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留学編
実地視察 1
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「そろそろ到着です!」
各国の王女殿下達の留学から半月が過ぎ、今日から2週間程の期間を使って、我が国の害獣対策を確認していただく実地視察となる。場所はドーラル王国でも激戦地と名高い、南方にある平原だ。どんな原理が働いているかは不明なのだが、大陸中央にある夢幻大地から離れれば離れるほどに害獣の生息数が増えている。
その為、この南方の領地には街などは存在せず、クルセイダーの駐留場所となる砦が数キロ毎に築かれている。それと同時に、この南方の地はドーラル王国最大の食料調達地でもあるのだ。
今回の視察は、最初の数日は砦の運用についての案内や、討伐した害獣を食肉に加工している工場の案内となる。その後、殿下達にも実際の害獣討伐の現場に視察してもらうことになる。他国から見れば、ドーラル王国の運用ノウハウの中から自国に転化できるものが見つかれば御の字なのだろうし、ドーラル王国にとってみても、今回の留学受け入れそのものに対して既に見返りを享受しているという話を聞くので、互いに利益あっての視察なのだ。
王都から飛空挺で約1日、夕日が沈む方向に、この南方で一番大きな砦が見えてくると、僕は殿下達に声をかけた。
「ジール。到着してからの予定を確認してもよろしいかしら?」
僕の言葉に、レイラ様が質問を投げ掛けてきた。一応事前に全体の予定は周知されているはずだが、改めて確認しておきたいという事なのだろう。さすがは龍人族の王女殿下だ。きっと責任感が人一倍強いのだろう。
「はい。本日は移動の疲れも考えて、到着後に簡単な砦の案内をさせていただき、その後は夕食を摂った後にお休みください。本格的な視察は明日以降となります」
「なるほど。では、夕食後は言ってみれば自由時間ということなのですね?」
僕の説明を聞いたレイラ様は、微笑みを浮かべながら確認するように僕に問いかけてきた。
「え、ええ、そうとも言えますね。とはいえ、一応軍事拠点でもありますので、あまり気軽に出歩かれても困ってしまいますが・・・」
「あら、じゃあ夜風に当たりに行くにはジールのエスコートが必要というわけね。案内をお願いいたしますわ」
レイラ様の質問に苦笑いを浮かべながら返答した僕に、思わぬお願いが舞い込んできてしまった。ただ、案内役である以上断ることは出来ないので、僕としてはその言葉に頷くしかない。
「わ、分かりました。夕食後、案内させていただきーーー」
「「「待ちなさい!!!」」」
どこかで見たことがあるようなやり取りに内心頭を抱えるが、会話に割って入ってきた王女達の方へと顔を向ける
「えっと、どうされました?」
「ちょうど私も夕涼みをしたいと思っていたし、ジール君に案内させても良いんだけど?」
「ボクも部屋にじっと籠っているより、寝る前に少し散歩したいのです」
「せっかくなら挨拶で言ったように、ジルジルと友好を深めたいんだけどな~」
「あ・・・オ、オレも・・・」
キャンベル様を皮切りに、ルピス様、パピル様、そしてジェシカ様までもが案内をお願いしてきた。ジェシカ様については、ここ最近で久しぶりに声を聞いたような気がする。
「わ、分かりました。それでは皆さん一緒にーーー」
「え~!パピルはジルジルと2人っきりが良いんだけどなぁ~」
パピル様は甘えるような声音で、熱の籠った視線を僕に向けてくるが、その言動に何となく本能的に警戒を強めてしまう。とはいえ、やはり拒否は出来ないこともあり、他の王女達の反応を見ながら答えを模索していると、話の発端を作ったレイラ様が口を開いた。
「ではどうでしょう?皆さん時間をずらしてジールにエスコートしてもらうというのは?」
名案でしょ、とでも言うようなレイラ様の発言に、他の王女達の目が輝いた気がした。
「私はそれで構いません」
「ボクもそれでいいです」
「パピルも~」
「オ、オレも・・・」
そして結局、一人約20分という時間で皆さんを個別にエスコートするということで話は纏まった。ちなみに順番はクジを引いて決め、最初はルピス様、次にレイラ様、パピル様、キャンベル様、そして最後がジェシカ様となった。
