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第二章 学園生活
出会い 3
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◆
~ ジェシカ・ライオネル 視点 ~
人間国家への留学。
その話をお父様からされた時、私は絶望した。誰が好き好んで、あんな野蛮人どもが暮らしている国へ留学したいと思うのかと、本気で呆れたほどだ。
ただ、その理由を説明されて、一応は納得した。
両国間の友好を深め、現在の休戦状況から恒久的な和平条約を結ぶための足掛かりにしたい、との思惑があるようで、平和の架け橋になるならばと、嫌々ではあったが留学することを了承した。
人間種の我々に対する感情は、ある程度理解していたつもりだが、交換留学性という客人待遇で招かれた私に対し暴言を吐いてくるとは、やはり人間種は知識として聞いていた以上に、野蛮で下劣な人種だった。
(しかも、あのケイルとかいう野蛮人、この私に劣情を向けるとは︙︙人間種は万年発情期と聞いていたが、まるで魔物と同じだな)
奴が決闘の勝利に望んだものは、私を一晩好きにするという、なんとも品性下劣なものだった。
(こんな野蛮人に、絶対負けるものか!)
革製のガントレットを装着し、獣化深度『二』となった私は、相対する奴の様子を観察する。
その構え、重心、視線等々︙︙そこから感じ取れる奴の実力を分析した。
(技量的には私が上だが、間合いは木剣に有利︙︙懐に入れば私の勝ちだ)
勝利までの算段をつけ、開始の合図を待つ。立会人は、この家で唯一まともな対応をしていたハルトと名乗る少年だった。
(決闘の勝敗に手心を加えるようには見えないが、ここは敵地。奴を気絶させねば、私の勝利を認めないかもしれないな)
拳を握る力を強めると同時、開始の合図が放たれた。
(先手必勝!)
合図と同時に奴の間合いの内側へ踏み込もうとすると、奴も同じ事を考えてか、距離を詰めてきている。
大上段に構えた木剣を、袈裟斬りに振り下ろしてきた。どうやら私の肩に狙いを定めているようだが、その剣筋を見切り、手の甲で内側から木剣の側面を弾く。
「はぁぁ!」
「なっ!」
私に防がれるとは思っていなかったのだろう、奴は目を見開いて驚きの表情を浮かべている。
(態勢を崩した! チャンスだ!)
そのまま更に一歩踏み込み、無防備となった腹部へ回し蹴りの一撃を叩き込む。
「はぁっ!」
「ぐあっ!」
一撃が入る瞬間、奴は身を捩って避けたため、脇腹を浅く蹴り抜くに留まってしまった。
私の攻撃で地面に倒れ伏す奴を見ると、少し溜飲が下がるが、残念ながら決定打には至っていない。
(さすがに、そう簡単に勝たせてはくれないか)
深呼吸して息を整え、次の攻防に備える。奴は脇腹を押さえながら立ち上がると、怒り狂った表情を浮かべて口を開く。
「こ、この獣風情が! よくも俺を足蹴にしやがったな! 絶対に許さんぞ!」
「ふん! あんたは地面に這いつくばっている姿がお似合いだよ」
「ふざけるな! この俺を愚弄するなど、許さんぞ!」
「別に、あんたに許してもらおうだなんて思わないよ。どのみちこの決闘は――私が勝つ!」
「ほざけっ!」
決闘を終わらせようと動き出すと、奴は片手で木剣を構えて受けの姿勢をとっている。私の返し技を警戒しているのか、ダメージで素早い動きがとれないのか、威勢の割には臆病な奴だ。
私は奴の木剣の間合いの外側で上に飛び上がり、前方に一回転しつつ、かかと落としの態勢に入る。
(これで終わらせてやる!)
