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留学編
再会 7
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このドーラル王国の地に、ガーランド王国、エレメント王国、リーグラント王国、ダイス王国の4カ国の王女殿下が留学に訪れてから、早くも2週間が過ぎようとしていた。
ジェシカ様の言動の変化に思うところはあれど、僕としてはどうして良いか分からないこともあり、言い方は悪いが一先ずは放置させてもらった。というか、今の大人しいジェシカ様の方が、様々な面で有利に働いているのだ。
王国の中枢たる議会に見学に行く際も、次世代を担うクルセイダー養成学園を視察する際にも、以前のジェシカ様の性格なら、思ったことをそのまま口に出すなり、手を出すなりしているはずなのだが、そういったことは一切せずに静かに様子を見守っていたのだ。
時折り案内する僕の方を盗み見るような熱の籠った視線は感じるのだが、それにさえ目を瞑れば、ジェシカ様は客観的にもまごうことなき王女殿下の佇まいをしているようだった。
そうして今日は、市場調査という名の休息日だ。さすがに毎日のように政治的な意味合いの強い視察や会食では疲れてしまうということもあり、丸一日自由に王都を探索できるようにと取り計らったのだ。
勿論、案内役である僕とキャンベル様は、王女達と共に同行する。事前に王都のどんな場所に行きたいかの聞き取りをしており、それに基づいた観光計画書のようなものを手渡され、今日のために熟読してきている。
正直、僕は今まで王都の観光などしたことがなく、自宅とクルセイダー養成学園や駐屯地の往復しか地理は分からない。
(ええと、今日持たされた100万ルドで観光しないといけないから、あまり無駄遣いはしないように注意しなきゃ!)
僕は渡された財布に入っている札束を確認して、また懐に戻した。3級国民の一般的な平均月収は20万ルドと言われている中で、たった一日でその3倍以上のお金を遣うことは考え難いが、なにせ僕が案内するのは各国の王女殿下達なのだ。当然案内する予定のお店は、どこも超が付く一流店なので、使用する金額も桁が1つ違ってくる。
こんな大金を持ったことがない僕は、落としたらどうしようという不安が拭えずに、先程から何度も懐を確認してしまう始末だ。
「ジール君、ちょっとは落ち着きなさい。その程度の金額を失くしたところで、何も言われないわよ」
ソワソワしている僕の肩に手を置き、落ち着くように促してくるのは、隣に座っているキャンベル様だ。今は観光名所に向けて車での移動中で、この車には他にレイラ様、ルピス様、パピル様、ジェシカ様が同乗している。ちなみに従者の皆さんは、別の車で後ろから付いてきている。
車内は8人乗りで、運転席と助手席の他に2席づつの3列シートになっている。最初僕は助手席に乗ろうとしたのだが、何故か王女達が猛反対し、席順について一悶着があった。その様子に、そう長い時間移動するわけではないので、席順くらいどこでも良いのではと思っていたが、それを口に出せるほど僕の神経は図太くなかった。
結局僕とキャンベル様、パピル様とルピス様、そしてジェシカ様が最後尾で一人という席順となったのだった。
「す、すみません。こんな大金持ったことがなくて・・・というか、失くしたら絶対激怒されますよ!」
大した金額じゃないというジェシカ様だが、それは彼女が王族だから言えることだろう。僕もクルセイダーとして給与は貰ってはいるが、月に5万程度だ。まだ未成年ということもあり、害獣駆除の最前線に立つことはなく、基本的に駐屯地で鍛錬の毎日なのでこの月給なのだ。
リーグラント王国やダイス王国にお呼ばれされたような例外的な事がない限りは、危険な場所に派遣されることは無いはずだった。無いはずだったのに、今回の留学に際しての案内の中には、害獣討伐の現場視察も含まれている。僕ももう17歳になるし、安全な場所で訓練をするだけではなく、クルセイダーとしての責務の為の活動も増えてくるだろう。
