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第2章:横浜で空に一番近いカフェ
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天流と一緒に、千晴が部屋を出る。
黙って歩く天流の後ろを、千晴が追い付かないように歩いて行く。
エレベーターの中でも無言で、黙って一階のエントランスに出た。
天流が千晴に振り向いて告げる。
「ほらほら、のんびりしてると遅れちゃうよ」
「……はい」
それでも足を速めない千晴に、天流が手を差し伸べた。
「ほら広瀬さん、急ごう」
――公衆の面前で手を握れと?!
だがさっきまで、体を寄せ合って時間を過ごしていた。
今さら何を恥ずかしがるのか、という諦めが千晴の胸に去来する。
ゆっくりと天流の手を持った千晴の手を、天流がしっかりと握り返した。
天流の歩調に合わせるように、千晴はその隣を歩きだした。
****
桜木町駅前も人並も、ランドマークタワーに向かう動く歩道も、天流は千晴の手を離さなかった。
千晴は恥ずかしさと安らぎを感じながら、職場への道を歩いて行く。
カフェに向かうエレベーターの中で、チラチラと千晴たちを見る人たち。
そんな視線にさらされながら、千晴はカフェに到着した。
ようやく事務所で手を離してもらった千晴は、「着替えてきます!」と更衣室に駆け込んだ。
息苦しく跳ねまわる心臓を、更衣室で落ち着かせる。
ゆっくりと着替え終わった千晴は、更衣室を出て天流に告げる。
「天流さん、今日は意地悪し過ぎじゃないですか?」
「そうかな? そんなことはないと思うけど。
さぁ、遅番の人を紹介しておこう。
カウンターに移動するよ」
手をつながずに歩く天流の後姿を見つめたあと、千晴はその背中を追いかけた。
****
遅番のバリスタ、田口を紹介され挨拶を交わしたあと、千晴は天流と三人でカウンターとホールを回していく。
いつもより多い客足を、手慣れた天流と田口が捌いて行く。
千晴はホールの清掃をメインに走り回り、時折カウンター内でオーダーを捌いて行く。
やがて花火大会が始まり、耳に破裂音が届き始めた。
「あ、始まりましたね」
「これからお客さんが増えるから、気をつけてね」
千晴がいるカウンター内からも、花火の端が人垣の向こうに見えた。
やはり花火が良く見える場所は、人が多く集まっているようだ。
さらに増した客足を必死に捌く千晴に、天流が告げる。
「広瀬さん、清掃行ってきてもらえる?」
「はい!」
千晴はカウンタークロスを手に持ち、テーブル席へと向かった。
テーブルを拭き終わった千晴がふと窓に目をやると、人垣の隙間から夜景が見えた。
その瞬間、目の前に大輪の花が咲いた。
今まで見たことのない角度からの花火――新鮮な体験だった。
まるで自分が花火を見下ろしているかのような錯覚。
ここが『横浜で空に一番近いカフェ』だと、心の奥が理解した。
ぼうっとしている千晴のそばに、天流がいつのまにか立っていた。
「どう? 綺麗だったでしょ」
「……はい、花火ってこんなに綺麗だったんですね」
再び夜空に咲く大輪の花――それを天流と共に見ている。
そのことに、千晴の心が満たされて行くのを感じた。
「……私、この職場が好きになれそうです」
「そう? それはよかった。
でも、もうカウンターに戻ろうか。
またお客さんの波が来るよ」
千晴は天流を見てうなずくと、一緒にカウンター内に戻っていった。
****
花火大会もあっという間に終わり、客足は平常通りに戻っていく。
静かなホールでは、花火の思い出を語り合うカップルが多く見られた。
千晴はカウンターの中でぼんやりとカップルシートの様子を眺める。
――いつか、私もあの場所で誰かと。
シートに座る自分と天流の姿を幻視してしまい、千晴があわてて頭を振った。
「どうしたの? 広瀬さん」
ハッと顔を上げた千晴は、天流の顔を見て頬を染めていた。
「なんでもありません!
天流さんは気にしないでください!」
「そう? あと一息だから、頑張ろうね」
天流の隣に居づらくなった千晴が、顔を伏せて告げる。
「私、食器を洗ってきます!」
千晴はキッチンに向かい駆け出した。
天流は千晴の背中を優しい眼差しで見送っていた。
****
千晴がキッチンに引っ込んだ後、田口が告げる。
「チーフも隅に置けないね。
いつの間にあんな子を囲ってたの?」
天流は微笑みながら応える。
「二か月くらい前かな。
ようやく心を開いてくれたみたいだ」
「へぇ、じゃあ本気なんですか?」
「さぁ? それは内緒かな。
まだようやく固いつぼみがほころんできたところだし。
まだまだ時間はかかると思うよ」
田口がため息をついて告げる。
「いいなぁ、青春してて。
俺にも青春がやってこないかな」
天流が軽妙に笑った。
「自分から動かなければ、簡単にやってくるものじゃないさ。
田口だって、まだ若いんだから。
諦めるのはまだ早いよ」
「諦めてる訳じゃないですけどね。
遅番やってると、大人の付き合いができないからなぁ」
「じゃあ、シフトを変えるかい?」
田口が肩をすくめて応える。
「俺が居なくなったら、遅番が回らなくなるでしょ?
