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一章
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目の前で起こっていることが信じられない。
今私をぶった少年が、私がずっと探していたユリウスで、口が聞けなくなっていただなんて。
なんで、どうして
どうして笑っていられるんだ。ここで私を拒絶してしまえば、私は君を守れなくなるのに。どうして守らせてくれないんだ。
ずっと、ずっと会いたかった。
やっと、また会えたのに…!
「必ず、また伺います…。」
ーーーーーー
ウォルターが教会に来て、ユリウスを王宮騎士団に誘ってから一ヶ月が経とうとしていた。あの出来事があってからというもの、ウォルターは毎日のように教会へ足を運んでいる。これには神官長、そしてユリウスもさすがに参ってきていた。
どうしてこんなに毎日毎日…俺を勧誘できるんだ。あいつ、神官長に何度断られても押し入ってきやがって。神官長の白い目で見られる俺の身にもなれってんだ…。でも、あいつが神官長を訪ねるようになってから、鞭打ちの数が大幅に減ったのはすごく嬉しい。今の神官長は、公爵の相手をするのに手一杯で、こっちに気を使う気力が無い。勧誘なんかじゃなくて、ただ遊びに来てくれればいいのに…。
正直、王宮騎士団に入りたいかと言われれば入りたいに決まっているのだが、同時に不安を感じることも多々あるのだ。この頃、神官長の様子がまたおかしくなっている。鞭打ちは少なくなったとは言え、神官長の性欲処理に使われる事が多くなっている。ユリウスの貞操はまだ無事だが、いずれ掘られてもおかしくない。様子がおかしい原因もまだ掴めて無いまま離れてしまっては、神官長がどんな暴挙を犯すかわからない。神官長がユリウスに必要以上に固執していることは、ユリウスも気付いていた。
俺の貞操か街の安泰か…。考えただけで吐き気がしてくるぜ…。
それに、公爵のこともあまり掴めていない。公爵家から教会までの道のりは決して近くないというのに、ここ最近は毎日教会に来ているようだ。ユリウスは公爵が教会に現れると強制的に断罪部屋へ軟禁される為ウォルターと会えたことはないが、来るたび軟禁されるのにはとても参っていた。
-来てほしいのか来ないでほしいのかわからなくなってくるな…はは
「なあ、聞いたか、ここ最近ずっと教会に来ている公爵だけど、ユリウスを王宮騎士団に欲しいんだとよ!」
「!?」
急に自分の話が聞こえてきて驚いたユリウスは、咄嗟に物陰に隠れた。
-お…俺の話…なんでわざわざ隠れちまったんだろ…
聞く限り、声の主は先日ユリウスを治癒してくれた2人組の神官の会話だったようだ。
「はあ…あいつ神聖力と顔だけは立派だからな。声も出せない余計な事ばかりする木偶の坊だって気づかれちまったら、どうせ追い出されてここに戻ってくるぜ。」
「俺らとしてはあいつが入団すんのは願ったり叶ったりだけどな。でも神官長があいつを公爵様に会わせないから全然連れていってくれねえよ。」
「神官長様も最近は様子がおかしいからなぁ…。どこか悪いんだろうか。」
「悪いとかの問題か?最近、アイツの断罪の頻度が急に減ってんだぞ。部屋にノックしようとしたら呻き声まで聞こえてくるし…。」
「それ本当か?神官長様が心配だな…。」
「あの公爵が何かしたんじゃないか?ここ最近ずっと通ってるじゃないか。神官長様がおかしくなり始めたのも公爵が来てからだぞ。」
ユリウスはハッとした。
…たしかに、そうだったかもしれない。神官長がおかしくなり始めたのはレオンハルトが来てからだ。だけど…ユリウスには、レオンハルトが神官長になにか良からぬことをしたとは考えられなかった。
「そんなまさか!レオンハルト侯は清く優雅なお方だ。たかだかユリウス目当てに神官長様を誑かすなど…」
「貴族なんていくつ顔があるのかわからないんだぞ。あまり外面を信用するものじゃない。」
「はあ…それもそうだな。この話は胃が痛くなる、食堂に行かないか。」
話を切り上げた神官達は、食堂の方向に向かって去っていった。
…ウォルター・レオンハルト
お前は、俺に何を求めてるんだ…。もしかして、俺はあいつと何処かで…?