「まぁ、そんなに重く考えないの。今日は折角の休息・・じゃなくて、市場視察なんだし、少しは楽しんでいきましょう!」
「は、はぁ。善処します」
キャンベル様と少し談笑している内に、車は目的地へと到着した。
「ここがドーラル王国の宝飾店ですか。一度来てみたいと思っておりました」
「確かに、人族の加工する宝飾品は、繊細で精巧に出来ているから、ウチの国でも人気なのよね~」
車から降りると、そこはドーラル王国で一番の人気を誇っている”ジュエリー”という店名の宝飾店だった。王都の本店というだけあって店舗は大きく、看板には分かり易く綺麗な宝石の絵が描かれていた。
そんな店舗の正面で、看板を見上げながらレイラ様とパピル様がこの店の他国での評判を口にしていた。男性である僕には縁のないお店なので、ちょっと前までは全く知らなかったが、案内の為に知識を詰め込んだので、簡単な説明くらいは出来るようになった。
「仰る通り、この店は国内外からの人気も高く、女性を更に美しく飾るための宝飾品で溢れていますので、是非楽しんで下さい」
僕がお店の方を向きながらそう伝えると、ルピス様が歩み寄ってきて、耳打ちしてきた。
「ジールさん。聞けば、婚約指輪をここで購入すると、2人は一生幸せに暮らせると聞いたですが、それは本当なのです?」
「えっ?そうなんですか?えっと・・・すいません。不勉強で、そういったお話は―――」
「本当ですよ、ルピス殿下。巷では、ここの指輪はある種のお守りのような存在として語られていますね」
事前学習の知識になかった質問に困惑していると、近くに居たキャンベル様が助け舟を出してくれた。
「やっぱり本当なのですね!」
「へ~。じゃあせっかく来たんだから、今の内に買っておこうかな~。近々必要になるかもしれないし~」
キャンベル様の言葉にルピス様は満面の笑みを浮かべつつ、尻尾を忙しなく左右に動かしていた。そして、パピル様は笑みを浮かべながらとんでもない事を言い出した。
「えぇ?パピル様はご婚約が決まりそうなんですか?」
「そうね~。まだどうなるか分からないけど、そうなれば嬉しいと思ってるよ~」
「そうなんですね。きっとパピル様のようなお綺麗な方であれば、相手の方もお喜びに―――」
「ジール君?他国の婚姻事情にあまり首を突っ込んではダメですよ?下手をすれば内政干渉になりますから」
僕がパピル様をお祝いしようとすると、キャンベル様が僕の肩を力強く掴み、凄みのある笑みを浮かべてきた。不機嫌にさせてしまったのは、きっと僕がキャンベル様の言う通り、外交上問題のある発言をしてしまったせいなのだろう。
「す、すみま―――」
「え~、全然構わないよ~。この程度で内政干渉なんてならないよ~。それにパピルのこと、綺麗で大好きってジルジルに言ってもらえて嬉しかったし~」
「大好きとは言ってませんでしたわね。どうも憧れのお店に来て、パピル殿下は少し興奮しているようですわ」
自分でも一瞬、そんなことをパピル様に言っていたのかと疑問に思ったが、間髪入れずにレイラ様が冷たい笑みを浮かべて発言を訂正していた。
「え~。でも、意味としてはそういうことだったと思うけどな~」
「まぁ!パピル殿下ったら、拡大解釈も過ぎるのではないですか?」
尚も僕の発言について、キャンベル様が応戦するような口調でパピル様を咎めていた。一応皆さんは笑みを浮かべながら話しているのだが、端から見れば全く和やかな雰囲気には思えず、ともすればそこには見えない刃で戦っているような印象を抱いてしまうほどだった。
別の車で移動してきた従者の人達が合流してきたのだが、今の状況に困惑しており、どう声を掛けていいのか分からないといった様子でオロオロとしていた。かく言う僕も、自分の発言が原因でこんな状態になっているにもかかわらず、何も言えずに見守ることしかできない。
そんな直立不動で固まっている僕の服の裾をクイクイと引っ張られ、そちらに視線を向けると、いつの間にかルピス様がそこにいた。
