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お茶会の話題
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ーはぁ~
「なぁに?さっきからため息ばっかり」
くすっと笑いながらエーリアルが言う。
「聞くだけ野暮よ?エーリアル。ティファニーは婚約が決まった所なのだから」
くすくすとアデリンが嗜める。
「ラファエルとのあれこれ、思い出してるんでしょ?」
興味津々といった表情でアデリンがティファニーを覗きこむ。
「あれこれって、あれこれ?」
わかっているのかいないのか、あれこれという言葉をエーリアルは口にしている。
「そうよ、エーリアル。あーんなこととか、こーんな事とかあるでしょ?恋人同士なら。ねえ?ルナ」
「えっ、私に振られても…お兄様とティファニーのあれこれなんて、何も知らないわよ」
ルナが困ったように顔を横に振った。
「え、って違うの…。その、カートライト侯爵夫人の事とかが気になってて」
ティファニーは慌てて否定した。ため息の半分以上は、友人たちの予想は当たってはいたのだったのだが…。ついそれを認めるのが恥ずかしくて、もうひとつの気になっている事を口にした。
この日ティファニーは、レイノルズ伯爵邸にお茶会に誘われて来ていた。
目の前には綺麗な彩りのお菓子が並び、薔薇色のカップには紅茶が湯気をたてている。ティファニーの前のその皿は、ぼんやりとしていてはもったいないくらいの可愛くて美味しいものが、食べられるのを待っていた。
気心の知れた友人たちだけという環境に、ティファニーはつい気を抜いてしまっていたらしくて、思案にふけってしまったのだ。
「ティファニー、レディ ロレインと知り合いだったの?」
アナベルが聞いてくる。
「違うの、はじめて会ったはずなのに、おめでとうとかお祝いとか言われたから…どうしてかなって…思ってて。もしかすると、ラファエルの親衛隊かなぁなんて思ったりもして…。それで、ラファエルに聞いたら…派閥がどうとかで、あまり近づかないように。みたいな事を言われるし…」
本当はロレインがジョルダンの想う人なのかどうか、それが気になっているのだが二人の事をティファニーが口に出すことは出来ない。
「派閥といえば…ティファニーの家は今は微妙な立ち位置だものね…」
ルナが呟いた。
「微妙って?」
「ルロイ卿はまだ13歳だもの。バクスター子爵が若いうちに取り込もうとする家もあるかもしれないし…っていう事?」
アデリンが言う。
ティファニーの弟のルロイは幼くして爵位を継いだ。しかし、まだ年端もゆかないルロイであるから、当然ながら領地経営にはバクスターの執事や使用人たちの強力なサポートが欠かせない。
また先代の当主であるコーヴィンも2年間病に倒れていたのだから、当然ながら、その領地は磐石だとは言えない。
ティファニーがアークウェイン邸で一時期預かりの身となった縁で、陰ながらバクスター子爵家にはアークウェイン伯爵の援助があるであろう事はティファニーにも想像がついた。何故なら、そこからバクスター子爵家は没落から持ち直したからである。
しかし、アークウェイン家が後ろ楯にあるということはあくまで秘密裏に進めてあることで、まだ依然として貴族社会において微妙な立ち位置にあるのだろう。
「取り込むって…色々とややこしいのね…」
ティファニーは色々と想像を巡らせて、嘆息をついた。
「そうよね、ややこしいのね。でもね、ティファニーはラファエルの言うようにした方がいいわよ?もう婚約したのだから」
ルナが言う。
「…ラファエルの言うように?」
確かに、ティファニーが婚約したことで中立派というか、派閥に属さないバクスター家は武門派よりになったともいえる。となればティファニーはラファエルの意向に添うように動かなければならないということだろう。
カートライト侯爵家は特に敵対している、派閥になるのだから。
「そう…。私ね、これまで学んだ事は、お父様とかフェリクスとか…言うことが納得出来なかったり、嘘かもって思うことがあっても、信じるようにしてるの」
ルナは言葉を選ぶように、ティファニーに噛み砕いて話し出す。ティファニーからすれば、ルナは生粋の貴族令嬢である。名門で、しかも貴族の筆頭であるウィンスレット家に嫁ぐのだから。