たとえ奴が木剣で防ごうとしても、回転の遠心力に全体重を乗せた一撃だ、木剣ごと蹴りをお見舞いできる。避けられたとしても十分に間合いは潰したので、そこは既に私の距離だ。
どちらを選択しても私に勝機のある攻撃だったのだが、奴は思いもよらない手段を取る。
「けっ! 獣人は猪突猛進で扱いやすいぜ!」
奴は私を見下す笑みを浮かべると、木剣を持っていなかった方の手を私に向かって振ってきた。
「なっ――目潰しか!」
奴の手にはいつの間にか砂が握られており、それを私に向かって投げつけてきたのだ。空中で身動きの取れなかった私は、目を閉じて対処するしかなかった。
「ははっ! どこ狙って蹴ってんだ!」
「ぐっ――」
視界が閉ざされたため、攻撃の狙いが甘くなって避けられてしまった。しかも着地した瞬間を狙われ、腹部を木剣で薙ぎ払われ、無様にも地面に転がされてしまう。
「とどめだ!」
盛大な隙を曝す私に対し、奴は嗜虐的な笑みを浮かべながら追撃の木剣を振り下ろしてくる。その狙いは、私の頭だ。
(くそっ! 間に合わない――)
防御が遅れたことに敗北を悟った私だったが、その瞬間、何者かが割って入り、私の頭上数センチのところで木剣を止めた。
「なっ⁉ 何しやがる! ハルト!」
「えっ? 何って、ケイル兄上の反則負けになるところだったので、決闘を止めたんです」
「はぁ? 反則ってなんだよ⁉」
「事前に伝えていますが、治療に時間を要する攻撃は禁止です」
「んだとっ!」
言い争う二人の様子よりも、私は自分の見ている光景に衝撃を受け、しばらく呆然としてしまった。
(ありえない︙︙振り下ろされている木剣を後ろ側から摘む? どんな動体視力と反射神経をしているんだ? いや、摘んで止めるなんて、どんな握力なら可能なんだ?)
驚きと共に少年を見る。しかし彼は、身体強化を施しているようには見えない。
(いったいどういう事? 素で化け物並みの握力があるってこと? いえ、あれは︙︙)
落ち着いて感覚を研ぎ澄ますと、少年のオドが活性化しているのを感じる。しかし、オドを使用したとき特有の光は見えない。
(どういうこと? オドの力を使っているのは感じるのに、外見にまるで現れていない︙︙まさか、オドの制御を完全に掌握している? ま、まさか、ね︙︙)
オドを完全に制御するなど、私の師匠でもある父上でも不可能だ。いや、この世界の誰も成し遂げた者はいない。
この世に生まれたその瞬間から、オドは常に私たちと共にあり、体の一部だ。しかし、筋肉の一筋だけに力を入れることが不可能なように、全てのオドを完全に掌握して制御することはできないとされている。
制御しきれなかったオドは体外に漏れ、結果としてオドを使用すると、体が光に包まれる。
(人間種特有の制御がある? でも、このケイルという人間種は体から光が漏れている。となると、少年の特異技術︙︙? そういえばこの少年、全く隙がない)
少年は奴と言い合いをしているが、こちらにも意識を向けているのを感じる。私が突発的な動きをしても、すぐに取り押さえられる気がする。
少年を観察していると、辺境伯が無表情で歩み寄ってきた。
「そこまでにしろ。ハルト、神聖な決闘をお前の勝手な判断で止めるとは何事だ」
「立会人としての判断です。あのままケイル兄上の攻撃がライオネル殿の頭部に加えられれば、良くて頭部挫傷による意識混濁。悪ければ数日は目を覚まさないような重傷を負う可能性が高いものでした。治療には短くても数日は要して――」
「はっ! この獣は獣化してるんだろ? 頭を木剣で殴られたところで、重傷になんてならねぇだろうが!」
少年は辺境伯の詰問に真正面から反論していたが、その言葉を奴が遮って喚いていた。
いくら私が獣化しているといっても、深度は『二』だ。同じ深度の身体強化の攻撃では、当たりどころが悪ければ重傷を負うことだってある。
(この人間たち、獣人の私がどうなろうと気にしていない? 国家間の約定で留学する私に対してこの対応︙︙この家は貴族派閥ってわけね)
事前に聞いていたが、人間の国は大きく二つの派閥に分かれている。王派閥と貴族派閥だ。
最近は貴族派閥が幅を利かせているらしく、我が国との融和を模索している王家への反発が強くなっているのだという。
そんな事を考えていると、少年が小さくため息を吐き出し、感情を悟らせない表情で口を開く。
