睡恋―sui ren―

桜 詩

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41,心を結ぶ夜 ☽

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 目まぐるしく思考が渦巻く。

いろんな過去の出来事、現在いま起こっている事、そして自分の欲しい未来。そのいずれの物にも中心にあるのは、やはり一人の男性ひと

ずっと初めから分かってる。このままで、一緒に居続ける事なんてやはり無理に決まってる。

――――今夜も、彼はここへ来る。

フィリスは、その時を待ちながら髪にブラシを滑らせる。好きだと言われた香りを纏わせながら……。
下ろした髪は、無防備だけれどこの姿を見せるのは、ジョエルだけだから。軽く編むこともしない、飾らない姿こそ自分たちの過ごしてきた象徴だから……。

そして、彼は珍しく廊下の扉から入ってきてフィリスを驚かせた。

「どうしてその扉から……」
「こんな時間に、誰も歩いてない。皆休んでるよ」

立ち上がってフィリスはジョエルを出迎えた。

「あの後、大丈夫だったか?」
「ええ。貴方も?」

ジョエルは軽く微笑むと
「何も、問題なんてあるわけがない。それよりもあいつを今後一切近づけさせない様にしないとな。あんな事を言い出すなんて………手を打つから、心配しなくていい」
額にキスをしながらそう静かに言った。

「いいの。ジョエル、すでに父が動くわ……お願いしたの」

「リヴィングストン子爵か。彼に任せれば間違い無いだろう」
ジョエルに導かれフィリスは並んでソファに座った。
「だけど……フィリスが頼んだ?」

「ええ……許せなくて、よりにもよって貴方がわたしを愛人にしようとしてるなんて……。自分が誰に何をしたのか少しも分かっていないのよ」
「じゃあ後は、父君に任せてフィリスはもう、あいつを忘れるだけだ」

「ええ、そうね」
フィリスは微笑みを浮かべた。

髪を指に絡ませながら、キスを交わす。
ガーデンで沸き上がった熱を、無理矢理収めた分……官能の炎はたちまちの間に全身を駆け巡る。

間近に見れば見るほどに、美しい青い瞳。その中に今は自分しかいない事が嬉しくてならない。

「決めた事があるの」
フィリスは彼の胸に手を置いて呟いた。
「何を?」

「シーズンが終わったら、リヴィングストンへ帰るわ」

フィリスの言葉に、ジョエルは一度体を離してしばらく見つめ合った。

「それは……前向きな決断なのか?」
「ええ、そうよ………貴方が教えてくれたのよ。わたしがレディ フィリスだと。だから、次のシーズンは同じホールで会えるようにレディ フィリス・ザヴィアーとして王都へと来るわ、ウィンスレット家の客人としてではなく」

「参ったな……それでは反対できない」

「だから……それまで……わたしを忘れないで」
「忘れる訳がない」
ジョエルは心外だとでも言いたげに即座に返した。

「どうかしら、貴方は思うよりも恋多き男性かも知れないのに……」
そう言うとジョエルは笑った。
出会った時、彼が失恋したばかりだということを思い出せば……本当に冗談でなくなればどうしようかと、ほんの僅か考えてしまう。

「もしも他に目を奪われていたなら……奪い返しに来てくれるんだろ?」
フィリスはそれに笑った。

寛げた襟元にフィリスは唇を寄せた。
「待っていてくれる……?」

「フィリスこそ、ここ・・へ帰ってくるんだ」
「必ずそうすると約束する」

フィリスは中指につけていた細い指輪を外してジョエルのシグネットリングに重ねて隠すように着けた。

「…………分かった。止めたりはしない………だけど本当は行かせたくないと思ってる、強引に引き留めたいと……ここに縛りつけても」

「ジョエル」

フィリスは指先を首に這わせ、唇にキスをした。柔らかな感触を愉しむように柔らかく食み、舌を絡ませ合った。

そしてジョエルはフィリスの体を抱き上げてそして、ベッドへと下ろすと上着を脱ぎそしてシャツの裾を引き出した。

そんな乱れた服装が、背筋をぞくりとさせるほど色っぽい。
片手で頭の上で両手を封じられてフィリスは、見上げながらこくんと喉を鳴らした。前結びリボンのネグリジェは前をほどかれ、露になった乳房が呼吸と共に微かに揺れる。

「――――こんな風に、いつまでも捕らえたままに……」

「わかってる?貴方はすでに……わたしを捕らえて、全てを支配しているのに……」
薄く微笑むとジョエルは息もつかせない程のキスをしてきた。
重なる唇からは、くちゅっと淫らな音を立てさせフィリスを翻弄する。