「嘘かもって思っても?」
「そうよ、私達には言えないような事があるのだなって、そう思ってるもの」
「ルナったら大人~さすが…未来の公爵夫人ね!」
アデリンが明るく誉めあげる。
「たとえば?どんな事があったの?」
アナベルが珍しく乗り気で聞く。
「うーん、もうこれも時効みたいなものだから、皆には話してもいいのかな…。言いふらしたりしないわよね?」
そうルナが言うと他に聞く人がいるわけではないが、みんなルナの方に近づく。無意識に声は小さくなり、耳をルナに向ける。
「あのね、私とフェリクスが婚約する前にね、フェリクスには恋人がいるのじゃないかと思った事があったの」
「えっそうなの?」
「で、どうしたの?」
アナベルとアデリンがそれぞれに反応した。ティファニーは驚くほどフェリクスの事を知らない。
「たまたま…なんだけれど、フェリクスとオペラを観に行った時に女の人をね、見て驚いてたの。でも、言葉は交わさなかった。で、その後にその人の所には男の人が通ってるって知って…それで、もしかするとフェリクスなんじゃないかなって疑ってしまって…」
「ええっ!それ、どうしたの?」
エーリアルが目を見開いている。
「私、その人の所に話を聞きに行ったの」
ルナが力強く言った。
「凄い!ルナ。強すぎるわ」
「さすがレオノーラ様の妹ね…そういう所は」
アデリンが感心したかのように言った。
「本当ね」
くすっとルナは笑った。
「そうしたら…。彼女は違うって、自分とフェリクスは恋人でも何でもないから、絶対に潔白だと言ったの」
「はぁ~、良かったわね」
「実際に、信じて帰ったわよ?でもね…彼女は言わなかったことがあるの…」
「うん?」
「彼女はね、レディ エレナだったの。つまり、ライアン卿の恋人だった」
「ええっ!それ…」
「だからね、フェリクスもレディ エレナの存在を知ってたのよね…。再婚の前から…」
「なんだか…複雑…」
「そう、でもその会ったときにはすでに秘密裏に離婚は成立してたみたいだし、私とフェリクスが婚約する前だったから?とか、まだ公表出来ないから?だから黙ってた…と解釈も出来るけど、真実はもう詮索しないことにしたの。だって真実を暴いても、全員が気まずくなることもあるでしょう?だから、私…男性たちが秘密にしている事とか、話さない、か話せない事には何かしら理由があると思うの」
「そ、そっか…ルナは、これからライアン卿とレディ エレナを両親にするわけだものね」
「うん…」
「離婚と再婚だけでもかなりのスキャンダルなのに、もしかすると前々から愛人だったとか…公爵としても公爵夫人としても、まずいわよね」
「でしょう?」
「ルナ…凄いね…」
ティファニーは呆然と呟いた。ティファニーの事なんて些細な事に思えた。
「だからと言うわけじゃないけれど…お兄様はあれでも嫡男だし、それなりにしっかりしてるはずだし、何より家族思いだし。それから…私の目から見てもティファニーの事はとっても大切にしてるから、だから、お兄様がそうした方がいいって言うことは受け入れて欲しいな」
ルナの言葉には真摯な響きがある。
「ありがとう、ルナ。そうする…」
「私、…ティファニーの事ちょっと羨ましいな」
エーリアルが言った。
「え?私の事が?」
「だって、ラファエルって本当にずーっとティファニー一人って感じだったじゃない?」
「ええ?そう?」
「そうそう。他の令嬢と話したりしてるの見たこともないし、まして舞踏会以外で他の令嬢会ってるところなんて皆無よね」
ルナも笑いながら同意した。
「お兄様がそんなに一途なタイプだなんて知らなかったわ」
「そう、私も一途に想われてみたいなって、考えちゃう」
「…こんなのの、どこがいいのだか…って思わないの?」
ティファニーは恥ずかしくなり、おずおずと言ってみた。
友人たちは何も言わないけれど、他の令嬢たちに発育不良と言われたり、もろもろ陰口聞いていると自分に自信を持つことは出来ないのだ。
「こんなのって、ティファニーはとても可愛くて綺麗よ?こんなに妖精さんみたいな女の子他にいないわよ」
ルナがしげしげとティファニーを見つめて言った。
「よ、妖精さんって…恥ずかしすぎるから…」
「見た目はね本当にそうだと私も思ったわ」
にこにことエーリアルが言う。
「だから、令嬢たちにはやっかみを受けるのよね」
