変幻自在のアルマ遣い

黒蓮

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留学編

決戦 2

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 夢幻大地に到着して最初の日、僕は5人の王女殿下達から告白されてしまった。
あまりの出来事で驚きに唖然としている僕をよそに、殿下達は忙しさもあったのだろう、返答をする前に部屋をあとにされた。残された僕はその後、アルマ結晶にアルマエナジーを吸収させつつも、頭の中は別の事を考えていた。

(どうしよう・・・)

浮かんでくるのは結局この言葉ばかりで、殿下達の想いを考えれば、皆さん全員に応えたいと思うのだが、もし仮に将来、僕が5人の殿下達の中で愛情に優劣をつけてしまったとしたらと考えると、皆さん全員と婚姻を結ぼうとする事の方が失礼なのではないかと思い至り、結局どうしたら良いか分からないという結論に何度も戻ってきてしまっていた。
男性が婚姻相手を自由に選ぶ権利は、この世界にはあまり無い。ただ、女性はプライドが高い人が多いこともあり、自分を見てくれない人を拒絶する方も多いと聞く。婚姻の話がもたらされた後に破棄される事は、男性としては非常に不名誉なこととされているので、多くの男性は自分の感情を表に出さないようにしているらしい。
ようするに、相手の女性を立てる為、終始ニコニコとした笑みを浮かべているのだ。結婚しても一生・・・。それで当人同士が納得し、結婚生活も幸せなものになれば良いと思うのだが、自分の内心を無理矢理納得させて婚姻を結んだ男性は、いつか心を病むと言われている。

そして、心を病んでしまった男性はあっさりと女性に捨てられるのだという。というのも、心を病んだという事は、女性に対する愛情を持てなかったと見なされ、女性側としても嫌がる男性と無理矢理婚姻したという社会的な評価になってしまうため、恥をかかされたとして着の身着のまま追い出す人が多いと聞く。
そうして捨てられた男性の将来は、当然暗い。一度捨てられた男性が再婚するようなことはまず無く、良くて男娼になるか、下手をすればそのまま野垂れ死ぬ。だからこそ、婚姻というものは男性にとって人生における最重要なものなのだ。

(はぁ・・・答えを求めてはいないといっても、いつかは答えを出さなきゃな・・・今回の作戦が成功すれば、殿下達は自分の国に戻ってしまうだろうし、その前に返事をした方が良いよな・・・)

告白されてからはそんな事ばかり考えており、拠点内で殿下達の姿を見つけると、自然と目で追ってしまっていた。作戦開始直前ということもあり、多忙な殿下達とあれから会話する機会もなかったため、ただただ遠くから見つめるだけということになってしまっていたが、皆さん真剣な表情で指示を出したり作業している姿には、尊敬の念を抱かずにはいられなかった。

(やっぱり皆さんは、国民からも頼りにされている王女殿下なんだな・・・こんな中途半端な気持ちじゃ駄目だ!もっと真剣に殿下達との事を考えよう!でもその為には先ず、ミュータント・1を討伐して平和な世界にしてからじゃないと!!)

決意も新たに僕は、ミュータント・1討伐作戦の準備に集中していくのだった。それと同時に、無意識の内に殿下達の姿を探すようになり、僕の中に今までとは違った感情が少しずつ芽生え始めた。




side 王女殿下

 
「最近のジルジル・・・パピル達をよく見てくれるようになったね~」
「あの日告白してからですから、ジールさんもボク達のことを異性として意識し始めてくれたのかもしれないのです!」
「だとしたら嬉しい限りだな!今までは人として、オレ達に対する好意はあったかも知れないが、これからはちゃんと女性として見てくれてるって事だからな!」

 ミュータント・1討伐作戦の進捗状況についての深夜の報告会議、その休憩時間に王女殿下達は、最近のジールの行動の変化について話をしていた。一番の変化はその視線だろう。今までの彼は王女殿下達が視界に入ればそちらに視線を向けていたのだが、最近では積極的に王女殿下達の姿を探しているような視線になっているのだ。

また、視線から感じられる彼の感情も、それまでと比べ若干の違いを実感していた。それは今までよりも熱っぽいというか、絡み付くような感覚というか、彼からの想いをより濃密に意識させられるような視線だったのだ。