順番が決まった頃には南方砦の飛空場に到着し、皆さんは期待に目を輝かせながら飛空挺を降りていた。その期待の目は、これから視察する他国の害獣対策の現場を直接その目でみれるからか、あるいは・・・
僕はちょっとだけ憂鬱な気持ちになりながらも、それを悟られないように笑顔で隠し、皆さんを砦に案内するのだった。
「ようこそお越しくださいました、王女殿下の皆様。私がこの砦の責任者である序列15位、サキナ・エドナーです」
砦に到着すると、サポーターの方が僕らを先導して指令室へと案内してくれた。さすがに王城に到着した時のような歓迎はない。ここは害獣討伐の最前線なのだ。他国の王女達の対応よりも、自国の利益のために害獣を討伐することを最優先とするのが当たり前だ。当然そんな事情は王女達も理解しているので、指令室でエドナー司令官一人での出迎えにも不満を感じているような方は居なかった。
妙齢のエドナー司令官は、肩まで伸びる黒髪を大きめな三つ編みで纏めており、フレームの細い銀色の眼鏡を掛けている。整った顔立ちだが、細かいことに厳しそうな印象を抱かせる顔をしている。
「お出迎えご苦労様です。視察団を代表して感謝します」
そんなエドガー司令官に対して、さすがに各国の王女が一人ずつ感謝の言葉を述べるような時間は無いので、キャンベル様が代表して感謝の言葉を伝えていた。
「勿体ないお言葉です。では早速ですが、これからの事を簡単にご説明します。皆様にはこの後、各人に割り振られた部屋へと移動していただき、移動の疲れを癒していただければと思います。ただ、何ぶん害獣討伐を主とするための砦ですので、王女殿下達のような王族の方に相応しい部屋かと言われると・・・」
「エドナー司令官、それは我々も承知の上です。どうかご心配なさらないで下さい」
申し訳ない表情を浮かべながら、部屋の質について言葉を濁すエドナー司令官に対して、キャンベル様は全て理解していると諌めた。
「ありがとうございます。翌日からは砦の施設の見学をしていただき、その後、実際に害獣討伐にも視察の為に同行していただくことになりますが、よろしいでしょうか?」
「はい。全て聞き及んでおりますので問題ありません」
「畏まりました。ジール、この砦の見取り図は頭に入っているな?」
キャンベル様とのやり取りを終えたようで、司令官は後ろに控える僕に視線を向けながら確認してきた。
「はい。事前に確認しております」
「よろしい。ではこれより、ジールが王女殿下達を部屋へと案内せよ。その後、君に指示すべきことがあるから、この指令室まで来るように。いいな?」
「了解しました、エドナー指令官」
そうして僕達は指令室を退出すると、王女達を各部屋に案内した。後程夕食の案内に来ることを伝え、僕は先程呼び出しを受けていた指令室へと戻ったのだった。
「ジール・シュライザー。女王陛下から君宛の書簡を預かっている。確認してくれ」
指令室に戻ると、真剣な表情を浮かべたエドナー司令官が、座っている執務机の引き出しから一通の封書を取り出して僕に手渡してきた。机を挟んで姿勢を正していた僕は、差出人の相手が女王陛下であるという言葉に目を見開きつつも、一歩前に出てその封書を受け取り、確認のために封を開いた。
「・・・・・・エドナー司令官。この書簡の内容は、決定事項なのでしょうか?」
僕は中に書かれていた数行の文章を一読すると、何かの間違いであって欲しいという確認の意味を込めて、エドナー司令官に聞いた。
「君も嬉しかろう?あの殿下達は誰もが見目麗しく、それぞれ違った魅力の持ち主達だ。まぁ、その中に我が国の第三王女殿下が含まれている事をよく思わない者も居るにはいるがな」
「そ、それは大変光栄なお話かと存じますが・・・さすがに、当人である殿下達は納得されないのではないでしょうか?」
エドナー司令官の言葉に内心ムッとしながらも、別の角度から断れないか試みた。
「問題ないのではないか?確かに今回の命令は特例中の特例だが、彼女達は皆王族だ。有能な血を引き込むための手段として理解されるだろう。そもそも王族は多夫一妻だから、君は夫の一人になるに過ぎん。その内の一人が、他の女性と共有してる程度の認識ではないか?」
「し、しかし・・・」