「それではこの決闘は、立会人の私の不正介入で無効としましょう」
「なに?」
少年の言葉に、辺境伯は自身の子供に向ける顔とは思えない、苛ついた表情を浮かべている。
「国策として招かれた他国の令嬢に怪我を負わせたとあっては、我が家の没落を狙う王派閥に隙を晒してしまいます」
「︙︙︙︙」
「父上の貴族派閥としての立場を強固にしたいという思惑はわかりますが、どうかここは冷静なご判断をお願いします」
少年とは思えない物言いに、どちらが辺境伯か分からなくなる。
辺境伯は、しばらく考え込む仕草をしていると、おもむろに口を開く。
「いいだろう。お前の不正介入として、この決闘を無効とする。両国の関係性を考慮して、決闘は中止だ。異議のある者は、このハルトに申し出よ」
辺境伯の決定に周囲はザワつくが、当の少年は気にする様子もなかった。
だが、納得できない者もいる。
「ハルト! お前が止めなきゃ俺が勝ってたんだぞ! どう責任取るつもりだ!」
「ケイル兄上︙︙兄上は、ライオネル殿と三ヶ月学園で過ごすのですよ。学園には王派閥の貴族も通っているでしょう。余計な火種は、作らぬに越したことはないです」
「社交界に出たこともない貴様が、知ったような口を効くな!」
食って掛かる奴に対し、少年は冷静に返答している。話の内容から、少年は社交界に出たことが無いらしいが、確か彼は十五歳だったはず。デビュタントはとっくに済んでいる年齢だが、この家での少年の扱いには疑問を感じる。
(この少年︙︙かなり優秀だろうに、なぜ煙たがられているんだ?)
少年への扱いの異常さに首を傾げていると、彼は不敵な笑みを浮かべて口を開く。
「それは失礼しました。消化不良なら、私が決闘の相手をしましょうか?」
「︙︙そんな無意味なことはしない。興が削がれた。もういい!」
少年の提案に、奴は一瞬怯えた表情を浮かべると、すぐにそれを隠すかのように怒りの表情を浮かべながら屋敷の方へと去って行った。
決闘を見ていた人間たちも、物足りないという顔をしていたが、特に何も言わずに屋敷へと戻っていく。
(まったく︙︙留学生活は、前途多難のようね)
これから学園で人間と生活する事を考え、頭が痛くなった。
~ ジェシカ・ライオネル 視点 ~
人間国家への留学。
その話をお父様からされた時、私は絶望した。誰が好き好んで、あんな野蛮人どもが暮らしている国へ留学したいと思うのかと、本気で呆れたほどだ。
ただ、その理由を説明されて、一応は納得した。
両国間の友好を深め、現在の休戦状況から恒久的な和平条約を結ぶための足掛かりにしたい、との思惑があるようで、平和の架け橋になるならばと、嫌々ではあったが留学することを了承した。
人間種の我々に対する感情は、ある程度理解していたつもりだが、交換留学性という客人待遇で招かれた私に対し暴言を吐いてくるとは、やはり人間種は知識として聞いていた以上に、野蛮で下劣な人種だった。
(しかも、あのケイルとかいう野蛮人、この私に劣情を向けるとは︙︙人間種は万年発情期と聞いていたが、まるで魔物と同じだな)
奴が決闘の勝利に望んだものは、私を一晩好きにするという、なんとも品性下劣なものだった。
(こんな野蛮人に、絶対負けるものか!)
革製のガントレットを装着し、獣化深度『二』となった私は、相対する奴の様子を観察する。
その構え、重心、視線等々︙︙そこから感じ取れる奴の実力を分析した。
(技量的には私が上だが、間合いは木剣に有利︙︙懐に入れば私の勝ちだ)
勝利までの算段をつけ、開始の合図を待つ。立会人は、この家で唯一まともな対応をしていたハルトと名乗る少年だった。
(決闘の勝敗に手心を加えるようには見えないが、ここは敵地。奴を気絶させねば、私の勝利を認めないかもしれないな)
拳を握る力を強めると同時、開始の合図が放たれた。
(先手必勝!)
合図と同時に奴の間合いの内側へ踏み込もうとすると、奴も同じ事を考えてか、距離を詰めてきている。
大上段に構えた木剣を、袈裟斬りに振り下ろしてきた。どうやら私の肩に狙いを定めているようだが、その剣筋を見切り、手の甲で内側から木剣の側面を弾く。
「はぁぁ!」
「なっ!」
私に防がれるとは思っていなかったのだろう、奴は目を見開いて驚きの表情を浮かべている。
(態勢を崩した! チャンスだ!)