「とはいえ、ジール君が私達全員と婚姻するというのは、やはり難しいですね・・・聞けば、ジール君の理想とする夫婦像はご両親だとか。かなり夫婦仲の良い間柄だったらしいですし、お母様も、彼から一人の女性を強く愛し抜くような未来図を描いていると聞いています」
「女性として、好いた男性からそれほどの愛情を向けられるということは幸せなのですが、王女として国家の繁栄や国際関係などを鑑みると、ままなりませんね・・・」

キャンベル殿下の話に、レイラ殿下は女性としての立場で言えば歓迎しつつも、一国の王女殿下としては複雑な心境だった。それは、もしジールが5カ国の王女殿下と婚姻したとなれば、各国の友好関係の強化は勿論のこと、彼との間に生まれてくるであろう子供達も、父親と同じ様に規格外の能力を持って生まれてくる可能性があるからだ。
その無尽蔵のアルマエナジー保有量や、具現化武器を変化させ、あまつさえ同時に別種類の武具を具現化させることが出来るのだ。そんな能力が子供にも受け継がれれば、害獣の討伐は勿論のこと、アルマ結晶を利用した技術の飛躍的な発展や、アルマエナジーの具現化に様々な可能性を見いだせるかもしれない。将来国を背負っていく立場の者としては、それはあまりにも魅力的だった。

「何だ?レイラ殿下はジール殿の男性としての魅力よりも、能力としての魅力に惚れてるって事なのか?」
「それも彼の魅力の一つ、ということですわ。わたくしが初めて彼の力に触れた時のあの衝撃・・・身体の芯が疼くとは、まさにあのことですわ」

ジェシカ殿下の少し棘のあるような言い回しに、レイラ殿下は余裕の表情を浮かべて答えた。同時に、過去にジールから自身の身体に流れ込んできたアルマエナジーの濃密さを思い出し、艷やかな顔で熱い吐息を吐いていた。

「なっ!い、いったい過去にジール殿と何があったんだ!?もしや、まだ歳幼いことを良いことに、良からぬ悪戯をしたというのかっ!!?」

思っても見なかったレイラ殿下の反応に、ジェシカ殿下は顔を真赤にしながら抗議の声をあげた。そんなジェシカ殿下に対してレイラ殿下は、微笑を浮かべ、意味ありげな笑い声を溢すだけだった。

「はいはい!そんなにジェシカっちをからかわないの!彼女は変態さんだけど、初心うぶで乙女なんだから!」
「だ、誰が変態だっ!!誰がっ!」

2人のやり取りをため息交じりに静止したのは、パピル殿下だった。変態という部分に抗議の声をあげるジェシカ殿下を無視して、パピル殿下は言葉を続けた。

「とにかく今重要なのは、ジルジルがパピル達を異性として意識し始めてくれてるってことでしょ?告白したのがこんなタイミングなのは不満もあったけど、さすがに今回の戦いに命の保証は無いからね~。自分の気持ちは伝えられる時に伝えておかないと、心残りになっちゃうし」

パピル殿下にしては珍しく、真剣な表情での言葉だった。普段は場を茶化したり、おちゃらけた態度が多い彼女だが、今回の作戦の重要性も難易度も全て理解した上で、場を和める為にわざとしていた部分もある。
そして今回のジールに対する告白劇は、パピル殿下の発案によるものだった。つまるところ、後顧の憂い無く戦いに臨めるようにという考えからだ。
当然ながら、他の殿下からの異論も有った。この大切な時期に、ジールに対して余計な心労を掛けたくないというものだ。それでも結果として、王女殿下達は自分達が今回の作戦で命を落とす可能性を考慮し、自らの想いを伝えるという事を優先した。
現状、その行動は今の王女殿下達とジールの関係性を進めるという面では効果が出ていると評価出来るが、このまま作戦が開始となった時、今回の告白がジールの行動にどの様な影響を及ぼしてしまうかは未知数だった。

「ボクはジールさんに自分の気持をはっきり伝えられたことは、良かったと思います!結果がどうであれ、ボクはジールさんの選択を尊重するのです!」
「そうですね。今回の戦いを無事に乗り切ったらという前提ですけど、ようやくジール君に私を一人の女性として意識させることが出来たんですから、今回の討伐作戦、絶対に成功させましょう!」

ルピス殿下の言葉に、キャンベル殿下が同意を示すと、彼女は笑みを浮かべながら他の王女殿下を見渡し、今回の作戦が成就するように祈った。
そんなキャンベル殿下に、他の王女殿下達は声を揃えて答えた。

「はい!」
「おうっ!」
「ハイなのです!」
「お~!」
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