変幻自在のアルマ遣い

黒蓮

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留学編

再会 6

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「では皆様!ごゆるりとご歓談下さい!!」

 各国の王女殿下達を会場に案内し終え、歓迎のパーティーが始まると、先ずは今回の留学を受け入れた経緯や意義が宰相から伝えられた。内容としては、各国の協調を更に深めることが目的ということだ。この3ヶ月の留学期間で、お互いの国が文化的にも軍事的にも更なる発展が期待できる施策となると宣言していたが、軍事的に発展してしまうのは大丈夫なのかという疑問もあった。
もちろん軍事の中心に据えられているのは、害獣対策についてになるので、過去のように他国との戦争を誘発するということは無いはずだ。そもそも、そうさせない為の友好関係の強化でもあるのだろう。ただ、国家間の決闘の面で言えば相手に手の内を見せるという事になってしまうので、軍事的な協調というのは最小限になりそうだなと、他人事のように考えていた。

その後、留学してきた各国の王女殿下たちの紹介を、パーティーに招かれている序列上位のクルセイダーや主要な文官へ行い、逆にドーラル王国の最上位クルセイダーや主要大臣などの為政者達の紹介を王女殿下達に行っていた。
そして、王女殿下達の挨拶や宰相などの話が終わる頃には、既にパーティーが始まって1時間近くが経とうとしていた。

(ようやく食事が出来る・・・)

一連の挨拶が終わると、宰相のご歓談を促す言葉と共に、様々な種類の食事を執事の人達が運び込み、あっという間に立食形式の会場に様変わりした。本来僕はこのパーティーに呼ばれるような身分でも役職でも無いこともあって、殿下達の挨拶中はずっと隅の方で周囲を伺っていた。
広々とした会場には、200人近い招待客が色とりどりのドレスを着込んでいおり、招待された者の中にはご夫婦で訪れている人も居たが、会場内は8割方が女性という状況で、香水の匂いが混ざりあって結構キツい。
今までこんな盛大なパーティーに出席したことがないので、礼儀作法に不安があるのだが、それでも歓談となって早々に外の空気を吸いに行くのは不味いだろうという考えくらいはある。とりあえず食事を持ってこようかと周りの様子を伺うと、ほとんどの人達は美味しそうな料理に一切手をつけずに、飲み物を片手に近くの人と談笑していた。

勿体ないと思いつつも、この場は歓迎のパーティーであると同時に外交の場でもあるので、食事よりも人脈を広げる事を優先するのが当たり前なのだろう。特に今回のパーティーの主催者の一人でもある王族のキャンベル殿下の元には、次々と色々な人が話し掛けに行っているし、当然主賓である各国の王女殿下達の元にもクルセイダー、文官を問わずに人垣が出来ているような状況だ。
僕はそんな状況を横目に、普段食べられないような豪勢な料理を取りに行き、隅っこの方で気配を消すようにしながら食事を堪能することにした。


 歓談の時間が1時間も過ぎる頃、ようやく主賓である王女達を標的にした挨拶攻撃も終わりを迎えたようで、人垣はほとんど消えていた。招待された人達からは、今度は何やら周りと情報交換をしているような話が漏れ聞こえてきて、パーティーって大変なんだなと他人事のように感じていた。
既に僕はお腹も膨れ、食後の紅茶を嗜みながらパーティーの終わりをのんびりと待っているのだが、そんな僕に向かって複数の視線が投げ掛けられた。

(・・・これは、僕も挨拶に伺った方が良いのかな?)

視線の主は、今日の主賓たる各国の王女達からだ。何となくその表情から、「どうして挨拶に来ないの?」と非難されているような気もするが、いくら留学期間中の案内役とはいえ、身分も肩書きもない僕が、こんな公の場で各国の王族相手に挨拶をしていいものか判断に困ってしまう。

(挨拶に行く方が失礼なのか、行かない方が失礼なのか・・・事前に聞いておけばよかった・・・)

今さら考えても仕方のないことだが、僕は動けずにしばらくその場に固まってしまった。そんな僕を見かねてか、パピル様が頬を膨らませながら手招きをしているのが見えた。一応本当に僕に手招きしているのか周りを確認するが、僕の周りの人達は近くの人との話に夢中になっているようで、どうやら僕に向かって手招きしている事に間違いないようだった。
恐る恐るといった感じで、主賓の王女殿下達の元へ歩み寄っていくと、腰に手を当てたパピル様が少し不機嫌を感じさせる声音で口を開いた。

