初恋

桜 詩

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婚約破棄

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気がつけば、夏も終わりに近づき社交シーズンも終わりを迎えようとしていた。
そろそろ領地へと貴族たちは帰っていき、王都は少しずつ静かになっていく。

アシュフォード侯爵家の舞踏会が開かれて、キースとレオノーラも招かれていた。
「おめでたい事続きだな、フェリクス」
キースはフェリクスに言った。正式にアシュフォード侯爵家のフレデリックと、フェリクスの妹のジョージアナが婚約を発表したからである。
「で、フェリクス自身は結婚はいつにするんだ?」
「ルナとも話し合ったけど、ルシアンナが結婚するから、来年辺りにと話をしているよ」
フェリクスは隣に立つルナに笑みを向けた。微笑みを返すルナをこうしてみると、妹ながら綺麗になったなとレオノーラは思った。

「それで、レオノーラお姉様。ティファニーの様子はどうなの?落ち着いた?」
「そうだね」
レオノーラは苦笑した。

あの家出からティファニーは反抗的な態度は薄れてきていたけれど、髪は短いままであるからか外には出たがらなくなっていた。

「うちはね…ラファエルお兄様が、変なのよ」
ルナが溜め息をついた。
「今日はここに来るって言ってたけど、なんだかぼんやりしていたり、どこかにフラりと出掛けたり」
「レイフもお年頃って所かな」
レオノーラが言うと
「…つまりは女が出来たんじゃないの?」
くくっと笑いながら話に入ってきたのは、レン・シャロットだった。
「うわ、ビックリした」
キースが声をあげた。
「…道ならぬ恋でもしてんじゃない?ほっとく方がいいよ」
レンがにっこりと笑った。
「道ならぬって…」
ルナが青ざめる。
「こら、レン。おかしな事を言うな?」
フェリクスがたしなめた。
「冗談だって…それにしても、みんな一気に落ち着きだしてさ…お年頃ってこういうことかなぁ…」
レンは首を軽く振った。
「お前はもう少し、真剣に口説いた方がいいなレン、みんな本気だと思ってくれない」
キースが軽くたしなめた。
「あー、やっぱり?そういえばキースの所には預かってる令嬢がいるって?どんな子?可愛い?」
「…お前には会わせたくないな…」
レオノーラはボソッと言った。
「かなしいなぁ~そんな事を言うなんて」

キースと、クロエの間でティファニーの事は話をして縁談の話は白紙にするように働きかけていた。クロエも、ティファニーが髪を切って抗議したことに少しは思うところもあったのか、デーヴィドとの縁談はひとまず延期にすることには同意したようだ。

アシュフォード侯爵家の舞踏会はさすがに華やかで、上位貴族のほとんどが来ていた。
「レオノーラ、デーヴィドだ」
キースが目線で示した方には、デーヴィドがいた。
デーヴィドは、33歳。貴族らしい元々は整った容貌をしている。しかし女好きで、その事があるからかまだ独身であった。
「こんばんはデーヴィド卿」
レオノーラが話しかけた。
「ああ、レディ レオノーラか」
デーヴィドの一番の好みはおとなしげなデビュー間もない少女だと聞く。レオノーラのように、大人しげでない女は全く好みから外れていて、興味がないようである。

「ちょっと聞いたのですが、縁談のお話があるとか?」
キースが言った。
「そうだ、もうすぐ正式に婚約するつもりだ」
「…そのご令嬢は実は私の知り合いの娘なんですけど」
「それがどうかしたのか?キース」
デーヴィドが眉をしかめて言った。
「…あんたが、出入りしてる所をバラされなくなかったら、大人しく白紙にしてくれないかな?」
小さな声でキースはデーヴィドに言った。
「お気に入りのシンディちゃんとキャンディスちゃん?捕まったらもう会えなくなるよね?それに…そんな所に居たことがバレたらどうなりますかね?」

「キース!お前…脅すつもりか…?」
デーヴィドの顔色が変わった。
「いえいえ、お願いしてるだけです」
キースはにっこりと笑うと、
「バクスターの令嬢との縁談は断ってくれますよね?」
「…わ、分かった…」
デーヴィドはそう言うと、後ずさって人波に紛れて去っていった。
「…なんだ?」
レオノーラが小声で聞いた。
「奴が出入りしてる、思いっきりあやしい秘密の世界だ」
キースはその情報を知ってるぞ、と脅しをかけたのだ。

「お前はやっぱり、腹黒だな」
「情報は何よりの武器だ、相手がアイツで良かったかもしれないな。マトモな相手だったらつぶせなかったかもしれない」
とにっと笑って見せた。
「後は…根本的な事を解決しないとな…」
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