神を拾った竜殺し~星の少年と炎の少女~・改訂版

みつまめ つぼみ

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第2章:星の少年と炎の少女

第31話 愛と友情

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 校庭に並ぶ生徒たちの列に、ノヴァとアイリーンも加わる。

 授業が開始されると、教師が校庭全体を覆う防御結界を展開した。

 生徒たちは用意された的に向かって、火球の魔法術式を飛ばして的を破壊していく。

 破壊した的は生徒が自分で交換する方式のようだ。

 アイリーンが他の生徒の様子を観察しながら告げる。

『現代の十四歳は、こんな腕前なのね』

『お前の時代ではどうだったのだ?
 俺の持つ記録には、そういった情報がない』

『私も映像記録でしか見たことがないけど、もっとずっと洗練されていたわ。
 現代の十四歳は、私の時代の十歳くらいの腕前じゃないかしら』

 ノヴァがニヤリと微笑ほほえんで告げる。

『ならば、“稀代の天才魔導士”と呼ばれたお前はどうだったのだ?』

『当時の十四歳どころか、大人とも比べ物にならない水準だったのよ?
 現代の十四歳と比較するのは、可哀想というものだわ』

 ノヴァとアイリーンも的を用意し、指定された魔法術式で的を射抜いていく。

 最小限の魔力で的の中心を破壊し、的を交換しては繰り返していく。

 敢えてのんびりと動き、時間が過ぎるのを待っていた。

 ノヴァの魔法術式をながめていたアイリーンが告げる。

『ノヴァの腕前は、お父様のものに近いのね』

お前の父親ヴォルディモートの魔導知識しか持ち合わせていないからな。
 的に当てるような制御技能も、お前の父親ヴォルディモート譲りだ。
 神の力らしいものなど、膨大な魔力を背景にした多重並列展開くらいだろうよ』

『お父様の制御技能で、そんなことができてしまうの?
 お父様がそんなことをできた覚えはないし、私でもあれほどの数を制御するのは無理よ?』

『奴だって天才魔導技師と呼ばれた男だ。
 技能そのものは高度だったさ。
 魔力が足りないからできなかっただけだ――それは、お前も同じだ』


 傍目はためには黙々と、しかしのんびりと的を正確に破壊していくノヴァたち。

 その二人の様子を、生徒たちは感心しながらながめていた。

 手を抜いているのは明らかだった。ただ『授業に合わせている」だけだ。

 セレンがアイリーンに近づいていって声をかける。

「アイリーン殿下、あなたは高度な魔法術式を使えるのかしら? とても余裕がおありね」

「あらセレンさん。
 そうね、確かにもっと高度なことができるわ。
 でもこれは授業ですもの。指定された課題をこなすだけよ」

 セレンが目を見張って答える。

「あら、アイリーン殿下は嘘が付けない方なのかしら。
 では魔導がお得意なのね。授業が退屈ではなくて?」

 アイリーンが苦笑を浮かべながら答える。

「それは仕方ないわね。魔導に関する授業はあきらめてるの」

 セレンは不思議そうな顔でアイリーンにたずねる。

「私、多少は聞きかじってますの。
 殿下たちは『ピークスで保護された』という噂がありますわ。
 『保護された時点では、ウェルバット語も話せない状態だった』とも。
 いったいどこで、そんな高度な魔導を習得なさったの?」