アナベルが顔をしかめた。
「ティファニーがどう思おうと、見た目が薄幸の美少女だもの。守ってあげたい雰囲気だものね」
「…薄幸って言うのはあながち見た目だけじゃないかも…」
ティファニーは言った。自分の置かれた環境を思えば、薄幸といえば薄幸だと思う。
「…まぁ、とにかくか弱そうに見えるから攻撃はされやすいのよね…」
「でも、もう落ち着くでしょう?婚約だってしたし、結婚だってもう日取り決まったのよね?」
「そう、もうすぐ…」
もうすぐ、なのだ。
「お母様がすごーく張り切ってるわよ~」
ルナは笑みを向ける。
「これまで送り出すばかりだったでしょ?だから花嫁を迎えるのにウキウキしちゃってるから、ティファニーはもう身一つで大丈夫なくらいにする勢いよ」
「…伯爵閣下は?どう?」
「お父様?いつも通りよ」
ティファニーは、ブロンテ伯爵は仕方なく許可せざるを得なかった事を知っている。だからとても気になっているのだ。
「ルナだって結婚式を控えてるのに、私達が急に決めてしまったせいで急にバタバタさせてしまっていない?」
「私はもう準備期間はたっぷりあったから、全く心配いらないわ」
にこっとルナは微笑みかける。
ルナのゆとりのある落ち着いた言動は、ティファニーに力強く響いた。
ティファニーの友人たち。彼女たちとこうして笑いあって話すなんて、一年前には想像も出来なかった。しかし、さっきのルナの話と被る。ティファニーには友人達にも話せない事は確かにある、そしてラファエルにも簡単に口に出来ないこと。
それは、ジョルダンの話だ。
いつも、ティファニーを助けてくれたジョルダン。なにも彼には返せていない。ティファニーを巻き込まないように、彼は恋人の名も詳しい事も話さなかった。だからこそ、今こうして気になってしまう…。
もしかすると、ロレインが相手であるならばジョルダンに別れを告げたのは、ティファニーとの仲を誤解させたからではないのかと…。
ロレインとジョルダンの関係は気になる所だけれど、なんの確証もない、単なる勘だった。ルナの言う通りロレインに近づかないように言ってきたラファエルの言うようにするべきなのだと、ティファニーはその疑念を奥底に鎮めようと思った。
何より、ティファニーにはどうすることも出来ないのだから…
「なぁに?さっきからため息ばっかり」
くすっと笑いながらエーリアルが言う。
「聞くだけ野暮よ?エーリアル。ティファニーは婚約が決まった所なのだから」
くすくすとアデリンが嗜める。
「ラファエルとのあれこれ、思い出してるんでしょ?」
興味津々といった表情でアデリンがティファニーを覗きこむ。
「あれこれって、あれこれ?」
わかっているのかいないのか、あれこれという言葉をエーリアルは口にしている。
「そうよ、エーリアル。あーんなこととか、こーんな事とかあるでしょ?恋人同士なら。ねえ?ルナ」
「えっ、私に振られても…お兄様とティファニーのあれこれなんて、何も知らないわよ」
ルナが困ったように顔を横に振った。
「え、って違うの…。その、カートライト侯爵夫人の事とかが気になってて」
ティファニーは慌てて否定した。ため息の半分以上は、友人たちの予想は当たってはいたのだったのだが…。ついそれを認めるのが恥ずかしくて、もうひとつの気になっている事を口にした。
この日ティファニーは、レイノルズ伯爵邸にお茶会に誘われて来ていた。
目の前には綺麗な彩りのお菓子が並び、薔薇色のカップには紅茶が湯気をたてている。ティファニーの前のその皿は、ぼんやりとしていてはもったいないくらいの可愛くて美味しいものが、食べられるのを待っていた。
気心の知れた友人たちだけという環境に、ティファニーはつい気を抜いてしまっていたらしくて、思案にふけってしまったのだ。
「ティファニー、レディ ロレインと知り合いだったの?」
アナベルが聞いてくる。
「違うの、はじめて会ったはずなのに、おめでとうとかお祝いとか言われたから…どうしてかなって…思ってて。もしかすると、ラファエルの親衛隊かなぁなんて思ったりもして…。それで、ラファエルに聞いたら…派閥がどうとかで、あまり近づかないように。みたいな事を言われるし…」
本当はロレインがジョルダンの想う人なのかどうか、それが気になっているのだが二人の事をティファニーが口に出すことは出来ない。
