睡恋―sui ren―

桜 詩

文字の大きさ
25 / 62

25,特別な時 ☽

しおりを挟む

―――夜更け。

「どうした?」
すでに、幾度も抱かれた腕の中。どうやらぼんやりとしていたらしく、気がつくと後ろから抱き締められ顔を覗き込まれていた。


毎夜、繰り返してきた逢瀬。今、この時だけはフィリスとジョエルの秘密の時間だ。

「何にも……。ただ………あのレディ コーデリアの強さが羨ましくて」
フィリスはつい、ポツリと呟いた。
「コーデリアか……。彼女とは幼なじみだが、強くならなければならなかったんだと思ってる。幼い頃から、家が途絶えてしまう事には気づいていただろうから。すぐにああなった訳じゃない」

「そう、ね」
それでも、あの凛とした美しさは眩しくてならない。

「コーデリアを羨ましがるなんておかしいな。コーデリアの家は没落しかけだったんだ。それに、今でもまだ立て直せていないのに」
「ジョエル」

「何?」

―――レディ レナが好きなの?

訊きそうになった言葉はついに出ることはなかった。
代わりに振り向いてキスをした。

ちゅっ、と音をたてて触れた唇が離れる。
「もう一回……」
フィリスは誤魔化すようにして、呟いた。

「今日は積極的なんだな」
くすっと笑って、ジョエルは首に手を添えてキスを返してきた。
「んっ………いっぱいしたい」

恥ずかしいけど、それは素直な気持ちだった。
寄り添ってついさっきまで微睡むのももちろん良いけれど……。

例えば、いつもの紳士的な顔じゃなくて、まるでフィリスに想いがあるかのように、追い詰められるのも………。彼が息を乱し声を掠れさせるのも、どれも特別なもので。
だから、そんなジョエルがフィリスは見たかった。

「貪欲だな」
キスを……。フィリスの唇からそして耳に、そしてうなじへと続く。熱い吐息。火照った肌と汗の浮かぶ体、触れる度にうねる体。なまめかしくたちこめる性の香り。

――――あなたしか知らない、わたしを見せるから、わたししか知らない、あなたを見せて。

そんな気持ちは、一体どこからやって来るのだろう。

貪欲と言われても、それでもこの瞬間だけでも、フィリスに夢中でいてくれたら。それだけで良いと思える。

「そんなに、まだ欲しい?」
彼の昂りに手を添えたフィリスにジョエルはそう訊ねる。

「そうみたい……」
フィリスは躊躇う事なく、彼の屹立を口に含んだ。
ジョエルは体勢を変えて、フィリスの花弁に唇を寄せキスをする。甘い疼きが体を駆け巡り、何もかも忘れられる時が迫ってくる。

フィリスはそれを感じながら彼を愛撫する。
絡み合う二人の体は、まるで発情期の獣みたいに互いを求めて蠢いている。あっさりと上に体を入れ換えたジョエルが、フィリスの潤みきってとろりと蜜をこぼすそこへ、猛った剛直を挿入いれた。

とたんに絡み付く蜜壺に、ジョエルは息を詰めた。
「……っ」
荒くなる息を感じながらフィリスの体の反応はさらに高まり、彼をきゅうきゅう締め付ける。
奥から愛液は溢れ、ジョエルが腰を打ち付ける度に濡れた音はどんどん大きくなっていく。

「………っあ………も…っ……いい………」
思わず気持ちいいと、フィリスは言ってしまって拳を唇に当てた。
「俺も気持ちいい、フィリス」
そう言うと、肌のぶつかる音が響くくらいにジョエルは腰を打ち付ける。

体ごと揺すぶられ、本能のままの激しい動きに、フィリスは意識が霞んで行く。

折り曲げた膝から下が、ピクピクと震え痙攣する。
フィリスは必死で腕を伸ばし、筋の出ている腕に手をかけた。

「………っ…………」
荒い切ない声と共に、熱い迸りを体に受けた。

フィリスはその、瞬間の凄絶に色っぽいジョエルを間近で、瞳に映しながら、肩に手を回して鎖骨の肩側の端にキスをした。
赤い、跡がそこに咲き、フィリスはもう一度そこに口付けた。

青い眼差しを受けながら、彼の胸に頬をつけてあと残りわずかな時間を堪能する。

しかし、思っているよりも早く、ジョエルはベッドから降りた。

「この前から、見つかりそうな事ばかりしてしまってる。だから、そろそろ行くよ……あと、明日は出掛けるから、ここへは来ない」

「そうなの……」

夢の時間は終わり、現実の寒々とした気配がフィリスを覆い尽くす。火照った肌は、今は急速に冷えてぶるりと震えそうになる。

もっと、もっと……めちゃくちゃにされないと。
すぐにただの、素肌と体になってしまう。

何度抱き合っても……。
足りなくて、足りなくて、もっと貪欲になってしまう。

熱くなる肌だけが、二人の時の象徴なのに。

時と言うのは無情で……。あっという間に夜の帳を巻き上げてしまう。夜をこれほど恋しく思うなんて、朝日がこれほど、何かを取り払ってしまうなんて。

彼の残滓は、時と共に朝日に追いやられ、後に残されるのは寝乱れたシーツだけ。彼が居ればこそ、そんなシワさえ愉しいものだけれど、今はもう……寝苦しいだけのもの。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...