「ジールさん。何だか醜い言い争いが続きそうなので、先にお店に入ってしまいましょう」
「え?さすがにそれは・・・」
「良いのです。良いのです」
ルピス様の言葉に苦笑いを浮かべるが、本人は全く気にすることなく僕の服を引っ張ってお店に入ろうと移動してしまうので、それに付いていく格好になってしまった。そんな僕達に、ジェシカ様も静かに後を付いてくる姿が目に映った。そんなジェシカ様は、楽しさを押し隠すような表情をしており、どうやら意外にもこういったお店が好きなようだった。
「「「あ~!!」」」
僕達の行動に気づいたようで、レイラ様とキャンベル様、パピル様がこちらを見ながら大きな声を上げてきた。
「ささっ!ジールさん。うるさいのが来る前に行っちゃうのです!」
後ろからの3人の声に、ルピス様は悪戯っぽい笑みを浮かべて先を急かしてきたのだった。
結局宝飾店では、都合2時間ほど滞在することになった。以前母さんから、「女性は光り物と洋服を見定めるのに時間は惜しまないものよ」と言われたことがあったが、この日初めてその言葉の意味を理解した気がした。
皆さんは2階建てのこのお店の商品を、隅から隅まで見たのではないかと言うほど物色し、気に入ったものがあれば店員さんから説明を受けていた。しかも、気に入った商品は何度も繰り返し見ているようで、同じ場所をグルグル回るようにして吟味している。
キャンベル様の発言から、王女なのだからお金を気にせず気に入ったものは何でもかんでも購入するかと思ったのだが、実際にはそういった散財はされないようだ。ただ、ようやく終盤に差し掛かってきた時に、殿下達から代わる代わる僕の指のサイズを聞かれた時は、少しだけ嫌な予感がしたが、拒否するわけにもいかず、近くの店員さんに測ってもらった。
意外にもその後は特に何も起こらず、殿下達もお店を手ぶらで出ていた。後から聞いた話によると、どうも殿下達は全員オーダーメイドで注文していたらしく、後日滞在先の王城に配達されると言うことだった。お会計については、今回持たされていた100万ルドとは別口にするということで、一番使いそうな場所でお金を出すことはなかった。
その後、昼食には王家御用達の高級レストランに行き、今までの人生で見たことも食べたこともない美しい料理を堪能したり、王都の中央公園を散策したりと、日が暮れるまで観光を楽しんでいた。ちなみに、渡された100万ルドは、結局ほとんど残ることとなり、僕は安堵の息を吐いていたのはまた別の話だ。
そうしていよいよ来週からは、害獣駆除の実地視察へと向かうことになる。
ジェシカ様の言動の変化に思うところはあれど、僕としてはどうして良いか分からないこともあり、言い方は悪いが一先ずは放置させてもらった。というか、今の大人しいジェシカ様の方が、様々な面で有利に働いているのだ。
王国の中枢たる議会に見学に行く際も、次世代を担うクルセイダー養成学園を視察する際にも、以前のジェシカ様の性格なら、思ったことをそのまま口に出すなり、手を出すなりしているはずなのだが、そういったことは一切せずに静かに様子を見守っていたのだ。
時折り案内する僕の方を盗み見るような熱の籠った視線は感じるのだが、それにさえ目を瞑れば、ジェシカ様は客観的にもまごうことなき王女殿下の佇まいをしているようだった。
そうして今日は、市場調査という名の休息日だ。さすがに毎日のように政治的な意味合いの強い視察や会食では疲れてしまうということもあり、丸一日自由に王都を探索できるようにと取り計らったのだ。
勿論、案内役である僕とキャンベル様は、王女達と共に同行する。事前に王都のどんな場所に行きたいかの聞き取りをしており、それに基づいた観光計画書のようなものを手渡され、今日のために熟読してきている。
正直、僕は今まで王都の観光などしたことがなく、自宅とクルセイダー養成学園や駐屯地の往復しか地理は分からない。
(ええと、今日持たされた100万ルドで観光しないといけないから、あまり無駄遣いはしないように注意しなきゃ!)