「派閥といえば…ティファニーの家は今は微妙な立ち位置だものね…」
ルナが呟いた。
「微妙って?」
「ルロイ卿はまだ13歳だもの。バクスター子爵が若いうちに取り込もうとする家もあるかもしれないし…っていう事?」
アデリンが言う。
ティファニーの弟のルロイは幼くして爵位を継いだ。しかし、まだ年端もゆかないルロイであるから、当然ながら領地経営にはバクスターの執事や使用人たちの強力なサポートが欠かせない。
また先代の当主であるコーヴィンも2年間病に倒れていたのだから、当然ながら、その領地は磐石だとは言えない。
ティファニーがアークウェイン邸で一時期預かりの身となった縁で、陰ながらバクスター子爵家にはアークウェイン伯爵の援助があるであろう事はティファニーにも想像がついた。何故なら、そこからバクスター子爵家は没落から持ち直したからである。
しかし、アークウェイン家が後ろ楯にあるということはあくまで秘密裏に進めてあることで、まだ依然として貴族社会において微妙な立ち位置にあるのだろう。
「取り込むって…色々とややこしいのね…」
ティファニーは色々と想像を巡らせて、嘆息をついた。
「そうよね、ややこしいのね。でもね、ティファニーはラファエルの言うようにした方がいいわよ?もう婚約したのだから」
ルナが言う。
「…ラファエルの言うように?」
確かに、ティファニーが婚約したことで中立派というか、派閥に属さないバクスター家は武門派よりになったともいえる。となればティファニーはラファエルの意向に添うように動かなければならないということだろう。
カートライト侯爵家は特に敵対している、派閥になるのだから。
「そう…。私ね、これまで学んだ事は、お父様とかフェリクスとか…言うことが納得出来なかったり、嘘かもって思うことがあっても、信じるようにしてるの」
ルナは言葉を選ぶように、ティファニーに噛み砕いて話し出す。ティファニーからすれば、ルナは生粋の貴族令嬢である。名門で、しかも貴族の筆頭であるウィンスレット家に嫁ぐのだから。
「嘘かもって思っても?」
「そうよ、私達には言えないような事があるのだなって、そう思ってるもの」
「ルナったら大人~さすが…未来の公爵夫人ね!」
アデリンが明るく誉めあげる。
「たとえば?どんな事があったの?」
アナベルが珍しく乗り気で聞く。
「うーん、もうこれも時効みたいなものだから、皆には話してもいいのかな…。言いふらしたりしないわよね?」
そうルナが言うと他に聞く人がいるわけではないが、みんなルナの方に近づく。無意識に声は小さくなり、耳をルナに向ける。
「あのね、私とフェリクスが婚約する前にね、フェリクスには恋人がいるのじゃないかと思った事があったの」
「えっそうなの?」
「で、どうしたの?」
アナベルとアデリンがそれぞれに反応した。ティファニーは驚くほどフェリクスの事を知らない。
「たまたま…なんだけれど、フェリクスとオペラを観に行った時に女の人をね、見て驚いてたの。でも、言葉は交わさなかった。で、その後にその人の所には男の人が通ってるって知って…それで、もしかするとフェリクスなんじゃないかなって疑ってしまって…」
「ええっ!それ、どうしたの?」
エーリアルが目を見開いている。
「私、その人の所に話を聞きに行ったの」
ルナが力強く言った。
「凄い!ルナ。強すぎるわ」
「さすがレオノーラ様の妹ね…そういう所は」
アデリンが感心したかのように言った。
「本当ね」
くすっとルナは笑った。
「そうしたら…。彼女は違うって、自分とフェリクスは恋人でも何でもないから、絶対に潔白だと言ったの」
「はぁ~、良かったわね」
「実際に、信じて帰ったわよ?でもね…彼女は言わなかったことがあるの…」
「うん?」
「彼女はね、レディ エレナだったの。つまり、ライアン卿の恋人だった」
「ええっ!それ…」
「だからね、フェリクスもレディ エレナの存在を知ってたのよね…。再婚の前から…」
「なんだか…複雑…」
「そう、でもその会ったときにはすでに秘密裏に離婚は成立してたみたいだし、私とフェリクスが婚約する前だったから?とか、まだ公表出来ないから?だから黙ってた…と解釈も出来るけど、真実はもう詮索しないことにしたの。だって真実を暴いても、全員が気まずくなることもあるでしょう?だから、私…男性たちが秘密にしている事とか、話さない、か話せない事には何かしら理由があると思うの」
