゃいぎゃい言ってるうちに、スウェード様がまたひとつの不満を口にした。
「なぁ、なんでヴァルターがこんなに高評価なんだ?」
「知るかーっ! 私だって誰かに理由を聞きたいのよ?!」
サイ兄様が、冷静に評価を査定していく。
昨日、灰色狼の出現をいち早く察知したのがヴァルター様。
あれがなかったら、私たちは不意を突かれて大怪我を負っていた可能性が高い。
その後も順当に狼を複数倒している。
午後に私が倒れた時も、迅速にお母様を呼び出して、私の命を救ってる。
「――充分、高評価の理由になるな」
なるほど、言われてみると評価ポイントが多い日だったのか。
一方でヴァルター様は、顔を真っ赤に染めてうろたえていた。
「え? いや、僕はそんな、その、当たり前のことをしただけで。
あ、狼の時も、たまたま気付いただけだし」
それを見ていたサニーが、大きくため息をついた。
「その普段の弱気な態度がなくなればね。
ヴァルター様はアミン様に、立派に張り合えるわよ?」
顔はお母さん譲りで整っている。
レベルが高いザフィーアで、一番剣術が強い。
土壇場で動揺しないし、機転も聞く。
つまり、頼りがいがあるらしいのだ。
「――マリーの直感は、その弱気な態度がいつか無くなると判断してるんじゃない?」
あ、なるほどな?
みんなの言葉を受け、私は思わず納得して手を打ってうなずいていた。
ララは愉悦交じりで男子をからかっていく。
「この点数だと、オリヴァー殿下は絶望的ね。
マーセル殿下とスウェード様も、ほぼ勝ち目がないわ。
ご愁傷様」
オリヴァー殿下の隣に、マーセル殿下とスウェード様が追加で崩れ落ちた。
レナもララに便乗してからかいだした。
「全くその気がないアラン様が、中間でいいポイントを維持してるのも面白いわよ?
どう? アラン様も参戦してみない?」
アラン様は明るく笑って応える。
「そうですね、僕が参戦するのも面白いかもしれませんね。
従弟違いなら、婚姻もまったく問題ありません。
大叔母上が義母になる人生も、楽しそうだなぁ」
え? どういう意味?
私がきょとんとしていると、男子六人が一斉に叫ぶ。
「余計な事言うなよ?!」
えーと? サイ兄様以外の全員が叫んでる?
余計な事って、なに?
ララが明るい笑顔で私に尋ねる。
「ねぇマリー、アム兄様が点数据え置きの理由を、直感で判断してみてよ。
あれだけ活躍して、なんで据え置きなのか」
直感で出た点数の根拠を、直感で言語化するの?!
「うえぇぇ?! できるかなぁ? ……うーん」
私は腕を組んで、しばらく首を傾げていく。
理由……理由ねぇ……。
直感で浮かんだ単語を拾い上げ、それを直感でつないでみる。
言葉の穴埋めも、直感で行った。
ついに理由が言葉として完成したので、私は組んでいた腕をほどいて顔を上げた。
私の目の前では、とても真剣な眼差しでアミン様がみていた。
どこかすがるような目つきだ。
私はゆっくりと口を開く。
「……なんかアミン様って、どこか手を抜いてる気がするんですよ。
失敗できる言い訳できる余地を残すみたいに。
全力で物事にあたっているように見えないです」
私の辛らつな言葉に、アミン様が愕然としていた。
腕比べの時、アラン様とアミン様が対決してアミン様が負けていた。
あの時アラン様は、途中で両手持ちに変えていた。
同じように両手持ちに変えていたら、アラン様が相手なら勝てたんじゃない?
なんで片手持ちに拘って負けたんだろう?
アラン様は勝つために、自分のスタイルを変えたのに。
勝ちたくなかったのかな?
――アミン様の表情がどんどん陰っていった。
ララは『森の探検は、私にいいところを見せたいから、みんな必死だ』って言っていた。
じゃああの腕比べも、そうだったんじゃないのかな?
だとしたらアミン様にとって、私の評価なんて『負けても良いもの』だったってことになる。
「――それなら今の四十点だって、破格の点数じゃないんですか?」
サイ兄様が、苦笑を浮かべて告げる。
「マリー、少しは手加減してやれ」
ララを横目で見ると、無言でアミン様に謝り倒していた。
なんせ、藪をつついた本人だ。
蛇がアミン様に襲い掛かったのは、彼女の責任だもんね。
彼女が理由を追求しなければ、こんなことにはならなかったんだし。
――まぁ、私もここまで言う気はなかったんだけど。
なんか、言い始めたらすらすら出てきちゃったんだよね。
へこんでいるアミン様を横目に、マーセル殿下が興味津々で乗ってきた。
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……ええ?! まだやるの?!
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