僕は渡された財布に入っている札束を確認して、また懐に戻した。3級国民の一般的な平均月収は20万ルドと言われている中で、たった一日でその3倍以上のお金を遣うことは考え難いが、なにせ僕が案内するのは各国の王女殿下達なのだ。当然案内する予定のお店は、どこも超が付く一流店なので、使用する金額も桁が1つ違ってくる。
こんな大金を持ったことがない僕は、落としたらどうしようという不安が拭えずに、先程から何度も懐を確認してしまう始末だ。
「ジール君、ちょっとは落ち着きなさい。その程度の金額を失くしたところで、何も言われないわよ」
ソワソワしている僕の肩に手を置き、落ち着くように促してくるのは、隣に座っているキャンベル様だ。今は観光名所に向けて車での移動中で、この車には他にレイラ様、ルピス様、パピル様、ジェシカ様が同乗している。ちなみに従者の皆さんは、別の車で後ろから付いてきている。
車内は8人乗りで、運転席と助手席の他に2席づつの3列シートになっている。最初僕は助手席に乗ろうとしたのだが、何故か王女達が猛反対し、席順について一悶着があった。その様子に、そう長い時間移動するわけではないので、席順くらいどこでも良いのではと思っていたが、それを口に出せるほど僕の神経は図太くなかった。
結局僕とキャンベル様、パピル様とルピス様、そしてジェシカ様が最後尾で一人という席順となったのだった。
「す、すみません。こんな大金持ったことがなくて・・・というか、失くしたら絶対激怒されますよ!」
大した金額じゃないというジェシカ様だが、それは彼女が王族だから言えることだろう。僕もクルセイダーとして給与は貰ってはいるが、月に5万程度だ。まだ未成年ということもあり、害獣駆除の最前線に立つことはなく、基本的に駐屯地で鍛錬の毎日なのでこの月給なのだ。
リーグラント王国やダイス王国にお呼ばれされたような例外的な事がない限りは、危険な場所に派遣されることは無いはずだった。無いはずだったのに、今回の留学に際しての案内の中には、害獣討伐の現場視察も含まれている。僕ももう17歳になるし、安全な場所で訓練をするだけではなく、クルセイダーとしての責務の為の活動も増えてくるだろう。
「まぁ、そんなに重く考えないの。今日は折角の休息・・じゃなくて、市場視察なんだし、少しは楽しんでいきましょう!」
「は、はぁ。善処します」
キャンベル様と少し談笑している内に、車は目的地へと到着した。
「ここがドーラル王国の宝飾店ですか。一度来てみたいと思っておりました」
「確かに、人族の加工する宝飾品は、繊細で精巧に出来ているから、ウチの国でも人気なのよね~」
車から降りると、そこはドーラル王国で一番の人気を誇っている”ジュエリー”という店名の宝飾店だった。王都の本店というだけあって店舗は大きく、看板には分かり易く綺麗な宝石の絵が描かれていた。
そんな店舗の正面で、看板を見上げながらレイラ様とパピル様がこの店の他国での評判を口にしていた。男性である僕には縁のないお店なので、ちょっと前までは全く知らなかったが、案内の為に知識を詰め込んだので、簡単な説明くらいは出来るようになった。
「仰る通り、この店は国内外からの人気も高く、女性を更に美しく飾るための宝飾品で溢れていますので、是非楽しんで下さい」
僕がお店の方を向きながらそう伝えると、ルピス様が歩み寄ってきて、耳打ちしてきた。
「ジールさん。聞けば、婚約指輪をここで購入すると、2人は一生幸せに暮らせると聞いたですが、それは本当なのです?」
「えっ?そうなんですか?えっと・・・すいません。不勉強で、そういったお話は―――」
「本当ですよ、ルピス殿下。巷では、ここの指輪はある種のお守りのような存在として語られていますね」
事前学習の知識になかった質問に困惑していると、近くに居たキャンベル様が助け舟を出してくれた。
「やっぱり本当なのですね!」
「へ~。じゃあせっかく来たんだから、今の内に買っておこうかな~。近々必要になるかもしれないし~」
キャンベル様の言葉にルピス様は満面の笑みを浮かべつつ、尻尾を忙しなく左右に動かしていた。そして、パピル様は笑みを浮かべながらとんでもない事を言い出した。
「えぇ?パピル様はご婚約が決まりそうなんですか?」
「そうね~。まだどうなるか分からないけど、そうなれば嬉しいと思ってるよ~」
「そうなんですね。きっとパピル様のようなお綺麗な方であれば、相手の方もお喜びに―――」