なおも言い募ろうとする僕に対して、エドナー司令官は厳しい表情を向けながら苦言を呈してくる。
「ジール。昔から一人の男性を巡っての争いは、無いわけではない。外見的に気に入ったり、有能な男性を奪い合ったりは、特に高位の身分の者達の間では一般的だ。今回の命令は、それを回避するための手段とも考えられる」
「・・・・・・」
僕はエドナー司令官の話を、表情を変えずに黙って聞いていた。端から聞けば、多くの女性から特定の男性が必要とされているような話なのだが、それをそのまま受け入れられないのは、あくまでも選ぶ主体は女性側であって、男性にはその権利すらないという事だ。
「とにかく、この話は各国の為政者間では既に了解の取られた話らしい。精々3ヶ月の留学期間を上手く使って、あの王女殿下達に取り入るんだな。多少はしたないかもしれんが、順番に夜這いでも掛けたら良いんじゃないか?」
「いえ、さすがにそれは不敬が過ぎるかと・・・下手をすれば国際問題に発展しかねません」
「私はその程度大丈夫だと思うがね。まぁ、これも男性である君の仕事のうちだ。頑張りたまえ」
「・・・了解しました」
ニヤニヤとした笑みを浮かべるエドナー司令官に対して、力無い返答をするので精一杯だった。そうして拒否権のない指令に、僕は俯きながら指令室を後にした。各国の為政者の人達がどんな思惑があって今回の命令になったのか分からないが、どの女王陛下も我が子に対してそんな対応で良いのかと疑問を浮かべてしまう。
(はぁ・・・どうすれば良いんだ・・・僕は女性恐怖症なんだぞ・・・)
廊下を歩きながら、僕は途方に暮れていた。その右手には、先程受け取った陛下からの封書を握りしめている。そこにはこう書かれていたのだ。
~命令書~
貴殿、ジール・シュナイザーに以下の命令を遂行するよう厳命する。
留学が終わる7月までの期間に、各国の王女殿下と恋仲になること。例外は無く、我が国の第三王女もその中に含む。
また、恋仲と判断する具体的な基準は、肉体関係で結ばれていれば最良だが、キスの段階でも可とする。
最終的に貴殿には、我が国を含む各国の王女殿下達と婚姻を結んでもらい、5カ国間の友好関係強化の架け橋になってもらう。
健闘を祈る。 以上
ドーラル王国女王 クレス・ドーラル
各国の王女殿下達の留学から半月が過ぎ、今日から2週間程の期間を使って、我が国の害獣対策を確認していただく実地視察となる。場所はドーラル王国でも激戦地と名高い、南方にある平原だ。どんな原理が働いているかは不明なのだが、大陸中央にある夢幻大地から離れれば離れるほどに害獣の生息数が増えている。
その為、この南方の領地には街などは存在せず、クルセイダーの駐留場所となる砦が数キロ毎に築かれている。それと同時に、この南方の地はドーラル王国最大の食料調達地でもあるのだ。
今回の視察は、最初の数日は砦の運用についての案内や、討伐した害獣を食肉に加工している工場の案内となる。その後、殿下達にも実際の害獣討伐の現場に視察してもらうことになる。他国から見れば、ドーラル王国の運用ノウハウの中から自国に転化できるものが見つかれば御の字なのだろうし、ドーラル王国にとってみても、今回の留学受け入れそのものに対して既に見返りを享受しているという話を聞くので、互いに利益あっての視察なのだ。
王都から飛空挺で約1日、夕日が沈む方向に、この南方で一番大きな砦が見えてくると、僕は殿下達に声をかけた。
「ジール。到着してからの予定を確認してもよろしいかしら?」
僕の言葉に、レイラ様が質問を投げ掛けてきた。一応事前に全体の予定は周知されているはずだが、改めて確認しておきたいという事なのだろう。さすがは龍人族の王女殿下だ。きっと責任感が人一倍強いのだろう。
「はい。本日は移動の疲れも考えて、到着後に簡単な砦の案内をさせていただき、その後は夕食を摂った後にお休みください。本格的な視察は明日以降となります」
「なるほど。では、夕食後は言ってみれば自由時間ということなのですね?」
僕の説明を聞いたレイラ様は、微笑みを浮かべながら確認するように僕に問いかけてきた。
「え、ええ、そうとも言えますね。とはいえ、一応軍事拠点でもありますので、あまり気軽に出歩かれても困ってしまいますが・・・」
「あら、じゃあ夜風に当たりに行くにはジールのエスコートが必要というわけね。案内をお願いいたしますわ」