そのまま更に一歩踏み込み、無防備となった腹部へ回し蹴りの一撃を叩き込む。
「はぁっ!」
「ぐあっ!」
一撃が入る瞬間、奴は身を捩って避けたため、脇腹を浅く蹴り抜くに留まってしまった。
私の攻撃で地面に倒れ伏す奴を見ると、少し溜飲が下がるが、残念ながら決定打には至っていない。
(さすがに、そう簡単に勝たせてはくれないか)
深呼吸して息を整え、次の攻防に備える。奴は脇腹を押さえながら立ち上がると、怒り狂った表情を浮かべて口を開く。
「こ、この獣風情が! よくも俺を足蹴にしやがったな! 絶対に許さんぞ!」
「ふん! あんたは地面に這いつくばっている姿がお似合いだよ」
「ふざけるな! この俺を愚弄するなど、許さんぞ!」
「別に、あんたに許してもらおうだなんて思わないよ。どのみちこの決闘は――私が勝つ!」
「ほざけっ!」
決闘を終わらせようと動き出すと、奴は片手で木剣を構えて受けの姿勢をとっている。私の返し技を警戒しているのか、ダメージで素早い動きがとれないのか、威勢の割には臆病な奴だ。
私は奴の木剣の間合いの外側で上に飛び上がり、前方に一回転しつつ、かかと落としの態勢に入る。
(これで終わらせてやる!)
たとえ奴が木剣で防ごうとしても、回転の遠心力に全体重を乗せた一撃だ、木剣ごと蹴りをお見舞いできる。避けられたとしても十分に間合いは潰したので、そこは既に私の距離だ。
どちらを選択しても私に勝機のある攻撃だったのだが、奴は思いもよらない手段を取る。
「けっ! 獣人は猪突猛進で扱いやすいぜ!」
奴は私を見下す笑みを浮かべると、木剣を持っていなかった方の手を私に向かって振ってきた。
「なっ――目潰しか!」
奴の手にはいつの間にか砂が握られており、それを私に向かって投げつけてきたのだ。空中で身動きの取れなかった私は、目を閉じて対処するしかなかった。
「ははっ! どこ狙って蹴ってんだ!」
「ぐっ――」
視界が閉ざされたため、攻撃の狙いが甘くなって避けられてしまった。しかも着地した瞬間を狙われ、腹部を木剣で薙ぎ払われ、無様にも地面に転がされてしまう。
「とどめだ!」
盛大な隙を曝す私に対し、奴は嗜虐的な笑みを浮かべながら追撃の木剣を振り下ろしてくる。その狙いは、私の頭だ。
(くそっ! 間に合わない――)
防御が遅れたことに敗北を悟った私だったが、その瞬間、何者かが割って入り、私の頭上数センチのところで木剣を止めた。
「なっ⁉ 何しやがる! ハルト!」
「えっ? 何って、ケイル兄上の反則負けになるところだったので、決闘を止めたんです」
「はぁ? 反則ってなんだよ⁉」
「事前に伝えていますが、治療に時間を要する攻撃は禁止です」
「んだとっ!」
言い争う二人の様子よりも、私は自分の見ている光景に衝撃を受け、しばらく呆然としてしまった。
(ありえない︙︙振り下ろされている木剣を後ろ側から摘む? どんな動体視力と反射神経をしているんだ? いや、摘んで止めるなんて、どんな握力なら可能なんだ?)
