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つづきの話
06 ほんとはね
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すうすうと気持ち良さそうに眠っているなんだかあどけない顔を見て、頬が緩む。
「瞼は腫れてるけど。」
そっと睫毛を撫でると指先に水滴が付いた。
それを舐めると塩っからい涙の味。
可愛い。
可愛い。
僕の……。
まーくんの短い髪を指先で弄んでいたら、携帯が鳴った。
「……」
出ずに無視しようと思った。
せっかくまーくんが泊まりに来てくれてる週末。1分、1秒離れているのだって勿体ない。
まーくんを起こしたくないから携帯の音が出るスピーカー部分を下にしてベッドのシーツと枕の間に挟んだ。
しばらく上から押さえつけて着信が止んだのを見計らって取り出すと、その途端また鳴った。
「……んだよ、鬱陶しいな。」
悪態を吐いて携帯を開くと、着信は高校からの友人の甲田雅広からだった。
慌ててベッドを降り、ダイニングの黒のリクライニング式の座椅子に座ってからボタンを押した。
「まさひろ、どうしたの?」
珍しいな。雅広からこんな時間に電話なんて。いつもだいたい8時前にしかかけて来ない真面目な奴なのに。
次の瞬間、僕は弾んだ声で電話に出たことを後悔した。
『『まさひろ、ど~したの~ 』じゃねーよクソ雪也』
その声を聞いた瞬間に電話を切ろうとしたけど、
『久しぶり久しぶり!』
脇から雅広の声も聞こえたから思いとどまった。
『テメ、何で俺のケータイ出ねんだよいっつもいっつも!甲田のでかけたら速攻で出やがるし。ムカツク!』
おかしいと思ったんだ。夜も23時を回ってから電話かけてくるなんて、雅広がするわけない。
「お前がうぜぇからに決まってんだろ?雅広いるんなら替わってよ。」
『うぜぇってなんだそりゃおぉっ?こりゃ!声まで変えやがって!その恐ろしい声を甲田にも聞かせてやれ』
『雪也、あのね、今裕司と部屋の前に来てるんだ。こんな遅くに申し訳ないんだけど』
『申し訳ない訳があるか。一人暮らしの野郎に何を遠慮する必要があんだよ。』
「……いいよもう。普通に聞こえてるから。」
ダイニングキッチンは玄関を入ってすぐのところだから、ドアの外から電話の声と同じセリフが聞こえていて、僕の部屋の前まで二人が来てることはすぐにわかった。
溜め息を吐きながら鍵を開けると、申し訳なさそうな雅広と、上機嫌な玉置裕司。
「ごめんね、裕司が雪也のとこに今から行こうって聞かなくって」
「ううん。雅広はいつでも歓迎するよ。雅広はね。」
目一杯玉置に嫌味たっぷり言ったんだけど、玉置は全く気にした様子もなく僕の脇からずいずいと玄関に入り、
「お?何このデッケェ靴。バッシュか?」
まーくんの靴を指さしてぐりぐりと大きな青い目で訊いてきた。
コイツは、もうちょっと喋り方を考えればいいのに。美少女のような外見をしているんだから、多分それなりに可愛くも見えるだろう。
「なに玉置、また髪の毛色変えたの?禿げるぞ。」
たしか父親がイギリス人だった筈で、玉置の地毛はプラチナブロンド。でも今は黒髪になっている。
「テメ、呪いの言葉を吐くんじゃねぇ!気にしてんだから」
だから雪也は嫌いなんだ……とかブツブツ言いながらも人の家に平気でズカズカ上がり込むこの男は絶対躾がなってない。
「おい!ちょっと待て玉置、起こすなよ!あ、雅広も上がって?」
にっこり笑いかけると、ほっとしたように頷いてやっと玄関に入って来た。
その家の人間の許可がない限り絶対に入らない。雅広はそういう男だ。背はまーくんと同じか、少し高いくらいかな。
目はちょっと爬虫類っぽい瞳が小さい三白眼で吊り目。でも纏う雰囲気が柔らかいのは、雅広が優しい人間だからだろう。
今更だけど、やっぱりまーくんに似てる。
顔の作りとかじゃなくて、雰囲気がすごく似てる。
名前まで同じ『まさひろ』。彼がいてくれたお陰で、僕はまーくんが側にいない日々に耐えることが出来たんだと思う。
