BloodyHeart

真代 衣織

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男女のバトル

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「何も要求してこないから、取り敢えず二千万渡したが、あれでよかったかな?」
 浮かぶ疑問を、芹沢は穂積と丈に問う。
「いいと、自分は思います。あの、自分が意見していいか分かりませんが……」
「——カシラ、あいつは金が欲しい訳じゃない。権力者に馬鹿を見せたいだけの性悪です。所詮、肩書きあっての狂犬は、無法の世界じゃ生きられない」
 丈を遮り、穂積が意見する。
「そうか? 相良は頭が切れる。考え無しに馬鹿やり続ける外道じゃない」
 穂積と顔を見合わせ、芹沢は見解を述べた。
「但し、人を惹きつけるには足りない。性悪で嫌われ者ですから」
 否定を続ける穂積は、正面から睨んでくる丈を、視界にも入れずに無視している。
「だからいいんだよ。嫌われ者は情に厚い。人気者と違って流されない。目的も変わらないなら、餌には苦労しない」
 芹沢の意向は変わらない。そして穂積も……。
「組入りさせれば内輪揉め……」
「おいっ‼︎ 立場弁えろよ! お前は組員じゃねぇだろっ⁉︎ 只のメスがっ」
 怒りが溢れ、丈はカウンターを叩き怒鳴った。
「はぁっ⁉︎ そのメスの前で見栄張って、持ち上げられて散財する馬鹿なオスが、何吠えてんの?」
 丈の風貌といい、罵声といい、常人なら男女問わず怯えてしまう事態だが、穂積は見下すように吐き付ける。
「っお、お前、口の聞き方気を付けろよ! 所詮、腕っ節と体力じゃ勝てない、いざとなりゃ弱者の女がっ」
 強気な態度を崩さない穂積に、丈は弱気になってしまった。
「あんたの方こそ気を付けなよ。しゃぶられて、イク間際に財布盗られたり、咬みつかれたりしないようにねっ」
 言葉だけじゃなく、穂積は目付きでも馬鹿にしてきた。
「そういう奴は、選ばなきゃいいだけだ」
 強気に言い返すも、丈は劣勢が隠せない。
「男は同時進行出来ない。考えながらは何も出来ない、劣勢遺伝子だよっ」
「……っ⁉︎」
 もう、丈は言い返す言葉が出なかった。
「穂積、いい加減やめてやれ。男女どころか、誰でも活かせる器が俺にある。中でも丈と穂積は重要な戦力だ。二人共、頼りにしているんだ。罵り合う必要なんてねぇよ」
 真摯に、芹沢は丈と穂積に言い聞かせた。
「失礼しました! カシラっ、自分はお仕え出来て幸せです!」
 溢れる感謝を口にし、丈は芹沢に頭を下げた。
「仕切り直しに、一杯ずつ入れますね」
 素直に聞き入れたように見せ、穂積は背を向ける。
 口が上手い奴は決まってクズ。
 冷ややかな微笑を浮かべ、穂積は胸中で呟く。
 芹沢が新しい煙草を取り出すと、嬉しそうな丈が火を点ける。
 黙って聞いて、器のデカさを見せるのが正解だ。
 丈にとって貴重なアドバイスになるが、芹沢は口に出さない。
 真が言ってた通り、やっぱり丈は素人童貞か……。女との喧嘩に慣れていない。
 冷ややかな分析を、芹沢は丈を見ながらしていた。
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