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金曜 揺らしてください
万パイ計
しおりを挟むプルルル、プルルル、プルルル
プルルル、プルルル、プルルル
電話を掛けると少し時間がかかってから温子さんが取ってくれた。
「あ、水川くん」
「もしもし。もう温子さん、先に入室なんて……」
自分が残業で行けなかったことは棚にあげて非難する。
「ほんとうごめんね!でも毎日付き合ってもらって悪いなって思ってたから、今日はゆっくり休んでよ」
「何があるか分からないんですから一人じゃ危ないんですよ?」
「うう、ごめん~」
こんなやり取りを続けるが、もう今夜は仕方がない。一度深呼吸をして問いかける。
「……もう分かりました。とにかく気を付けてくださいね。……いまは何してるんですか?」
気になっていたことの一つ、本日の"注文"内容が知りたい。一人でもできると言っていたが。
「それがね、今日は楽勝っぽいの。万歩計みたいなのがあるからそれの振動回数が720回にいったらいいみたい」
「720回?とても中途半端ですね。でもまぁ簡単そうですね」
「そうなの!今からやってみるから、じゃあね!」
プツっ
僕と話すより早く注文をこなして温泉に入りたいのか電話はすぐに切られた。あ~~なんて悲しいんだ。職場から出てそのまま帰宅するか、何かあったときのためにホテルの近くに行くか迷っていたが、まぁこの数日大丈夫だったんだ。問題ない。家に帰ろう。
◆◆◆◆
帰宅後、久しぶりの自宅の風呂を終えた。するとちょうどいいタイミングでスマートフォンが鳴る。
ディスプレイを見ると温子さんからだ。
「もしもし」
「水川くんっ、もうだめ~」
「え、何かあったんですか!?」
何か身の安全が脅かされているのかと驚く。
「あのね、全然、万歩計カウントしないの」
万歩計って、あぁ今日の部屋の注文のか
「なんだ。そんなこと……」
「もう!どうしたらいいか分からなくて困ってるのに」
「すみませんって。でも振ったり、それか服に着けて歩けばカウントするでしょう」
最近の万歩計は振動の種類が歩いたものか手で振ったものかを認識し、ちゃんと歩かないとカウントしないものもある。
「色々やったけどダメなの」
「そうなんですか。困りましたね。万歩計以外に何かないんですか?」
「あるはあるけど、関係なさそう」
「何があるんですか?」
「えっと、万歩計と720回って説明が書いてたメモの下に、水着が置いてた」
水着……あのホテルのことだ、ちょっと際どい水着ではないのだろうか。見たい!
「温子さん、電話じゃなくてビデオ通話にしましょう。いったん切りますから」
「ちょ……」
一度電話を切り、ビデオ通話でかけようとアプリを立ち上げる。いや、待てよ。小さな画面より、大きな画面で見たい。スマートフォンではなくノートパソコンのディスプレイがいい。
ノートパソコンを起動し、温子さんをコールする。しばらくするとコール中の画面が切り替わり、温子さんのアップの顔が映る。可愛らしいな。
「よく見えます」
「今日の部屋こんな感じだよ」
スマートフォンのカメラで部屋全体を見せてくれた。普通のホテルの部屋っぽい。あえていうならベッドがやたらと広いこと。
あー、あのベッドに今頃は二人で寝ていたのかもしれないのに。まぁ仕方がない。さっき言っていた水着が早く見たい。
「水着は?着替えてないんですか?」
「だって万歩計に関係ないでしょ。水着は……こんなの……」
温子さんは画面に映っていない下の方から水着を持った。カメラに映してもらうとそれはビキニ水着。胸のところが三角形で、紐で結ぶタイプ。確かに万歩計とは関係ない……?あれ……?
「温子さん、水着の胸のところ。ちょっと切れ目がありませんか?」
「切れ目?えっと、あ、ほんとだ。何か……こう引っ掛けられそう」
ボタンホールのような引っ掛けられるところがある。
「もしかして……これ?」
温子さんは、例のカウントをしない万歩計の裏を見た。するとそこには引っ掛けるためのような部品がついていた。
ビキニの穴に通してみると、、
ピー!
急に万歩計が音を出す。正解ということか。
「水着に付けて使うみたいですね」
「本当だね。不思議~」
温子さんはカウントするかどうかを確かめるためにビキニごと振ってみる。しかし万歩計の小さなディスプレイに表示されている数字はゼロのまま。
これはひょっとすると……
「温子さん、その水着に着替えましょう。きっと着て揺らしたらカウントしますよ」
絶対にそうだ。ビキニを着ておっぱいを揺らしたらカウントするに違いない。
「ええ!それって、、、胸の振動ってこと?」
「水着が用意されていて胸のところに付けるんですからそうですよ。オッパイの振動……そうか、万歩計ならぬ万パイ計……」
「!?何言ってんの!」
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