いや、そんな筈はない。孤児院にいたウォルターは黒髪だったからだ。瞳の色は…忘れてしまった。
やっぱり、今はまだ教会からは離れられない。公爵の目的と、神官長について調べないと…。今の状態で公爵について行くのは、何かまずい気がする。不安が蠢いて止まらない。
ーまずは、レオンハルトに会おう。
会って根掘り葉掘り尋問しなければ。孤児院で字は習ってるから、声を出せなくてもできる筈だ。今まで通りなら、公爵は今日も来るはず…"迎え"の時間もそろそろだ。
"迎え"とは、レオンハルトが教会に来た時にユリウスを断罪部屋に連れていく為だけに雇われた者達の事だ。
-今日こそは捕まりたくない!
ここ最近、どこに隠れても見つけられてしまう。一体何が原因だというのか。探知機でも取り付けられてるのかと思って服を漁ったが、その様子はない。"迎え"は、毎度迷う事なく、一直線にユリウスが隠れているところを見つけてしまう。絶対に何かおかしいとは思っているが、何が原因なのかわからない。
とにかくレオンハルトに会って話をしなければ!
あいつは、多分いいやつだ。神官長を陥れるという気概は感じなかった。それに、俺の身を案じてくれているし…。俺の直感に、確信が欲しい。
突然、コツ…コツ…と先程話をしていた神官達とは別の足音が聞こえてきた。
やばいっ!!逃げないと!!
"迎え"が来たのだ。しかしそれは、公爵が現れたことの裏付けでもある。
"迎え"から逃げ出したユリウスの胸は大きく高鳴り、不安と、少しばかりの期待が交差していた。
今私をぶった少年が、私がずっと探していたユリウスで、口が聞けなくなっていただなんて。
なんで、どうして
どうして笑っていられるんだ。ここで私を拒絶してしまえば、私は君を守れなくなるのに。どうして守らせてくれないんだ。
ずっと、ずっと会いたかった。
やっと、また会えたのに…!
「必ず、また伺います…。」
ーーーーーー
ウォルターが教会に来て、ユリウスを王宮騎士団に誘ってから一ヶ月が経とうとしていた。あの出来事があってからというもの、ウォルターは毎日のように教会へ足を運んでいる。これには神官長、そしてユリウスもさすがに参ってきていた。
どうしてこんなに毎日毎日…俺を勧誘できるんだ。あいつ、神官長に何度断られても押し入ってきやがって。神官長の白い目で見られる俺の身にもなれってんだ…。でも、あいつが神官長を訪ねるようになってから、鞭打ちの数が大幅に減ったのはすごく嬉しい。今の神官長は、公爵の相手をするのに手一杯で、こっちに気を使う気力が無い。勧誘なんかじゃなくて、ただ遊びに来てくれればいいのに…。
正直、王宮騎士団に入りたいかと言われれば入りたいに決まっているのだが、同時に不安を感じることも多々あるのだ。この頃、神官長の様子がまたおかしくなっている。鞭打ちは少なくなったとは言え、神官長の性欲処理に使われる事が多くなっている。ユリウスの貞操はまだ無事だが、いずれ掘られてもおかしくない。様子がおかしい原因もまだ掴めて無いまま離れてしまっては、神官長がどんな暴挙を犯すかわからない。神官長がユリウスに必要以上に固執していることは、ユリウスも気付いていた。
俺の貞操か街の安泰か…。考えただけで吐き気がしてくるぜ…。
それに、公爵のこともあまり掴めていない。公爵家から教会までの道のりは決して近くないというのに、ここ最近は毎日教会に来ているようだ。ユリウスは公爵が教会に現れると強制的に断罪部屋へ軟禁される為ウォルターと会えたことはないが、来るたび軟禁されるのにはとても参っていた。