「もう~、パピル達の案内役でもあるジルジルが挨拶しに来ないってどういうこと~!?」
「す、すみません。こういった国の有力者の方々だらけの場は初めての事でして、僕のように立場も肩書もない存在が、殿下達に挨拶するのもおこがましいような気がして・・・」

パピル様の詰問に正直に答えると、レイラ殿下が間に入って執り成してくれる。

「まぁまぁ。本来このような公式の場では、独身の男性が居ること自体珍しいですわ。ジールも初めてのことで、勝手が分からなかったのでしょう。そう目くじらを立てるものではありませんわ」
「別にパピルは怒ってないもん。ただ、1時間以上も挨拶で作り笑顔を浮かべてるから、表情筋が大変なんだよ」

作り笑顔をしていたと臆面もなくパピル様が言うので、誰か聞いてないかとヒヤヒヤしてしまうが、それ自体普通の事なのだろう、他の殿下達も苦笑いを浮かべるだけで咎めようとはしていなかった。

「ジールさんは随分食事を堪能していたようなのですが、何か美味しい料理はあったのです?」

ルピス様が話題を変えるように、僕が食べていた料理について質問してきたので、美味しかった料理を思い出す。

「そうですね・・・カウディザスターの霜降り肉を軽く炙った料理なのですが、柑橘系のソースと合わせた品が絶品でしたね」
「そうなのですね。是非ボクも食べてみたいので、その料理が置かれている所へ案内して欲しいのです」

僕の言葉に、ルピス様が笑みを浮かべて案内を希望するので、料理の場所を思い出しながら口を開いた。

「勿論良いですよ。ではーーー」
「「ちょっと待ちなさい!!」」

ルピス様を案内しようと身体を反転させようとした瞬間、僕の言葉を遮るようにレイラ様とパピル様が異口同音に叫んだ。訳の分からない僕は、驚きも露わに、呼び止められたことに疑問を呈した。

「えっと・・・どうされました?」
わたくしも行きますわ」
「パピルも一緒に行く~」
「わ、分かりました」

2人も一緒についてくるということだったので、僕はその場で一人残っているジェシカ様に視線を向けた。

「あ・・・オレは・・・その・・・」
「???」

ジェシカ様はサッと顔を逸し、俯きながら小声で何かを呟いている。その態度に、部屋に迎えに行った時から妙な言動をしている事を思い出し、怪訝に思ってしまう。それについて聞いて良いものかどうか思案していると、そんなジェシカ様を押しのけるように、キャンベル様が顔を覗かせてきた。

「ジール君!私も少しお腹に入れておきたいんだけど?」

僕達の会話を聞いていたようで、断られるわけがないと確信している表情で話し掛けてきた。

「わ、分かりました。それではこちらに居る皆さんで行きましょうか」
「あ・・・う・・・」

僕がそう言うと、ジェシカ様があからさまに焦ったような表情を浮かべていた。おそらくジェシカ様も一緒に行きたいのだろうと考え、もう一度、今度は確認するように聞くのではなく、既に決まっているように話し掛けた。

「ジェシカ殿下も行きましょう。みんなで食事をするのは楽しいと思いますよ」
「・・・うん。行く」

妙にしおらしい態度のジェシカ様に困惑しつつも、僕は5人の王女殿下達を引き連れて食事を取りに移動した。
ビュッフェ形式の食事を僕が取り分けると、皆さん笑みを溢しながら料理に舌鼓をうっていた。皆さんは、僕や周りの王女達と談笑をして楽しんでいるようなのだが、何となく王女殿下同士で談笑する時には、棘のあるような雰囲気が感じられる。
気のせいだとは思うのだが、何だかこれからについて不安を感じてしまう様子だったので、何事も無いことを祈るばかりだ。

そんな状況でジェシカ様だけは、王女殿下達の輪を少し外れて、一人で食事をしていた。ただ、その視線はチラチラと僕の方へ向けられているよなのだが、視線を合わせようとするとそっぽを向かれてしまうので、何も出来ずにお手上げ状態だった。
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