レイラ様の質問に苦笑いを浮かべながら返答した僕に、思わぬお願いが舞い込んできてしまった。ただ、案内役である以上断ることは出来ないので、僕としてはその言葉に頷くしかない。
「わ、分かりました。夕食後、案内させていただきーーー」
「「「待ちなさい!!!」」」
どこかで見たことがあるようなやり取りに内心頭を抱えるが、会話に割って入ってきた王女達の方へと顔を向ける
「えっと、どうされました?」
「ちょうど私も夕涼みをしたいと思っていたし、ジール君に案内させても良いんだけど?」
「ボクも部屋にじっと籠っているより、寝る前に少し散歩したいのです」
「せっかくなら挨拶で言ったように、ジルジルと友好を深めたいんだけどな~」
「あ・・・オ、オレも・・・」
キャンベル様を皮切りに、ルピス様、パピル様、そしてジェシカ様までもが案内をお願いしてきた。ジェシカ様については、ここ最近で久しぶりに声を聞いたような気がする。
「わ、分かりました。それでは皆さん一緒にーーー」
「え~!パピルはジルジルと2人っきりが良いんだけどなぁ~」
パピル様は甘えるような声音で、熱の籠った視線を僕に向けてくるが、その言動に何となく本能的に警戒を強めてしまう。とはいえ、やはり拒否は出来ないこともあり、他の王女達の反応を見ながら答えを模索していると、話の発端を作ったレイラ様が口を開いた。
「ではどうでしょう?皆さん時間をずらしてジールにエスコートしてもらうというのは?」
名案でしょ、とでも言うようなレイラ様の発言に、他の王女達の目が輝いた気がした。
「私はそれで構いません」
「ボクもそれでいいです」
「パピルも~」
「オ、オレも・・・」
そして結局、一人約20分という時間で皆さんを個別にエスコートするということで話は纏まった。ちなみに順番はクジを引いて決め、最初はルピス様、次にレイラ様、パピル様、キャンベル様、そして最後がジェシカ様となった。
順番が決まった頃には南方砦の飛空場に到着し、皆さんは期待に目を輝かせながら飛空挺を降りていた。その期待の目は、これから視察する他国の害獣対策の現場を直接その目でみれるからか、あるいは・・・
僕はちょっとだけ憂鬱な気持ちになりながらも、それを悟られないように笑顔で隠し、皆さんを砦に案内するのだった。
「ようこそお越しくださいました、王女殿下の皆様。私がこの砦の責任者である序列15位、サキナ・エドナーです」
砦に到着すると、サポーターの方が僕らを先導して指令室へと案内してくれた。さすがに王城に到着した時のような歓迎はない。ここは害獣討伐の最前線なのだ。他国の王女達の対応よりも、自国の利益のために害獣を討伐することを最優先とするのが当たり前だ。当然そんな事情は王女達も理解しているので、指令室でエドナー司令官一人での出迎えにも不満を感じているような方は居なかった。
妙齢のエドナー司令官は、肩まで伸びる黒髪を大きめな三つ編みで纏めており、フレームの細い銀色の眼鏡を掛けている。整った顔立ちだが、細かいことに厳しそうな印象を抱かせる顔をしている。
「お出迎えご苦労様です。視察団を代表して感謝します」
そんなエドガー司令官に対して、さすがに各国の王女が一人ずつ感謝の言葉を述べるような時間は無いので、キャンベル様が代表して感謝の言葉を伝えていた。
「勿体ないお言葉です。では早速ですが、これからの事を簡単にご説明します。皆様にはこの後、各人に割り振られた部屋へと移動していただき、移動の疲れを癒していただければと思います。ただ、何ぶん害獣討伐を主とするための砦ですので、王女殿下達のような王族の方に相応しい部屋かと言われると・・・」
「エドナー司令官、それは我々も承知の上です。どうかご心配なさらないで下さい」
申し訳ない表情を浮かべながら、部屋の質について言葉を濁すエドナー司令官に対して、キャンベル様は全て理解していると諌めた。
「ありがとうございます。翌日からは砦の施設の見学をしていただき、その後、実際に害獣討伐にも視察の為に同行していただくことになりますが、よろしいでしょうか?」
「はい。全て聞き及んでおりますので問題ありません」
「畏まりました。ジール、この砦の見取り図は頭に入っているな?」