驚きと共に少年を見る。しかし彼は、身体強化を施しているようには見えない。
(いったいどういう事? 素で化け物並みの握力があるってこと? いえ、あれは︙︙)
落ち着いて感覚を研ぎ澄ますと、少年のオドが活性化しているのを感じる。しかし、オドを使用したとき特有の光は見えない。
(どういうこと? オドの力を使っているのは感じるのに、外見にまるで現れていない︙︙まさか、オドの制御を完全に掌握している? ま、まさか、ね︙︙)
オドを完全に制御するなど、私の師匠でもある父上でも不可能だ。いや、この世界の誰も成し遂げた者はいない。
この世に生まれたその瞬間から、オドは常に私たちと共にあり、体の一部だ。しかし、筋肉の一筋だけに力を入れることが不可能なように、全てのオドを完全に掌握して制御することはできないとされている。
制御しきれなかったオドは体外に漏れ、結果としてオドを使用すると、体が光に包まれる。
(人間種特有の制御がある? でも、このケイルという人間種は体から光が漏れている。となると、少年の特異技術︙︙? そういえばこの少年、全く隙がない)
少年は奴と言い合いをしているが、こちらにも意識を向けているのを感じる。私が突発的な動きをしても、すぐに取り押さえられる気がする。
少年を観察していると、辺境伯が無表情で歩み寄ってきた。
「そこまでにしろ。ハルト、神聖な決闘をお前の勝手な判断で止めるとは何事だ」
「立会人としての判断です。あのままケイル兄上の攻撃がライオネル殿の頭部に加えられれば、良くて頭部挫傷による意識混濁。悪ければ数日は目を覚まさないような重傷を負う可能性が高いものでした。治療には短くても数日は要して――」
「はっ! この獣は獣化してるんだろ? 頭を木剣で殴られたところで、重傷になんてならねぇだろうが!」
少年は辺境伯の詰問に真正面から反論していたが、その言葉を奴が遮って喚いていた。
いくら私が獣化しているといっても、深度は『二』だ。同じ深度の身体強化の攻撃では、当たりどころが悪ければ重傷を負うことだってある。
(この人間たち、獣人の私がどうなろうと気にしていない? 国家間の約定で留学する私に対してこの対応︙︙この家は貴族派閥ってわけね)
事前に聞いていたが、人間の国は大きく二つの派閥に分かれている。王派閥と貴族派閥だ。
最近は貴族派閥が幅を利かせているらしく、我が国との融和を模索している王家への反発が強くなっているのだという。
そんな事を考えていると、少年が小さくため息を吐き出し、感情を悟らせない表情で口を開く。
「それではこの決闘は、立会人の私の不正介入で無効としましょう」
「なに?」
少年の言葉に、辺境伯は自身の子供に向ける顔とは思えない、苛ついた表情を浮かべている。
「国策として招かれた他国の令嬢に怪我を負わせたとあっては、我が家の没落を狙う王派閥に隙を晒してしまいます」
「︙︙︙︙」
「父上の貴族派閥としての立場を強固にしたいという思惑はわかりますが、どうかここは冷静なご判断をお願いします」
少年とは思えない物言いに、どちらが辺境伯か分からなくなる。
辺境伯は、しばらく考え込む仕草をしていると、おもむろに口を開く。
「いいだろう。お前の不正介入として、この決闘を無効とする。両国の関係性を考慮して、決闘は中止だ。異議のある者は、このハルトに申し出よ」
辺境伯の決定に周囲はザワつくが、当の少年は気にする様子もなかった。
だが、納得できない者もいる。
「ハルト! お前が止めなきゃ俺が勝ってたんだぞ! どう責任取るつもりだ!」
「ケイル兄上︙︙兄上は、ライオネル殿と三ヶ月学園で過ごすのですよ。学園には王派閥の貴族も通っているでしょう。余計な火種は、作らぬに越したことはないです」
「社交界に出たこともない貴様が、知ったような口を効くな!」
食って掛かる奴に対し、少年は冷静に返答している。話の内容から、少年は社交界に出たことが無いらしいが、確か彼は十五歳だったはず。デビュタントはとっくに済んでいる年齢だが、この家での少年の扱いには疑問を感じる。
(この少年︙︙かなり優秀だろうに、なぜ煙たがられているんだ?)
少年への扱いの異常さに首を傾げていると、彼は不敵な笑みを浮かべて口を開く。
「それは失礼しました。消化不良なら、私が決闘の相手をしましょうか?」
「︙︙そんな無意味なことはしない。興が削がれた。もういい!」
少年の提案に、奴は一瞬怯えた表情を浮かべると、すぐにそれを隠すかのように怒りの表情を浮かべながら屋敷の方へと去って行った。
決闘を見ていた人間たちも、物足りないという顔をしていたが、特に何も言わずに屋敷へと戻っていく。
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