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25,特別な時 ☽
しおりを挟む―――夜更け。
「どうした?」
すでに、幾度も抱かれた腕の中。どうやらぼんやりとしていたらしく、気がつくと後ろから抱き締められ顔を覗き込まれていた。
毎夜、繰り返してきた逢瀬。今、この時だけはフィリスとジョエルの秘密の時間だ。
「何にも……。ただ………あのレディ コーデリアの強さが羨ましくて」
フィリスはつい、ポツリと呟いた。
「コーデリアか……。彼女とは幼なじみだが、強くならなければならなかったんだと思ってる。幼い頃から、家が途絶えてしまう事には気づいていただろうから。すぐにああなった訳じゃない」
「そう、ね」
それでも、あの凛とした美しさは眩しくてならない。
「コーデリアを羨ましがるなんておかしいな。コーデリアの家は没落しかけだったんだ。それに、今でもまだ立て直せていないのに」
「ジョエル」
「何?」
―――レディ レナが好きなの?
訊きそうになった言葉はついに出ることはなかった。
代わりに振り向いてキスをした。
ちゅっ、と音をたてて触れた唇が離れる。
「もう一回……」
フィリスは誤魔化すようにして、呟いた。
「今日は積極的なんだな」
くすっと笑って、ジョエルは首に手を添えてキスを返してきた。
「んっ………いっぱいしたい」
恥ずかしいけど、それは素直な気持ちだった。
寄り添ってついさっきまで微睡むのももちろん良いけれど……。
例えば、いつもの紳士的な顔じゃなくて、まるでフィリスに想いがあるかのように、追い詰められるのも………。彼が息を乱し声を掠れさせるのも、どれも特別なもので。
だから、そんなジョエルがフィリスは見たかった。
「貪欲だな」
キスを……。フィリスの唇からそして耳に、そしてうなじへと続く。熱い吐息。火照った肌と汗の浮かぶ体、触れる度にうねる体。艶かしくたちこめる性の香り。
――――あなたしか知らない、わたしを見せるから、わたししか知らない、あなたを見せて。
そんな気持ちは、一体どこからやって来るのだろう。
貪欲と言われても、それでもこの瞬間だけでも、フィリスに夢中でいてくれたら。それだけで良いと思える。
「そんなに、まだ欲しい?」
彼の昂りに手を添えたフィリスにジョエルはそう訊ねる。
「そうみたい……」
フィリスは躊躇う事なく、彼の屹立を口に含んだ。
ジョエルは体勢を変えて、フィリスの花弁に唇を寄せキスをする。甘い疼きが体を駆け巡り、何もかも忘れられる時が迫ってくる。
フィリスはそれを感じながら彼を愛撫する。
絡み合う二人の体は、まるで発情期の獣みたいに互いを求めて蠢いている。あっさりと上に体を入れ換えたジョエルが、フィリスの潤みきってとろりと蜜をこぼすそこへ、猛った剛直を挿入た。
とたんに絡み付く蜜壺に、ジョエルは息を詰めた。
「……っ」
荒くなる息を感じながらフィリスの体の反応はさらに高まり、彼をきゅうきゅう締め付ける。
奥から愛液は溢れ、ジョエルが腰を打ち付ける度に濡れた音はどんどん大きくなっていく。
「………っあ………も…っ……いい………」
思わず気持ちいいと、フィリスは言ってしまって拳を唇に当てた。
「俺も気持ちいい、フィリス」
そう言うと、肌のぶつかる音が響くくらいにジョエルは腰を打ち付ける。
体ごと揺すぶられ、本能のままの激しい動きに、フィリスは意識が霞んで行く。
折り曲げた膝から下が、ピクピクと震え痙攣する。
フィリスは必死で腕を伸ばし、筋の出ている腕に手をかけた。
「………っ…………」
荒い切ない声と共に、熱い迸りを体に受けた。
フィリスはその、瞬間の凄絶に色っぽいジョエルを間近で、瞳に映しながら、肩に手を回して鎖骨の肩側の端にキスをした。
赤い、跡がそこに咲き、フィリスはもう一度そこに口付けた。
青い眼差しを受けながら、彼の胸に頬をつけてあと残りわずかな時間を堪能する。
しかし、思っているよりも早く、ジョエルはベッドから降りた。
「この前から、見つかりそうな事ばかりしてしまってる。だから、そろそろ行くよ……あと、明日は出掛けるから、ここへは来ない」
「そうなの……」
夢の時間は終わり、現実の寒々とした気配がフィリスを覆い尽くす。火照った肌は、今は急速に冷えてぶるりと震えそうになる。
もっと、もっと……めちゃくちゃにされないと。
すぐにただの、素肌と体になってしまう。
何度抱き合っても……。
足りなくて、足りなくて、もっと貪欲になってしまう。
熱くなる肌だけが、二人の時の象徴なのに。
時と言うのは無情で……。あっという間に夜の帳を巻き上げてしまう。夜をこれほど恋しく思うなんて、朝日がこれほど、何かを取り払ってしまうなんて。
彼の残滓は、時と共に朝日に追いやられ、後に残されるのは寝乱れたシーツだけ。彼が居ればこそ、そんなシワさえ愉しいものだけれど、今はもう……寝苦しいだけのもの。
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