「ジール君?他国の婚姻事情にあまり首を突っ込んではダメですよ?下手をすれば内政干渉になりますから」
僕がパピル様をお祝いしようとすると、キャンベル様が僕の肩を力強く掴み、凄みのある笑みを浮かべてきた。不機嫌にさせてしまったのは、きっと僕がキャンベル様の言う通り、外交上問題のある発言をしてしまったせいなのだろう。
「す、すみま―――」
「え~、全然構わないよ~。この程度で内政干渉なんてならないよ~。それにパピルのこと、綺麗で大好きってジルジルに言ってもらえて嬉しかったし~」
「大好きとは言ってませんでしたわね。どうも憧れのお店に来て、パピル殿下は少し興奮しているようですわ」
自分でも一瞬、そんなことをパピル様に言っていたのかと疑問に思ったが、間髪入れずにレイラ様が冷たい笑みを浮かべて発言を訂正していた。
「え~。でも、意味としてはそういうことだったと思うけどな~」
「まぁ!パピル殿下ったら、拡大解釈も過ぎるのではないですか?」
尚も僕の発言について、キャンベル様が応戦するような口調でパピル様を咎めていた。一応皆さんは笑みを浮かべながら話しているのだが、端から見れば全く和やかな雰囲気には思えず、ともすればそこには見えない刃で戦っているような印象を抱いてしまうほどだった。
別の車で移動してきた従者の人達が合流してきたのだが、今の状況に困惑しており、どう声を掛けていいのか分からないといった様子でオロオロとしていた。かく言う僕も、自分の発言が原因でこんな状態になっているにもかかわらず、何も言えずに見守ることしかできない。
そんな直立不動で固まっている僕の服の裾をクイクイと引っ張られ、そちらに視線を向けると、いつの間にかルピス様がそこにいた。
「ジールさん。何だか醜い言い争いが続きそうなので、先にお店に入ってしまいましょう」
「え?さすがにそれは・・・」
「良いのです。良いのです」
ルピス様の言葉に苦笑いを浮かべるが、本人は全く気にすることなく僕の服を引っ張ってお店に入ろうと移動してしまうので、それに付いていく格好になってしまった。そんな僕達に、ジェシカ様も静かに後を付いてくる姿が目に映った。そんなジェシカ様は、楽しさを押し隠すような表情をしており、どうやら意外にもこういったお店が好きなようだった。
「「「あ~!!」」」
僕達の行動に気づいたようで、レイラ様とキャンベル様、パピル様がこちらを見ながら大きな声を上げてきた。
「ささっ!ジールさん。うるさいのが来る前に行っちゃうのです!」
後ろからの3人の声に、ルピス様は悪戯っぽい笑みを浮かべて先を急かしてきたのだった。
結局宝飾店では、都合2時間ほど滞在することになった。以前母さんから、「女性は光り物と洋服を見定めるのに時間は惜しまないものよ」と言われたことがあったが、この日初めてその言葉の意味を理解した気がした。
皆さんは2階建てのこのお店の商品を、隅から隅まで見たのではないかと言うほど物色し、気に入ったものがあれば店員さんから説明を受けていた。しかも、気に入った商品は何度も繰り返し見ているようで、同じ場所をグルグル回るようにして吟味している。
キャンベル様の発言から、王女なのだからお金を気にせず気に入ったものは何でもかんでも購入するかと思ったのだが、実際にはそういった散財はされないようだ。ただ、ようやく終盤に差し掛かってきた時に、殿下達から代わる代わる僕の指のサイズを聞かれた時は、少しだけ嫌な予感がしたが、拒否するわけにもいかず、近くの店員さんに測ってもらった。
意外にもその後は特に何も起こらず、殿下達もお店を手ぶらで出ていた。後から聞いた話によると、どうも殿下達は全員オーダーメイドで注文していたらしく、後日滞在先の王城に配達されると言うことだった。お会計については、今回持たされていた100万ルドとは別口にするということで、一番使いそうな場所でお金を出すことはなかった。
その後、昼食には王家御用達の高級レストランに行き、今までの人生で見たことも食べたこともない美しい料理を堪能したり、王都の中央公園を散策したりと、日が暮れるまで観光を楽しんでいた。ちなみに、渡された100万ルドは、結局ほとんど残ることとなり、僕は安堵の息を吐いていたのはまた別の話だ。
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