「これ、一緒に飲も。」
雅広から差し出された袋には、チューハイとビールと焼酎が入っていた。
一応まだ未成年なんだけどな。僕は早生まれだから18、雅広と玉置が19歳か。
「雪也、あの寝てる奴誰?」
「玉置、起こすなって言っただろ。」
「起こしてねーよ。てかお前何したん?あれ、泣いたんだろ。」
「可愛いがっただけだよ。」
そう言うと、玉置と雅広が驚いて同時に言った。
「「例の子?」」
ちょっと照れくさかったけど、僕は無言で頷いた。
まーくんと僕が恋人同士なのは、秘密。周りに知られないようには常に気をつけている。
僕の方は構わないんだ。でもまーくんのご両親のことを考えると、バレる訳にはいかなかった。
まーくんのお父さんは公務員で、わりと考え方の硬い人だ。僕たちの関係をすんなりと認めてくれるとは思えない。世間体も気にする真面目なひとだから……。
知ったらきっと、引き離される。またまーくんの側にいられなくなるのは、耐えられない。
他の人間には絶対に明かさないけど、玉置と雅広は特別だった。
「へー。あの子が雪也くんのご執心な幼馴染みちゃんかぁ。」
「起きたら俺も会ってみたいな。」
「起こして来てイイ?」
言うが早いか寝室へ向かおうとする玉置の首根っこを掴む。
「ダメ。」
「いーじゃん!ずりぃぞあんな可愛い男(こ)を……」
「あ~。裕司くん俺がいるのに問題発言。この浮気者っ。」
ポイッと玉置を雅広に渡すと、雅広は「この~」と言いながら玉置のこめかみを両手の拳でぐりぐりと揉み込んでいる。「イテェイテェまじイテェ」とか言いながら嬉しそうな玉置がよくわからない。
玉置と雅広は恋人同士だ。二人とも徨梁(僕の母校の半寮制男子校)の同級生で1年のときは3人とも同じクラスだった。雅広とは3年間一緒だったから、玉置には随分嫉妬されて本気で鬱陶しかったっけ。
「うん、起きたらね。多分明日の昼過ぎまで寝てるけど、雅広も泊まっていくでしょ?」
「おっこりゃ!テメ、俺の存在を無視してんじゃねぇ!当然俺様も泊まるからな」
「……邪魔」
ちろ、と冷たく流し目をくれてやって、
「何かつまみ用意するから座ってて。」
雅広にだけにっこり笑って言うと、
「ちくしょー雪也め、ヒトがクソ重いマットレスだの箪笥だの持って階段昇ってやった恩も忘れやがって……」
悔しそうにぶちぶち言う玉置にとうとう噴き出してしまった。
「あ~おもしろ。やっぱり玉置はいじりがいあるよ。」
ケタケタ笑う僕を忌々しそうに見上げて、
「こっのドS!」
ぷうっと頬を膨らませて子供のように拗ねて見せる。
まあいいか。こんなのも。
まーくんと一緒に過ごせる週末はとても大切で、片時も離れたくないと思っていたんだけど。
こんなのも、悪くない。
「ドSドSドSドSドSドS……」
念仏のように呟き続ける玉置は相変わらず鬱陶しいけど、彼も僕の大事な友達の一人だ。
昼過ぎまで寝てるだろうと思っていたんだけど、まーくんは案外早く起きて来た。
ダイニングにひいた客用布団で雅広と玉置はまだ眠っている。
結局3時過ぎまで飲んでたから、まだ当分起きないだろう。
「え、……っと、雪にぃちゃんの友達?いつ来たの?」
「ん。昨日遅くにね。おはよう、すぐ朝ご飯作るから。ちょっと待ってて。」
「大学の友達?」
「ううん、高校の時の」
「友達とその彼女?」
……言うと思った。
玉置は黙って大人しくしてれば女の子にしか見えないから。
僕も初めはその外見に騙されてやたらと庇護欲に駆られたりしたんだけど。
「起きたら紹介するね。」
流しからまーくんを振り返ると、なんだか複雑な表情をしていた。
「どうしたの?」
「……何て言うの?俺のこと。……弟?……幼馴染みとか?」
あぁ。そうか。
「『恋人』って言うよ。」
「ウソっ……」
お味噌汁をかけていたガスの火を一旦消して、まーくんを抱き寄せた。
スウェットのズボンの上からお尻を撫でると、小さく悲鳴を上げる。