今は青春より、仕事が大事ですよ」
「よく理解してくれていて助かるよ。
――それより広瀬さん、遅いな」
田口が楽し気に微笑んだ。
「心を落ち着けるのに、時間がかかってるんでしょ?
本当に罪な人ですね、チーフは」
「そうかな?」
「そうですよ」
客足が途絶えたカウンターで、二人は静かに語らい続けた。
****
千晴がカウンターに戻ってくると天流が告げる。
「お帰り広瀬さん。
でももう営業時間終了だ。
僕はホールに出て閉店処理をするから、キッチンで片付けを手伝ってきて」
「あ……はい!」
カウンター内を片づけ始めた田口の横を通り、千晴はキッチンに戻っていった。
残っていた客たちが、いくつかの食器を追加でキッチンにもたらす。
千晴は食器を洗いながら、キッチンスタッフと一緒に後片付けを済ませていった。
客が居なくなったホールを、千晴は天流と清掃して回った。
暗い夜空、いつもと違う風景。
最初に見た夜景を千晴は思い出していた。
あの時よりも輝いて見える夜景に、千晴は不思議な感慨を覚えていた。
ぼんやりと外を見つめる千晴に、天流が告げる。
「どうしたの? 広瀬さん」
「いえ、遅番だとこんな風景が見られるのかなって」
天流がクスリと笑った。
「そうだね、早番だと見られない風景だ。
それもあって、遅番の方が人気なのかもね」
千晴と一緒に夜景を眺める天流に、田口が近寄っていった。
「チーフ、レジの締め終わりましたよ。
もう帰りますけど、何かありますか」
天流が田口に振り向いて告げる。
「ありがとう、水無瀬たちは?」
「もう帰りましたよ。
残ってるのは俺たちだけです」
天流が小さくうなずいて応える。
「あとはやっておくから大丈夫。
お疲れ様」
「はい、お先に失礼します」
田口が去り、フロアが静まり返った。
千晴の耳元で天流がささやく。
「ねぇ広瀬さん、ちょっと座ってみない?」
跳ね上がる鼓動を隠しながら、千晴が応える。
「どこに、ですか?」
「この席、眺めがいいと思うんだ。
今くらいじゃないと座れないよ?」
天流が手を置いたカップルシートを、千晴は赤くなりながら見つめた。
おずおずとシートの端っこに千晴が座ると、反対側に天流が座る。
「もっとくっつかなくていいの?
防犯カメラ以外、誰も見てないよ?」
「――警備員が見てるってことじゃないですか!」
「これだけ暗ければ、大して見えやしないさ。
それに彼らも気になんかしないよ」
千晴はカウンタークロスを握りしめると、わずかに腰を浮かした。
天流の隣にぴったりと座り、彼の体温を感じ取る。
天流は千晴の肩に手を回し、夜景を楽しそうに眺めた。
「どう? 『誰かと見る夜景』って、特別に思えない?」
千晴は黙って小さくうなずいた。
「こんな場所をお客さんに提供するのが、私たちの仕事なんだ。
自分たちが提供してる商品の味、しっかりと味わってみて」
それからしばらく、二人の間は時間が止まっていた。
遠くでゆっくりと動く船の明かりだけが、時間が過ぎゆくのを知らせていた。
****
帰り支度を終えた千晴に、天流が告げる。
「忘れ物はない? 電気消すよ」
あわてて事務所から飛び出る千晴を、楽し気に見送った天流が電気を消した。
千晴がカフェを振り返ると、すっかり照明が落ちている。
まっくらなカフェをみやる千晴に、天流が告げる。
「ねぇ、ちょっと寄り道して帰らない?」
千晴が天流に振り向いて応える。
「どこへですか?」
天流が意味深な笑みで告げる。
「いつもは立ち寄らないところ」
小首をかしげた千晴が、少し考えてからうなずいた。
「いいですけど、そのあとはご飯いきましょうね。
もうお腹が減りました」
天流が楽し気に笑って応える。
「この時間じゃもうお店は閉まっちゃうよ。
コンビニに立ち寄って、部屋で一緒に食べようか」
天流が差し伸べた手を、千晴が握った。
二人は人気のなくなったエレベーターホールで、黙ってエレベーターを待った。
黙って歩く天流の後ろを、千晴が追い付かないように歩いて行く。
エレベーターの中でも無言で、黙って一階のエントランスに出た。
天流が千晴に振り向いて告げる。
「ほらほら、のんびりしてると遅れちゃうよ」
「……はい」
それでも足を速めない千晴に、天流が手を差し伸べた。
「ほら広瀬さん、急ごう」
――公衆の面前で手を握れと?!
