BloodyHeart

真代 衣織

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ついてない

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「ざまあみやがれっ!」
 怒鳴り、ドラキュラは人型に戻る。
 剣を大きく振るう。
 落ちた柵は壁ごと吹っ飛んだ。
「なっ⁉︎」
 羽月がいない。
「ついてねぇ。中はしっかり劣化してんじゃねぇかよっ」
 苛立ちを漏らす。
 羽月は隣の冷凍倉庫に移動していた。
 脚を投げ出して座り、ドア付近の壁に寄り掛かっている。
 左足を抱え込む。
 ブーツの足首付近には血が滲む。
「ちっ!」
 派手に舌打ちをする。
 ブーツを脱ぎ、医薬品スプレーをかけるが、それではどうにもならない。
 羽月はアキレス腱を損傷していた。
 近くにあるビニール紐とガムテープで補強する。
「なるべく早く始末しねぇと、なっ」
 強く固定し、ブーツを履く。
 まだ完全には切れていないが、戦闘すれば直ぐに切れてしまう。
 羽月は倉庫内を見渡した。
 棚にはパン生地や冷凍食品が陳列されている。
 足を引きずって歩き、ベルトコンベアの中央に行く。
 内側に埋まっているタンク、マーカーのインクを取り出す。
 インクは無添加の食紅だった。
 サーモに反応してないって事は、本体は一つだけだ。
 天井を見上げ、羽月は名案を思い付く。
 負傷している羽月だが、流血はしていない。血痕を追えないドラキュラは、隣の冷凍倉庫に向かっていた。
 血液の入ったパウチを取り出し、豪快に飲み干す。
 笑みを浮かべ、ドラキュラは自動扉を開ける。
 中には沢山の鮮魚が吊るされていた。
「隠れても無駄だぁ!」
 人型から蝙蝠の群れになる。蝙蝠が刃だ。その蝙蝠からも血刃が飛び出す。
 倉庫内はメチャクチャだ。
 ——人の気配がない。
 気付き、ドラキュラは人型に戻る。
 中央にはベルトコンベア、壁横にはドライアイスを作る機械。
 ドライアイスを貯める部分は、縦一メートル五十センチ、横が二メートル。奥行は八十センチある。人が二人は隠れられるサイズだ。
 ドラキュラは恐る恐る傾斜扉を開ける。……が羽月はいない。
 中にあったのはタオルケットと黒いビニール袋だ。
 地味に舌打ちし、残念がる。
「何だよ。こっちじゃないのか……」
 ドラキュラは隣の倉庫を目指す。
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