「この身体、いっぱいいじくりまわされて中に出されてぐちゃぐちゃにされてあんなに泣いちゃったのに、僕はただの『幼馴染みのお兄ちゃん』なの?」
「……だって」
「うん。わかってるよ。僕も正直ヘテロの友達には、まだ今はまーくんのこと弟とか、そんな言い方しかしてあげられない。どうしても、偏見の目で見る人がいるしね。でも、この二人は大丈夫。ちゃんとわかってくれるから。」
二人とも男で恋人同士なんだと説明すると、まーくんは信じられないみたいだった。
「んー……お~?朝か」
くあ~と盛大に欠伸をして玉置が半分身を起こした。
慌てて僕から離れようとするまーくんの腰をガッチリ掴んで抱き締めると、「雪にぃちゃんっ……」と非難するような声を出してじたばたと暴れる。
「お。テメ、雪也、いくらドSだからって朝から強姦は鬼畜過ぎるから止めとけよ?」
ひどく品性に欠ける玉置の声を聞くや、まーくんはポカーンと口を開けて固まってしまった。
しばらく間を置いて、
「ウソ、お、男のひと……?」
「うん。だからそう言ってるでしょ。」
「やっ!はじめまして!おら玉置!!」
「…………初めまして。えと、上月、です。」
他人にまーくんのことを思いっきりノロケられるチャンスなんて僕には今まで無かったから、かなり楽しかった。
二人が「ご馳走さま」って言って帰る頃にはもうまーくんは真っ赤になって恥ずかしがっていたけれど。
ほんとはね。
誰が見ても僕のものだとわかるように、君に印をつけておきたい。
回りにいる人間すべてにこの子が僕の大切な恋人ですって言いふらして回りたい。
いつだって、そう思ってるんだよ。
「びっくりした~。あの玉置さんって、なんかすごい元気な人だね。」
「うん。昔からあんなだよ。」
「あれ?雪にぃちゃん、携帯鳴ってる。」
「あぁ、メールだよ……。玉置からだ。」
『可愛い子だなvVお前にはもったいねー!まぁ俺のラヴリー甲田には及ばんがな!』
「…………。」
「どうしたの?」
「どっと疲れが出た……。」
「え?大丈夫?」
心配そうな顔をしたまーくんを抱き締め、ベッドに寝転がって、僕は笑った。
うん。まあ、鬱陶しい奴だけど。ね。
End.
「瞼は腫れてるけど。」
そっと睫毛を撫でると指先に水滴が付いた。
それを舐めると塩っからい涙の味。
可愛い。
可愛い。
僕の……。
まーくんの短い髪を指先で弄んでいたら、携帯が鳴った。
「……」
出ずに無視しようと思った。
せっかくまーくんが泊まりに来てくれてる週末。1分、1秒離れているのだって勿体ない。
まーくんを起こしたくないから携帯の音が出るスピーカー部分を下にしてベッドのシーツと枕の間に挟んだ。
しばらく上から押さえつけて着信が止んだのを見計らって取り出すと、その途端また鳴った。
「……んだよ、鬱陶しいな。」
悪態を吐いて携帯を開くと、着信は高校からの友人の甲田雅広からだった。
慌ててベッドを降り、ダイニングの黒のリクライニング式の座椅子に座ってからボタンを押した。
「まさひろ、どうしたの?」
珍しいな。雅広からこんな時間に電話なんて。いつもだいたい8時前にしかかけて来ない真面目な奴なのに。
次の瞬間、僕は弾んだ声で電話に出たことを後悔した。
『『まさひろ、ど~したの~ 』じゃねーよクソ雪也』
その声を聞いた瞬間に電話を切ろうとしたけど、
『久しぶり久しぶり!』
脇から雅広の声も聞こえたから思いとどまった。
『テメ、何で俺のケータイ出ねんだよいっつもいっつも!甲田のでかけたら速攻で出やがるし。ムカツク!』
おかしいと思ったんだ。夜も23時を回ってから電話かけてくるなんて、雅広がするわけない。
「お前がうぜぇからに決まってんだろ?雅広いるんなら替わってよ。」
『うぜぇってなんだそりゃおぉっ?こりゃ!声まで変えやがって!その恐ろしい声を甲田にも聞かせてやれ』
『雪也、あのね、今裕司と部屋の前に来てるんだ。こんな遅くに申し訳ないんだけど』
『申し訳ない訳があるか。一人暮らしの野郎に何を遠慮する必要があんだよ。』
「……いいよもう。普通に聞こえてるから。」