だがさっきまで、体を寄せ合って時間を過ごしていた。
今さら何を恥ずかしがるのか、という諦めが千晴の胸に去来する。
ゆっくりと天流の手を持った千晴の手を、天流がしっかりと握り返した。
天流の歩調に合わせるように、千晴はその隣を歩きだした。
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桜木町駅前も人並も、ランドマークタワーに向かう動く歩道も、天流は千晴の手を離さなかった。
千晴は恥ずかしさと安らぎを感じながら、職場への道を歩いて行く。
カフェに向かうエレベーターの中で、チラチラと千晴たちを見る人たち。
そんな視線にさらされながら、千晴はカフェに到着した。
ようやく事務所で手を離してもらった千晴は、「着替えてきます!」と更衣室に駆け込んだ。
息苦しく跳ねまわる心臓を、更衣室で落ち着かせる。
ゆっくりと着替え終わった千晴は、更衣室を出て天流に告げる。
「天流さん、今日は意地悪し過ぎじゃないですか?」
「そうかな? そんなことはないと思うけど。
さぁ、遅番の人を紹介しておこう。
カウンターに移動するよ」
手をつながずに歩く天流の後姿を見つめたあと、千晴はその背中を追いかけた。
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遅番のバリスタ、田口を紹介され挨拶を交わしたあと、千晴は天流と三人でカウンターとホールを回していく。
いつもより多い客足を、手慣れた天流と田口が捌いて行く。
千晴はホールの清掃をメインに走り回り、時折カウンター内でオーダーを捌いて行く。
やがて花火大会が始まり、耳に破裂音が届き始めた。
「あ、始まりましたね」
「これからお客さんが増えるから、気をつけてね」
千晴がいるカウンター内からも、花火の端が人垣の向こうに見えた。
やはり花火が良く見える場所は、人が多く集まっているようだ。
さらに増した客足を必死に捌く千晴に、天流が告げる。
「広瀬さん、清掃行ってきてもらえる?」
「はい!」
千晴はカウンタークロスを手に持ち、テーブル席へと向かった。
テーブルを拭き終わった千晴がふと窓に目をやると、人垣の隙間から夜景が見えた。
その瞬間、目の前に大輪の花が咲いた。
今まで見たことのない角度からの花火――新鮮な体験だった。
まるで自分が花火を見下ろしているかのような錯覚。
ここが『横浜で空に一番近いカフェ』だと、心の奥が理解した。
ぼうっとしている千晴のそばに、天流がいつのまにか立っていた。
「どう? 綺麗だったでしょ」
「……はい、花火ってこんなに綺麗だったんですね」
再び夜空に咲く大輪の花――それを天流と共に見ている。
そのことに、千晴の心が満たされて行くのを感じた。
「……私、この職場が好きになれそうです」
「そう? それはよかった。
でも、もうカウンターに戻ろうか。
またお客さんの波が来るよ」
千晴は天流を見てうなずくと、一緒にカウンター内に戻っていった。
****
花火大会もあっという間に終わり、客足は平常通りに戻っていく。
静かなホールでは、花火の思い出を語り合うカップルが多く見られた。
千晴はカウンターの中でぼんやりとカップルシートの様子を眺める。
――いつか、私もあの場所で誰かと。
シートに座る自分と天流の姿を幻視してしまい、千晴があわてて頭を振った。
「どうしたの? 広瀬さん」
ハッと顔を上げた千晴は、天流の顔を見て頬を染めていた。
「なんでもありません!
