mistress

桜 詩

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第三章

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ライアンは、帰国してから事後報告のため多忙を極めた。
書類のやり取りをするためにライアンは、ブロンテ伯爵を訪ねた。
「やぁ、ライアン。わざわざすまないね」
「いや、明日王宮に行くからついでた」
ブロンテ家には5人の子供がいるが、そのうち4人が娘だった。
長女のレオノーラは美貌の近衛騎士として有名だった。

少女たちの楽しそうな声にふと庭をみると、二人の少女がいた。
「ああ、賑やかで毎日楽しそうだな、アルマン」
「自慢の娘たちだ」
アルマンが娘への愛情を滲ませて言った。

「ステファニーとルシアンナだったか?」
「ルシアンナとルナ。ルナは来年がデビューだ」
若い方の娘を見ると、清廉な雰囲気と大人しやかな見た目では、姉の華やかさには叶わないが、ライアンには輝いて見えた。
ふと、脳裏にひとつの予感がした。
フェリクスの高潔な精神と、ルナというまっすぐに育ったような少女はライアンの目に、似合うように思えた。
「アルマン、デビューのエスコートは決まってるのか?」
思いつきをアルマンに聞いてみる。
「いや、まだだラファエルでは若すぎるし、知り合いのご子息かレオノーラかステファニーの友人の誰かからと思っていた所だが…」
準備をする期間はまだまだある。
「だったらフェリクスはどうかな?あれももう立派な成人となったことだし、デビュタントのエスコートは立派に努められるだろう」
フェリクスだとて、友人のご子息にあたる。ライアンが言うと、
「フェリクス卿に?それはまた願ってもない申し出だが…。しかし内気な娘であるし、フェリクス卿はルナには立派過ぎる気もしないではないが…」
「そういう内気なご令嬢の気持ちをほぐすことも出来なくては立派な紳士にはなれないさ」
ライアンが微笑むと、なるほどと、アルマンも頷くと快く快諾した。
お膳立てすればあとは本人同士がどうするのか、それはライアンの思惑通り行こうと、外れようと仕方ない。
お似合いだと言われていたライアンとエリザベス。その結婚生活は苦いものだ。
当人以外は余り干渉し過ぎるべきではない…と身を持って知っていた。

気がつけばフェリクスも23歳になる。高位の貴族としてはそろそろ相手を決めてもおかしくはない。そしてジョージアナも…。
自分も年をとったな…とライアンは苦笑した。

息子たちのためには、彼らの結婚なり婚約が決まってから離婚をするべきなのだろうか、しかし待たせているエレナの事を思えば早く決着をつけたい…。
ライアンの心中もまた複雑化されていた。

「では、アルマン失礼するよ。レディ ルナのデビューが楽しみだな」
笑いあうと、ライアンはブロンテ家を去った。

仕事をまずは片付けること、そしてエリザベスとの関係を解消すること。
気が重い難関がライアンを待ち受けていた。
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