ダイニングキッチンは玄関を入ってすぐのところだから、ドアの外から電話の声と同じセリフが聞こえていて、僕の部屋の前まで二人が来てることはすぐにわかった。
溜め息を吐きながら鍵を開けると、申し訳なさそうな雅広と、上機嫌な玉置裕司。
「ごめんね、裕司が雪也のとこに今から行こうって聞かなくって」
「ううん。雅広はいつでも歓迎するよ。雅広はね。」
目一杯玉置に嫌味たっぷり言ったんだけど、玉置は全く気にした様子もなく僕の脇からずいずいと玄関に入り、
「お?何このデッケェ靴。バッシュか?」
まーくんの靴を指さしてぐりぐりと大きな青い目で訊いてきた。
コイツは、もうちょっと喋り方を考えればいいのに。美少女のような外見をしているんだから、多分それなりに可愛くも見えるだろう。
「なに玉置、また髪の毛色変えたの?禿げるぞ。」
たしか父親がイギリス人だった筈で、玉置の地毛はプラチナブロンド。でも今は黒髪になっている。
「テメ、呪いの言葉を吐くんじゃねぇ!気にしてんだから」
だから雪也は嫌いなんだ……とかブツブツ言いながらも人の家に平気でズカズカ上がり込むこの男は絶対躾がなってない。
「おい!ちょっと待て玉置、起こすなよ!あ、雅広も上がって?」
にっこり笑いかけると、ほっとしたように頷いてやっと玄関に入って来た。
その家の人間の許可がない限り絶対に入らない。雅広はそういう男だ。背はまーくんと同じか、少し高いくらいかな。
目はちょっと爬虫類っぽい瞳が小さい三白眼で吊り目。でも纏う雰囲気が柔らかいのは、雅広が優しい人間だからだろう。
今更だけど、やっぱりまーくんに似てる。
顔の作りとかじゃなくて、雰囲気がすごく似てる。
名前まで同じ『まさひろ』。彼がいてくれたお陰で、僕はまーくんが側にいない日々に耐えることが出来たんだと思う。
「これ、一緒に飲も。」
雅広から差し出された袋には、チューハイとビールと焼酎が入っていた。
一応まだ未成年なんだけどな。僕は早生まれだから18、雅広と玉置が19歳か。
「雪也、あの寝てる奴誰?」
「玉置、起こすなって言っただろ。」
「起こしてねーよ。てかお前何したん?あれ、泣いたんだろ。」
「可愛いがっただけだよ。」
そう言うと、玉置と雅広が驚いて同時に言った。
「「例の子?」」
ちょっと照れくさかったけど、僕は無言で頷いた。
まーくんと僕が恋人同士なのは、秘密。周りに知られないようには常に気をつけている。
僕の方は構わないんだ。でもまーくんのご両親のことを考えると、バレる訳にはいかなかった。
まーくんのお父さんは公務員で、わりと考え方の硬い人だ。僕たちの関係をすんなりと認めてくれるとは思えない。世間体も気にする真面目なひとだから……。
知ったらきっと、引き離される。またまーくんの側にいられなくなるのは、耐えられない。
他の人間には絶対に明かさないけど、玉置と雅広は特別だった。
「へー。あの子が雪也くんのご執心な幼馴染みちゃんかぁ。」
「起きたら俺も会ってみたいな。」
「起こして来てイイ?」
言うが早いか寝室へ向かおうとする玉置の首根っこを掴む。
「ダメ。」
「いーじゃん!ずりぃぞあんな可愛い男(こ)を……」
「あ~。裕司くん俺がいるのに問題発言。この浮気者っ。」
ポイッと玉置を雅広に渡すと、雅広は「この~」と言いながら玉置のこめかみを両手の拳でぐりぐりと揉み込んでいる。「イテェイテェまじイテェ」とか言いながら嬉しそうな玉置がよくわからない。
玉置と雅広は恋人同士だ。二人とも徨梁(僕の母校の半寮制男子校)の同級生で1年のときは3人とも同じクラスだった。雅広とは3年間一緒だったから、玉置には随分嫉妬されて本気で鬱陶しかったっけ。
「うん、起きたらね。多分明日の昼過ぎまで寝てるけど、雅広も泊まっていくでしょ?」
「おっこりゃ!テメ、俺の存在を無視してんじゃねぇ!当然俺様も泊まるからな」
「……邪魔」
ちろ、と冷たく流し目をくれてやって、
「何かつまみ用意するから座ってて。」
雅広にだけにっこり笑って言うと、