天流さんは気にしないでください!」
「そう? あと一息だから、頑張ろうね」
天流の隣に居づらくなった千晴が、顔を伏せて告げる。
「私、食器を洗ってきます!」
千晴はキッチンに向かい駆け出した。
天流は千晴の背中を優しい眼差しで見送っていた。
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千晴がキッチンに引っ込んだ後、田口が告げる。
「チーフも隅に置けないね。
いつの間にあんな子を囲ってたの?」
天流は微笑みながら応える。
「二か月くらい前かな。
ようやく心を開いてくれたみたいだ」
「へぇ、じゃあ本気なんですか?」
「さぁ? それは内緒かな。
まだようやく固いつぼみがほころんできたところだし。
まだまだ時間はかかると思うよ」
田口がため息をついて告げる。
「いいなぁ、青春してて。
俺にも青春がやってこないかな」
天流が軽妙に笑った。
「自分から動かなければ、簡単にやってくるものじゃないさ。
田口だって、まだ若いんだから。
諦めるのはまだ早いよ」
「諦めてる訳じゃないですけどね。
遅番やってると、大人の付き合いができないからなぁ」
「じゃあ、シフトを変えるかい?」
田口が肩をすくめて応える。
「俺が居なくなったら、遅番が回らなくなるでしょ?
今は青春より、仕事が大事ですよ」
「よく理解してくれていて助かるよ。
――それより広瀬さん、遅いな」
田口が楽し気に微笑んだ。
「心を落ち着けるのに、時間がかかってるんでしょ?
本当に罪な人ですね、チーフは」
「そうかな?」
「そうですよ」
客足が途絶えたカウンターで、二人は静かに語らい続けた。
****
千晴がカウンターに戻ってくると天流が告げる。
「お帰り広瀬さん。
でももう営業時間終了だ。
僕はホールに出て閉店処理をするから、キッチンで片付けを手伝ってきて」
「あ……はい!」
カウンター内を片づけ始めた田口の横を通り、千晴はキッチンに戻っていった。
残っていた客たちが、いくつかの食器を追加でキッチンにもたらす。
千晴は食器を洗いながら、キッチンスタッフと一緒に後片付けを済ませていった。
客が居なくなったホールを、千晴は天流と清掃して回った。
暗い夜空、いつもと違う風景。
最初に見た夜景を千晴は思い出していた。
あの時よりも輝いて見える夜景に、千晴は不思議な感慨を覚えていた。
ぼんやりと外を見つめる千晴に、天流が告げる。
「どうしたの? 広瀬さん」
「いえ、遅番だとこんな風景が見られるのかなって」
天流がクスリと笑った。
「そうだね、早番だと見られない風景だ。
それもあって、遅番の方が人気なのかもね」
千晴と一緒に夜景を眺める天流に、田口が近寄っていった。
「チーフ、レジの締め終わりましたよ。
もう帰りますけど、何かありますか」
天流が田口に振り向いて告げる。
「ありがとう、水無瀬たちは?」
「もう帰りましたよ。
残ってるのは俺たちだけです」
天流が小さくうなずいて応える。
「あとはやっておくから大丈夫。
お疲れ様」
「はい、お先に失礼します」
田口が去り、フロアが静まり返った。
千晴の耳元で天流がささやく。
「ねぇ広瀬さん、ちょっと座ってみない?」
跳ね上がる鼓動を隠しながら、千晴が応える。
「どこに、ですか?」
「この席、眺めがいいと思うんだ。
今くらいじゃないと座れないよ?」
天流が手を置いたカップルシートを、千晴は赤くなりながら見つめた。
おずおずとシートの端っこに千晴が座ると、反対側に天流が座る。
「もっとくっつかなくていいの?
防犯カメラ以外、誰も見てないよ?」
「――警備員が見てるってことじゃないですか!」
「これだけ暗ければ、大して見えやしないさ。
それに彼らも気になんかしないよ」
千晴はカウンタークロスを握りしめると、わずかに腰を浮かした。
天流の隣にぴったりと座り、彼の体温を感じ取る。
天流は千晴の肩に手を回し、夜景を楽しそうに眺めた。
「どう? 『誰かと見る夜景』って、特別に思えない?」
千晴は黙って小さくうなずいた。
「こんな場所をお客さんに提供するのが、私たちの仕事なんだ。
自分たちが提供してる商品の味、しっかりと味わってみて」
それからしばらく、二人の間は時間が止まっていた。
遠くでゆっくりと動く船の明かりだけが、時間が過ぎゆくのを知らせていた。
****
帰り支度を終えた千晴に、天流が告げる。
「忘れ物はない? 電気消すよ」
あわてて事務所から飛び出る千晴を、楽し気に見送った天流が電気を消した。
千晴がカフェを振り返ると、すっかり照明が落ちている。
まっくらなカフェをみやる千晴に、天流が告げる。
「ねぇ、ちょっと寄り道して帰らない?」
千晴が天流に振り向いて応える。
「どこへですか?」
天流が意味深な笑みで告げる。
「いつもは立ち寄らないところ」
小首をかしげた千晴が、少し考えてからうなずいた。
「いいですけど、そのあとはご飯いきましょうね。
もうお腹が減りました」
天流が楽し気に笑って応える。
「この時間じゃもうお店は閉まっちゃうよ。
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