キャンベル様とのやり取りを終えたようで、司令官は後ろに控える僕に視線を向けながら確認してきた。
「はい。事前に確認しております」
「よろしい。ではこれより、ジールが王女殿下達を部屋へと案内せよ。その後、君に指示すべきことがあるから、この指令室まで来るように。いいな?」
「了解しました、エドナー指令官」
そうして僕達は指令室を退出すると、王女達を各部屋に案内した。後程夕食の案内に来ることを伝え、僕は先程呼び出しを受けていた指令室へと戻ったのだった。
「ジール・シュライザー。女王陛下から君宛の書簡を預かっている。確認してくれ」
指令室に戻ると、真剣な表情を浮かべたエドナー司令官が、座っている執務机の引き出しから一通の封書を取り出して僕に手渡してきた。机を挟んで姿勢を正していた僕は、差出人の相手が女王陛下であるという言葉に目を見開きつつも、一歩前に出てその封書を受け取り、確認のために封を開いた。
「・・・・・・エドナー司令官。この書簡の内容は、決定事項なのでしょうか?」
僕は中に書かれていた数行の文章を一読すると、何かの間違いであって欲しいという確認の意味を込めて、エドナー司令官に聞いた。
「君も嬉しかろう?あの殿下達は誰もが見目麗しく、それぞれ違った魅力の持ち主達だ。まぁ、その中に我が国の第三王女殿下が含まれている事をよく思わない者も居るにはいるがな」
「そ、それは大変光栄なお話かと存じますが・・・さすがに、当人である殿下達は納得されないのではないでしょうか?」
エドナー司令官の言葉に内心ムッとしながらも、別の角度から断れないか試みた。
「問題ないのではないか?確かに今回の命令は特例中の特例だが、彼女達は皆王族だ。有能な血を引き込むための手段として理解されるだろう。そもそも王族は多夫一妻だから、君は夫の一人になるに過ぎん。その内の一人が、他の女性と共有してる程度の認識ではないか?」
「し、しかし・・・」
なおも言い募ろうとする僕に対して、エドナー司令官は厳しい表情を向けながら苦言を呈してくる。
「ジール。昔から一人の男性を巡っての争いは、無いわけではない。外見的に気に入ったり、有能な男性を奪い合ったりは、特に高位の身分の者達の間では一般的だ。今回の命令は、それを回避するための手段とも考えられる」
「・・・・・・」
僕はエドナー司令官の話を、表情を変えずに黙って聞いていた。端から聞けば、多くの女性から特定の男性が必要とされているような話なのだが、それをそのまま受け入れられないのは、あくまでも選ぶ主体は女性側であって、男性にはその権利すらないという事だ。
「とにかく、この話は各国の為政者間では既に了解の取られた話らしい。精々3ヶ月の留学期間を上手く使って、あの王女殿下達に取り入るんだな。多少はしたないかもしれんが、順番に夜這いでも掛けたら良いんじゃないか?」
「いえ、さすがにそれは不敬が過ぎるかと・・・下手をすれば国際問題に発展しかねません」
「私はその程度大丈夫だと思うがね。まぁ、これも男性である君の仕事のうちだ。頑張りたまえ」
「・・・了解しました」
ニヤニヤとした笑みを浮かべるエドナー司令官に対して、力無い返答をするので精一杯だった。そうして拒否権のない指令に、僕は俯きながら指令室を後にした。各国の為政者の人達がどんな思惑があって今回の命令になったのか分からないが、どの女王陛下も我が子に対してそんな対応で良いのかと疑問を浮かべてしまう。
(はぁ・・・どうすれば良いんだ・・・僕は女性恐怖症なんだぞ・・・)
廊下を歩きながら、僕は途方に暮れていた。その右手には、先程受け取った陛下からの封書を握りしめている。そこにはこう書かれていたのだ。
~命令書~
貴殿、ジール・シュナイザーに以下の命令を遂行するよう厳命する。
留学が終わる7月までの期間に、各国の王女殿下と恋仲になること。例外は無く、我が国の第三王女もその中に含む。
また、恋仲と判断する具体的な基準は、肉体関係で結ばれていれば最良だが、キスの段階でも可とする。
最終的に貴殿には、我が国を含む各国の王女殿下達と婚姻を結んでもらい、5カ国間の友好関係強化の架け橋になってもらう。
健闘を祈る。 以上
ドーラル王国女王 クレス・ドーラル
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