「ちくしょー雪也め、ヒトがクソ重いマットレスだの箪笥だの持って階段昇ってやった恩も忘れやがって……」
悔しそうにぶちぶち言う玉置にとうとう噴き出してしまった。
「あ~おもしろ。やっぱり玉置はいじりがいあるよ。」
ケタケタ笑う僕を忌々しそうに見上げて、
「こっのドS!」
ぷうっと頬を膨らませて子供のように拗ねて見せる。
まあいいか。こんなのも。
まーくんと一緒に過ごせる週末はとても大切で、片時も離れたくないと思っていたんだけど。
こんなのも、悪くない。
「ドSドSドSドSドSドS……」
念仏のように呟き続ける玉置は相変わらず鬱陶しいけど、彼も僕の大事な友達の一人だ。
昼過ぎまで寝てるだろうと思っていたんだけど、まーくんは案外早く起きて来た。
ダイニングにひいた客用布団で雅広と玉置はまだ眠っている。
結局3時過ぎまで飲んでたから、まだ当分起きないだろう。
「え、……っと、雪にぃちゃんの友達?いつ来たの?」
「ん。昨日遅くにね。おはよう、すぐ朝ご飯作るから。ちょっと待ってて。」
「大学の友達?」
「ううん、高校の時の」
「友達とその彼女?」
……言うと思った。
玉置は黙って大人しくしてれば女の子にしか見えないから。
僕も初めはその外見に騙されてやたらと庇護欲に駆られたりしたんだけど。
「起きたら紹介するね。」
流しからまーくんを振り返ると、なんだか複雑な表情をしていた。
「どうしたの?」
「……何て言うの?俺のこと。……弟?……幼馴染みとか?」
あぁ。そうか。
「『恋人』って言うよ。」
「ウソっ……」
お味噌汁をかけていたガスの火を一旦消して、まーくんを抱き寄せた。
スウェットのズボンの上からお尻を撫でると、小さく悲鳴を上げる。
「この身体、いっぱいいじくりまわされて中に出されてぐちゃぐちゃにされてあんなに泣いちゃったのに、僕はただの『幼馴染みのお兄ちゃん』なの?」
「……だって」
「うん。わかってるよ。僕も正直ヘテロの友達には、まだ今はまーくんのこと弟とか、そんな言い方しかしてあげられない。どうしても、偏見の目で見る人がいるしね。でも、この二人は大丈夫。ちゃんとわかってくれるから。」
二人とも男で恋人同士なんだと説明すると、まーくんは信じられないみたいだった。
「んー……お~?朝か」
くあ~と盛大に欠伸をして玉置が半分身を起こした。
慌てて僕から離れようとするまーくんの腰をガッチリ掴んで抱き締めると、「雪にぃちゃんっ……」と非難するような声を出してじたばたと暴れる。
「お。テメ、雪也、いくらドSだからって朝から強姦は鬼畜過ぎるから止めとけよ?」
ひどく品性に欠ける玉置の声を聞くや、まーくんはポカーンと口を開けて固まってしまった。
しばらく間を置いて、
「ウソ、お、男のひと……?」
「うん。だからそう言ってるでしょ。」
「やっ!はじめまして!おら玉置!!」
「…………初めまして。えと、上月、です。」
他人にまーくんのことを思いっきりノロケられるチャンスなんて僕には今まで無かったから、かなり楽しかった。
二人が「ご馳走さま」って言って帰る頃にはもうまーくんは真っ赤になって恥ずかしがっていたけれど。
ほんとはね。
誰が見ても僕のものだとわかるように、君に印をつけておきたい。
回りにいる人間すべてにこの子が僕の大切な恋人ですって言いふらして回りたい。
いつだって、そう思ってるんだよ。
「びっくりした~。あの玉置さんって、なんかすごい元気な人だね。」
「うん。昔からあんなだよ。」
「あれ?雪にぃちゃん、携帯鳴ってる。」
「あぁ、メールだよ……。玉置からだ。」
『可愛い子だなvVお前にはもったいねー!まぁ俺のラヴリー甲田には及ばんがな!』
「…………。」
「どうしたの?」
「どっと疲れが出た……。」
「え?大丈夫?」
心配そうな顔をしたまーくんを抱き締め、ベッドに寝転がって、僕は笑った。
うん。まあ、鬱陶しい奴だけど。ね。
End.
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