mistress

桜 詩

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第一章

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「アネリ様、少し遠いですがパルスの保養所にいかれてみてはどうでしょう?」
ウルリカが言った。
「パルスに?でも」
アネリは人の目にどう映るか、気にしていた。人気のパルスには温泉施設があり、人も多い。
「気分転換ですわ」
幸い、メルヴィルの名によりお金もある。
アネリは決心してウルリカと御者と共に向かった。

人通りが多くて、誰もアネリの事など気にしなさそうだ。
ほっとして賑やかな雰囲気に心も浮き立った。
「あちらでスパがあるのですわ」
アネリはウルリカに言われる通りスパを受けることにして、専用の薄いワンピースを着てベットに寝そべると、女性たちがアネリの全身をくまなくマッサージして、パックをする。
「きれいなスタイルですね」
余すことなくみた女性たちは、アネリを口々に誉めた。
「ありがとう…」
白い肌が磨かれ、滑らさは増してしっとりと潤っていて、アネリは一層美しくなった。

終わるとハーブティを出されてテラスでくつろいでいると、隣の女性が話しかけてきた。
「こんにちは、ええっとミス?ミセス?」
気さくな雰囲気の夫人だった。
「アネリ・メルヴィルですわ。未亡人です」
アネリが若いので、未婚なのか既婚なのか気になったのだろう
「まあ、そんなにお若いのに…お気の毒ね…」
彼女は悼ましそうに言った。
「今おいくつ?」
「24歳ですわレディ」
ライアンに言われて、本来の22からいまは24という事にしていた。
「ああ、ごめんなさい。私はブレンダ・アップルガース伯爵夫人よ」
気さくな伯爵夫人だ。
年はアネリよりも少し上だろうか?
「それでアネリ、と呼んでもいいかしら?この後一緒にレストランでもいかが?」
微笑まれ、アネリは頷いた。

ブレンダに誘われていくと、ブレンダとあと二人の女性。
いずれも貴族の夫人だった。エドナとイーディス。
20代後半のいきいきとした3人に囲まれてアネリも楽しく会話に参加した。
「ああ、見てユーフェミアよ」
エドナが一人の色っぽい女性を示した。
「彼女はリンドマン子爵の愛人なのよ」
こそこそとブレンダが言った。
その声に不快を感じて、アネリはどきりとした。堂々としたユーフェミアがすごいなとアネリは変に感心した。
ユーフェミアを見ていると、
「アネリは、恋人は?」
「えっ?」
思いもしないことを言われて、アネリは驚いた。
「だって、こんなに若くてきれいで未亡人でしょう?遊ばなくちゃ」
クスクスと、イーディスが言った。
「モテるわよ、男性に…!」
アネリは肩をすくめて、
「多いわよ。結婚してから遊ぶ女性。まして未亡人なんて遊ばなくちゃ損なくらいよ」 
それは裕福な未亡人だろう。
アネリも今は裕福な未亡人か…!
「いつご主人は亡くなったの?」
「一年前ですわ。結婚してすぐ…」
まあ、とブレンダたちはアネリに同情的だった。
アネリほどの若い未亡人はまれだ。
「またどうして?」
イーディスに聞かれて、色々と聞かれても困るので
「ごめんなさい、まだあまり思い出したくなくて…」
と言ってしらないメルヴィルの事は話題にしないでもらいたくて、そういった。
「ごめんなさいね、ぶしつけだったわ」
いいえとアネリは首をふった。
結婚したレディたちは、以外と奔放なようで、若くて素敵な男性との交流はとても楽しみな話ぶりだった

レストランの料理は美味しくて、アネリは舌鼓をうつ。
彼女たちととりとめのない会話は楽しい日々を思い出させて、アネリは楽しかった。
「今日は楽しかったですわ。ありがとうございました」
アネリはブレンダたちに別れを告げて、ティアレイク・アビーに、むかった。
「楽しそうにされていて良かったですわ」
ウルリカがいい、アネリも頷いた。

夜更けに着いたアネリは、そこにライアンが来ていることに驚いた。居間にいたライアンはアネリに、手を伸ばして側に促した。
腰に手を回して
「パルスに行っていたと聞いたが?」
「ええ、そうよ」
「今度はいつまでここに?」
アネリはそれを聞いてしまった。
聞くべきではないのに…
「来月までかな?」
と言いつつも、曖昧なライアンはきっとまた突然明日発つと言うに違いない。

ライアンはアネリを引寄せ、唇を重ねた。
「せっかくの磨きたての肌を見せてもらおうかな」
ふっとライアンは笑い立ち上がった。
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