「足りないな、今のままなら………俺は。――――だから…………次にここで再会した時は……今度こそ、覚悟を」
凄絶に美しい表情かおを見せて、ジョエルは持ち上げた乳房を唇で愛撫して、そして指で先端をきつく摘まんだ。

「……っあ……」
「もう………凍えた子猫じゃないな、こんなにも熱い」

彼の言うように、体は火照り熱くなっている。

指と唇で形を変える柔らかな乳房が、艶かしく薄暗い灯りの下で影を動かしている。フィリスの腰は物欲しげに揺れ動き脚は、彼の脚に絡ませる。

彼の罪深い唇は、乳房から脇へと動き、そして背中へと移り、フィリスをうつ伏せにしてしまった。背中の窪みを辿る舌がもどかしい程のゆっくりと愛撫していく。時折キスの音が加わる度に、フィリスの体はしなって反応する。

そしてやっとヒップに辿りついた唇は、割れ目の入り口でぴたりと止まった。両手で双丘を広げられ、フィリスはきっとそこを見られていると感じて全身を染めた。

「……ね、ぇ……お願い」

見られているだけ、というのはひどく羞恥心を煽る。
「見てるだけで感じてる」

腰を持ち上げられて、突きだした格好にさせられて微かに身体を震わせた。

「後から後から、滴り落ちて……フィリスはこうされるのが好きなんだ」
「や……」

指がゆっくりと蜜壺へとするりと入ると、くちゅくちゅと音がしてジョエルの手を伝い、愛液がシーツへと落ちてシミを作る。

「最初の夜を忘れた事はない………」
ジョエルは、そう言いながら自身の持つ男の証でフィリスを貫いた。
「…………ぁあっ………!」

「今夜は加減なんてしたくないな……」
その言葉を聞いた時には、激しく腰を打ち付けられ、引き寄せられたジョエルの唇に熱いキスをされて、それは正しくあの夜を思い出させるセックスだった。

きつく手で愛撫される乳房は先端を淫らに勃ち上がらせ、紅く色づかせている。打ち付けられる肌は汗が滲み、そして薄闇に揺れる蝋燭の灯りで、まるで輝く粉をつけたかのように艶を放っていた。二人の間からはぐちゅぐちゅと音がして愛液が溢れて、次から次へと襲いくる止めどない官能を伝え合わせていた。
最奥を彼のもので激しく突かれフィリスの脳裏は弾けるように白に染め上げられた。
「……………っ!」
脚をわななかせ、崩れ落ちるフィリスを抱き留めジョエルはベッドに横たわらせると、片足を腕にかけ深い体勢で蜜壺をゆっくりと突きながらゆるゆるとかき混ぜた。体位が変わるとまた違う個所が、違った官能を連れてくる。

「……っ……あぁ……!」  
達した身体は小刻みに震え、その体をジョエルは抱き起こした。膝に股がらせ抱き締めたフィリスの首もとにキスをしながら軽く揺さぶる。

休むまもなく与えられる官能が次々と押し寄せ、もはや彼にされるがままだった。

自然と刻むリズムが、荒い呼吸と共に二人分が重なっていく。
さ迷うように、いつしか腕を背中へと回して、フィリスは肩に唇を当てた。
そして、声をあげてしまう代わりに甘く歯を当てた。熱い蜜壺はとろとろに溶けるみたいに、ジョエルを飲み込んでそして奥へ導くように蠕動して絡み付きまるで放さないと言っているみたいだった。

繋がったまま、ジョエルはフィリスをベッドへと寝かせそのまま膝を押し広げて深く突き、クライマックスへと向けて動きを早める。

「……っああ、あ、あ、あ………んんっ―――――」
フィリスは思わず出そうな高い声を枕に押し付けて抑えた。

「フィリス、…………。」
甘い声と、そして言外に告げられた想いが………フィリスの歓びの涙を誘っていつしかそれは雫となり目尻に光り、顔を飾っていた。

情熱をフィリスの肌に解き放つ彼を抱き締めながら、いつか言葉に出来る日が来ることを祈った。

ジョエルは唇で零れた涙を掬い、
「君が泣いて良いのは………俺の腕の中だけだ」
そう呟いてこめかみにキスをした。

フィリスは腕に手を添わせて力強い肩に手を回した。
指先と掌に彼の皮膚とそれから鍛えた身体を感じながら、もしかしたら……もう一度奇跡みたいな未来を、夢に描いてもいいのかも知れない……。そんな風に思えた。
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