BloodyHeart

真代 衣織

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王女の日常

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 サキュバス王国に帰ったリリア王女は日常を取り戻していた。
 朝食後に、メイド達と一緒に城内を掃除する。
 秋葉原で購入した最新家電により以前とは違う。元々使っていた自動掃除機と違い、階段と細部も掃除出来る為、家具や家電を拭くだけで済む。一番大変だった大浴場の清掃も、自動風呂掃除機により備品を拭くだけで済んだ。
 母であるサファイアに、メイドは手伝いが仕事、自分で出来る事は自分でと躾けられている。リリアとソフィアは、普段からメイド達と一緒に掃除をするのが日課だった。
 購入した最新家電の中で、一番に皆を感動させた家電は、クリーニングメイトという家電だ。
 縦、横ニメートル、幅七十センチの大きさで、一見はクローゼットのクリーニング家電。この家電は、アイロン掛けに除菌と高温乾燥が出来る。布団を干す必要も無くなり、皆で使って歓喜した。
 以前と同じく、リリアは専属料理人と一緒に食事を作る。食べる時は、メイドと料理人も一緒のテーブルつく。ソフィアが、料理人とメイド達を友達と思っているからだ。主従関係がない様に普段から楽しく談笑している。
 ソフィアは、誰に対しても友達の様に接して偉そうにしない。リリアが一番好きなところだ。
 ——夕方になり、リリア王女は学力確認の為に自室で試験を受けさせられた。
「問題ないですね。論文を含め、全部満点です」
 採点を終えた専属の家庭教師が淡々と言う。
「はぁー。よかった」
 安堵し、リリア王女は机に突っ伏した。
「問題なく留学出来ますね」
「監禁時も許しを得て、勉強と料理はさせてもらいましたから」
 この家庭教師は誘拐されていた事実を知っている。
「何もないと廃人になる。脳は使わないと退化しますから正しい判断です」
「でも、勉強より料理の方が役に立ちました。皆んなが喜んでくれた事を思い出すと元気が湧いてきたんです」
「料理は前進しか出来ませんからね。正しい判断です」
 淡々としていた家庭教師が不意にリリア王女の頭を撫でた。
 突然、憂いを帯びて表情が変化する。
「——リリア様っ! やっと会えたぁ」
 強く抱き締められた。家庭教師の目には涙が浮かんでいる。
「……私も、ずっと会いたかった」
 リリア王女も抱き締め返す。
 二人して涙腺が緩んだ。涙が頬を伝い落ちていく。
 サファイア・テレジア女王に、決して甘やかさないようにと言われ、ずっと厳しく接してきた。それでも、必ず熱心に授業を受け話しを真剣に聞く。どれだけ厳しくしても頑張る。表には出さなかったが家庭教師はリリア王女が大好きだった。
 リリア王女も大好きだった。自分の為に、厳しく接していると分かっているから、厳しさを受け入れ頑張ってこれた。
   互いの思いを受け止めたくて抱擁は時を止めるように続いた。
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