 アイリーンが明るく微笑んで答える。

「それは言えないの、ごめんなさい」

 セレンが目を伏せながら答える。

「そう……事情がおありですものね。
 全てを明かすことはできませんわね」

「ええ、そうよ。
 全てを明かしたらリストリットさんやアルトゲイル皇国に迷惑がかかってしまうわ。
 そんなことはできないの」

 セレンが笑いを噴き出していた。

「アイリーン殿下ったら、本当に嘘がつけない性格ですのね。
 事情がおありなら、もっとごまかした方がよろしくてよ?」

 ノヴァがため息交じりに答える。

「全くです。実力を隠すなり、にせの素性を用意するなり、いくらでもやりようはあるんですが。
 アイリーンがこんな性格なので、嘘は最小限にとどめざるを得ません」

 セレンは笑顔のままノヴァに答える。

「そういうノヴァ殿下も、隠し事が苦手のご様子ですわね。
 お二人は似た者同士なのかしら。とてもお似合いよ?」

 『お似合い』と言われ、アイリーンは照れながら「ありがとうございます」と答えた。


 二時間に及ぶ実技の授業が終わり、生徒たちは昼食をとるため食堂に向かっていった。

『やっと終わったわね……この時間は眠ることもできないし、ごまかしようもないわ』

『仕方あるまい。午後からは一般教養だ。少しはましだろう』

 ノヴァたちは生徒の流れに乗って、食堂へ向かっていった。




****

 食堂のテーブルに着き、ノヴァとアイリーンは黙々と食事を食べ進めていた。

『この時間も、どうしても無駄に感じてしまうわね』

『ホムンクルスに食欲はないからな。
 だが食事をして見せねば怪しまれる。仕方あるまい』

 二人のテーブルに、またセレンが近づいてきた。今度は別の女子生徒も一緒だ。

「ノヴァ殿下、アイリーン殿下、ご一緒してもよろしいかしら?」

 アイリーンは顔を上げ、微笑ほほえんで答える。

「ええ、構いませんよ」

 アイリーンの返事を受け、セレンたちがテーブルに着いた。

 セレンが女生徒を手で示して告げる。

「彼女は私の親友ですの。
 今日は殿下たちとご一緒してみたいと思って、誘ってみましたのよ」

 女生徒が会釈をして告げる。

「フォーレス伯爵家のミヌアと申します。以後お見知りおきください」

 アイリーンが微笑ほほえんで答える。

「親友だなんて素敵ね。私にはそういう友人がいなかったから、羨ましいわ」

 セレンが楽し気に笑い声を上げた。

「代わりにノヴァ殿下のような素敵な方に巡り合えているじゃありませんか。
 生涯を共にりたいと思える方との出会いなんて、滅多にありませんわよ?
 愛と友情なら、愛の方が大切だと思いますわ」

 ミヌアが楽しそうに告げる。

「婚約者は私たちにも居ます。
 ですが、私にとって彼との出会いよりセレンとの出会いの方がずっと得難えがたいものだと思っています。
 セレンと作った思い出の数々は、人生の宝物です」

 ノヴァが柔らかく微笑ほほえんで告げる。

「とても良い関係なのですね。
 良い出会い、良い時間を過ごされたようだ。
 素敵だと思いますよ」

 アイリーンも同意するようにうなずいて告げる。

「でも、『親友との出会いの方が大切だった』なんて言ったら、婚約者が可哀想よ?」

 ミヌアは少し寂し気な笑みで答える。

「仕方ありませんわ。悪い男性ではありませんが、親が決めた縁談ですもの。
 そこに私の意思はありませんでした」

 アイリーンが苦笑を浮かべながら答える。

「あら、私とノヴァの出会いにも、私の意思はなかったわ。
 親の決めた縁談と言っても過言ではないの。
 ノヴァと私の相性が良かった――それだけだわ。
 必要なのは『絆と信頼を育める相手なのかどうか』ではないかしら」

 セレンが感心したようにうなずいて告げる。

「アイリーン殿下、達観してらっしゃるのね。
 でも、仰る通りね。たとえ素敵な出会いでも、信頼を育めなければそれまでですものね」

 ミヌアも頷いて告げる。

「そういう意味なら、私の相手は申し分がありませんわ。
 私は両親に感謝しなければならないかもしれません」

 アイリーンが微笑ほほえんで告げる。

「私も感謝は伝えたいと思うの。でも同じくらい、文句も山のようにあるのよ?」

 三人の女子が笑い合う中、その様子をノヴァは楽しに見守っていた。
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