「そ、そっか…ルナは、これからライアン卿とレディ エレナを両親にするわけだものね」
「うん…」
「離婚と再婚だけでもかなりのスキャンダルなのに、もしかすると前々から愛人だったとか…公爵としても公爵夫人としても、まずいわよね」
「でしょう?」
「ルナ…凄いね…」
ティファニーは呆然と呟いた。ティファニーの事なんて些細な事に思えた。
「だからと言うわけじゃないけれど…お兄様はあれでも嫡男だし、それなりにしっかりしてるはずだし、何より家族思いだし。それから…私の目から見てもティファニーの事はとっても大切にしてるから、だから、お兄様がそうした方がいいって言うことは受け入れて欲しいな」
ルナの言葉には真摯な響きがある。
「ありがとう、ルナ。そうする…」
「私、…ティファニーの事ちょっと羨ましいな」
エーリアルが言った。
「え?私の事が?」
「だって、ラファエルって本当にずーっとティファニー一人って感じだったじゃない?」
「ええ?そう?」
「そうそう。他の令嬢と話したりしてるの見たこともないし、まして舞踏会以外で他の令嬢会ってるところなんて皆無よね」
ルナも笑いながら同意した。
「お兄様がそんなに一途なタイプだなんて知らなかったわ」
「そう、私も一途に想われてみたいなって、考えちゃう」
「…こんなのの、どこがいいのだか…って思わないの?」
ティファニーは恥ずかしくなり、おずおずと言ってみた。
友人たちは何も言わないけれど、他の令嬢たちに発育不良と言われたり、もろもろ陰口聞いていると自分に自信を持つことは出来ないのだ。
「こんなのって、ティファニーはとても可愛くて綺麗よ?こんなに妖精さんみたいな女の子他にいないわよ」
ルナがしげしげとティファニーを見つめて言った。
「よ、妖精さんって…恥ずかしすぎるから…」
「見た目はね本当にそうだと私も思ったわ」
にこにことエーリアルが言う。
「だから、令嬢たちにはやっかみを受けるのよね」
アナベルが顔をしかめた。
「ティファニーがどう思おうと、見た目が薄幸の美少女だもの。守ってあげたい雰囲気だものね」
「…薄幸って言うのはあながち見た目だけじゃないかも…」
ティファニーは言った。自分の置かれた環境を思えば、薄幸といえば薄幸だと思う。
「…まぁ、とにかくか弱そうに見えるから攻撃はされやすいのよね…」
「でも、もう落ち着くでしょう?婚約だってしたし、結婚だってもう日取り決まったのよね?」
「そう、もうすぐ…」
もうすぐ、なのだ。
「お母様がすごーく張り切ってるわよ~」
ルナは笑みを向ける。
「これまで送り出すばかりだったでしょ?だから花嫁を迎えるのにウキウキしちゃってるから、ティファニーはもう身一つで大丈夫なくらいにする勢いよ」
「…伯爵閣下は?どう?」
「お父様?いつも通りよ」
ティファニーは、ブロンテ伯爵は仕方なく許可せざるを得なかった事を知っている。だからとても気になっているのだ。
「ルナだって結婚式を控えてるのに、私達が急に決めてしまったせいで急にバタバタさせてしまっていない?」
「私はもう準備期間はたっぷりあったから、全く心配いらないわ」
にこっとルナは微笑みかける。
ルナのゆとりのある落ち着いた言動は、ティファニーに力強く響いた。
ティファニーの友人たち。彼女たちとこうして笑いあって話すなんて、一年前には想像も出来なかった。しかし、さっきのルナの話と被る。ティファニーには友人達にも話せない事は確かにある、そしてラファエルにも簡単に口に出来ないこと。
それは、ジョルダンの話だ。
いつも、ティファニーを助けてくれたジョルダン。なにも彼には返せていない。ティファニーを巻き込まないように、彼は恋人の名も詳しい事も話さなかった。だからこそ、今こうして気になってしまう…。
もしかすると、ロレインが相手であるならばジョルダンに別れを告げたのは、ティファニーとの仲を誤解させたからではないのかと…。
ロレインとジョルダンの関係は気になる所だけれど、なんの確証もない、単なる勘だった。ルナの言う通りロレインに近づかないように言ってきたラファエルの言うようにするべきなのだと、ティファニーはその疑念を奥底に鎮めようと思った。
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