-来てほしいのか来ないでほしいのかわからなくなってくるな…はは
「なあ、聞いたか、ここ最近ずっと教会に来ている公爵だけど、ユリウスを王宮騎士団に欲しいんだとよ!」
「!?」
急に自分の話が聞こえてきて驚いたユリウスは、咄嗟に物陰に隠れた。
-お…俺の話…なんでわざわざ隠れちまったんだろ…
聞く限り、声の主は先日ユリウスを治癒してくれた2人組の神官の会話だったようだ。
「はあ…あいつ神聖力と顔だけは立派だからな。声も出せない余計な事ばかりする木偶の坊だって気づかれちまったら、どうせ追い出されてここに戻ってくるぜ。」
「俺らとしてはあいつが入団すんのは願ったり叶ったりだけどな。でも神官長があいつを公爵様に会わせないから全然連れていってくれねえよ。」
「神官長様も最近は様子がおかしいからなぁ…。どこか悪いんだろうか。」
「悪いとかの問題か?最近、アイツの断罪の頻度が急に減ってんだぞ。部屋にノックしようとしたら呻き声まで聞こえてくるし…。」
「それ本当か?神官長様が心配だな…。」
「あの公爵が何かしたんじゃないか?ここ最近ずっと通ってるじゃないか。神官長様がおかしくなり始めたのも公爵が来てからだぞ。」
ユリウスはハッとした。
…たしかに、そうだったかもしれない。神官長がおかしくなり始めたのはレオンハルトが来てからだ。だけど…ユリウスには、レオンハルトが神官長になにか良からぬことをしたとは考えられなかった。
「そんなまさか!レオンハルト侯は清く優雅なお方だ。たかだかユリウス目当てに神官長様を誑かすなど…」
「貴族なんていくつ顔があるのかわからないんだぞ。あまり外面を信用するものじゃない。」
「はあ…それもそうだな。この話は胃が痛くなる、食堂に行かないか。」
話を切り上げた神官達は、食堂の方向に向かって去っていった。
…ウォルター・レオンハルト
お前は、俺に何を求めてるんだ…。もしかして、俺はあいつと何処かで…?
いや、そんな筈はない。孤児院にいたウォルターは黒髪だったからだ。瞳の色は…忘れてしまった。
やっぱり、今はまだ教会からは離れられない。公爵の目的と、神官長について調べないと…。今の状態で公爵について行くのは、何かまずい気がする。不安が蠢いて止まらない。
ーまずは、レオンハルトに会おう。
会って根掘り葉掘り尋問しなければ。孤児院で字は習ってるから、声を出せなくてもできる筈だ。今まで通りなら、公爵は今日も来るはず…"迎え"の時間もそろそろだ。
"迎え"とは、レオンハルトが教会に来た時にユリウスを断罪部屋に連れていく為だけに雇われた者達の事だ。
-今日こそは捕まりたくない!
ここ最近、どこに隠れても見つけられてしまう。一体何が原因だというのか。探知機でも取り付けられてるのかと思って服を漁ったが、その様子はない。"迎え"は、毎度迷う事なく、一直線にユリウスが隠れているところを見つけてしまう。絶対に何かおかしいとは思っているが、何が原因なのかわからない。
とにかくレオンハルトに会って話をしなければ!
あいつは、多分いいやつだ。神官長を陥れるという気概は感じなかった。それに、俺の身を案じてくれているし…。俺の直感に、確信が欲しい。
突然、コツ…コツ…と先程話をしていた神官達とは別の足音が聞こえてきた。
やばいっ!!逃げないと!!
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